「JR採用差別」全面解決を迫る11・30全国集会
  政府は解決交渉に着け

 十一月三十日、東京・日比谷野外音楽堂にて、「20年の節目、総力をあげた闘いで勝利を!『JR採用差別』全面解決を迫る11・30全国大集会」が開催された。
このかん、この集会への一万人結集を目標に各地で行動が積み重ねられてきたが、野音を満杯にし、場外に国労東京がひかえる形で実数六千名ほどの参加であった。一九八七年の国鉄分割民営化から二十年、その三年後の旧国鉄からの1047名首切り、国鉄闘争はいよいよその勝利的解決へ向けて正念場となっている。それを実感させる久々の大集会であった。
主催は、四者(国労闘争団全国連絡会議、鉄建公団訴訟原告団、鉄運機構訴訟原告団、全動労鉄運機構訴訟原告団)と四団体(国労、建交労、国鉄闘争支援中央共闘、国鉄闘争共闘会議)である。
集会では、高橋伸二・国労委員長が主催者あいさつ、「四者・四団体が当事者能力を発揮し、『四党合意』の轍は踏まず、歯車をかみ合わせて闘ってきた。政治解決の環境をさらに前進させよう」と訴えた。参加者の一部で何か野次っている人たちもいたが、会場は圧倒的拍手で高橋委員長の発言を支持した。
つづいて、芹澤壽良氏(高知短大名誉教授)が、集会呼びかけ人(戸塚秀夫、山口孝、加藤晋介、中山和久ら九氏)を代表して発言した。
国会議員のあいさつでは、民主党から大島九州男参院議員、日本共産党から穀田恵二衆院議員、社民党からは保坂展人衆院議員が発言した。穀田氏は「参院選後の新しい政治の流れ」を指摘し、保坂氏は「みなさんの運動の場と直結して、政治の場で巻き返していく」と決意表明した。
集会は、年末に判決が予定されている全動労鉄運機構訴訟の主任弁護士である加藤健次氏による弁護団報告、酒井直昭・鉄建公団訴訟原告団長をはじめとする当事者三者の決意表明、各闘争団家族の訴えと続き、最後に集会アピール提案を国鉄中央共闘の山口弘文氏、団結ガンバローを国鉄共闘会議の二瓶久勝氏が行なった。
採択された集会アピールは、年末の全動労訴訟判決と、来年三月十三日の鉄運機構訴訟判決において、「この紛争の納得の行く解決に結びつく、憲法の基本的人権保障の理念が貫かれた司法の明確な判断を強く求める」ものであった。また、国策として行なわれた国鉄分割民営化の政治責任を追及し、政府との解決要求交渉を強く求めるものであった。
情勢は、四者・四団体の解決行動委員会としての闘い、判決が迫る各裁判闘争、議会政局の転換、これらによってまさに解決を迫る時期に来ており、国鉄闘争の勝利的解決を日本労働運動の新しい発展への転機にしていく必要がある。
なお、闘争団最年長(七十六歳)の佐久間忠夫さんを先頭とした取り組みとして、十二月十一日・午後二時から国会前で「1047名問題の政府による解決を迫るハンスト」が開始される。佐久間忠夫さんハンスト支援実行委員会(呼びかけ・根岸敏文)が、支援連帯を呼びかけている。(東京W通信員)


労働契約法案、最賃法改定案が成立
  「大連立」で労働法制改悪

 労働契約法案と最低賃金法改定案が、十一月二八日の参議院本会議で可決成立してしまった。
 通常国会から継続審議となっていた労働契約法案、最低賃金法改定案、労働基準法改定案の三法案について、七月参議院選挙で与野党が逆転した今臨時国会では、どう扱われるのか注目されていた。実質審議なしで再継続となるのではないかという予想があったが、事態が動いたのは十一月一日、与党と民主党で政府案の修正協議がまとまってからである。翌二日の衆議院厚生労働委員会で採決されることは何とか防いだが、七日には採決された。参議院厚生労働委員会では二十日、二七日の審議、二十二日参考人質疑で、二七日に採択されてしまった。
 労働契約法案の与党と民主党による修正は、労働契約の原則に「就労の実態に応じて均衡を考慮しつつ」、「仕事と生活の調和にも配慮しつつ」などを加えたものの、就業規則による労働条件の不利益変更を可能にする条項は修正されなかった。
 最低賃金法改定案の修正は、生活保護との整合性の部分で「労働者が健康で文化的な最低限の生活を営むことができるよう」を加えた。
 労働基準法改定案については、月間八〇時間を超えた残業の割増率を25%から50%に引き上げる政府案に対して、民主党がすべての残業を50%に引き上げることを譲らず、合意に至らなかった。
 成立した労働契約法案の最大の問題は、就業規則による不利益変更を可能にしている点である。過半数労働者を代表する労働組合あるいは過半代表が同意すれば合理的と判断され、変更による不利益を受ける者の利益を代表している保証がないこと。現在の「従業員代表制」は使用者の利益を代弁するものが多く、とりわけ非正規労働者の声を反映できる仕組みが存在していないこと。就業規則変更の合理性に関する最高裁の判例の、そのすべてが法案に取り入れられていないこと(青木労働基準局長は、判例の七要件は四要件に整理して取り入れたなどと答弁)。労働者への変更の周知とはどのようなことなのか、明確ではないこと。不合理性の立証責任を労働者に負わせていること、これらの問題がある。結局、使用者の一方的な都合で労働条件を引き下げることを合法化するものである。
 また、参考人質疑で日本経団連の紀陸専務理事が、今後の法案に盛り込まれるべき内容として「解雇の金銭解決」制度をあげていたことを忘れてはいけない。財界は当初の意図を全面的に実現せんとしている。
 今回の法案修正過程をみていると、民主党と自民党が合意すれば、国会でほとんど審議なくして法案が成立する。まさに「大連立」が行なわれれば大政翼賛体制になることが感じられた。
 労働契約法案には日本共産党と社民党(参議院では一部無所属)が反対し、最賃法改定案については共産党が反対した。参議院では、最賃法改定案について共産党が、全国一律最賃制、「使用者の支払い能力」の削除、など民主党案と同様の修正案を提出したが、それに賛成したのは民主党ではなく社民党であった。民主党が賛成すれば、こちらの修正案のほうが可決されていたのである。「ねじれ国会」において、労働者の利益になるように野党共闘をどのように作らせるのか、これが問われる事態であった。
今回、労働契約法案と最賃改定案で「対案」を提出しておきながら、早々とそれを降ろし与党と修正合意してしまった民主党の対応は強く指弾されなければならない。昨年来からの労働契約法案阻止の闘いは、連合がその闘いを放棄するなかで、今春までは一定のひろがりをみせつつあった。しかし、連合指導部と意を通じた民主党の「裏切り」、というより正体暴露によって、不意を討たれる形で(十一月十四日の対国会緊急共同行動などが闘われたものの)一旦敗北することとなった。
労働法制全体の闘いとしては、当面、派遣法改定が焦点化するが、就業規則万能の実質化を許さないことを含め闘いはまだこれからである。格差拡大・権利破壊の労働法制を阻止し、人間らしく働ける労働法制をかちとろう。(K)