07けんり春闘3・23一日行動を展開
  中小・非正規の権利かかげ

 三月二十三日、けんり春闘全国実行委員会による〇七春闘・第二派統一行動が首都圏で行なわれ、午後三時半からは「07春闘勝利!労働法制改悪反対!3・23中央総決起集会」が永田町の社会文化会館で開催された。
 「〇七けんり春闘」は、三月十四日のトヨタなど民間大手の低額回答をはねのけ、二十三日を春闘山場の一日行動日として闘った。朝からのスト突入・社前集会、昼には日本経団連前行動で偽装請負・違法派遣の是正等を要求し、また「過労死は自己責任」等の暴言を吐いた奥谷禮子社長「ザ・アール」への抗議行動などを展開したうえで、上記の春闘中央総決起集会およびデモ行進を行なった。
 中央総決起集会では、藤崎共同代表の主催あいさつに続き、スト決起した東京労組、電通労組をはじめ、全石油昭和シェル労組、国労闘争団、郵政4・28全国ネットワークなどが決意表明。労働契約法案をはじめとする労働法制改悪に断固反対し、憲法改悪などを許さず、安倍政権と対決する姿勢を明確にした集会決議を採択した。
 また集会は、「外国籍の働く仲間、同僚を切り捨て、労使対等原則を壊す雇用対策法改正反対! 外国人労働者の個人データ届出義務の削除を求める特別決議」を採択した。雇用対策法改定案は国会に提出された労働法制六法案の一つであるが、外国籍労働者のみを対象として、名簿・個人データの厚労省への届出義務を罰則付きで新設しようとしている。データを法務省と共有するとしており、外国籍労働者の人権を侵害し治安管理するものである。
 今春闘では、すべての労働団体が「格差社会反対」を言うなか、けんり春闘実行委員会が、中小・非正規の労働者、外国人労働者の権利と人権を高く掲げて闘っていることは大事な点である。
 三月三十日には、各争議を連帯して周る今春二回目の東京総行動を行ない、「国鉄闘争3・30中央集会」(国労など四者・四団体の主催、午後六時半・日比谷野音)に合流する。
 けんり春闘の集会・デモに連続して、同日午後六時半からは同じ社文会館で、「労働時間の規制撤廃と『労働ビッグバン』を許さない3・23集会」が同集会実行委員会の主催で開かれ、約五百名の労組員などが参加した。これは、けんり春闘実行委員会に参加する全労協や全港湾など、また「共同アピール運動」に参加する各ユニオンなど、および全労連とが共同して行なったもの。
 この労働法制の集会では、日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎さんの主催者あいさつのあと、「労働国会」などの報告が民主党、日本共産党、社民党の各国会議員から行なわれた。
 連帯あいさつが、「韓国労働健康連帯」のイ・サンユさんから行なわれた。韓国では、二年間を超えると正規雇用化する法案が通過したが、資本はこれを悪用し、二年で解雇する動きとなっている。また製造業で禁止されている派遣が合法化されようとしている。韓国でも日本でも、労働者の権利を破壊し、長時間労働を強いるやり方は同じ、韓日労働者は連帯して闘おうという報告であった。
 つづいて、連合加盟の全国ユニオンから鴨桃代会長、全労協の全石油昭和シェルから柚木さん、全労連の全日本金属情報機器労組から生熊さん、全港湾から伊藤彰信書記長が決意表明を行なった。
 柚木さんは、パート法改定案を一定評価する向きもあるが、差別・分断を固定化するもので私は反対だと述べた。生熊さんは、労契法については労働団体で意見の違いがあるが、「不利益変更」ができるとする部分を削除しないかぎり、全労連としては断固反対すると述べた。伊藤さんは、労契法は出向条項で偽装派遣を合法化する狙いがあるのではないか、資本の大きな狙いは、正規雇用の不安定化という点にあると分析した。
 集会アピールを採択したあと、国会請願デモに出発した。
 労働法制をめぐる闘いは、運動の成果として、政府・与党にホワイトカラー・エグゼンプションの導入を今国会においては断念させたが、その結果、労働界と世論的には、提出された労働法制諸法案に関心が弱まる状況を生んでいる。とくに、就業規則万能法というべき労働契約法案について、連合中央が容認する姿勢にあることは、反対運動を広げるうえで障害となっている。3・23集会でも、国会議員の発言の中には、エグゼンプションを阻止してよかったねと安易に語り、直面する課題を見えなくする嫌いが感じられた。
 提出法案の審議が始まろうとしているが、広範な闘う態勢の再構築が問われている。(東京F通信員)
 
 
大阪市による二月・長居公園での強制排除、
三月・住民票登録削除に断固抗議する

  日雇・野宿労働者の人権守れ


 大阪市は去る二月五日、長居公園(東住吉区)で野宿生活を強いられている労働者六名のテントを強制撤去し、排除した。
 また市は三月二九日、「釜ヶ崎解放会館」2016人、「NPO法人釜ヶ崎支援機構」66人、「ふるさとの家」6人の合計2088人分の住民登録の削除を強行した。
 いずれも、野宿を強いられている労働者の野宿からの脱却のための根本策を実行しないまま、固定した住居を持つことのできない状態にある者の基本的な人権・市民的諸権利を奪う暴挙である。「ホームレス自立支援法」の見直し年度にあたる今年に、法施行の基本に反し、施策の後退を続ける大阪市のこの姿勢は、厳しく糾弾されるべきである。
 長居公園の排除では、直接には散策路や街灯の整備工事を理由にしつつも、今夏の世界陸上の会場となる長居公園からの野宿労働者の排除が目的であることは明白である。昨年一月の靭公園や大阪城公園での強制撤去以降も、大阪市内の小公園での追い出しが重なっている。入居期限があり、また就労自立に実効力をもたない自立支援センターの問題にはフタをし、また代替地の提示を求めた弁明書も却下したうえで、市は強制撤去を強行している。
 長居公園の当日は、市職員260名、警備・作業員300名が動員され、機動隊も配置される中、朝八時よりテント三張りのある公園西側を封鎖し、九時より撤去が強行された。公園の労働者は、支援者約150名と遊歩道路脇で、郵便局員が郵便物をテント村まで配達してくるという一幕の芝居を演じながら、抗議行動を行なった。十一時には舞台にも排除がかけられ抵抗行動が続けられたが、十二時前には排除された。抗議行動は午後まで続けられたが、同意なき、また野宿からの脱却に有効な施策のないままの強制排除は、解決をさらに遅らせるばかりである。
 「住民登録排除」問題は、京都府警に逮捕された元警察官がネットで住民票を購入し、別人になりすまして詐欺事件を起こしたことを契機に、昨年十二月七日、マスコミが「44平方mに3500人」「架空登録」「違法登録」「虚偽登録」などの見出しで報道・放映したことに始まる。その二十日にはさらに、「釜ヶ崎支援機構」に129人、「ふるさとの家」に27人が登録されていると大阪市市民局が公表し、市議会で取り上げられるや、「居住実態のない住民票の適正化」=職権による削除を、市の幹部が指示するに至ったものである。
 釜ヶ崎での運動体や福祉団体の事務所に住民登録が行なわれるようになったのは、八六年に、あいりん職安が日雇い雇用保険手帳を申し込む際に管轄内の住民票添付を義務づけたためである。定まった住居がなく飯場や簡易宿泊所(ドヤ)を転々としたり、それすらできず野宿をせざるを得ない労働者が住民票を設定することができないため、労働組合や福祉団体の建物に、定住し住民登録ができるまでの一時期として設定してきたものである。東京都台東区や横浜市のように行政の窓口や寿会館に住民票を置く代替策なりも、釜ヶ崎ではとられていない。解放会館などへの設定は、手帳取得のみならず、選挙権・被選挙権、国民健康保険など社会保険への加入、運転免許証の取得および再交付など、あらゆる生活面で住民登録が必要となる中で行なわれてきたものである。
 このかん行政サイドでも現実的には、区役所へ行けば「困っているなら会館へ」と言われてきたし、選挙の際には、釜ヶ崎地区内の投票所(萩之茶屋小学校)では、解放会館に住民登録をしている人のために独自の受付け場所を設けてきたのが実態なのである。
 今回の大阪市の実態調査から削除へという方針に対し、釜ヶ崎支援機構とふるさとの家は共同で十二月二七日、消除(削除)方向に偏ることなく、固定した住居を持つことのできない市民に対しての根本的な解決策をソーシュルインクルージョンの視点から検討対処すること、それまでの暫定・臨時的な措置を行なうこと等の要望書を市に提出した。さらに削除強行の動きが強まる中で三月十六日、簡易宿泊所等へ登録を移せない労働者に対して当面、市立更生相談所を窓口とした移動と相談体制を設けるよう、緊急の要望を提出してきた。
 大阪市は一月二三日、(今までも一年に一回は居住確認に来ており、長年居住を確認できない者は随時消除してきていた実態にもかかわらず)実態調査にのりだしたが、これに対し、解放会館では調査が拒否された。二六日から西成区役所に「相談窓口」を設置するも、説明を求めに来た労働者に、窓口の職員が応援派遣のため説明すらできない状態が判明した。一方、簡易宿泊所で登録可能との方針を報道するも、簡易宿泊所組合側は知らされていない実態も明らかにされ、統一地方選までの期間に、とにかく削除するという市の姿勢が続いた。
 二月二三日には、「三月二日の削除」予告書が三ヵ所住所地に送付された。二六日より大阪市役所前での抗議行動が取り組まれた。また、「釜ヶ崎のまち再生フォーラム」は一月九日、二月二八日とフォーラムを開催し、まちづくりNPOの立場より、自立支援や社会的包摂の流れに逆行する市を批判してきた。
 三月一日、釜ヶ崎解放会館に住所を置く住民の削除執行停止を求めた仮処分申請を、大阪高裁は簡易宿泊所への移動などの周知期間が短すぎるとして認める決定を出した。これによって大阪市は二日の職権削除を見送ったが、三週間だけ周知期間を延ばし、さらに統一地方選告示日直前での削除を意図してきた。三回に渡る、ドヤ組合も含めた有志一同や、住民票削除に反対する実行委員会などによる市との交渉の中で、市側は、従来の行政側の措置を認めながらも、またドヤ組合からは事前の宿泊証明の発行基準のあいまいさを指摘され認めるなどしながらも、結局二九日、その日の交渉でも応答することなく、閉庁後の西成区役所で削除を強行したのである。
 今回の住民登録問題には本来、従来の「住民登録法」や現在の「住民基本台帳法」による「住民」「住所」の規定のあいまいさが根底にある。「生活の本拠」と規定されているが、固定した住居を持つことのできない状態の日雇労働者(飯場やドヤで居住)や野宿労働者は市民的権利の枠外に追いこまれている。居住実態のない登録が違法とするならば、根本的に、基本的人権の侵害である野宿生活を余儀なくされている状態の解決こそ図られるべきである。単なる「居住実態のない者に対する住民登録の是非」の問題にするのではなく、その状態を強制されている野宿問題の居住・就労・福祉からの解決を図っていくべきだろう。
 二月長居公園の強制排除、三月住民登録削除という大阪市の行動を改めて批判する。(大阪S通信員)