海上自衛隊撤退
  新テロ特別措置法案の阻止、イラク完全撤退へ
    路線破綻の自公政権倒せ

 十一月一日を期限として、二〇〇一年十月以来続いてきた「テロ特別措置法」が失効し、石破防衛相は同日、海上自衛隊にインド洋からの撤退命令を出さざるを得なかった。六年間に渡って米軍をはじめとする多国籍軍に無償で給油等を続け、アフガニスタン侵略戦争に、また〇三年からはイラク侵略戦争に(この場合、テロ特措法自身に違反し)兵站支援してきた日本政府の愚行は、ついに中断を余儀なくされた。
 現在海上自衛隊の補給艦・護衛艦は日本へ向けて航行しつつあるとみられるが、テロ特措法に基づいて行なわれていた航空自衛隊による在日米軍基地間の輸送や、米第五艦隊司令部があるバーレーンでの自衛隊の活動なども、ただちに停止されていなければならない。今後すべての活動が国会に報告され、イラク戦争への給油問題をはじめ全面的に検証される必要がある。それは給油活動の再開策を破綻させ、アフガンやイラクでの米軍支援の全体を問い直すものとなるべきである。
 福田自民・公明連立政権は、この給油活動の中断をなるだけ短期にとどめ早期に再開するために、十月十七日「新テロ特措法」案を臨時国会に提出した。
 新テロ特措法案(テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案)は、憲法違反の自衛隊海外派兵であることは同様としても、テロ特措法と比較すると重要な違いがある。新法は、捜索救助・被災民救援などをはぶき給油活動のみに絞っているが(外国補給艦への補給を否定せず)、「給油のみであるから実施計画の国会承認はいらない」などと言って、旧法にあった派兵開始二十日以内の国会承認条項を削っていること、また、ブッシュ流の「テロ対策海上阻止活動」という武力行使概念を新たに入れ、その支援であると明確にしたことなど重大な問題がある。
この新テロ特措法案を通すために、福田政権は十一月十日の会期末を一ヶ月ほど延長せんとしている。しかし会期末の十日までに衆院で強行採決したとしても、福田訪米でのブッシュへの言い訳的な手土産にしかならない。民主党と諸野党で過半数を占める参院では通らない以上、衆院三分の二による再議決という強硬策があるものの、今のところ早期成立の目途はまったく立っていない。
十月三十日と十一月二日に唐突に行なわれた福田・小沢の自民・民主党首会談なるものによっても、この国会情勢に変化はない。この党首会談は民意とかけはなれたところでの自民・民主二大ブルジョア政党の「大連立」、あるいはそれに近い政界再編成の策動を示す唾棄すべき政治劇であった。
 こうして給油中断は長期化しようとしている。この給油活動等の中断と海上自衛隊の撤退という事態は、何を意味しているのだろうか。
 第一には、このかんの日本政府の、アフガン戦争・イラク戦争への対応に端的に示されてきた対米一辺倒外交と「日米同盟の世界化」という路線が、まさに破綻したことを示すものである。一つの政策の失敗ではなく、政権交代が問われる問題である。ここ十年近くの自民・公明連立政権のその路線、日米軍事基地再編合意を含む軍事・外交政策の全体が、まさに問い直されなければならない。
第二に、その問い直しはとくに、ただちにイラクからの自衛隊全面撤退が行なわれるべきことを意味している。今年六月のイラク特措法延長により、いぜん法的効力をもって航空自衛隊のイラクでの兵站支援活動が続けられているが、テロ特措法の失効はイラク特措法も失効すべきことを意味している。米国が勝手に始めた侵略戦争に対し、それに関連する国連安保理決議を口実にしつつ自衛隊を海外派兵するというやり方は、対イラクでも対アフガンでも同じであり、〇一年以来のこのやり方が清算されなければならない。
第三に国際的には、日本の海上自衛隊の撤退は、ブッシュ政権の戦争政策とその「有志連合」が世界的規模で行き詰まり、崩壊しつつあることを示すものとなる。給油問題は日本では国内政局的に見られがちであるが、国際社会にとっては、「対テロ戦」の行き詰まりと米側陣営の崩壊として印象付けられるものである。
中断・撤退が可能となった直接の要因は、七月参院選で大勝した民主党がテロ特措法延長反対の姿勢を堅持したからである。しかし民主党が反対を堅持できたのは、ブッシュ政権のアフガン・イラク政策が誰が見ても泥沼に陥り、その泥沼に日本が軍事的関与を続けることに国民の支持はないことがはっきりして来たからである。世論は「対テロの国際協力からの脱落」を懸念するよりも、ブッシュ政権の「対テロ」戦争政策への日本の追随を懸念する声の方が優勢である。もっとも占領政策がブッシュ政権の思惑どおりにいっていれば、日本の民主党や世論も勝ち馬に乗る危険があったと言うべきであるが。
占領政策を破綻させているのは、イラク人民・アフガン人民をはじめとする抵抗闘争の発展であり、世界の反戦平和勢力の運動の堅持である。給油中断の背景には、米帝国主義を主柱とする帝国主義陣営と、世界の反戦平和勢力および被抑圧民族人民との力関係の反映という大情況がある。
給油再開策を許さず、新テロ特措法案、その先にある(自民・民主の大連立的合意が策されている)派兵恒久法案を阻止するためには、その力関係を有利にする、日本・世界の労働者人民の連帯した闘いが必要だ。そして、給油中断が何を意味しているのか、これからの日本のあり方はどうあるべきなのか、を問う大きな世論的・運動的な攻勢を組織することが必要だ。中断・撤退をただ漫然と歓迎しているだけでは、自民・公明連立政権にその重大な失敗を修復する余裕を与えることとなるだろう。
 新テロ特措法案の粉砕! つぎはイラクからの全面撤退を! 福田連立政権を打倒しよう!