汚職まみれの日米軍事一体化・基地再編は出直せ
  越年政治決戦に勝利しよう


 新テロ特別措置法案は十一月十三日、延長臨時国会の衆議院で強行採決された後、ようやく二八日から参議院での審議が始まった。福田首相と自民党は、十二月十五日の延長した会期末をさらに再延長すること、また、それによって年明け衆議院で同法案を再議決するという常軌を逸した強硬策をもくろんでいる。新テロ特措法案を何としても成立させ、米ブッシュ政権の侵略戦争への兵站支援、給油活動を再開せんとしているのである。
 このように福田連立政権は一見強気であるが、おそるべき窮地に立っている。新テロ特措法案が今国会で結局未成立に終わり政権が一気に失速するか、あるいは、再議決で法案成立を強行するや否や解散・総選挙によって国民と野党から打倒されてしまうか、ほぼ、そのどちらかしか選択肢がないという窮地である。かってなく年末から正月が政治決戦になろうとしている。
また、新テロ特措法案の参院審議入りが遅れた要因の一つでもあるが、守屋武昌・前防衛事務次官と軍需商社山田洋行・宮崎元専務による増収賄事件が明るみに出た。この軍需汚職は、今のところ長期のゴルフ接待で計四百万円という収賄容疑ではあるが、このかんの米軍基地再編合意や日米軍事一体化のための兵器調達を中心で担ってきた防衛省官僚トップによる収賄事件であり、九八年調達本部事件などよりもはるかに重大な政治事件である。
守屋は、次期航空自衛隊輸送機エンジンの随意契約を贈賄側に持っていった。これを考えると、辺野古新基地の新合意案の決定、海兵隊グアム移転計画、現在進行中のパトリオットミサイルの配備等々について、それらの軍需自身の巨額さも問題だが、その裏でどれだけ汚いカネが動いているかわからない。山田洋行やそれから分裂した日本ミライズなどは中小企業であり、三菱商事や三菱重工などの軍需産業から比べれば、その犯罪は氷山の一角であろう。このかんの重大な政府の軍事的意思決定の数々が、汚いカネによって左右されていた疑いは濃くなった。
福田政権は、新テロ特措法案と守屋の事件とは直接関係ないと居直っている。しかし、このかんの日米軍事一体化の実務責任者の犯罪によって、このかんのイラク・アフガン戦争への関与や米軍基地再編合意を始めとする政策全体と路線自体とが、まさに検証されなければならないことは明らかである。
新テロ特措法案の難航とこの軍事汚職によって、福田連立政権はすぐに倒壊しても当たり前である。与党公明党は会期再延長にびびっている。しかし、参院第一党の民主党はうまく攻めきれていない。
民主党は、守屋と、彼の証言によると宮崎元専務の宴席に同席した額賀財務相との二人を、十二月三日に同時に証人喚問しようとしたが、その三回目の守屋喚問は十一月二八日の守屋逮捕によって阻止された。検察権力が、国政調査権による追及から守屋を「保護」したというべきである。また、額賀財務相の参院喚問決議が野党のみで決められたが、これが全会一致での証人喚問の慣例を破ったとして与党やマスコミに攻撃されるや、議会主義者・日共を先頭に民主党もたちまち動揺してしまった。こうして野党の不統一をさらけ出し、額賀にも逃げられてしまった。こうして国民の(国会議員を通じた)国政調査権が侵害されているのである。
また民主党は、自らが提出していたイラク特措法「廃止法案」を何の実質審議も行なうことなく、十一月二八日に参院多数の野党でさっさと可決し、廃案となる衆院へ送ってしまった。これは参院運営での自民党との取り引きによる結果であるが、しかし「廃止法案」審議による自衛隊イラク派兵の検証こそ、新テロ特措法案との関連で最重要であった。参院第一党の面子を与党に立ててもらっただけで、新テロ特措法案の阻止にも役立っていない。民主党の自衛隊イラク完全撤退の主張は、建て前にすぎないのか。
こうした議会野党の体たらくによって、来る総選挙も楽観はできない情勢にある。当面、自民・公明連立政権に終止符を打つ「政権交代」が軽視されてはならない。ブルジョア的政権交代であっても、選挙結果のみによるものなのか、あるいはそれが労働者人民の闘いの発展を背景としているのか、それによって政権交代の意味は異なってくる。
新テロ特措法案に反対する労働者人民の闘いは、このかん低調である。給油活動再開への世論の支持はないが、新法案に広範な反発が拡がっているともいえない。旧テロ特措法の期限切れにより十一月一日からインド洋の海上自衛隊艦船が撤退せざるをえなかったことは、情勢の転換を鮮明に示した。しかし日本の労働者人民の闘いは、この情勢の転換を、政治の現実の転換に高めていくことができるまでには発展していない。
国際情勢の転換はより鮮明になりつつある。十一月二四日のオーストラリア総選挙では、野党・労働党が圧勝し、保守党政権から政権交代、これまでの対米一辺倒政治に修正が入ることとなった。このかんの米・日・豪のネオコン的太平洋同盟の一角が崩れた。
一方、福田首相は十一月十七日、新テロ特措法案の衆院通過を手土産に初訪米し、ブッシュ大統領に「不朽の自由作戦」への早期復帰を誓約した。しかし、対朝鮮政策で得点を挙げるしかない任期終盤のブッシュ政権と日本政府とのくい違いが目立っただけで、ひどく無展望・無内容な首脳会談であった。英国のブレアはすでに退陣し、ブッシュがその後を追う。
こうしてイラク、アフガンへの侵略戦争を進めてきた主要政府のすべてで、多かれ少なかれ転換が始まっている。日本が、このかんの「小泉・安倍路線」から根本的に転換しないならば、世界から孤立することはまちがいない。
新テロ特措法案を粉砕し、自公政権を打倒しよう。このかんの異常な日米同盟強化をやめさせ、日本政治の当面の大きな転換をかちとろう。