九条改憲反対の世論と運動が全国で前進
 改憲手続き法案を廃案へ

 改憲国民投票法案の衆院強行採決を与党のみで強行した小泉連立政権は、集団的自衛権行使を改憲以前に解禁するための懇談会を四月二五日に設置し、これを手土産に翌日首相として初訪米した。しかし、小泉政権の改憲強行姿勢は、最近の世論調査にみられるように国民的警戒心を高める結果となっている。5・3の全国各地での闘いの成果をふまえ、五月の参院国会闘争などに全力を上げ、「改憲手続き法案」もろとも安倍政権を打倒しよう。広範な共同戦線で右派を打倒し、9条を生かすことのできる日本政治の当面の転換をかちとろう。


5・3東京
 日比谷憲法集会&パレード
   闘いの成果を更に

 五月三日の日本国憲法施行六十周年の記念日、東京・日比谷公会堂の内外では「2007年5・3憲法集会」が、「改憲手続き法はいらない」「生かそう憲法・守ろう9条」などのスローガンを掲げて開かれた。集会後、憲法改悪阻止を訴える盛大な銀座パレードが行なわれた。主催は、憲法八団体による集会実行委員会。
 今年の5・3の諸行動は、改憲国民投票法案が四月に衆院で強行採決され、参院での阻止が山場になっている局面で行なわれている。この日比谷の集会&パレードには、例年の5・3を上回る約七〇〇〇名が参加し一定の盛りあがりをみせた。現在、国会内では厳しい局面にあるが、憲法改悪阻止の世論と運動においては前進局面にあることが印象づけられたのではないか。
 集会は開会午後一時の時点で、すでに公会堂内は満席、大型スクリーンが設置された日比谷公園広場側に数千人。さらに続々と参加者がやってくる。
 最初に、主催者から鈴木伶子さん(平和を実現するキリスト者ネット)が開会挨拶。安倍首相は六十年たって憲法は古いなどと言っているが、今こそ生かしていくものだ、食品の賞味期限と間違えるなとの発言に会場は沸いた。
 スピーチでは、植野妙実子さん(中央大学教授)、浅井基文さん(広島市立大学広島平和研究所所長、元外務省)が講演。植野さんは憲法学者として、自民党はその新憲法草案で新しい権利等いろいろ言っているが9条改憲が狙いであることは明らか、そして9条が変えられると基本的権利が次々と変えられる構想になっている、国民投票法案は最初から出直すべきだと批判した。
 浅井さんは、風邪をおしての登壇であったが、「世論調査では9条改憲賛成がここ三年間で22%も減っており、9条改憲反対はさらに優勢になっている。運動の成果だ。この情勢において共産党、社民党の両党首にお願いしたい。小異を残して大同についてほしい。それができなければ政治責任が重く問われることになる」と直言した。参院選挙を目前にして、率直かつ重要な発言であった。
 憲法改悪阻止各界連絡会議の仲間からのカンパ・アピール、女性コンビ「オオタスセリ」による歌・コントの後、政党からのスピーチ。
 社民党の福島みずほ党首と、日本共産党の志位和夫委員長が発言したが、浅井さんの提起に具体的に何か応えたというものではなかった。
 最後に、許すな!憲法改悪・市民連絡会の仲間から、集会アピールが提案され採択された。アピールは、憲法記念日前の各メディアの「世論調査などの結果は、この国で『憲法9条を変えない』との声が、『9条改憲』の声を大きく引き離していることを示しています。そしてこうした傾向がこの数年、ますます強まっていることもあきらかにされました。これは(中略)運動の成果であり、9条改憲をして『米国の戦略に従って海外で戦争をする国』を作り上げようとする安倍内閣に対抗する力強いエネルギーの反映にほかなりません。」と現情勢をとらえている。
 連休明けには、参院で改憲手続き法案を廃案へ!の闘いが緊迫する。中期的には七月参院選挙がある。情勢は、共産党系、社民党系、各左翼系、無党派などの人々がただ一緒に集会をやるという段階(それもまだ不十分であるが)に止まるのではなく、より広範な共同戦線の形成を具体的なものとし、憲法闘争が新しい段階に入ったことを全労働者人民にアピールする時期に近づいている。
 大きな歴史的闘いが近づきつつあり、我々は勝利するだろう。(東京A通信員)


5・3京都
 平和憲法60周年のつどい
  
広範な共同で2400

 京都においては五月三日、二四〇〇名の結集で「生かそう憲法!守ろう九条!改憲手続き法はいらない! 平和憲法60周年のつどい」が京都会館第一ホールにてもたれた。主催は超党派的な参加による5・3憲法集会実行委員会。
 講演は、「憲法行脚の会」事務局長で弁護士の猿田佐世さんと、「九条の会」事務局長で東大教授の小森陽一さんのお二人。
 猿田さんは自らを素人国会記者と自称、このかんの改憲手続き法案(改憲国民投票法案)の国会審議状況を説明し、数人の議員のみで議事がタライ回しされる現実、形式的な公聴会の模様など全く非民主的な運営をばくろしてくれた。これに対して国会外での法案反対の盛り上がりはもう一つであること、一人でも多くの人々に口コミでも法案の本質をばくろし、運動を拡大していこうと訴えた。
 小森さんは、米朝戦争は朝鮮戦争の休戦協定があるだけで今も終結していないという現実を提起しながら、安倍政権が改憲策動の中で、いかに北朝鮮を仮想敵にして集団的自衛権行使の世論作りを行なっているか、をていねいに説明した。
 お二人の話に共通している点の一つは、日本国憲法とりわけ9条が、アジアをはじめアフリカ等で国際的に高い評価を得ていると明言したことである。痛恨の体験からの不戦の決意として、9条を日本の民衆こそが誇りをもって堅持すべきだ、また、各国人民の励ましの中にこそ、反改憲運動のエネルギーを持つべきではないかと感じられた。
 京都でのこの大きな結集を5・3の一日に終わらせることなく、たえまない草の根的運動の広がりへ、という思いを講演者と参加者が共有した集会であった。
 集会後、四条河原町へ向けてデモを繰り広げ、連休でごったがえす人々に「国民不在の投票法案反対!」などを大きくアピールした。このような取り組みの継続は、京都での闘う統一戦線の形成を保証していくだろう。(関西I通信員)
 

5・3大阪
 「9条の会おおさか」など諸行動
   全学連OBも起つ

 大阪での5・3は、「九条の会・おおさか」の主催での「憲法施行60周年のつどい」をはじめ、諸行動が展開された。
 「九条の会・おおさか」の集会は、市内・上本町の国際交流センターに約一八〇〇名が参加し、映画監督の井筒和幸さん、元広島市長の平岡敬さん、関西大学法科大学院教授の木下智史さん、大阪府生協連合会会長の津村明子さんがそれぞれに憲法九条擁護を語った。
 井筒監督と木下教授の対談が集会でもあったが、このお二人は、『憲法が変っても戦争にならないと思っている人のための本』という刺激的タイトルの本を共著で出している。井筒監督の『パッチギ』続編がもうすぐ全国上映になるが、映画とともに読むと面白いかもしれない。
 また大阪では同日、平和人権センターが独自の憲法集会を行ない、自治労や日教組の人々は「九条の会」とは別行動となった。結果、分散という印象は免れないが、共同戦線の大枠での前進は今後も大切にされるべきである。
 また、関西での全学連・全共闘・学生運動OBの人々(呼びかけ人代表は小川登、新開純也の両氏)により、「9条改憲阻止!国民投票法案粉砕!5・3関西集会」が行なわれた。中之島公園に二百人余が集まり、梅田デモを行なった。東京での「9条改憲阻止の会」の国会行動などに、関西で呼応するものである。
 それぞれの取り組みを尊重しつつ、大きな共同戦線で憲法闘争に勝利しよう。(関西S通信員)


改憲国民投票法案粉砕!国会闘争は続く
  5月中旬参院山場に全力を

 改憲国民投票法案は与党のみで無理やりに衆院突破が強行されたが、連休明けの七日に札幌と福岡で地方公聴会が行なわれ、五月中旬が参院の山場となる。このかんのおもな闘いを踏まえ、参院で廃案へ!をかちとろう。
 衆院憲法調査特別委員会で強行採決が行なわれた四月十二日には、東京・日比谷野音で「STOP!改憲手続き法案4・12大集会」が行なわれた。主催は、〇七年5・3憲法集会実行委員会。
 集会開会の直前に強行採決が行なわれたため、参加者は怒りの面持ちで次々と結集し約五〇〇〇名の行動となった。
 主催者あいさつでは、許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田建さんが、最近の各世論調査では9条改憲反対の声が増えており、また改憲手続き法案については与党支持の人々でも早期成立には反対している、政府・与党は強行姿勢だが孤立している、参院で廃案は可能だと訴えた。国会報告は日本共産党の志位和夫委員長、社民党の福島みずほ党首。
 関西からは、三月二八日の大阪公聴会の公述人であった中北龍太郎さんが、「とめよう改憲!おおさかネットワーク」の仲間とともに登壇し、関西での法案阻止の闘いを報告した。
 つづいて、ミシガン出身のアーサー・ビナードさん(詩人・随筆家)がスピーチ。在日十七年の日本語もうまいが、静かな物言いの中に日米の政治を批判する厳しさには見事なものがあった。日本国憲法は「古いのではなく、未使用」と強調した。
 集会後、国会へデモ行進。明日の衆院本会議採決は許さない、廃案かちとろうの人波が続いた。
 十二・十三日の委員会・本会議通過は、与党自公のみの強行採決となり、憲法問題での「大連立」的な進行という当初の改憲勢力のもくろみは全く破算してしまった。右派色の強い安倍政権が強引なことをやっている、憲法をめぐる世論は敏感に反応しつつある。
 参院での逆転勝利は可能だ。個人と市民諸団体などによる「STOP!改憲手続法 国会へ行こうアクション」は、四月十七日に第三波国会行動を冷雨のなか五百人、四月二六日には第四波を七百人で行なった。
 六十年安保闘争などの学生運動OBによる「9条改憲阻止の会」は、三月二十日の国会前ハンスト突入以降、土日を除いて連日の座り込み行動を五月二日までやり抜いた。一月半に及ぶ国会行動は、ここ半世紀の学生運動経験者の再会の場となり、また他の国会行動を闘う人々との交流の場ともなった。「9条改憲阻止の会」は五月三日は日比谷の憲法集会に合流しつつ、対参院の国会行動を続ける。六月十五日には日比谷野音で大集会をひらく。
 連休明けの対国会闘争に職場・地域から結集しよう。改憲手続き法案を廃案へ追いこみ、安倍連立政権を打倒しよう。(A)