支援法見直し
  7月基本方針改定を求め2・6〜7行動
    誰もが野宿を解消できる基本方針を
 
 昨年発表された「もう一つの全国調査」で明らかにされたホームレス自立支援の現状と全国の支援活動が果たしてきた役割を確認し、結成された全国支援ネットワークによって、「ホームレス自立支援法」見直し年度に当たっての行動として二月六日〜七日の行動が取り組まれた。

  2・6全国ホームレス支援シンポ&ラウンドテーブル

二月六日、「ホームレス自立支援から提起する新しいセイフティネットの構築」と題して、大阪就労福祉居住問題調査研究会・全国ホームレス支援ネットワークの共催で、全国から90名が参加して、シンポジウムとラウンドテーブルが行なわれた。正午より永田町の憲政会館でシンポジウムが、夕食をはさんで、浜松町海員会館に会場を移してラウンドテーブルが夜十時過ぎまで熱心な討論が行なわれた。
シンポジウムの第1部は、正午から二時までで、ホームレス支援の課題を多方面から学問的に分析しようとするもので、鈴木亘さん(東京学芸大)が「ホームレス支援と経済学」を、岡崎仁史さん(広島国際大)が「ホームレス支援と社会福祉学」について、更に稲月正さん(北九州市立大学)が「ホームレス支援と社会学」として問題提起を行なった。
鈴木さんは、ホームレス対策費は過小で一桁少ない、地域偏差がおおきい、住宅支援策が必要、就労自立の現在方式の非効率の見直し、自立後のアフターケアーが必要との意見を述べた。
岡崎さんは支援活動からの研究から「相談援助」が基本であり十分な意思確認がないと再路上の危険もあることを強調し、更に現在の支援活動から次に必要とされる当事者のニーズにこたえる社会資源の開発が、例えば住む所の開拓、仕事の開拓、食事、相談援助に関して各自治体の地域福祉計画の中で確立されなければならないとした。
稲月さんは北九州市での取り組みの分析から、野宿に至った原因の失業などの経済的問題と社会関係の崩壊があり、その回復は重要な要素であり、北九州でのNPOと行政の協働による自立支援は社会関係と連帯感情の回復に一定成果を得てきている。しかしNPOや地域の持つ社会関係資源を安易に動員しようとする行政の姿勢には常に警戒が必要なこと。本来「自助や共助では対応できない」公的領域から行政が撤退してしまえば、後に取り残されるのは貧困であり、棄民化で、行政の本来の業務を押し付ける責任転嫁である、共助が強調され公助が撤退すれば、「強いられた支え合いネット」と「貧困ビジネス」によってすりかえられる危険がある、NPOは協働事業とともに独自事業を継続し、対抗的補佐性を確保し自立支援施策の充実に取り組んでいく必要性を強調した。
第2部は、「(半)公的セクターから提起するホームレス自立支援の課題と展望」と題されて行なわれた。奥村健さん(大阪の更生施設大淀寮、自立支援センターおおよど、施設長)への、「保護施設・ホームレス支援センターからの提起するトータルな社会保障の再構築」とのビデオインタビューが上映され、更に織田隆之さん(大阪の救護施設今池平和寮)が「救護施設を核とした地域生活のトータルサポート」と題して各施設の果たしている役割について話された。各施設とも就労自立の現状での困難性と、若年層も含んだ生活困難層も抱え込む現状の困難性について話があり、各施設の果たしている役割が浮き彫りにされた。
 第3部は、「各地報告からホームレス支援の地域差の現状認識の共有、そして課題を克服するには」と題され、まず水内俊雄さん(大阪市立大学)が「全国のホームレス支援の地域差の現状―虹連調査とその後の継続調査を通じて」と題して報告があり、更に中山徹さん(大阪府立大学)が大阪府下・阪神間の状況を、中嶋陽子さん(大阪市立大学)が京都を、木下武徳さん(北星学園大学)・南部葵さん(労福会)等が札幌・北海道を、加美嘉史さん(大阪体育大学)が大津、滋賀の現状を報告した。
厚労省調査では野宿生活者支援の実態についての各地方自治体からの報告が、信頼性に問題があり不明の部分が多いが、虹連調査が全国62支援団体への聞き取りから行なわれていることから、NPOとの連携が調査の中身を十分補完するものとなったこと、脱野宿の支援の定形が浮き彫りにされたことが明らかにされた。各地の報告はそれを地域ごと具体的に報告するものであった。現状では、脱野宿は85%ほどが生活保護を手段として行われている。地域差では、野宿生活者が25名以下のところでは関心すらもたれていないような状況、25名以上より何らかの施策と支援組織が出来始め、50名を超えると8割弱にサービスが始り100名を超えるラインが何らかの施策が存在するラインとして存在する。生活保護の開始場所は医療機関が約4割、次に無料低額宿泊所の24%、15%前後が自立センター等となっており、いまだ医療機関を通さずには適用できない厳しさが浮き彫りとなった。これらの活用のありようは地域差や自治体間の差が大きく、その中でも中間施設の存在の有無やNPO自身の宿泊施設の所有が脱野宿のキーになっている。(この一連の報告は、今後の報告論議に当たり把握しておかなければならない重要な内容だが、報告は別途の機会に行ないたい)。
第4部は、会場を海員会館に移して十時過ぎまで行なわれた。ラウンドテーブルとして、「地方都市圏のホームレス支援から問題提起」と「大都市圏のホームレス支援から問題提起・仕組みづくり」と2部制になり、前半の研究者からの全国の支援報告が支援当該組織から行なわれたが、ここでは報告者と組織名の報告にとどめる。
徳島まねきNECOの会(森本)、沖縄プロミスキーパーズ(山内)、ホームレス支援ネットにいがた(寺尾)、北九州ホームレス支援機構(佐藤、佐野)、熊本ホームレス自立支援の会(谷川)、岡山野宿生活者を支える会、ささしま共生会(名古屋)、湘南ライフサポートきずな(神奈川)、SSS(千葉)、ホームレス自立支援市川ガンバの会(市川)。全国ネットに参加する北海道から沖縄までの支援組織の奮闘と困難性と全国的な力で、基本方針見直しに向けた期待が述べられた。
 
  2・7院内集会と厚労・国交省交渉

翌七日は、「2・7 誰もが野宿を解消できる基本方針を!」と題する院内集会が、ホームレス支援全国ネットワークの主催で行なわれた。午後1時半より参議院議員会館会議室に新宿の当事者40名を中心に100名の会場いっぱいの参加者で行なわれた。支援ネットでは、既に以下の9項目を主要な骨子とする「提言書」を提出しており、この提言実現に向け、「議員立法」であるホームレス自立支援法の性格から全会派・無所属委員まで含めた集会となった。「提言」の9項目は以下の通りである。
1 「ホームレス」の定義を広義にとり、不安定居住層への支援も盛り込むこと
2 多様な「自立支援」を認めること
3 「就労自立」概念の見直しと、社会的就労による「総合的就労支援策」の確立
4 民間団体と連携した脱野宿後のサポート体制の強化
5 野宿状態から直接居所確保をするための支援の実施
6 少数点在地区の施策の充実
7 医療単給など、医療を確保する特別策の実施
8 野宿状態からの生活保護申請の徹底
9 見直し検討会への当ネットワークの参加
集会は、まず「基調提案」を、ホームレス支援全国ネットワーク代表世話人の奥田知志さんが行なった。奥田さんは、就労自立を中心とする自立支援が一定成果をみせながらも、高齢化長期化が進んでおり、更に少くない障害を持った人や若年層も増えてきており、全ての路上生活者を対象にし、少数点在や、地方で野宿する方にもカバーできる新たな「基本方針」が生まれるよう頑張って行きたいと述べた。続いて、意見表明として衆議院・参議員国会議員が発言に立った。公明党、民主党、自民党、社民党等と川田龍平議員らが参加し、各政党内などでの論議の報告と決意が語られた。更に日本ソーシャルインクルーンジョン推進会議、ホームレス法的支援者交流会、三多摩ホームレス支援機構の方から挨拶があった。
続いて、二日間の行動に参加した前述の諸団体のほか、新宿連絡会の当事者および笠井さんと釜ヶ崎の山田さんの発言があり、七月基本方針改訂に向けて頑張るとの発言が相次いだ。尚この集会には、解放同盟中央本部、連合総合政策局、日本労働者協同組合連合会が賛同した。
この院内集会に、先立ち午前十時より厚労省にて、対政府交渉が25名の代表団で行なわれた。出席者は厚労省社会援護局地域福祉課、保護課、職業安定局就労支援室、国土交通省住宅局約10名強が参加した。交渉は1時間半とのことで、提言9項目全てに触れることは出来ないので事前に、生保活用(半就労・半福祉)、公的住宅の活用、地方少数地域での実施、野宿にいたる可能性のある人も含めた対策等に絞り交渉に臨んだ。結果は返事が合ったものがあるわけではなかったが、引き続き交渉を確認し終了した。
二日にわたる行動はさすがに気力の要るものだった。全国ネートワークは更に前進し基本方針を実情にあったものに改変するよう求めていくこととなる。(大阪Si通信員)


教研全体会中止
  問われているのは日教組中央の闘争放棄
    日教組解体攻撃の一環

 日本教職員組合(森越康雄委員長)が、二月二日に予定されていた日教組全国教育研究集会の全体会の中止を決定したことは、全国の日教組の仲間の大きな怒りを呼び起こしている。
 この日教組中央の決定は、昨年五月に会場契約してあったにもかかわらず、グランドプリンスホテル新高輪が右翼団体の街宣活動によって住民や被る迷惑や宿泊客の安全をたてに一方的に会場使用を拒否したこと、これを理由にしての決定であった。その中止は、一九五一年に教研集会が始まって以来始めての歴史的な出来事となった。
 全国教研は、自主編成運動にもとづく教育実践や職場・地域での運動を報告し交流して、子どもの立場に立った教育実践を育む場として、五十七回にわたって実施されてきた。教育基本法が改悪され、その具体化のために教育関連三法が成立したもとでは、ますますその重要性が高まっていた。
 そして教研集会前段での全体会は、今日的な教育課題を提案し、教育研究の目標を確認する場であり、実り多い教研集会にするものとして設定されてきた。したがって全体会の開催が困難になることは、教育研究の推進に重大な問題を引き起こすことになる。そればかりではない。右翼の妨害によって全体会が困難になることは、教研集会の開催そのものが困難になることを意味している。それは日教組運動の弱体化から解体へ到る道である。
 森喜朗元首相は「日教組、自治労を壊滅できるかどうかが(国政選挙の)争点だ」と公言し、日本経団連は「教職員の組合は待遇改善に取り組むという本来のあり方に徹すべきだ」と述べている。これらは、教育労働者が子どもを大切にした実践を行なうことによって保護者や教え子と結びつき、「日の丸・君が代」強制など国家主義・軍国主義の教育に対決することを恐れた発言である。
 今回の事件で、右翼の妨害活動を理由にすれば、分科会さえも阻止できることが明らかになった。政府・自民党、そして右翼勢力は、一企業の責任で会場使用を拒否させて日教組活動を妨害し、全国教研の開催を困難にして日教組運動の弱体化・解体をねらっている。
 このことは、言論・集会の自由を保障する憲法第二十一条がないがしろにされたこととあわせて、重大な問題である。プリンスホテルの対応は、言論・集会の自由の権利を侵害し、日教組教研活動を妨害する許すことのできない挑戦である。右翼の妨害活動の程度も、不当かつ違法であることは言うもでもない。今回の件では、右翼や、ホテル側の対応はひろく批判されている。しかし、それだけではすまない問題が日教組自身にある。
 日教組中央は二月一日の全国教文部長会議で、北海道教祖が抗議集会の開催などを提案したにもかかわらず、これを無視した。そして、「(分科会では)運動方針をめぐる討議はさせない。質問には答えない」との申し合わせを行なっている。
 つまり日教組中央は、ホテル側への裁判闘争、賠償請求でお茶を濁し逃亡をきめこんでいる。そのことは、右派県教祖などが提訴の取り組みにも消極的であることから容易に想像できることである。政府・資本・右派勢力の日教組解体攻撃、これと闘うという構えが欠落している。
 また日教組中央は、東京教祖提案の「日の丸・君が代」闘争をレポートした(現在、解雇の危険にさらされている根津さんのを含む)三本の報告を、無理やり取り下げさせている。このことは、東京都の「日の丸・君が代」大量処分の張本人・中村正彦都教育長を全体会に呼んでいたこととあわせて、組合員の徹底した怒りの的となっている。日教組中央は、その抗議の渦から逃れるためにも闘争を放棄し逃亡したのである。そのことによって、日教組運動の弱体化・解体に自ら手を貸しているのである。
 全国の日教組の仲間は森越指導部の裏切りを許さず、怒りを闘いに変え、全国教研の完全な実施を追求していこう。二月二日、全国から数千人の教育労働者が東京に結集していたのである。指導部はなぜ、その力を、全体会中止の怒りを、その場で闘いの行動に転化しなかったのか。そのことを我われは決して許さない。(日教組U)


2・9空港はいらない静岡県民の会総会
  来年開港の絶望的将来みすえ
       神戸では、開港2周年抗議行動が

二月九日、静岡市の産業経済会館で「空港はいらない静岡県民の会」の第13回総会が開かれ、県下各地や東京・大阪からの仲間の参加もあり、緊迫した昨年を上回る80名が参加して開催された。
 総会の冒頭で連帯あいさつに立った、静岡県東部・沼津市の「ふれっしゅ沼津」「ストップ・ザ・鉄道高架・新生沼津の会」の加藤さんが、沼津駅周辺の鉄道高架事業とそれに伴う貨物駅の移転事業に、静岡空港建設事業に匹敵する1800億円が投入されようとしていることを訴えた。貨物駅移転では住民の多数が反対を表明しているなかで、地権者の弱味(高齢化、後継者不足、5千万円まで無税)につけ込んだ買収攻勢の結果でも、取得率は64%であり、2007年度中の買収完了、08年度事業開始の事業計画を実質2年間延長する計画変更に追い込まれている。もはや「強制収用」の道しか残されていない。国交省の強制収用指針は「取得率80%を超えたら」であり、それへ向けてがむしゃらな買収攻勢が予想されることなどが報告され、ムダな公共事業を止めるために共にがんばろうと決意が述べられた。
 「八重山・白保の海を守る会」の生島さんは、昨年三月、沖縄県が新石垣空港の建設に向け、任意の買収交渉開始後わずか十ヶ月で、強制収用手続きを開始、七月末には事業認定申請を強行し、十一月から本格的な建設工事に入っており、この工事によって絶滅危惧種コウモリ類三種が激減、専門家らで組織された学術調査委員会の工事中断・再調査要請をも無視して工事が強行されていることを報告した。
 「関西三里塚闘争に連帯する会」の渡邉は、昨年の反空港全国連関西大会への静岡からの参加のお礼を述べ、「泉州沖に空港をつくらせない住民連絡会」のメッセージ「空港の採算性、環境、安全、軍事利用などの是非を問う」を代読紹介した。
 昨年の第12回総会から一年間の闘いの総括が提案された。「県民の会」会計、訴訟関係会計報告があり、監査報告があった。次に08年の活動方針について、桜井事務局長が、09年3月開港へなりふり構わず暴走する石川県政に抗して、開港される静岡空港の絶望的将来を見据えて、具体的な闘いとして@確定的な大幅赤字、また発表された空港条例などについて国・県の行政・議会の責任を問う闘い、A世論喚起の為のたたかい、空港開港キャンペーン一色の現状に対する反撃の大宣伝活動、住民監査請求と住民訴訟などをまじえた闘いの再構築、B跡地利用を含む廃港へ向けたオルタナティブな提起、C西側制限表面部を巡る継続する闘い、D土地収用にかかっている沼津鉄道高架、新石垣島空港反対等の運動との連携などを提起した。活発な質疑討論が行なわれ、闘いの再構築とも密接不可分の財政確立・強化のための方策、また空港利用に就学旅行を利用させようとしている教育への介入・押し付けに反対しようなど活発な議論がされた。
更に西側部分の地権者の大井さんが、県に対して一歩も引かず闘い続ける決意を述べた。
 また総会では、空港闘争などの県下のさまざまな運動のセンターの役割を果たしてきた安倍川製紙労働組合とその組合事務所が、王子製紙資本による静岡事業所閉鎖攻撃に直面していることをはね返すために、支援共闘会議に加わることが特別決議として採択された。
なお各地の反空港闘争では、神戸空港は去る二月十七日に、強行開港2周年を向かえた。十一日に110名を集め反対集会が、十五日には神戸市役所前で90名で抗議行動が行なわれた。四月に入ると十三日が東峰共同出荷場での東峰現地集会が、二十日には大阪岡田浦にて現地集会が予定されている。(東峰団結小屋維持会 渡邉充春)