2007春闘
 非正規労働者と働く貧困層の怒りを結集し
   格差拡大に総反撃しよう

 「いざなぎ」景気を超える長期の経済成長などと言われているが、労働者人民や中小企業にはその実感はない。大企業は未曾有の利益を上げ、配当は2・8倍、役員報酬は1・9倍に増加したが、労働者の賃金は6・7%も減少している。非正規労働者は政府統計でも、雇用労働者の33・4%にあたる1707万人に達した。年収200万円以下の世帯が二割を占め、働いても生活保護以下の収入しか得られないワーキングプア(働く貧困層)といわれる人たちが一千万人とも、それ以上ともいわれるように急増している。一九八八年以降、自殺者は毎年三万人を超え、経済的理由による自殺者は八千人弱である。
 安倍連立政権は、このような所得格差の二極化をさらに拡大し、固定化する政策を続けている。大企業には法人税を10%引き下げて30%にしようとしている。また、減価償却を見直し四兆円を超える企業減税を行なうとしている。減収分を穴埋めするために消費税を5%から7%に引き上げ、4・4兆円の増収を図ろうとしている。
 安倍内閣は、「再チャレンジ」を唱えているが、競争社会・格差拡大社会を維持しながらの再チャレンジである。また、成長政策が格差を縮めるとか、格差はいつの時代にもあったなどと居直り、格差拡大の新自由主義政策を続けている。
 〇七春闘は第一に、労働者人民に痛みを押しつけながら、大企業・グローバル企業の優遇を図る安倍内閣の政策を止め、社会のセーフティネット(生活保護、失業保険、野宿者支援など)すら切り捨てつつある現状を改善させつつ、時給最低賃金の大幅な向上などをかちとり、全体の底上げを図っていくことができるのかが問われる春闘である。
 現在、多くの労働団体や政党が掲げている「最低時給1000円」以上の要求は当然であり、各職場から、パート時給の改善目標を明確にして闘うべきである。この時給最賃の闘いを、全国的な賃金の最低基準を設ける闘い、企業の支払能力論を許さず公的支援を含めた新制度を求める闘いに発展させるべきである。
 第二に、労働法制の改悪に反対する闘いである。日本版ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)の法案提出は先送りされることとなったが、使用者が一方的に決める就業規則を労働契約とする労働契約法案が、三月にも提出されようとしている。就業規則による労働条件の変更が合理的であるとされれば、労働者の合意がなくとも労働契約となる。労働組合の存在意義を否定するものである。
 有期雇用については、細分化した反復更新をしないよう配慮しなければならないとしただけで、有期雇用を限定することをせず、期間の定めのない雇用への機会も閉ざされることになってしまった。法案での労働者の定義は狭いものであり、経済的従属性のもとで働く者にまでは拡大されなかった。在籍出向については乱用してはならない、移籍出向については労働者の合意が必要としているが、これでは何も歯止めにならない。
 我々労働組合は、バブル崩壊後に「リストラ」という言葉が「首切り」を意味するように使われるようになったときに、解雇規制と、非正規労働者の雇用関係の明確化と権利の確立のために労働契約法の成立を求めたが、今回の労働契約法案は我々が望んでいたものとは全く異なるものである。
 WEを先送りした労働基準法改定案は、今回は裁量労働制の中小企業での拡大がはずされたが、長時間労働規制に実効性がないものである。月八〇時間超については、割増率五〇%ではなく禁止にすべきである。夜七時までの残業で五〇%以上として、長時間労働を抑制すべきだ。
 最低賃金法改定案、すでに提出されたパート労働法改定案についても、悪い面と一部の良い面を併せ持つものである。産別最賃の廃止や、ほとんどのパート労働者を差別禁止から排除したことなど重大な問題があり、いくらか良くなるとも言い難いものがある。
 さらに来年の通常国会には、労働者派遣法改定案、職業安定法改定案の提出が予定されており、事前面接の解禁や雇用契約申し込み義務の廃止だけではなく、「偽装請負」の合法化が目論まれている。また、反対運動が弱くなれば、WEが提出されることも予想される。
 今春闘などをつうじて、このような「労働ビッグバン」総体と対決できる運動をつくることができなければ、労働組合の存在すら意味をもたなくなってくるであろう。
 第三に、春闘をつうじて労働組合の立場からも、安倍内閣打倒のための広範な共同戦線を求めつつ、政治闘争を強化することが必要だ。
 安倍内閣は、「戦後レジューム(体制)からの脱却」をうたい、「憲法改正」を前面に掲げて登場してきた。五月三日までに憲法改定手続きを定める国民投票法案を成立させると言っている。そして、首相自身は憲法改定を争点に参院選挙をたたかうと公言している。在日米軍再編による日米軍事一体化や、共謀罪新設をあきらめず管理・抑圧の強化をすすめている。このような「戦争のできる国づくり」政策と対決し、安倍内閣を退陣に追い込む政治闘争に勝利しない限り、経済政策も労働政策も変えることができないことを肝に銘じてたたかうことである。
 今、「偽装請負」や派遣労働者として働く仲間、また小売・飲食チェーン店で働く仲間などから反乱が起きつつある。そのような怒りと連帯できる幅広い労働運動の結集が図られるかどうかが、大きな課題である。(K)


国鉄闘争
  今こそ解決を!具体的解決要求実現めざす2・16集会
    国労提訴で足並みそろう
 
 二月十六日、東京神田の日本教育会館にて「今こそ解決を!具体的解決要求実現をめざす2・16総決起集会」が開かれ、国鉄闘争の具体的解決を求めて約1300名が参加した。主催は、JR採用差別事件の四者・四団体。(四者とは、昨年十二月五日提訴の「採用差別国労訴訟」の中心である国労闘争団全国連絡会議と、先行して裁判闘争中の鉄建公団訴訟原告団、鉄道運輸機構訴訟原告団、全動労原告団、の四当事者を指す。四団体とは、二つの組合と二つの支援、つまり国労、建交労(旧全動労)、国鉄中央共闘、国鉄共闘会議を指す。)
 この集会は、昨年末に国労が提訴に踏み切って以降、最初の大衆集会である。最初に、国労闘争団全国連絡会議の神宮義秋議長があいさつ。連帯あいさつを、都労連の増渕委員長、北海道平和フォーラムの住友さん、国鉄闘争福岡県共闘会議の石橋さんなどが述べた。決意表明を鉄建訴訟原告団の酒井直明団長、集会アピール提案を全動労原告団の渡部副団長が行なった。
 このように国労提訴によって、国側を相手とする裁判闘争においても足並みがそろった様子が集会でも示された。この日2・16は、二十年前の国鉄民営化時の不採用決定の日であるが、大同団結の前進を力に、今こそ全面解決をかちとろうという決意が感じられた。
 現在、昨年九月の東京地裁判決で国側の不法行為を認めさせた鉄建訴訟は、東京高裁で争われており、他の二つの訴訟も夏までには結審・判決の局面となる。四月十八日の全動労原告団の裁判では、「中曽根元首相ビデオ」の証拠調べが予定されており注目される。
 また、国際労働機関ILOは昨年十一月、日本政府に国鉄争議の解決をより踏み込んで求める七度目の勧告を出している。
 集会が、「具体的解決要求」と強調しているのは、四者・四団体の団結の基礎となり、また昨年九月十四日に国側に突きつけた統一要求を意味する。これは、九月鉄建訴訟判決などを踏まえ「政府の決断により、解決を図ること」、「鉄運機構、JR各社及び関連会社もしくはJR各社に準ずる条件の雇用を確保すること」等を具体的に国に要求している。
 各裁判で正当な判決をかちとることも重要だが、この統一要求を支持し、裁判闘争を始め国鉄闘争全体の再攻勢で、一刻も早く国に政治解決をせざるを得なくすることが問われている。十二月の国労提訴では、職場復帰を求めず損害賠償請求に限定していること、また逆に千葉動労原告団が、JR復帰に必ずしもこだわっていない統一要求を問題としてか、統一要求書に参加していないことなど、スタンスが違う現状もあるが、これらの違いはもはや本質的問題ではないように思える。
 国に国鉄争議解決のテーブルに今こそ着くよう、あらゆる立場から求めること、違いは論議しつつも、力を合わせて闘うことが必要だ。(東京W通信員)


07「けんり春闘」がスタート
  郵政4・28裁判の完全勝利に続こう

 二月一日、〇七年けんり春闘全国実行委員会がスタートし、二月十六日に第一波行動として東京総行動が行なわれ、夜には国鉄闘争2・16総決起集会(記事別掲)に合流した。
 けんり春闘全国実行委員会は、全労協に参加する諸労組をはじめ、金属機器協議会、全港湾、全日建連帯、全造船関東地協、中小政策ネットなどなどによって担われているもので、連合や全労連の春闘行動とは独自に、首都圏でおもに中小や非正規の労働者による春闘を目に見える形で展開するうえで重要な枠組となっている。
 二月十六日のけんり総行動実行委としての行動は、朝の新橋から始まり、光輪モータース争議での会社背景資本・みずほ銀行本店への要求行動が行なわれ、各争議団などが発言した。
 とくに郵政4・28首切り処分取消裁判を闘ってきた仲間からは、二月十三日、最高裁が郵政公社の上告を却下したこと、これによって〇四年の東京高裁勝利判決が確定し、裁判闘争に完全勝利したことが報告された。全逓「反マル生闘争」への一九七九年大量首切りとの闘いは、中途での全逓の闘争放棄、〇二年の東京地裁敗訴など困難な局面もあったが、4・28を共にたたかうネットワークなどのねばり強い闘いによって勝利した。郵政公社は直ちに職場復帰させなければならない。
 総行動は、その郵政公社や、松沢さん解雇でのフジ・サンケイグループ、昼には国鉄争議の解決を求めて国土交通省へ行動、そして労働法制改悪反対では厚生労働省前でアピール。増田さんなど解雇での都教委への行動のあと、最後に韓国山本争議の解決を求め、釜山からの遠征団と共に、板橋の山本製作所へ交渉要求行動を闘った。
 けんり春闘実行委員会の取り組みとしては、三月四〜五日に外国人労働者総行動と省庁交渉を行ない、三月二十三日を春闘の山場として設定し、この日に「〇七春闘勝利!労働法制改悪反対!3・23中央総決起集会」(午後六時、社会文化会館)を行なって集約する。各職場からの断固たる要求提出をもって、決起集会に参加しよう。
 また春闘行動・争議行動と関連しつつ、現国会に労働法制諸法案が提出されつつある情勢に対決する動きも広がっている。
 二月九日には国鉄闘争共闘会議(二瓶久勝議長)の主催で「新労働契約法反対」集会が行なわれ、また、二月二十三日には「日本版エグゼンプションにとどめを!人間らしく働くための労働法制を!」集会が「共同アピール運動」の主催で行なわれた。(「労働時間規制の撤廃に反対し、人間らしく働くための労働法制を求める共同アピール運動」とは、派遣労働ネットワーク、東京管理職ユニオン、下町ユニオンなどなどによって昨年八月に発足したもの)。
 「労働法制国会」を圧倒する大衆行動として、五月下旬に日比谷野音集会・デモが予定されている。(A)