新テロ特措法案阻止の国会行動
  会期再々延長許すな

 十月一日の臨時国会開始以降、新テロ特措法案反対をかかげて、多くの団体・個人が国会行動を闘っている。9条改憲阻止の会、5・3憲法集会実行委員会、平和フォーラム、日本共産党系諸団体、国会前ヒューマンチェーンなどなどである。
 しかし国会行動はせいぜい数百名規模であり、新テロ特措法案反対が大きく盛り上がっているとは言いがたい。われわれ運動側が、海上自衛隊の撤退という七月参院選挙の成果を、運動に活かし切れていない感がある。しかし、国会の正念場はこれからだ。国会をより多くの人々で包囲し、新テロ特措法案の廃案に勝利しよう。
 十一月二七日には、「いらない!インド洋派兵・給油新法」を掲げた、市民呼びかけの共同行動である「国会前ヒューマンチェーン」によって、その第三波行動が衆院議員会館前路上で行なわれ約百五十名が参加した。市民団体では辺野古実行委員会、パトリオットミサイルはいらない!習志野基地行動実行委員会、ピースボート、労働組合では出版労連、東京教祖などがアピール。東大の小森陽一さんは、「海自撤退は世論の勝利、ぶれずに世論を実現していく第一歩、これをさらに進めよう」と訴えた。オーストラリアの政権交代に触れた発言も多かった。
国会議員では社民党の保坂さん、無所属参院の川田龍平さんなどの挨拶、民主党参院の松岡徹さんのメッセージなどが寄せられた。参院外交防衛委員会には山内徳信さんがいる。参院内外で呼応して、給油新法を廃案としよう。
給油新法はいらない!などとともに、額賀財務相は辞任せよ!のシュプレヒコールが繰り返された。
最後に、ストップ改憲!市民連絡会の高田建さんが行動提起、十二月十日(午後六時半)の第四波ヒューマンチェーンなどを提起した。十五日の国会再々延長の暴挙を許すな。(東京A通信員)


11・9沖縄戦裁判、本人尋問行われる
  裁判勝利と検定意見撤回を

 十一月九日、大阪地裁で大江・岩波沖縄戦裁判(注1)の第十二回目の口頭弁論が開かれ、被告・大江健三郎氏と原告・梅澤、赤松両氏の本人尋問が行なわれた。裁判所には朝から傍聴券を求め七百名もの行列ができた。
 またその日、夜にはエル大阪にて、本人尋問報告集会が約二百名の参加でもたれた(主催は大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会、沖縄戦の歴史歪曲を許さず沖縄から平和教育をすすめる会、沖縄の真実を広める首都圏の会の三団体)。
 報告集会では、小牧事務局長(支援連絡会)のあいさつの後、岡本厚さん(岩波書店)が次のように報告した。
反対尋問で、『沖縄ノート』はいつ読んだのかの質問に、梅澤氏は去年読んだと言ったが、去年といえばこの裁判がすでに始まっている最中であり、また赤松氏は、本が難しかったので斜め読みしたと言った。つまり、どういう人たちが裁判をおこしたのか、その背景は明らかである。この本では二人の実名は書かれていないが、名誉毀損とする原告の資格が疑われる発言である。
また、大江さんの発言は、『沖縄ノート』で書きたかったことは、日本軍と日本人と沖縄の人たち、この関係性。個人の資質ではなく、日本軍、32軍、守備隊という縦の構造で命令が出されており、日本軍の責任において「集団自決」が起きたことについて自分は確信している。曽野綾子さんによる、「美しい心」で自決したとの書き方(注2)に対しては、自決は悲惨であり、清らかな殉死として押し出す欺瞞に自分は反対する立場を貫く、こうした陳述であったと報告した。
弁護団は次のように報告。梅澤氏は、手榴弾は重要な武器、自分の許可なしに住民に渡ることはないと認めた。大江さんが『沖縄ノート』で言いたかったことは、沖縄が本土のために犠牲になったことを本土の人は無自覚である、これへの批判。また軍官民共生共死という軍命の構造、手榴弾の配布は動かぬ証拠。曽野綾子さんの言う「清らかな殉死」は、まったくのまちがい。
また、十二月二十一日に最終準備書面を提出し、三月末に判決の予定と報告し、今回の教科書検定意見はまちがっていることを裁判でもハッキリさせたい、軍命の真実をかちとろうと述べた。
集会は、山口剛史さん(平和教育をすすめる会)から「沖縄戦の真実は消せない−島ぐるみの闘い」、石山久男さん(教科書執筆者)から「著者が語る教科書検定」のテーマで報告を受けて終了した。
沖縄戦教科書検定問題とこの裁判は、係争中であるにもかかわらず原告側主張を軍命削除の根拠として検定意見を付けてきたため、表裏一体の闘いとなっている。
現在、教科書会社6社から訂正申請が出され、検定審議会(日本史小委員会)で審議されているが、非公開でありその内容がわからない。教科書の印刷に間に合うように十二月初旬には、結論が出るであろうと言われている。
「新しい教科書をつくる会」、自由主義史観研究会など歴史歪曲グループは、このかん「従軍慰安婦」を教科書から抹消させ、次に沖縄戦での日本軍の住民虐殺と軍命による「集団自決」(強制集団死)を歪曲し、沖縄住民は軍に協力し国のため美しく殉死したと描こうとしている。第三回口頭弁論で、原告側弁護士はこの一言で締めくくっている。「この裁判を通じて、沖縄戦の真実が明らかにされることを心から望んでいます。そして日本人として、今一度当時の誇り高き日本人の心について考えてみてほしい」と。
この裁判と検定意見撤回が、歴史の進路に関わる負けられない闘いであることは明らかだ。教科書問題では、あくまで「修正申請」による解決ではなく、検定意見撤回による記述回復を勝ち取ろう。裁判では、沖縄戦の真実を判決とさせ勝利しよう。(関西N通信員)
(注1)大江・岩波沖縄戦裁判とは、〇五年八月五日、作家大江健三郎さんと岩波書店を被告として大阪地裁に提訴されたもの。原告は大阪府下に住む梅澤裕(元座間味島守備隊長)と赤松秀一(元渡嘉敷島守備隊長・赤松嘉次の弟)。二人は、慶良間諸島の住民「集団自決」を梅澤および赤松の兄が命令したと被告が記述しているが、これは、事実に反し、名誉毀損、故人に対する敬愛追慕の情を侵害するとして、家永三郎著『太平洋戦争』(68年初版)、中野好夫・新崎盛輝著『沖縄問題20年』(65年初版・74年出庫停止)(この本については原告は途中で取り下げ)、そして大江健三郎著『沖縄ノート』(70年初版)の各図書について出版・販売の禁止、謝罪広告、慰謝料(岩波書店に各一千万、大江氏に五百万円)を求めている。
(注2)曽野綾子は一九七三年、『ある神話の背景』を出版し、渡嘉敷島での「集団自決」を軍命によるものではなく、国に殉ずる美しい心で死んだものとして表現した。原告側もこの本を持ち出し、この内容を準備書面に書いている。