国鉄改革から22年 政府の解決決断を求める4・1集会
  流れ変えられない中西判決

 四月一日、「国鉄改革から22年 政府の解決決断を求める4・1集会」が東京港区のメルパルクホールで開かれ、約一一〇〇名が参加した。主催は、採用差別裁判原告団の4者と国労・支援共闘の4団体。
 この集会は本来、勝利判決となるべきであった三月十三日の鉄道運輸機構訴訟判決を受け、これまでの鉄建公団訴訟判決、また今年一月二十三日の全動労鉄運機構訴訟判決とあわせ三戦全勝の一審判決をもって、会場満杯で政府に決断を迫るという設定であった。が、3・13の「時効」ですべてを切り捨てる反動判決によって、やや気勢を削がれる集会となったことは否めない。
 しかし、年度内解決を求めた三月二六〜二八日の国交省前連続座り込み、原告家族・遺族の要請行動、院内集会など、4者・4団体の闘いの成果を集約し、また六月二日の鉄建公団訴訟控訴審でのJR東海・葛西敬之会長の証人尋問などを見すえ、勝利的な政治解決をいまこそ実現していこうという集会であった。
 集会は、李政美(イ・ジョンミ)さんの歌のあと、国労・高橋伸二委員長が主催者あいさつ、高橋委員長は、裁判闘争など経過報告のなかで、鳩山幹事長を始め民主党の国会議員二十名が参加した三月二七日の院内集会についてふれ、政治解決への気運は高まっていると報告した。
 連帯あいさつが民主党・郡司、共産・穀田、社民・菅野の各国会議員からあり、辛淑玉(シン・スゴ)さんが国鉄闘争激励の講演を行なった。
 続いて弁護団報告が、「3・13鉄運機構訴訟不当判決と今後の控訴審に臨む構え」として、鉄建公団訴訟の加藤晋介主任弁護士から行なわれた。加藤弁護士は、「最高裁をコケにするのが3・13中西判決。〇三年の最高裁判決はJRを免責したが、不当行為があるならば国鉄に責任ありとし、何とかその救済をとするもの。この流れに05・9・15鉄建公団訴訟難波判決、08・1・23全動労訴訟佐村判決があり、両者は時効を最高裁判決からかぞえる。中西判決は、この空気が読めない反動判決。」「鉄建公団訴訟としては、後押しの判決を期待していたが、二審で裁判全体の機関車になるしかない。国鉄分割・民営化の張本人の一人である葛西証人を血祭りに上げたい」と述べた。
 集会は、二瓶久勝・国鉄闘争会議議長の情勢報告、川端明美さん(留萌闘争団家族)の家族訴え、神宮義秋・闘争団全国連絡会議議長の当事者の訴え、山口弘文・国鉄闘争支援中央共闘事務局長の閉会あいさつを受け、佐藤陵一・全建交中執の団結ガンバローで終了した。
 国鉄闘争のこれまでの判決は(論外の中西判決もあるが)、国鉄改革法を認めて国鉄改革式の首切りの撤回を命じないものの、国の組合差別・不当労働行為を認めて何らかの補償を図ろうとする流れである。来る葛西尋問は、この国鉄改革法を改めて問うものとなるだろう。不当行為救済であれば本来は現状回復しかないが、より高い水準での「雇用・年金・解決金」の要求実現が求められる。政府は解決交渉の場につけ。(東京W通信員)


3・29「反貧困フェスタ2008」が枠組み越えて
  貧困をどう伝え、どう闘うか 

 三月二九日、「反貧困フェスタ2008」が反貧困ネットワークの主催によって、東京・神田の千代田区立神田一橋中学校にて開催され約一六〇〇人が参加。午前中から夕方まで、各企画・催しが賑わっていた。
 このフェスタの趣旨は、「貧困をどう伝えるか」という副題が付いているように、貧困問題の実態が「見えない」「伝えられていない」ために、自己責任論が横行し、無理解にもとづく報道・政策が後を絶たないが、日本社会に広がる貧困の多様な実態を伝えるために、多くの諸団体と協力して開催するものであるとされている。主催の反貧困ネットワーク(代表・宇都宮健児、事務局長・湯浅誠)とは、昨年十月に結成、現在七十ほどの市民団体・労働団体・法律家・出版関係などが参加している。
 フェスタでは「楽しみながら貧困問題を学ぶ企画」として、教室や体育館では、高木連合会長も参加したシンポ「労働と貧困」、雨宮処凛・廣瀬純対談会、生活保護マニアック講座、シングルマザー相談会、反貧困映画祭などなど二十ほどの催しがあり、屋外では、ステージで音楽や各団体アピール、そして多様な諸団体によるブースが立ち並び、労働相談や生活相談、医療相談・レントゲン検診なども行なわれた。
 この反貧困フェスタは、非正規雇用の拡大、低賃金、首切りなど労働問題からくる貧困、生活保護、医療など社会保障の後退からくる貧困、それらが複合する現代の貧困の実態を明らかにし、それと闘う方法があるということをアピールすることにかなりの成功を収めていた。
また、連合と全労連の非正規センター、レイバーネット、各ユニオン、フリーター全般労組、全国一般東京東部などなど、また東京労働安全センター、生活と健康を守る会、農民連などなどの参加にみられるように、労働団体や政党の系列を超えた広範な結集となっていた。「反貧困」、その一点ですべての勢力が連帯するというのはすばらしい。これは「反改憲」についても言えるだろう。
マスコミの注目も大きかったが、こうした社会的アピールとともに、今後は各団体の日常の運動実態をさらに前進させていくことが期待される。(東京A通信員)
 

アントニオ・ネグリ氏講演会
   入国拒否されても安田講堂は盛況
    左翼思潮へ時代の変化

三月二十九日、東京大学・安田講堂において、アントニオ・ネグリ氏講演会が、東京大学大学院情報学環・学際情報学府の主催で開催された。日本政府の入国拒否でネグリ当人が来られないという事態であったが、若い学生を中心に八百名が参加した。
講演会は、姜尚中(東京大学大学院情報学環・学際情報学府 教授)さんの司会で進行。
冒頭、吉見俊哉(同上・情報学環 学環長)さんが開会の辞を述べる。ネグリさんが来れないとなった時、講演会を中止する選択肢もあった。しかし、国境を超える知の交流を国家が遮断しようをしたことに対して屈するわけにはいかない。そうした遮断は、やすやすと越えられる時代であることを示そうということになった、と。
つづいて、ネグリ氏の講演原稿が、彼の映像つきで代読された。短くコンパクトにまとめた為か原稿の中身が抽象的すぎるきらいはあったが、映像がメインということで了解というところか。
代読映像を受けて、姜さんと上野千鶴子(同上・人文社会系研究科 教授)さんが報告。
姜さんは、ネグリさんが何か知らないけれども世界は変えられるというメッセージを発している、そこがいいとの感想などをのべる。上野さんは、左翼が連合赤軍事件いこう左翼が言うべき言葉を失ってきた中で、ネグリさんが社会変革の理想を語る言語を与えた、権力は私たちが元気になることを恐れていると指摘。また、マルチチュードに武器を、というネグリさんの主張は男権主義になるのではないか、と疑問も提示。
休憩をはさんで、姜さん、上野さん、石田英敬(同上・情報学環・学際情報学府 教授)さん、鵜飼哲(一橋大学大学院言語社会研究科 教授)のディスカッション。そのなかで、「マルチチュード」というカタカナ語について、人々と広く共有する見地からすると妥当ではないのでは、との議論がひとしきりあった。
ディスカッションの途中で、ネグリさんとの電話交流が実現した。私が関心を持った点は、「マルチチュード」の解説である。
彼は、マルチチュードを制度に先立って共にある原初的存在としているようである。マルチチュードは、その所有権を奪い取る形で資本主義というものは作られてきた、権力が画一性を押しつけることに抵抗する、一緒に生き一緒に創っていく存在、等々であると。いささか迷路にはまっている感はあるが、革命主体の変容の理論的把握に関する苦心には共感できるものがある。
最後に姜尚中さんが、これだけの人が集まったということで、世の中にある程度の問題提起ができたと思います、ネグリさんの来日を実現していきたい、とまとめた。そして木幡和枝(東京芸術大学美術学部先端芸術表現科 教授)さんが、東京芸大でのイベントにつなげる提起をおこなって集会を終えた。
洞爺湖サミット・シフトの弾圧に屈せず開催したこと、左翼思潮に若い人々の関心が広がり始めていることなどにおいて、時代の空気の変化を感じさせる集まりであった。(東京M通信員)