動揺する安倍反動政権の「5・3成立」居直りを粉砕し
  全力で「改憲手続き法案」阻止を

 政府・自民党内で安倍首相の指導力を疑わせる事態が続き、憲法問題で参院選挙を戦えるのかという党内の疑問もある中、安倍は二月末の自民党役員会でも改憲国民投票法案の「五月三日までの成立を」と繰り返し、虚勢を張った。
 米政権の対朝鮮政策の一定の転換と六者協議合意に、内心相当なダメージを受けた安倍首相とその取り巻きは、米政権内で後退しつつあるネオコン一派のチェイニー副大統領が二月二十一日に来日したことを頼みとして、日米ネオコン派の同盟を演じてみせた。これは没落しつつある者同士の滑稽な結託ではあるが、現世界情勢の中での日本の政権の在り方としては、これほど危険かつ孤立した在り方はない。
 「憲法改正」を公約とする安倍連立政権にとって、今国会で改憲国民投票法案に失敗することは命取りになる。この「改憲手続き法案」を阻止することに全力を上げ、参院選での自民・公明の敗北もろともに安倍右翼政権を打倒すべき時が来ている。また、この法案の阻止は、「五年を目途とした新憲法制定」(安倍の総裁就任時発言)との改憲スケジュールを決定的に遅らせるだろう。
 昨年五月に与党案と民主党案が提出され継続審議となってきた改憲国民投票法案は、両案の擦り合わせの結果、投票対象を改憲に限定することでほぼ一致しており、また、両院に「憲法審査会」という常設委員会をただちに設ける国会法改定案との一括案となっている。まさに「改憲手続き法案」というべきものである。改憲・護憲に中立的に国民投票制度自体を整えるもの、などという見方は、現実の政治を見ていない謬論である。
 二月十六日発表の「アーミテージ報告2」は、「現在進行中の憲法に関する論議は、地域や世界の安全保障に対する日本の意識の向上を反映して心強い」と対日提言し、再び露骨な介入を行なった。このように改憲国民投票法案が、アメリカの要請に基づき、また日本のグローバル大企業の利害のために、憲法9条を抹殺せんとするこの間の動きの一工程であることは言うまでもなく明かだ。
 与党と民主党による修正協議の結果、「改憲に限定」「憲法審査会」の他にも法案は重大な問題を持つものとなっている。
 国民投票の成立要件、最低投票率の規定がない。もともと憲法を変えろという国民的要求があるわけではない。この中で低い投票率であっても成立し、「その過半数の賛成」(憲法九十六条)があればよいのなら、有権者の十分の一以下の賛成でも改憲が可能となる。
 改憲案の提案と投票の仕方はどうなるのか。議員の発議では「内容において関連する事項ごとに区分して発議」、国民投票では「憲法改正案ごとに一人一票」、などと分かりにくい表現になっている。つまり条分ごと・項ごとに個別投票とは明記されていないのであり、「一括投票」の危険がなくなったわけではない。改憲勢力側の狙いは、9条一項二項の個別での勝負はさけ、国際貢献など他の要素と絡めたり、自衛軍はよいが海外武力行使はいや、という人々を判断不能に陥れて賛成にもっていくこと、そのような提案の仕方であろう。また自民党は、改正案ではなく新憲法草案である。新案なら丸ごと、というやり方も明文的には排除されていない。
 地位利用による国民投票運動の制限として、罰則は設けないことになったが、公務員等と教育労働者の運動を制約しようとしている。自治労、日教組などへの抑圧であり、罰則がなくても、別個に行政処分の危険がある。さらに「多人数買収罪」というのも設けるとしている。
 メディアでの広告はどうなるのか。議会政党に対しては同一の時間・紙面で無料広告としているが、政党が指名するもの以外の民間団体は一切排除されている。カネのある者以外、主権者国民の直接のメディア利用は閉ざされている。
 法案には他にも多くの問題があるが、国民の言論・表現の自由、公平性などの点でどのような改善を行なったとしても、よい法案になるものではない。法案をどのように修正しようとも、現憲法を改悪するための前提的な手続きとして導入されようとしているという政治の現実は変わらないのである。
 民主党の与党との取り引きを阻止しつつ、憲法改悪に反対するすべての諸政党・諸勢力の広範な共同戦線を形成し、「改憲手続き法案」粉砕・安倍改憲政権打倒に全力で決起しよう!