改憲国民投票法は強行成立したが、安倍政権は末期状態に
今こそ憲法闘争勝利の展望を
改憲国民投票法案が五月十二日・参院特別委員会、十四日・参院本会議で与党自民・公明によって強行採決されて成立し、憲法闘争は、改憲国民投票法の施行まで三年間の間の攻防という新たな段階に入った。その緒戦が、七月参議院選挙となっている。
安倍連立政権は今回、「改憲手続き法」を強行突破させたものの、憲法改悪の段取りを順調に進めるその後の展望があるわけではない。安倍政権の困難な内外環境は深刻なものがあり、その改憲スケジュールは破綻させることができる。われわれ憲法改悪阻止の側は、広範な共同戦線をいまだ形成できていないという弱点を直視しつつも、勝利の展望をもつ必要がある。、
五月二八日、松岡農水相が現職閣僚として初の自殺に走った。これは、松岡を含めた安倍一派のもろさを露呈し、その政治的反動性と表裏一体の旧態依然たる腐敗性をバクロした。デタラメ事務所経費問題で安倍が解任しないままにしているうちに、林道官製談合問題で松岡の手下らが二四日逮捕された。松岡は辞めることも居直ることもできず、安倍に殺されたも同然とみられている。自殺という形で事件を闇に葬ろうとするならば、安倍こそ万死に値する。
安倍政権の弱さは、松岡自殺問題に尽きるものではない。迫りつつある安倍政権の倒壊を、憲法改悪勢力全体が分解・崩壊する過程の始まりとしていかねばならない。
第一に、安倍政権の下では、憲法改定案の発議に必要な国会両院三分の二以上を占めるところの、改憲派の「統一戦線」を作ることは困難である。
安倍政権と憲法改悪勢力は、昨年の教育基本法改悪に続いて、改憲国民投票法案についても、自民・民主の二大ブルジョア政治勢力によって「大連立」的に成立させることに失敗した。両院で三分の二以上を占めるために、「大連立」的に憲法改悪の過程を進行させることが改憲勢力に問われていたにもかかわらず、かれらはそれに失敗したのである。
もちろん、衆院段階では与党案と民主党案との擦り合わせが民主・枝野幸男委員を窓口に執拗に行なわれ、また参院では民主党が中央公聴会を省いた採決日程に合意するなど、改憲派としての自民・民主の同質性は重ねてばくろされている。しかし結果、民主党は「極端な賛否両派の対立構図が続くうちは、まともな改憲論議ができない」(枝野)などとして、改憲論議からの当面の逃走を決めてしまったのである。現状では、いわゆる政界大再編が行なわれないかぎり、改憲発議・国民投票実施は不可能であると言ってよい。
安倍政権が民主党などを抱きこんだ進行に失敗した根本的な要因は、民主党の支持基盤を含めた形で、憲法9条改悪反対の労働者人民の運動が全国で堅持され前進しつつあるからである。この9条改憲阻止勢力が、安倍ら9条破壊勢力との「対立構図」を鮮明に作っていることによって、民主党は身動きが取れなくなったのである。
第二に、安倍首相とその取り巻きの極右的性格によって、安倍連立政権は国内的に孤立する以上に、国際的孤立をいっそう深めざるをえない。
安倍一派の戦後体制脱却・侵略戦争無反省・天皇制国家主義という極右的性格は、あまりにも反動的であるため、連立相手の公明党との軋みを生んでいるとともに、そのままの形では国民多数の支持を得ることは決してできない。
それ以上に国際的孤立は深刻である。侵略戦争の清算を求め日本軍国主義復活に反対してきたアジア諸国などの政府・国民から孤立しているだけでなく、第二次世界大戦の戦勝国であるブルジョア民主主義帝国主義諸国からも、その反動性が警戒されるようになっている。日本の改憲策動の要因の一つは、アメリカ帝国主義が同盟軍・自衛隊の戦闘参加を期待し改憲を要請しているからであるが、ブッシュ政権も日本軍国主義の復活までを要請した覚えはない。安倍一派は、朝鮮半島六者協議や米議会の日本軍「慰安婦」決議案での国際的孤立の中、拉致問題を政治的に利用し排外的ナショナリズムを扇動することにしか、政権延命の手がないという有り様である。
改憲が安倍政権の下で行なわれることは、国際的に誤解を与えてしまい得策ではない、とする傾向が改憲勢力の中にも生まれている。安倍一派の政権ではブルジョア的国際協調に問題があるとし、米国での民主党への政権交代を視野に入れた日本での政界再編が動き出す可能性があるだろう。
現在、第一に問われていることは、安倍極右一派を徹底的に孤立させ、広範な共同戦線で右派政権を打倒することである。それは可能だ。改憲国民投票法、米軍再編特別措置法に続き、終盤国会で安倍政権は、イラク派兵延長法案、教育改悪三法案などを次々と成立させようとしているが、これは小泉時代に得られた数の力のみによるものであり、決して政権の強さ・求心力を示すものではない。
次に問われることは、自民・民主などの「大連立」が形成されることを今後も阻止しつつ、「第三極」政治勢力の共同を基礎として、9条改憲阻止の最も広範な共同戦線を具体的なものにしていくことである。
以上のことから当面する参院選挙においては、選挙区の多くでは、安倍連立政権支持候補を打倒する一点に絞った選挙対応が必要であり、比例区と定数の多い選挙区においては、9条改憲反対などの政策が明確な候補者、そのリストを支持することが必要だ。たとえば東京選挙区では川田龍平、沖縄選挙区では糸数慶子、比例区では山内徳信、上原公子に投票を集中しよう。
本来は、選挙区では勝てる共同候補、比例区では「第三極」的共同リストによって今参院選は戦われるべきであった。しかし今回も、日本共産党、社民党などのセクト主義、比例票目当ての選挙区乱立によって、自民・公明を追いつめる布陣にはなっていない。また「共同」を求めて結果、比例票を分散させる一部の対応も無意味である。
向こう三年間余の間には、総選挙ともう一回の参院選がある。自党の議席を追求するよりも、9条改憲反対が「三分の一」を占めること、また改憲勢力を分解させて「三分の二」を作らせないこと、これが優先して追求されるべきである。憲法闘争の決戦段階ではそれが必要なのであり、諸政党の猛省を求める。
広範な共同戦線で右派を打倒し、さらに改憲発議ができない政治情勢をかちとろう。