12・19韓国大統領選挙
  矛盾抱えるイ・ミョンパク次期大統領
    望まれる民衆陣営の統一

 十二月十九日に投開票が行なわれた韓国大統領選挙は、保守野党ハンナラ党のイ・ミョンパク(李明博)氏が48・7%を獲得し、次期大統領として確定した。与党大統合民主新党のチョン・ドンヨン(鄭東泳)氏は26・1%、元ハンナラ党党首で無所属のイ・フェチャン(李会昌)氏は15・1%、民主労働党のコン・ヨンギル(権永吉)氏は3・0%などの得票結果となった。
 まず、イ・ミョンパク勝利の背景について考えてみよう。彼の勝利は、現ノ・ムヒョン政権の新自由主義政策による韓国社会の格差拡大、なかでも若年層の失業、非正規化、低所得化の進行により、前回大統領選でノ・ムヒョン氏を圧倒的に支持した若年層が与党から離反し、経営者として実績のあるイ・ミョンパク氏に期待を寄せる形となったとみられる。
 ただ、このイ・ミョンパク陣営に問題が無かったわけではない。その第一が、日本の小泉・郵政民営化選挙と同様にイメージ先行であり、開発・成長による韓国社会の再建を唱えているが、新自由主義政策の根本的な転換を行なわない限り、日本同様に資本の利潤拡大、労働者民衆の更なる貧困化という事態が待っているとおもえる。
 第二には、ハンナラ党内の問題と、イ・ミョンパク陣営内の問題がある。ハンナラ党の予備選挙では、パク・クネ氏との間で死闘が行われた。その当時は党内の問題であろうと見えて分かりにくかったが、根本的にはかってのパク・チョンヒ軍事独裁政権が持った二つの顔をそれぞれが代弁したと言える。パク・クネが軍事独裁の部分、イ・ミョンパクが開発独裁の部分をそれぞれ代表し、党大会では乱闘を繰り広げ、未だに修復はなされていないと言われている。この両者の矛盾は、今後対北政策で溝は深まれども、埋める方策は見当たらない。
 それと共に、イ・ミョンパク陣営自身の問題としては、かってノ・ムヒョン当選を支えた大きな力であった386世代が、その一部を自ら変容させ、ニュー・ライトとしてイ・ミョンパク陣営に参入している。そしてこの部分は、若年低所得者層を積極的に取り囲み、四月に予定されている韓国総選挙にニュー・ライト派として打って出ることが予想されている。
このようにイ・ミョンパク次期政権は、発足前から火種を内部に、また政策上にも抱えており、難しい政権運営が予想される。
次に、今選挙での民主労働党候補の後退について考えてみよう。われわれが最も注目し期待もしていたコン・ヨンギル氏は、民主労働党が10%前後の支持を得ていたにもかかわらず、後退とも思える3・0%の得票率にとどまった。これには強い落胆を感ぜざるをえない。この事態は、十一月労働者大会の相対的に低調な結集などによっても予想はされていた。原因を求めるならば、全民衆的な結集が期待されて発足した統一戦線組織「進歩連帯」に、一番肝心な民主労総が未参加となっていることであろう。韓米FTA阻止闘争に全力を尽くし、多くの幹部が拘束を受けた進歩連帯と民主労総であったが、韓国社会変革と祖国統一をめぐる路線闘争の対立構造は根が深く、民主労総分裂の危機さえ抱えた中で大統領選に望んだ経緯があった。
韓国民衆の革命的連帯と統一のためには、この難局が克服されることを願わずにはいられない。(Ku)