6・15共同行動の成功をふまえて
  広範な大衆を結集する闘いを
                    正清 太一 (9条改憲阻止の会)

 本年一月の安倍首相の年頭あいさつで「憲法改悪」をめぐる状況は一気に緊迫の度を加えてきたが、昨年の六・一五デモ以来、一〇・二一行動を闘ってきた我々、「九条改憲阻止の会」はこれらの状況に対応し、「国会前リレーハンスト、すわり込み」の闘いを四四日間に亘って敢行した。そして、これらの成果の上に、更に多くの参加者を加えて、「六・一五  
九条改憲を許さない共同行動」を闘い抜き、我々の意志を内外に大きく表明することに成功した。
 しかし、国会をめぐる状況は、自民、公明の圧倒的多数を背景に、政府与党は、五月十三日「国民投票法」を強行採決により成立させ、さらに会期延長して、年金関連法、教育基本法関連法の強行採決という暴挙を行なってきている。
 しかし乍ら、安部内閣の支持率は三三%まで、低落し、七月参院選挙の結果は予断を許さない状況となっている。
 これらの闘いを通じて、「六〇年安保世代」の立上がりに始まった昨年の六・一五デモは一〇・二一行動を通じて、各層の参加者が加わり、「三・一九共同声明」に始まる四四日に亘る国会前行動を通じて、国民各層に一定の関心を呼び動かし、七〇安保世代を始め、青年、学生の参加、沖縄基地闘争、原発反対闘争を始め、全国各地の労働者等の参加を加えて、本年の「六・一五共同行動」は、リレーウォーキング等々多彩な行動を加えて、日比谷野外集会と銀座デモでは、一二〇〇名の結集をかちとった。
 憲法九条改悪を主眼とする政府自民党は一昨年の「自民党案」の策定以来、野党民主党を巻き込んで憲法改訂を実現するという野望を以て、民主党の一部に画策を続け、憲法改訂のための「国民投票法」の制定を目指してきたが、我々の闘いを始めとする、世論の動きを前に、民主党内も微妙なブレを起こし、野党各党は「国民投票法」にこぞって反対の立場を明らかにした。しかし、国民投票法の成立によって、憲法九条問題は三年後以降に実施される国民投票の結果に懸かることとなった。更に、憲法改訂案の策定を狙う与党は、国会閉会中でも開催できる「憲法審査会」を設置し、野党も巻き込んだ「改定案」の策定を企んでいる。
 我々はこれらの状況を踏まえて、二つの方向での闘いを直ちに用意することが必要である。
 第一の闘いは、政府与党が準備している、「実質改憲」の策動である「集団的自衛権解釈の見直し」の動きに対する抗議、反対闘争、及び「憲法審査会開催」に対する抗議、反対闘争である。
 もう一つの闘いは、広範な国民大衆に「九条改憲反対」の我々の意志を訴え、国民の過半数を我々の側に獲得する闘いである。
 この二つの闘いを有機的に結合させる取組みをいかに実現するかが我々の長期的展望の中で位置づけることこそ重要であると思う。
 未だ広範な国民大衆の中では、我々は一部の少数者に過ぎない。しかし、本気で闘える集団に発展する可能性を秘めている多くの仲間がいることを信じることは出来る。そして我々の未だ会ったことのない「九条改憲」に反対や疑問を感じている多くの人達が全国に圧倒的に多数いることを確信できると思う。しかし、それらの人々は今ではまだ、閉ざされた多数の「点」に過ぎない。我々はこの「点」と「点」を結び、「線」とする運動が何よりも必要だと思う。そして、それが更に「面」に発展した時、我々の勝利があると確信している。今日、憲法九条に反対する、先発の運動が全国に多数存在することを知っている。然し乍ら、これら運動が、必ずしも、今日の状況に有効な影響力を発揮していないことも否定できない。
 私のささやかな経験でも、ある会合で出会った人は「いつも同じメンバーが集まっているのよね。」というなげきがある一方、リレーウォーキングでは「あなた方は何党の方ですか」と聞かれた。街頭で会ったその年輩の女性は自分の戦争の体験を語り、我々が党勢拡大のための運動ではないことを知り、激励とカンパをもらった。我々はこれらの一つ一つの経験を持ち寄り、次の運動に繋げていかねばならないと思っている。
 未だ、「九条改憲阻止の会」の運動は立上がったばかりの状態であるが、「小異を問わず、九条改憲を許さない」一点で結集する運動を提起していることは無限の可能性があることを信じたい。
 しかし乍ら、国会の議席の分布を見ると、既に自民、公明だけで3分の2を握り、野党の中でも何時「改憲」に寝返るか判らない勢力が含まれており、我々がかつて学生運動を闘っていた六〇年・七〇年安保の時代とは決定的に異なる様相である。それは、国民の多数の死票の上に成立する「小選挙区制」の結果でもあるが、一方ではかつては大きな力を持っていた労働運動が形がい化し、市民運動には殆ど力を期待できない状態であることも事実である。
 憲法九条に関しては、五二年、警察予備隊結成、保安隊から自衛隊発展へと実質的改憲の道は日米安保条約改定との矛盾をかかえ乍ら進み、「非核三原則」を中心に歴代政権は一定の自制を続けてきた。しかし、カンボジア自衛隊派遣に始まり、PKO派遣という名による自衛隊出兵にとどまらず、「対テロ特措法(アフガン)」「イラク特措法」制定という戦時自衛隊派遣を強行し、後方支援という名の「戦争協力」を行なってきている。そして、アメリカの「核のカサ」によって、日本の安全が保障されたと公言する政府自民党の国民を欺いている態度を我々はとうてい容認することはできない。しかし、一方では、彼等が常に外国との交渉で言ってきたように「憲法の制約」があるので「軍事的参加」ができないという一定の歯ドメがあったことも無視できない。だからこそ、米国の強い要請に基づく「憲法九条」改定をかかげてきているものである。九条改悪は、アメリカと一体となって「自衛軍」を海外に派遣し、国際紛争に介入していく自由を獲得する手段にほかならない。
 我々は、かつての新左翼と呼ばれた高齢者の集団の立上がりに始まった闘いを、更に発展させ、議会主義だけが民主主義であるとするブルジョア民主主義を突破する広範な市民を結集する闘いに発展させなければならない。
 そして、三五〇〇万(有権者過半数)の国民に改憲阻止の意志表明をかち取らなければならない。
 そのためには、中央の国政に機敏に対応する闘いと、国民一人ひとりとの全国に発展する対話をどのように成立させるのか、大衆から何を学ぶかという、柔軟かつそう大な闘いを展開できるかが今日の課題だと思う。そのことが、巨大な、グローバル化した資本の利益に支えられた日本支配層に対する革命的闘いであることを革新する。(了)


「9条改憲を許さない6・15共同行動」に一千余
    連帯は世代を超えて

 六月十五日、「9条改憲を許さない6・15共同行動」が東京・日比谷野外音楽堂などで終日繰り広げられた。主催は、「9条改憲阻止の会」の人々を始めとする七百名に近い呼びかけ人による実行委員会。
 その日午後、前段行動として宣伝リレーウォークが都内四コースで展開され、その後衆院議員会館で全国交流会、衆院議員面会所で国会要請が行なわれ、そして60年安保闘争での樺美智子さん虐殺の日であるこの日、国会南通用門で樺さん追悼献花が行なわれた。
 午後六時過ぎからは日比谷野音で決起集会が行なわれ、約一千名が参加した。
 集会では、小川登さんが開会挨拶、蔵田計成さんが経過報告を行なった。昨年6・15から始まった60年安保世代の個々人による改憲阻止の決起が、今年三〜五月の国会前連続ハンストを経て、世代と分野を超えて連帯を広げてきていること等が報告された。
 国会報告を保坂展人さん(衆院議員・社民)が行ない、ジャーナリストの斎藤貴男さんが連帯発言、名護ヘリ基地反対協の安次富浩さんが沖縄報告、作家の雨宮処凛さんが「生きさせろ!難民化する若者たち」と題して発言した。
 つづいて、たんぽぽ舎の柳田真さんが反原発・反核開発をアピールし、フリーター全般労組の摂津さん、法政大の学生、女性から江田雅子さん、正清太一さんのリレーウォーク報告と続いた。
 さらに、国会前連続ハンスト参加者からとして、栖原弥生さん(北海道)、福山主税さん(九州)、新開純也さん(関西)が各地の運動を含めて報告し、ハンストニュースを出し続けた三上治さん、連日参加の篠田常木さん、まとめ発言的に下山保さんが発言した。
 最後に、集会宣言案が塩川喜信さんから提案され、力強く拍手採択された(別掲)。シュプレヒコールと国際学連の替歌などを斉唱したあと、参加者は銀座方面へのデモ行進を行なった。
 ここ一年の闘いの成果を集約し、今後のさらなる連帯の広がりを予感させる終日行動であった。(東京W通信員)
 

   6・15集会宣言
          9条改憲を許さない6・15共同行動

 私たちは今日、この日比谷野外音楽堂に、「9条改憲を許さない」という決意を表明するために集まりました。私たちは、昨年の6・15デモを出発点とし、本年3月から5月にかけて国会前でのリレー方式の座り込み・ハンストを行ってきました。こうした行動の中で得た、9条改憲に反対の人たち、疑問を持つ人たちとのふれあいを糧に、私たちは今日のこの集会への力を積み上げてきました。
 私たちは、組織の指示や命令によってではなく、一人ひとりの個人として、自分自身の意志と決意に基づいてここに参加しています。
自由民主党が発表した「憲法改正草案」によれば、第9条は「自衛軍を保持する」と改訂され、「国際社会の平和と安全を確保するために」という名目の下に、現在イラク出兵に見られるような他国での戦争に参加することが認められ、さらに「緊急事態における公の秩序を維持」するためと称して、国民に対する国家統制を行える枠組みが作られようとしています。そしてこれらの一部は、「解釈改憲」という形で既成事実化されつつあります。安倍首相が指示した「集団的自衛権」の見直しも、こうした動きの一つと考えられます。  
現在、暴力、戦争、殺し合いが世界中で繰り広げられている中で、私たちは現行憲法の第9条が示す「武力行使の放棄」および「戦力の不保持」を、世界的な価値規範として広げることこそ大切だと考えます。これに逆行するのみか、日本を軍事大国化することにつながる第9条改憲を私たちは許すことができません。
 ここに集まった私たちは、「9条改憲阻止」という点を除けば、様々な意見の相違を持っています。しかし今、私たちは国の先行きを危うくし、民衆に再びかつての危難と悲惨な状況をもたらす9条改憲をゆるさないというこの一点での一致を大切にし、小異を残して大同につくという共通の了解のもと、ここに集まりました。
 かつての運動の中には、意見の一致点よりも相違点を強調し、ある場合には暴力的対立抗争に及ぶという傾向もありました。私たちはこうした傾向を、運動の利益よりも政党・党派の利益を優先させるものであり、有害無益と考えています。
 私たちは、さまざまな人たちやグループ・組織が、改憲に反対する行動を起こし、研究会や講演会を組織してきたことを知っています。私たちは先行する運動に学び、連帯し、運動の輪を広げていきたいと思っています。
 本日のこの集会を出発点として、私たちは、「9条改憲阻止」のために今後も参加者それぞれの創意工夫と、それぞれの生活に即した運動を続けていきたいと思っています。自民党と公明党などが強行した国民投票法によれば、3年後には憲法改正が発議されるかも知れません。今日ここに集まった私たちは、7月の参議院選挙を始めとして、国政・地方選挙において、9条改憲反対派の議員が議会で多数を占めるよう投票するのは勿論、自分の職場や学園、自分の住む地域、自分の関わる組織・サークルなど、あらゆる場所で、9条改憲阻止の運動を広げていく決意を表明します。
 私たちはすべての人々に呼びかけます。9条改憲を許さないため、共に力を合わせていこうではありませんか。
           二〇〇七年六月一五日