08春闘
 「非正規春闘」に勝利し、階級的統一の前進を
   新自由主義打破の転換点へ

 今年の春闘は、日雇い派遣など非正規労働者の待遇改善がクローズアップされる中、非正規労働者、働く貧困層(ワーキングプア)の組織と運動をどこまで広げられるのか、これが第一に問われる春闘となっている。非正規労働者との連携なくして労働者分断支配を打ち破ることはできず、したがって正規労働者の賃金・労働条件の改善も前進しない。今春闘のこの核心的課題に勝利し、このかんの規制緩和政策、資本・雇用での新自由主義路線そのものを打破する転換点としていくこと、そして正規・非正規などでの分断支配を打破し日本労働者階級の階級的統一を前進させていくこと、これが問われているのである。
 昨年末に出された日本経団連の経営労働政策委員会報告は、賃上げを容認する方向を打ち出した。昨年に続き総資本的立場から、「個人消費の鈍化が懸念される」、「安定成長を確保するには、企業と家計を両輪とした内需主導の経済構造を」などと賃上げに積極的な姿勢を示したのである。もちろん、横並びの賃上げは否定しているのであって、あくまでも業績好調な企業に限ってではあるが、昨年の報告以上に賃上げ積極姿勢であった。しかし、今年に入って、米国のサブプライムローン問題による米国経済の減速、世界的な金融不安の影響により、資本家側は一転して賃上げムードを打ち消す状況になっている。
「格差是正」が労働界の大きなテーマである。日本で働く労働者の三分の一をゆうに超えた非正規の組織化を、労働界は重視せざるをえなくなった。またワーキングプアの増大の原因が、労働規制緩和、非正規雇用の増大にあることも社会的常識となった。
これに対し、新自由主義「改革」の親玉といえる小泉元首相は、「所得格差は以前からあった」と開き直った。確かに、日本経済の二重構造と言われたように大企業と中小企業との格差はあったし、労働者の賃金・労働条件格差はあった。しかし、高度成長期には、大企業も中小企業も右肩あがりで成長してきた。このかんの規制緩和は、「勝ち組」「負け組」をはっきり作ったように、これまでとは明らかに状況は違う。格差社会が続いているだけでなく、格差拡大社会となっている。トヨタに代表される多国籍企業化した大企業は大もうけをし、中小企業はコスト切り下げのあおりを受けて衰退していった。景気が回復したといっても儲かっているのは一部企業であり、労働者は、長時間労働にあえぐ正社員と、雇用が不安定で低賃金の非正規労働者、という対称的状況を強いられている。格差が二極分化し、貧困が増大・固定化してきたことが問題である。
一九九〇年以降、「社会主義」諸国の崩壊、市場経済のグローバル化が進展しはじめた時期、日本経済はバブルに浮かれていた。そしてバブルが崩壊するとリストラの嵐が吹き荒れ、中小企業いじめ、労働者たたきが始まったのである。規制緩和政策によって、働いても生活がままならないワーキングプアが出現・増大した。近年その中から、格差の拡大、貧困の増大に対する「生きさせろ」と叫ぶ反撃が始まっている。バブル崩壊後に就業年齢を迎えた若い世代に、新しい労働運動が生まれてきた。既成の労働組合でも昨年、連合は非正規センター、全労連も非正規労働センターを設置し、非正規対策に力を入れてきた。
一方、原油の高騰などにより諸物価の上昇が始まった。消費者物価はすでに0・8%の上昇であるが、このかんの灯油、ガソリンをはじめ小麦原料の食料品などにひろがり、今後も鉄鋼、電機、電気料金の値上げが予定されている。デフレからインフレ基調に転化したわけだが、景気の先行きが見えない中での物価上昇である。労働者にとっては、これ以上の生活の切り下げはできないところでの物価上昇である。賃金・労働条件の引き上げを勝ち取らない限り生活できないギリギリのところに追いやられている。もはや、たたかう以外にはないのである。バブル崩壊以降、とくに賃金闘争では労働者は萎縮し、負け癖がついてしまっている。サブプライムローン問題で自粛してしまっては、今まで以上の生活苦を自ら選択することになる。
この春闘で求められることは、ギリギリの生活から声を上げ、たたかい始めたワーキングプアと連帯し、非正規労働者、中小企業労働者のたたかう陣形をつくりあげ、規制緩和政策を打ち破るたたかいを組織していくことである。
たたかいの課題としては、第一に賃金の引き上げである。物価上昇を超える賃金引上げは最低でも獲得しなければならない。また、賃金の底上げが必要である。地域最低賃金の引き上げは重要な課題である。公契約における公正賃金、リビングウエィジの観点などから地域共闘をつくりあげる必要がある。そして地域最賃のための具体的闘いの上に、企業の支払い能力論を打破した全国一律最低賃金制の確立をめざすべきである。
また産業別、業種別にも最低賃金制を確立していくことを追求していかなければならない。そのためにも、異なる雇用形態で働いていても同一企業、同一事業所では最低の賃金保障がある企業内最賃の確立が必要である。今春闘の団体交渉で、雇用形態を超えた企業内最賃の協定をかちとれ。同じ職場で働く時給非正規の仲間とともに、(連合要求25円を上回る)大幅時給アップをかちとれ。
第二に、労働時間の短縮である。現在のたたかいは、残業代を払わせるたたかい、労働基準法を守らせるたたかいが主力であるが、長時間労働規制の観点からの割増賃金の引き上げ、休息時間確保が課題である。
第三に、日雇い派遣など使用者の言いなりに働かざるをえない不安定雇用の元凶となっている労働者派遣法の改正である。派遣の原則自由化を許してしまった一九九九年改定の以前に戻し、派遣業務のポジティブリスト化(対象業務の臨時的なものへの限定)を図ること、これらが改正運動をすすめている側の大筋合意である。しかし政府・厚生労働省は今国会への改正案提出を拒否し、行政指導でお茶を濁そうとしている。また労働側、野党側からも、日雇い派遣の是正措置で終わらせようとする動きも出ている。派遣労働規制のたたかいは、個人請負労働者などの労働者性を確保すること、労働法制での労働者であることを認めさせていくたたかいと平行していかないと、派遣と請負の狭間の中で労働者の権利が守れない状況が続く恐れがある。
第四に、労働者の生活と社会保障制度の充実を求めるたたかいである。生活保護の削減ではなく充実を、母子家庭への援助、住宅の保障をかちとれ。ワーキングプアと貧困の競争をさせる生活保護の基準引き下げ策動を阻止しよう。そして非正規労働者であっても雇用、医療、年金が確保できる社会保障制度をかちとろう。これは、いままで企業社会への正規労働者の従属によって、また世帯単位で制度化されていた労働者の生活保障の仕組みを、社会的に個々人が保障される仕組みに変えていくいく闘いでもある。こうした闘いが規制緩和「改革」対し、それへの保守的反発でなく、オルタナティブな展望を持って打ち破っていくことになる。
サブプライム危機、米国発の世界恐慌の危機は、米国主導の規制緩和政策・新自由主義路線が破綻しつつあるという時代の変化を予兆させるものである。この時代の転換を、市場原理にもとづく競争による更なる規制緩和で乗り切ろうとするのか、労働者の生活と権利を守り規制緩和政策を転換させていくのか、〇八春闘は岐路に立っている。
非正規、正規の労働者の総団結で、〇八春闘を闘い抜こう。個人加入の、企業から独立した新しい労働組合運動を日本労働運動の主流におしあげよう。労働者の階級的統一を強化し、それを中軸にすべての人民大衆と共に広範な統一戦線を形成して闘おう。