6・9
 「ホームレス支援全国ネット」結成さる
   基本方針見直し迫って

 六月九日、東京都墨田区生涯学習センターにて、「ホームレス支援全国ネットワーク」の設立総会が開かれ、引き続き「新基本方針への提言に関する全国集会」が開かれた。準備過程については、本紙前号にて報告したが、五月三日の準備会以降、世話人会やメール等での議論を重ねて結成総会に至ったものである。全国より三十九団体、百五十名が参加した。
 設立総会では、来賓で「虹の連合」の松岡徹参議院議員、東京都の城北労働福祉センターの池田幹雄さんがあいさつし、大阪市からのメッセージが代読された。
 続いて議事に入り、一、いのちと権利を守るための支援。一、ホームレス自立支援法を活用し、国への提言・要求を行なう。一、支援団体間、地域的、また行政との協働など広範な協働を目指す。一、路上からの脱出を自立支援の課題とする。一、脱出後の継続的支援を行なう。一、就労自立や福祉活用型自立など多様な自立を模索する。一、ホームレスにならないための支援を行なう――の七点の活動の方向性を持ち、国への提言活動と、全国ネットとして参加団体相互の協働活動の内容領域を持つことを確認した。また、目前の困窮する人々をいかに支援するかという緊急の課題を抱えつつも、ホームレスを生まないオールタナティブな社会の形成を模索する方向性を持つものとして設立本旨を確認した。続いて、規約運営について、事業計画および予算について確認し、役員を選任し、設立総会を終えた。
 つづいて、「提言に関する全国集会」が行なわれた。五月末に報告集会を持った「もう一つの全国ホームレス調査」を、大阪市立大学の水内俊雄教授が報告した。同調査では、野宿から脱却した人々の声を聞いた結果として、民間の無料低額宿泊所など中間施設等を利用しながら脱却をはたした人が数多く、脱却後も支援団体との生活相談などのつながりが強い場合、就業継続が高い率であること、等を報告した。
 続いて、釜ヶ崎資料センターの松繁逸夫さんが、「新基本方針に対する提言」の説明を行なった。提言の案は、十二項目の骨子からなり、基本方針の大きな見直しが必要であること、野宿生活者が「市民外存在」ではないことを明確にすることの基本を押さえ、全国で相談に訪れやすい窓口を設置すること、自立支援センターの機能の見直しを行ない多機能化を図ること、サポート体制を「完全自立」まで一貫したものとすること、雇用の受け皿になる事業の育成などである。
 以上の報告、提言をうけて、ホームレス支援ネットにいがた、NPO法人自立支援センターふるさとの会、釜ヶ崎ホームレス支援機構、京都寄り添いネットから、各地区、各組織での経験・現状からの意見表明が行なわれた。続いて会場からも多数の意見が出され、更に世話人会や、ネットを通じた議論でまとめていくことが確認された。
 支援全国ネットは、その後の検討で「提言」を確定、六月二十五日に、厚労省・国交省へ提出、各政党へ趣旨説明を行ない、国への見直しへの働きかけを開始した。
(関西Si通信員)


 7・1東京集会
  「反貧困ネットワーク」の形成すすむ
    人間らしい暮らし求めて

七月一日、社会文化会館において、「もうガマンできない! 広がる貧困 人間らしい暮らしを求めてつながろう―7・1東京集会」が、六三〇名の参加により開催された。この集会を主催したのは、反貧困ネットワーク準備会。準備会会員は、赤石千衣子(しんぐるまざあず・ふぉーらむ、ふぇみん)/雨宮処凛(作家)/井口鈴子(司法書士、高金利引き下げ全国連絡会)/市川明代(記者)/伊藤圭一(全労連)/伊藤みどり(働く女性の全国センター)/井上雅之(派遣労働ネットワーク)/猪股正(弁護士、生活保護問題対策全国会議)/内山智絵(東京精神医療人権センター)/浦松祥子(「賃金と社会保障」)/大平正巳(フリーター全般労組)/小島茂(連合)/梶谷大輔(グッドウィルユニオン)/加藤真規子(こーらる・たいとう)/川井理砂子(弁護士、埼玉生活支援ネットワーク)/河添誠(首都圏青年ユニオン)/北村賢治(放送作家)/北村祐司(中央労福協)/木村朋子(東京都地域精神医療業務研究会)/今野晴貴(POSSE)/佐藤幸樹(生存権裁判を支える会)/志磨村和可(ホームレス総合相談ネットワーク)/神野斉(明石書店)/杉村宏(法政大学、貧困研究会準備会)/辻清二(全国生活と健康を守る会連合会)/冨岡千尋(FAV)/鳥山まどか(法政大学)/中野麻美(弁護士、派遣労働ネットワーク)/中村光男(あうん)/舟木浩(弁護士、全国生活保護裁判連絡会)/本多良男(クレジット・サラ金被害者連絡協議会)/三浦仁士(フリーター全般労組)/三澤了(DPI日本会議)/水島宏明(ジャーナリスト)/森川清(弁護士、首都圏生活保護支援法律家ネットワーク)/山本創(DPI日本会議)/湯浅誠(自立生活サポートセンター・もやい)/渡辺潤(全国公的扶助研究会)、代表・宇都宮健児(弁護士)。
集会の冒頭、反貧困ネットワーク準備会の代表・宇都宮健児さんが、趣旨説明を行った。
「貧困が広がり深刻化しているわが国社会の現状に照らし、貧困問題を解決するために、個々の当事者や支援者が抱えている問題の枠を超えて、『反貧困』という一点で結びついた恒常的な組織の必要性があると考え、『反貧困ネットワーク準備会』を結成しました。…貧困は、人間の尊厳を奪い去りときには命さえも奪い去ります。また、貧困の広がりは、わが国社会を分裂させる危険性をはらんでいます。わが国社会で暮らす人々は、もう誰も貧困を見て見ぬふりはできません。とりわけ、政治家や行政は、貧困問題を解決する大きな責任を感じるべきです」と。
集会は、第一部で、「作られた対立を超えて」をテーマに、年金生活者と生活保護受給者、正規労働者と非正規労働者、給食費を支払えない家庭と学校教師、などの当事者の発言等を受けた。第二部では、「問題に取り組まない政治家はいらない」をテーマに、「反貧困キャンペーン」参加団体からのアピールが行われた。最後に集会宣言を採択し、日比谷公園までパレードを行った。
社会的格差の拡大と社会崩壊の進行、人が生きていけない事態の深刻化が、人々の怒りの声を高め、横のつながりを促進している。「当事者」自身による集団的な反抗や、資本主義に代わる新たな社会システムの創出は、いまだ萌芽段階にあるが、いずれ爆発的発展の一時代を迎えるに違いない。この集会は、そうした時代への過渡期を特徴づける熱気に包まれていた。(東京M通信員)