参院選挙で自民党大敗
  安倍政権は退陣せよ!新自由主義路線に追撃を!
    二大政党に抗する「第3極」形成へ

 七月二九日に投開票された参議院選挙で、日本の労働者人民は安倍自民・公明連立政権に明確にNO!を突きつけた。自民党は大敗し、安倍連立政権は崩壊の淵に立たされている。与党内部の不満をなだめすかし、八月に安倍が改造内閣を発足させえたとしても、所詮それは一時しのぎである。与野党過半数の衆参での逆転はかってなく大きくなっており、政局混迷が続くか、あるいは早期の解散総選挙とならざるをえない。
 小泉政権・安倍政権と続いてきた反人民的政治からの、大きな転換の必要が示された。安倍右派内閣に止めを刺すだけでなく、このかんの新自由主義・憲法改悪・対米一辺倒の政治を一掃していくために、労働者人民の総決起が今こそ求められている。そのたたかいの前進の中でこそ、自民・民主の二大ブルジョア政治勢力に対峙し、日本の未来を切り開く労働者人民の共同した政治勢力の形成、これが展望されるであろう。
 選挙結果それ自体は次のようになっている。自民党は、半減に近い(改選議席64を37へ)歴史的大敗で、初めて参院第一党から転落した(比例区での得票率28・1%、以下同)。公明も連立が問われるレベルの敗北を喫した(13・2%)。野党では、民主党の一人勝ち(改選議席32を60へ)となり、初めて第一党となった(39・5%)。共産党、社民党は、議席・得票率ともに若干減らし、傾向的低下を続けている(7・5%、4・5%)。これらの結果、衆院では与党自・公が三分の二を超える議席を持つが、参院では野党民主だけで約半分、他の諸野党を加えて六割近くを占めることとなった。民主党は二大ブルジョア政党の一方としての存在を強化した。
 自民党の敗因は、格差問題(都市部での貧困、地方での地域格差)と年金問題がメインであり、更に相次いだ閣僚の「政治とカネ」、強行採決連発など数を頼みの強引さなどで、安部政権が拒否されたとみられる。小泉・安部と続いた新自由主義改革の幻想は、大企業は儲けても労働者は貧困化という現実を突きつけられて、かなりの程度ひきはがされた。
 小泉ブームでの自民党大量得票は、一掃されつつある。小泉政権登場時の〇一年参院選では比例区で38・6%も取っているが、その時の議席が今回一掃された。早期に総選挙を行なえば、小泉が「自民党をぶっこわす」と言って現状批判票をだましとった〇五年郵政解散総選挙での38・2%とその議席が、帳消しになってしまうことは明らかである。
 また今回は、昨年九月に発足した安倍政権にとって始めての国政選挙であり、その結果は、安倍政権による教育基本法改定と改憲国民投票法成立という主要実績が国民によって否定されたという政治的意味を持っている。しかし自民党の敗因を客観的にみれば、憲法、軍事・外交、右派色などで安部政権が広範に拒否されたとは言いにくいものがある。安倍や中川党幹事長は当初、争点として憲法改正を強調したが、それが不人気とみるや途中で「社会保険庁解体が戦後レジーム脱却」などと言って、デタラメに争点をずらした。また憲法問題で党内不一致の民主党も「生活第一」を基本スローガンとし、憲法等が主要争点になっていない。
 これに対し、共産・社民は憲法を争点として明確にしたが、その合計比例得票は12%にとどまった。これは憲法改悪反対勢力のほんの一部を結集した数字にすぎない(各世論調査では九条改憲反対はおよそ50%、九条改憲賛成はおよそ30%であり、この差は近年大きくなっている)。国政選挙における憲法決戦は今後に延期されたのである。今後の国政選挙で、共産、社民の基本的支持票が低迷している現状では、広範な九条改憲反対の民意をどのような形でで表現できるのか、いっそう問われるだろう。
 選挙結果から導かれる政治的要点としては、次のように考えられる。
 第一に、選挙結果は、当面は民主党に政治的果実が刈り取られることとなっているものの、労働者人民のこのかんの安部政権との闘いの成果である。小泉・安部と続いた新自由主義・対米一辺倒の政治を一掃していく好機がかちとられた。
 第二に、この好機を活かし、深手を負った新自由主義路線を追撃して、安部改造内閣に対決する大衆運動を当面の闘争課題においてもりあげる必要がある。現在民主党は大勝したために、かえって与党との取り引きがやりにくくなっており、解散総選挙による決着を求めている。民主を対決姿勢から日和らせず、解散総選挙へ現実に向かわせるためには、大衆運動の圧力が必要だ。民主の尻押し運動に堕すことのない、労働者人民の自立した闘いの発展が、政局を動かす原動力となる。
 第三に、その当面の闘争課題は、十一月対テロ特別措置法の廃止、臨時国会での憲法審査会の設置反対が焦点である。現在、民主の小沢党首は、今秋臨時国会での対テロ特措法反対を明言しているものの油断ならない。〇一年以来の民主党の反対理由は、海外派兵の国会事前承認など文民統制を問題とするもので、違憲の戦地派兵を許さずと明確にしておらず、またアフガニスタン侵略を問題とするものでもない。民主党が特措法修正で手を打つ危険性がある。アラビア海での自衛艦給油活動は、戦争が続くアフガンへの戦地派兵であり、今年こそ十一月一日までに終わらせなければならない。この闘いから、イラク自衛隊完全撤退をはじめ、外交全般での当面の転換を焦点化させるべだ。
 与党が強行採決した法に基づき両院に設置されようとしている「憲法審査会」は、その設置自体から問い直されて当然だ。自民・公明が改憲国民投票法を盾に設置を強行しても、野党はボイコットせよ。開店休業状態に追い込め。
 第四に、国民不在の与野党調整政治や政界再編成を許さず、政治の混迷は解散総選挙で決着をつけるべきことを圧倒的な世論とすること、その世論を背景に臨時国会を大衆闘争で包囲することが必要だ。(自民の内部抗争、公明の出方によっては、安部の早期退陣がありうるが、誰がやるにせよ総選挙管理内閣以上のものはナンセンスだ)。
 第五に、自民・民主(新自由主義、日米同盟、改憲は同じ)に対決する「第三極」の形成の必要は、今参院選でより高まった。ブルジョア的政界再編成は、当面というよりも、来る総選挙の後に予想される。総選挙においても、自民党の大敗がかちとられなければならない。その結果、民主党が政権を取るにせよ取らないにせよ、民主党への幻滅という過程が大規模に始まるのである。
 激動の政局に備え、左翼の共同戦線を強化し、労働者人民の闘争態勢をととのえよう。


六者協議の進展と安倍政権の国際的孤立
  今こそ日本外交の転換を

 参院選惨敗の安倍政権は日本国内で孤立を深めているだけでなく、朝鮮核問題六者協議が進展する中で、外交的にも孤立を深めている。日米軍事一体化についての安倍なりの理由付けの一つであり、また拉致問題を政治利用した安倍政権の目玉であった朝鮮敵視政策は孤立し、その転換をせまられている。また米国下院本会議で七月三十日、日本政府に是正を求める「軍隊慰安婦」決議が採択された。これも、歴史を反省しない安倍政権の右派的性格が世界的に批判されていることを示している。
 いまこそ小泉・安倍と続いてきた、アジア諸国との関係を軽視あるいは破壊し、日米の軍事同盟をのみ異常に強化・拡大する外交路線を、根本的に打破すべきときである。
 六者協議は七月十八日に再開され、先の六者協議2・13合意である「初期段階措置」の履行が開始された。初期段階措置履行が大幅に遅れた原因は、ブッシュ政権の金融制裁でマカオBDA銀行に凍結された朝鮮関係口座をめぐり、米側の対応が決定的に遅れたことにあった。この釈明のため、六月二十一日にヒル米国務次官補が訪朝するなどしたが、米朝間の関係改善に向けたシグナルとして世界中が注視した。これに答える形で、朝鮮はIAEA代表団の訪問を招請し、IAEAは核施設の停止・検証手続きで朝鮮と合意した。これに対応し、韓国、中国がすぐに重油供与など初期段階措置履行に動いた。凍結資金問題は、米側がいまだ金融制裁を解除していないが、ロシアが受け入れを表明し極東の民間銀行の朝鮮側口座に送金されて解決した。
 このような各国のすばやい対応に対し、日本の安倍政権のみが動こうとしなかった。逆に安倍は朝鮮への更なる経済制裁の継続を主張し、敵視政策を次々と展開した。昨年来のマンギョンボン号入港拒否を始め、朝鮮総連の関係諸団体・個人に対して、とても考えられないような罪状を捏造して強制捜査を行なってきている。昨年十一月の薬事法違反捜査などは、七月になって起訴断念としており、一連の弾圧が政治キャンペーンであることバクロしている。
 朝鮮総連弾圧の最悪のケースが、整理回収機構(RCC)による朝鮮総連中央会館に対する強制競売の申し立てである。これは、朝銀信用組合の不良債権を買い取ったRCCが、債務者である朝鮮総連の返済案を無視し、和解交渉を中断して、中央会館を差し押さえ売却しようとしているものである。この問題の本質は、不良債権処理問題ではなく、日朝関係を正常化しようとするのか、しないのかの政治問題である。安倍政権に日朝正常化の意思があるならば、朝鮮在外公民団体との和解交渉が前提となる。その意思がないから、在日公民の中心施設の強奪という暴挙をRCCに指示できるのである。
 この件について六月二八日、朝鮮総連中央は抗議声明を出したが、発端の朝銀破綻について「日本の銀行が破綻に瀕した際には不良債権の放棄が許され、公的資金を用いて救済されたのに比べ、朝銀信組に対しては不良債権の放棄が許されず、破綻に追い込んだことはけっして許されない民族差別」と指摘しているのも、まったく道理のあることだ。在日朝鮮人は金融上の差別を含む社会的差別の下で細々と生活・営業を余儀なくされているが、その頼みの金融機関である朝銀へのこの様な処遇は、政治的意図がなければ考えられない。
 六月二六日の強制競売申し立ての直前に、中央会館に関する緒方元公安調査庁長官の逮捕が行なわれ、その容疑が変転・混乱しているが、ここにも警察庁長官漆間の「何でも事件化せよ」の意図が現れている。
 日本では以上のような異常な事態が続いているが、いま東アジア情勢は、朝鮮半島非核化のみならず、朝鮮停戦協定の平和協定への転化と米朝正常化という新しい秩序へ向かう兆しをみせている。日本外交の錯誤は、首相安倍とともに一掃されなければならない。(Ku)