新テロ特措法の「再議決」強行成立を弾劾し
  随米・利権政権打倒の総結集を

 福田連立政権と自公与党は一月十一日、「新テロ特措法案」を何としても成立させるために、野党多数の参議院でそれが否決された直後、衆院本会議で「再議決」するという暴挙を強行した。これによって、昨年十一月一日から中断していた米英多国籍軍への給油活動を再開することが法的に可能となり、一月二十四日・二十五日には海上自衛隊の護衛艦・補給艦が、それぞれ横須賀・佐世保から中東へ出撃して行ってしまった。
 参院否決法案では五十七年ぶりの「再議決」であるが、重要外交問題での「再議決」強行は初めての歴史的暴挙である。福田政権はその調整政治の看板とは裏腹に、アメリカ帝国主義との同盟をすべてに優先させる強硬な路線を露骨に示したのである。
 が、この対米一辺倒路線が、世界情勢の現況と食い違ってきていることも明らかである。新年最初の情勢の特徴の第一は、サブプライムローン危機を震源とする一月二十二日の世界同時株暴落に示された、アメリカ一極支配の深刻な動揺である。かっての冷戦「勝利」でのドル人気から一転し、ドル離れ・ドル下落はもはや趨勢となっている。アメリカへの資金流入と還流という国際金融構造が危なくなっている。このままでは、ばく大なドル資産を官民で持つ日本の破滅が近づきつつある。
またドル安・原油高は、日本の物価上昇を引き起こしている。国際投機資金が株式市場から商品先物市場などに転じたことも、物価上昇を押し上げている。にもかかわらず賃金は下がったまま。年収二百万円以下でも何とか生存していけたのは、これまで消費者物価もデフレ傾向だったからである。このままでは、日本のワーキングプアの破滅が近づきつつある。
このように、アメリカ一極支配の経済面にも現われた動揺は、日本に極めて深刻な結果をもたらすものである。これは、対米関係と経済財政対策での、日本支配層の内部争いを激化させることになるだろう。そして、新貧困層を始めとする労働者人民の闘いの発展が必然的であり、圧倒的に必要であることを示すものである。
 こうした内外環境に規定された情勢の特徴の第二は、早期の解散・総選挙を強いられる事態は当面乗り切ったものの、自公政権の危機がいぜんとして続いていることである。
昨秋安倍が無責任に政権を放り捨てた後は、解散総選挙は不可避とも見えた。当時、朝鮮核問題での国際合意の成立、9・29沖縄県民大会、テロ特措法の失効という情勢の転換を、現実の政治の転換としていく好機が訪れていた。しかし小沢・福田党首会談など最大野党・民主党のちぐはぐさ、また政権打倒の大衆運動の低調さによって、福田「つなぎ内閣」の延命が続く結果となっている。
しかし、いぜん自公政権は綱渡りであり、一月十八日からの通常国会の主要争点となっている暫定税率・道路財源問題も内閣不信任・解散総選挙に直結する大問題である。最近まで民主党は「ガソリン値下げ隊」などと大衆迎合的にはしゃいでいたが、問われている問題の本質は、ガソリンの暫定税率分を値下げできるかできないかという点にあるのではない。問われているのは、ガソリン税を中心とする5〜6兆円もの税収を道路特定財源としていることに代表される自民党の利権政治を打倒できるかどうかである。福田政権の税制改定法案にパッケージされている暫定税率十年延長など、まさに言語同断である。ガソリン問題そのものについては、暫定税率は一旦廃止し本率を一般財源化したうえで、車社会を抑制する環境税の導入などを検討すべきだ。税制改定案の今年度内成立を阻止し、福田「道路利権」内閣を打倒せよ。(関連記事・二面)
 情勢の特徴の第三は、自民党と民主党という二大ブルジョア政治勢力によって「大連立」の布石が敷かれつつあることだ。
民主党の新テロ特措法案の対案が、臨時国会では与党によってわざと廃案とされず、通常国会に継続審議となっている。(他方、民主党提出の、イラクから航空自衛隊を撤収させるイラク特措法廃止案は廃案とされた)。民主党の対案は、自民党に利用価値があり、今後の派兵恒久法での「大連立」の布石となるからだ。民主党の対案は、国連決議を条件とすれば武力行使を伴う自衛隊海外派兵を認めること、その武器使用基準が任務妨害排除にまで拡大されていること(現行の派兵では、自己と自己の管理下にある者の自衛)などを特徴としており、自民党が自衛隊派兵でまさに突破したい内容を含んでいる。
福田首相は十八日の施政方針演説で、「迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくため、いわゆる『一般法』の検討を進めます」と明言した。一年効力の新テロ特措法は法改定で延長もできるが、「ねじれ国会」ではこのかんの繰り返しになりかねない。今秋臨時国会では、この「一般法」=派兵恒久法が焦点化するだろう。
一方、憲法について福田は、九月の所信表明演説では一言も語らなかったが今回は、国民投票法の成立をふまえ「改正するとすればどのような内容かなど、幅広い合意を求めて真摯な議論を」とあいまいながらも述べている。9条改憲を豪語した安倍政権時から後退したことは確かである。しかし国会の憲法審査会を始動させんとする策動は強まっており、今後、憲法改定論議を派兵恒久法の論議に重ね合わせながら活発化させていく策略が予想される。
これまで自公連立政権は、憲法改悪も自衛隊派兵も、米ブッシュ政権との異常な同盟を「国際平和への協力」と強弁して進めてきた。しかし、そのアメリカの一極支配が深刻に動揺し、米国内では現在の大統領選の中で、少なくとも国民世論的にはブッシュ流からの大きな転換を求める声が圧倒的となっている。このときに日本政府は、相も変わらぬブッシュ追随と利権政治を固守せんとしている。何と言うことか。
我われ左翼の共同戦線のみならず、すべての良識ある人々の怒りを結集して、一刻も早く自公政権を終わらせなければならない。