「改革」路線・「戦争する国」づくりに決定的反撃の秋
  攻勢をとり福田新政権打倒を

 安倍首相が九月十二日、突然辞任を表明して逃亡したあと、福田元官房長官と麻生党幹事長とによる自民党総裁選がメディア戦略的に行なわれ、九月二五日、福田康夫新首相による自公連立政権が成立した。
 福田新首相は、七月参院選惨敗と安倍内閣のぶざまな崩壊とによる自民党の危機を救うことができるのか、不可能である。福田内閣が解散・総選挙までの短命内閣であり、彼が自民・公明連立政権の最後の首相となる可能性はきわめて高い。
 むこう半年間、ブルジョア的政権交代をはじめとする政局激動に対処しつつ、労働者人民の共同した政治勢力を大きく前進させること、また政局変化を有利に活用しつつ憲法闘争、反戦反基地、労働運動など各戦線で具体的成果をかちとること、こうした攻勢的なたたかいを意識的にすすめることが問われている。
 直面する情勢で、かちとるべき第一は、臨時国会でテロ特別措置法を廃止させ、また給油新法を阻止することによって、十一月には自衛隊艦船をインド洋から全面撤退させることである。第二は、「憲法審査会」を引き続き阻止し、改憲国民投票法の死に体化をすすめることだ。
 そして急浮上してきた第三の課題が、沖縄戦の歴史書き換え教科書を政府・文部科学省に撤回させることである。
九月二九日沖縄でかちとられた「教科書検定意見撤回を求める9・29県民大会」は、空前の十一万人結集を実現し、日本政府・福田内閣に強烈な打撃を与えた。沖縄戦認識は、まさに今日の問題である。日本の軍事政策によって、沖縄はかっても今も、犠牲になり続けるのか、沖縄の怒りは極限に達しつつある。しかし沖縄だけの問題ではない。日本政府にとって、今日の「戦争をする国」・有事立法体制づくりに国民全体を組み込むうえで、「集団自決」から「軍の強制」を消し去ることが必要であった。その意図が、沖縄民衆の決起によってあばかれ、粉砕されつつあるのである。検定意見撤回の実現は、このかんの自公政権による軍事政策(日米安保の世界化と日米軍事一体化)を押し戻す転機になりうるだろう。沖縄民衆の決起に連帯する、「本土」民衆のこの課題での取り組みが問われている。
以上の諸闘争に勝利し、解散・総選挙を前にした力関係を、労働者人民と左翼勢力の側に有利にすることが必要だ。
さて福田政権は、発足時に自民・公明の連立政策合意を示し、十月一日国会で福田首相が所信表明演説を行なった。その内容は、新自由主義的構造改革と日米安保グローバル化という、小泉・安倍時代と基本的に何ら変わらない政治路線であった。参院選での労働者人民の審判、安倍政権を結局退陣に追い込んだ審判を、何ら反省していない。
世評的には、福田政権は「小泉・安倍政権」の改革路線を修正する内閣、「自民党をぶっこわす」や「戦後レジーム脱却」などの個性を出さず、古い自民党をやや復活させた調整型の内閣とみなされている。
しかし、基本的政治路線が変わらない以上、日米同盟と独占資本のための憲法改悪策動は続行される。総選挙以降の民主党との「大連立」を射程に入れた、より巧妙な改憲攻撃が図られるだろう。最近の局面変化で憲法闘争を軽視するならば、決定的誤りである。
また福田政権の改革路線修正と言われるものは、公共事業復活などはありえても、労働者人民の生活にとっては何ら具体性がない。障害者自立支援法の見直しを検討としているが一割負担の廃止は明言していない。負担を増大させる後期高齢者医療保険の導入についても、先送りとするだけで撤回ではない。
誰が首相をやっても、参院で民主党が優勢である以上、「野党との協議」を強調することにはなる。しかしブルジョア政治力学で、総選挙までは民主党との間で対話の結果をだすことは困難である。
こうして福田新政権は、格差拡大・貧困増大を放置し、ブルジョア二大政党間の関係調整も進められず、来年度予算編成の中で行き詰まってくる。いよいよ自公政権の終わりである。われわれ労働者人民の政治勢力は、総選挙の結果待ちではなく、すぐに勝ち取るべき課題と、「第三極」的政治勢力の形成という当面の目標とを明確にして、歴史的激動に臨まなければならない。