アメリカ一極支配の動揺深化と、日本政治の大流動

    「第三極」政治勢力をかちとれ


(1)

超大国アメリカは、石油と中東支配のためにイラクの国と社会を壊したが、いまや侵略戦争の敗勢を立て直すことも、イラクから抜け出すこともできず、苦悩を深めている。それは、社会の健全な再生産を破壊しながらしか自己増殖運動を維持できなくなっている今日の資本の運命を象徴する姿であるだろう。
資本主義が、相対的退歩を伴いながらも社会の発展を促進した時代は、まだ部分的に中国などにおいてみられるが、世界史的には過去ものとなった。失業・貧困の増大と社会の二極化、大都市の肥大化と地方の荒廃、自然環境の破壊等々が前面化し、社会の崩壊が始まっている。支配階級は、その階級支配においてますます監視と治安弾圧の手段に頼らざるをいなくなっている。アメリカの低所得者向け(サブプライム)住宅ローンの貸し倒れ増大に端を発する金融不安が拡大し実体経済に打撃を及ぼすならば、この過程は急速に進行するに違いない。この矛盾の拡大は、イラクにおける敗勢と連動して、超大国アメリカをはじめ諸国の支配階級を足元から脅かしている。
二〇〇八年は、苦悩する超大国アメリカが、大統領選挙を媒介にあからさまな弱肉強食路線からの一定の軌道修正を余儀なくされ、諸国が追随する年となるだろう。アメリカの一極支配の動揺が深まり、東アジアを含め「多極化」の波が広がるだろう。

(2)

日本においては昨年、小泉・安倍政権のアメリカ一辺倒・市場原理主義路線がもたらした民衆の生活破綻が、政治的な中心問題に浮上した。夏の参議院選において、「国民の生活が第一」を掲げた民主党が圧勝、衆院の与党多数にたいし参院は野党多数のねじれ構造が現出。安倍政権が崩壊し、福田政権が誕生した。
福田政権は、「自立と共生」を主張し、総選挙を意識し生産者サイドから消費者サイドへの政策転換を号令。東アジアとの「共鳴」関係を模索。たしかにそれは言行一致であるならば、小さくない転換である。しかしこの政権は、日米軍事一体化に手を触れるができないことに端的なように、また朝鮮民主主義人民共和国敵視を転換できないことに端的なように、小泉・安倍路線を内部に抱えている政権である。民衆は、大連立に反対し、かかる限界を超えた変化への意志を示した。
民衆の意思は、福田・自公連立政権の打倒である。アメリカと一定距離を取る覚悟を持ち、民衆の方に目を向ける勢力が構成する政権を樹立することにある。政治の流れを転換し切らねばならない。

(3)

日本の政治構造の大流動が始まる。これまでの政治構造を支えていた社会的な土台が、ほぼ解体しているからだ。革命的左翼諸派もその埒外にある訳ではない。大流動は、これからの一時代の政治攻防を担う三つの政治的極へと収れんするに違いない。
第一極は、アメリカ一辺倒・新自由主義(市場原理主義)の勢力が核となるブロックである。この勢力は、グローバルに利益を漁る巨大投機資本と多国籍企業の利益を代表し、資本の拡大再生産運動を維持するために社会を破壊していく弱肉強食路線を特徴としている。
第二極は、アメリカ一辺倒・新自由主義のあからさまな推進が、東アジアでの孤立と階級支配の破綻を招くことに危惧をもつ勢力が核となるブロックである。この勢力は、支配階級の広範な層の利益を代表し、支配秩序を維持する見地から民衆の政治的包摂を重視する路線をかかげ、政治的動揺を特徴としている。
第三極は、労働者・民衆の総団結としてのブロックである。いくつかの政党・政派を含む一大ネットワークとなるだろう。
現在の政治の流れは、「国民の生活が第一」の第二極政権が樹立される傾向にある。われわれは、この政権交代に対処し、民衆の諸運動が発展する社会的諸条件をたたかいとることに全力をあげなければならない。民衆の利害を代表する第三極は、非正規の労働運動、社会再建の民衆運動など新たな基盤の力強い発展をテコに、第二極政権の新自由主義(市場原理主義)への動揺を突いて浮上するに違いない。
政治の大流動・大再編に備えよう。