編集部だより

★連日の熱帯夜と猛暑日からようやく解放された。まさに、地獄のような日々であった。★急速に秋冷となりはじめた八月の末、久方ぶりに国立歴史民族博物館(千葉・佐倉)を再訪した。「弥生はいつから――年代研究の最前線」という企画展がお目当てであった。★縄文・弥生などの原始時代の年代研究は、旧来は考古学的方法であった。土器や青銅器などの新旧を比較したものである。★それが、毎年成長する年輪のパターンの比較に基づく年輪年代法でかなり正確な年代が測定できるようになった。この日も、企画展示室に入ると、まっ先に屋久杉の年輪が目に入った。★さらに近年は、科学的な炭素14年代法が注目されている。それは、炭素14が約五七三十年ごとに半分ずつ壊れていく性質を利用したもので、およそ五万年前までの年代を知ることができる。★この方法で、近年、弥生時代は従来よりも約五百年さかのぼり、紀元前10〜9世紀頃からという新説が当博物館から提起されている。科学技術の発展が未知の歴史を切り開く好例であろう。★だが、日本では、天皇制のバリアーにより、未だに「天皇陵」の研究さえ拒絶されている。まさに好対照である。★佐倉城址の一角に建つ博物館を後にしたのは夕方近くであった。去り行く夏を惜しむ蝉の声がしきりに緑林にひびいていた。(竹中)