新自由主義「改革」を居直る安倍改造内閣
  自公連立政権打倒を


 七月参院選で惨敗した安倍首相は、与党内を含めた広範な退陣要求に対し、「改革」の基本路線は正しいなどとして居直り、八月二七日、引き続き自民・公明が連立する安倍改造内閣を発足させた。また国会では、八月七日臨時国会で参議院第一党となった民主党から江田五月議長が選出され、九月十日からは、「テロ特別措置法」延長か廃止か、などを対決点とする臨時国会が始まる。
「戦後レジーム脱却」「美しい国」という言辞の安倍的政治カラーは、参院選大敗によって手痛い打撃をこうむった。安倍首相は改造内閣発足時の記者会見でも弱々しくその言辞を繰り返したが、力点は「難しくても改革路線は続ける」という方にある。自民党は八月下旬に参院選総括を発表した。そこでは、「地方や弱者の痛みを解消するための将来展望を示す必要がある」などとして、参院選敗北の主因となった格差問題について政策を糊塗しつつ、財界の要求である新自由主義的構造改革をあくまで続行せんとしている。
安倍改造内閣には町村外相、高村防衛相、額賀財務相など自民党各派閥の親分クラスが入閣し、当面安倍政権を延命させる措置がとられたものの、安倍は総選挙までの、つなぎの首相という性格が濃厚となった。自民党にとってやっかいな「ねじれ国会」を安倍に対応させ、総選挙の前頃までもたせれば上出来という内閣である。さらには九月三日に補助金不正受給問題で、任命されたばかりの遠藤農水相がまたもや辞任に追い込まれた。こんな内閣に、国の重要政策を語る資格があるのか。
臨時国会での主要な闘いの課題は、「テロ特別措置法」の廃止、「憲法審査会」の設置反対である。テロ特措法を廃止させ、アラビア海から自衛隊艦船を撤退させる課題は、集団的自衛権を合憲化する解釈改憲を阻止する闘いと密接に関わっている。米国は国連決議を根拠としてではなく、フリーハンドな自衛権行使としてアフガン攻撃を開始し、NATO諸国は集団的自衛権を根拠としてこれに参戦した。同じく日本も給油活動等で参戦しているのであり、この憲法違反の集団的自衛権行使の状態は直ちに是正されなければならない。首相の私的懇談会による集団的自衛権解禁をねらう答申が秋に予定されているが、テロ特措法廃止とともに、この懇談会自体が解散されなければならない。
「憲法審査会」は、与党のみで強行採決され、かつ付帯決議だらけの異常な改憲国民投票法を根拠とするものである。野党が過半数の参院では、設置されなくて当然である。改憲国民投票法じたいが問い直されるべきだ。
テロ特措法の廃止や、憲法審査会の設置停止を議決できないような臨時国会であるならば、解散総選挙で民意を問うべきだ。テロ特措法問題ひとつ取っても、それは日本の外交全体を問うており、それだけでも総選挙の大きな争点たりうる。臨時国会の審議が紛糾すれば、国民世論と野党による解散総選挙の要求は理の当然となる。
安倍政権の命脈が尽きつつあるだけでなく、長らく続いた自民・公明連立政権の支配体制から当面は別の支配体制への転換、これが始まりつつある。流動化する情勢の中、日本の労働者階級人民の政治勢力は闘争態勢を整えなければならない。最近開かれた労働者共産党の第三期第三回中央委員会総会は、そうした動向の重要な一環である。


テロ特別措置法廃止せよ
      日米軍事一体化の外交路線を正せ

 十一月一日で期限切れとなる「テロ特別措置法」の延長を許さず、廃止させ、アラビア海の給油活動等から海上自衛隊等を撤退させること、これが、九月からの臨時国会での最大の課題となっている。このアフガニスタン戦争から自衛隊を撤退させる闘いは、イラク戦争からの自衛隊完全撤退に連動しており、また結局、このかん米ブッシュ政権に追随して日米安保のグローバル化と軍事一体化を進めてきた小泉―安倍政権の外交路線そのものからの、おおきな転換につながる課題である。
 〇一年十月に二年間の時限立法として制定され、その後三回延長が強行されてきたテロ特別措置法が今回、廃止の機会を迎えているのは、直接には、制定および延長に反対を続けてきた民主党が七月参院選で参院第一党となり、同じく反対してきた共産・社民と合わせると参院過半数を占めるからである。
 民主党は参院選直後から、小沢党首が「今まで反対してきたのだから、当然反対だ」と延長案反対を明言し、駐日米大使シーファーとの対談でも態度を変えなかった。小沢党首らの反対理由は、一つには、米国のアフガン戦争の開始は国連決議に基づいていない、〇一年九月の国連安保理決議1368は武力行使を直接に認めたものではないという論拠であり、また一つには、米国の求めるがままに自衛隊を出すなど没主体的な外交の典型であり、テロ防止に役立っているともいえないとするものである。
 しかし民主党の反対理由は、これまであまり明確ではなかった。イラク戦争については、米国の国連決議に基づかない違法な戦争であり、したがって自衛隊イラク派兵に反対すると最初から一貫して明確にしていた。しかし民主党はテロ特措法制定の当時には、自衛隊艦船派遣の国会事前承認の欠如をおもな反対理由としていたにすぎない。〇一年十一月の国会では、自衛隊艦船派遣の事後承認案に民主党は(横路グループを除いて)賛成しているのである。
 小沢民主党は、参院選圧勝の勢いで与党と対決する政局的必要もあり、イラク問題での自党の政策を今回、アフガン問題にも援用して対処していると言うべきである。もちろんこれは、民主党の一歩前進である。
 民主党は現在、アフガン民生支援を内容とする「対案」を提出する方向にあるが、それに自衛隊派兵は一切含まれないのかどうか、不明確である。とくに小沢党首は、国連決議に基づいていれば武力行使への日本の参加も是とする持論の持ち主であり、このかんの論議でも、EUが主体のアフガン治安支援部隊への関与を検討すると述べている。与党側は民主党を巻き込むために「修正」を口にしており、民主党の対案の内実も含めて、臨時国会は予断を許さないものとなるだろう。
 アフガン戦争は、民主党が言うように国連決議に基づいていないから悪いのではなく、アフガン侵略戦争であるから悪いのである。アフガンにせよイラクにせよ、これまで自公政権は対テロの国際協調を大義名分としているが、その実相は、反米イスラム諸国・反米イスラム主義勢力への米英帝国主義の討伐戦争ではないか。本来、日本政府は両者を仲裁する立場にはあっても、米英の戦争に加担する必要はさらさらなかった。日米安保条約上の義務ともまったく関係はなく、テロ特措法を止めたら日米関係を悪くするなどと言うならば、どのような日米関係を良しとするのかが問われるだろう。
 民主党を妥協させず、反対を貫かせるためには、アフガンから手を引け、日本外交を転換せよと求める世論と運動の発展が必要だ。テロ特措法の制定時には、それが戦地への初の自衛隊派兵であったことから、危機感をもった反対運動が展開された。しかしその後の延長の繰り返しに対しては、イラク反戦がメインになったということもあり、ほとんど抵抗できていない。民主党の「反対」を利用しつつ、大きな闘いを実現し、自衛隊艦船の撤退をかちとろう。(W)
 
 
 労働者共産党 第三期第三回中央委員会総会
   政治流動化に対処しつつ
      たたかいの基本方向を確認
 
                 
去る八月の過日、猛暑の中、労働者共産党の第3期第3回中央委員会総会が開催された。
今回の中総は、日程が七月参院選の直後として設定されていたものであった。したがって、安倍政権・与党の惨敗というその結果の評価と対処を決議の中に反映させることは、ひとつの大きな課題であった。また同時に、参院選後の政局への対処方針のみならず、このかんの小泉−安倍政権を通じてすすめられてきた内政外交路線を体系的に批判し、その新自由主義路線と闘う労働者人民の闘争方向を整理することが課題であった。すなわち、新自由主義などと闘う労働者人民の隊列の強化が基本にすえられてこそ、当面の政局への働きかけも意味をもってくるからである。そうした中で今回の中総では、従来以上に議論の中身なり経験の交流を深めることが期待された。
全国から参集した同志たちは、中央委員の出席者が過半数を大きく超えて中央委員会総会が成立していることを確認し、議長団を選出して、第3期3中総を開会した。
ただちに、「弱肉強食の新自由主義に反対し、憲法改悪阻止の共同戦線を!」と題する情勢・任務についての決議案が、中央常任委員会から提案された。対案提出はなく、二名の中央委員から六つの修正案が提出された。議論は、修正案に関連する討論だけでなく、各種報告もふくめて、おおむね以下のような論点で行なわれた。
一つは、小泉−安倍に代表される改憲・日米同盟強化・弱肉強食の新自由主義路線と、小沢民主党との現在的相違などを論議しつつ、当面は安倍自公連立政権の打倒をかちとることが重要であることを確認し、同時に新自由主義という路線では民主党も同じだという点を踏まえていく必要などが議論された。
二つは、軍事・外交については、米中との関係における日本帝国主義の基本方向について議論された。日帝の東アジア共同体構想について、この構想を大きくは超大国アメリカとの関係において捉えつつ、その中での日中のヘゲモニー争いを見ていくこと、米中間の対立も経済のグローバル化の時代には限度があると見るべきこと、また民主党はアメリカとの関係で一定東アジアよりになっていくのでは、などの意見が出され議論された。
三つは、「第三極」的な政治勢力の共同をどう実現していくかという課題について、基本的には労働運動・市民運動の力の発展を背景にしてしか実現できないこと、日本共産党などのセクト主義の枠を壊すことが不可欠だ、などの観点が議論された。
四つは、非正規労働者を始めとする労働運動に関して、日々の実践を踏まえた討論が行われた。社会の「寄せ場化」をみすえた釜ヶ崎・現役層の運動を再建する必要、企業の枠を超えた個人加入制のユニオン運動の拡大の推進、また、連合の「非正規支援センター」設立の動きなど既存労組での工作についても議論された。
五つには、日本における共産主義者の団結・統合を推進する課題に関して、現況を踏まえた真剣な検討が行われた。現状ではそれが急速に進展するとは言い難いものの、今後強まるであろう全般的な政治流動と連動しながら、団結・統合を粘り強く追求していく等の議論がなされた。
こうした討論の上に立って、挙手採決によって、各修正案の可否を決定しつつ決議案全体を全員の賛成により採択した。
中総は、最後にオブザーバー参加の同志を含めて、各人の報告を行ない交流を深めた。ここでの各報告は、お互いに刺激を与える素晴らしいものであった。こうして中総は、全ての議事をこなし、散会した。
今回の中央委員会総会は、政局の流動化に敏速に対処しつつ、自公政権を孤立・打倒する闘いと共に、自民・民主の二大ブルジョア政党に抗する労働者人民の闘争方向を確認した。また、その闘争を担う指導的同志たちの結集力を示した総会であった。ともに闘おう。