労働者派遣法改正から労働市場支配へ
  派遣法「廃止」に向けて

 労働者派遣法の見直しが昨年来、厚生労働省の労働政策審議会・職業安定分科会労働力需給制度部会で審議されている。派遣法の見直しが、年初からの大きな焦点となっている。
 労働者派遣法は一九八五年に多くの反対の声のなか制定され、翌年施行された。当初は臨時的・一時的で例外的なものに限定とされていたが、法改悪によって九九年に原則自由化、〇四年に製造業にも解禁され、この派遣という間接雇用が社会全体に広がることとなった。現在派遣で働いている仲間は三百万人近くで、その内二百万人が派遣先が決まったときにしか働けない登録型と推定されている。
 このかん使用者側は、派遣受入期間制限の撤廃、事前面接の解禁、派遣適用業務の全面解禁などを主張し、派遣法のさらなる改悪をめざしていた。しかし、偽装請負、日雇派遣などの問題が社会問題になり、また格差拡大への批判などにより参議院選挙で与党が大敗し、労働者を使用するが使用者としての責任を負わないという本質をもつ派遣労働が、格差社会、ワーキングプアを生み出した大きな要因となっているという批判が強まる中で、使用者側の主張も後退していった。
 労働側は労政審の場をはじめ、次のような派遣法見直しを要求している。派遣労働による常用労働者代替の防止を明確にし、派遣を本来の臨時的・一時的業務に限定するために、登録型派遣を原則禁止し(専門26業務に限定)、日雇派遣を禁止すること、また事前面接解禁反対、派遣元事業主の資格要件の厳格化、マージン率(派遣元によるピンハネ)の規制、派遣先事業主の責任強化、派遣労働者の差別禁止と均等待遇の確保、などである。
 しかし現在、厚生労働省は、労政審でも労使の意見の隔たりは大きく、「ねじれ国会」では派遣法改正案の成立は困難だなどと判断して、〇八年の通常国会への改正案提出を断念するとしている。そして厚労省は、日雇派遣の規制強化、派遣料金の情報公開などについて、法改正ではなく指針を作成して指導を強化することで対処したいとしている。
 このかん、国会では、十月四日と十一月二十日の二度、派遣法改正の実現を求める院内集会が、全国ユニオンや派遣労働ネットワークなど労働団体の主催で開かれ、野党ばかりでなく、公明党も参加するほど盛会であった。労働者が望む派遣法改正が実現する可能性は高まってきた。この機運を押し進めることは極めて重要である。財界の抵抗に配慮した厚労省の小手先の対処ではなく、改正案に値するものを国会に提出させなければならない。
 しかし、当面の派遣法改正要求(対象業務を原則自由化した九九年の以前に戻すこと等)は重要であるが、そこに留まることなく、雇用と使用は一体的なものであり、労働者を雇用する者が使用するものであることによって使用者責任が果たされることを明確にしていく必要があると考える。
 将来的には派遣法は廃止されるべき法律である。当面の派遣法改正をかちとることと併行して、日雇労働者の権利を保障する制度、個人請負を労働者としてその権利を保障していく制度を確立していかなければ、派遣法の下での登録型派遣や日雇派遣がなくなっても、働く実態は変化しなかったということになりかねない。そして、何よりも重要なことは、個人加盟の業種別労働組合、産業別労働組合を形成・強化し、労働市場を労働者が支配していくたたかいを強めることである。(K)


12・22第12回釜ヶ崎講座
   「難民化する若者たち」の運動を
            12・28〜1・6釜越冬闘争に合流

 十二月二十二日、エル大阪にて釜ヶ崎講座第12回講演の集いが開催された。
 今回は、釜ヶ崎と同じ不安定就労という中味ながら、視点を非正規若手労働者に向け、メインゲストに作家の雨宮処凛(かりん)さんを招き、生田武志さん(野宿者ネットワーク)、中村研さん(派遣ネット関西)との対談を、「生きさせろ!難民化する若者たち」と題して行なった。
 雨宮さんは、自らも長年フリーターとして働き、長時間労働により、うつ状態に追い込まれてきたと自己紹介し、財界主導でつくられた不安定就労が、多くの自殺者や病者をつくりだしていると報告した。しかし現在、食・居住・健康などのサポートを目的としたセーフティネット組織の立ち上げ(東京での「反貧困たすけ合いネットワーク」)など、若者を中心とした動きが始まっていると報告した。
 中村さんは、本来戦後は禁じられている「人夫出し」が今日、派遣法下で公然と進められているが、正規労働者の一部しか守れない労働運動ではない運動を作っていこうと訴えた。
 生田さんは、長年の野宿労働者との関わりを話す中、とりわけ学校で伝えるべきことを伝えていないこと、無知からくる襲撃、差別・偏見を取り除く重要性を訴えた。また若年労働者にも悪徳業者の攻撃がある、家賃滞納・借金地獄で不安定就労から脱出できない状態は、野宿労働者に共通すると指摘した。
 対談の共通の論点としては、各地でできるところから、法律知識も含めたサポート組織を作ること、また低賃金・劣悪な条件を告発し闘っていく意思表示と組織作りが緊要であることであった。
 集いは最後に、釜ヶ崎日雇労組の仲間から、第38回釜ヶ崎越冬闘争の決意表明と越冬カンパ要請が行なわれた。
 越冬闘争は十二月二八日から開始、その午後六時・突入集会、三十日から三日まで舞台や炊き出し、連日夜の人民パトロール・ふとん敷き等、六日まで貫徹される。(関西I通信員)