通常国会
  広範な共同戦線形成し、反動諸法案を粉砕しよう
    末路が見えてきた安倍右派政権

 一月二五日に通常国会が開会した。安倍首相の自民・公明連立政権は、今国会で改憲国民投票法案をはじめとする反動的諸法案の成立を狙っている。しかし安倍政権とその後ろ盾である米ブッシュ政権の苦境が、加速度的に強まりつつあるのが現情勢の特徴だ。
 日本の労働者人民が、「右派を打倒する広範な共同戦線の形成」という主体的条件を整えることができるならば、改憲国民投票法案などを阻止し、七月参議院選挙などを安倍右派政権の墓場とすることは十分可能である。すべての左翼的・民主的人々は今こそ団結・共同し、右傾化と格差拡大の政治からの当面の転換をかちとろう。我々労働者共産党は、その共同戦線の前進を全力で支援しつつ、日本労働運動の階級的強化など革命運動の隊列を断固として強化していく。
 安倍首相は一月二六日の施政方針演説で、「戦後レジームを、原点にさかのぼって大胆に見直し、新たな船出を」と叫び、昨年の所信表明演説では政治配慮から一旦引っ込めていた「戦後体制脱却」論を再び高唱している。これは、「『日本国憲法の改正手続きに関する法律案』の今国会での成立を強く期待する」とし、継続審議の改憲国民投票法案の成立を主眼としているからである。つまり平和憲法という「原点にさかのぼって」これを抹殺し、「世界の平和と安定に一層貢献するため、時代に合った安全保障のための法的基盤を再構築」して、日本をアメリカと共に世界中で戦争をする国にしようとしている。
 改憲国民投票法案は与党案と民主党案との擦り合わせがほぼ終わっており、国会政治的には、参院選を前にした民主党の政治判断に左右される局面にある。しかし民主党よ、その成立に手を貸すことは安倍政権への信認に等しい。安倍政権への批判が高まりつつある現在、簡単に手を貸せば参院選は、自民・民主への不信を示した宮崎県知事選挙(一月二十一日)の全国版となることを忘れるな。
 法案は、成立後「憲法審査会」を国会に設け、三年後に施行するとしている。今国会で成立したら、「憲法審査会」で改憲発議へ世論操作を進め、二〇一〇年からは改憲国民投票実施を可能にする算段である。自民党は強気に「五月三日までの成立」を口にしているが、参院選前で六月二十三日会期末の延長がほぼないこと、終盤になると与野党対決色が強まり、衆院を突破しても参院で廃案となる可能性があるからだ。
 改憲国民投票法案阻止の闘いは、民主党の政治判断に依存することなく、憲法改悪阻止の「第三極」的政治勢力の大きな形成を基本としながら、また同時に民主党など「第二極」への働きかけを含んだ闘い方を必要としている。
 今国会は、参院選前ということのみならず四月の統一地方選挙(八日および二十二日)を会期に挟み、重要法案の是非を各選挙で問う機会が多い。改憲国民投票法案の他にも、昨年十二月十五日の教育基本法改悪案の強行成立に続く教育改革関連三法案(教員免許法改定案など)、労働法制諸法案、在日米軍再編関連法案、イラク特別措置法延長案など極悪法案の提出が目白押しである。共謀罪新設案もいぜん断念されていない。
 教員免許法改定案は教員免許を更新制にし、国策に従わない教育労働者を教壇から追放しやすくするものであり、四月実施の全国学力テストとともに、当面の許してはならない対決点である。(関係記事四面)
 労働法制諸法案では、安倍首相がホワイトカラー時間規制除外案の提出先送りを表明しているが、厚生労働省は労働契約法案をはじめ、すべての諸法案を用意しており断念したわけではない。〇七春闘では、時間規制除外など労働法制改悪に引き続き反対の声を強めるとともに、長時間労働撲滅、残業なしで暮らせる賃金のために闘おう。(関係記事二面)
 米軍再編法案は、昨年五月の日米軍事再編合意に基づき、沖縄海兵隊のグアム移転費用を支出することと、再編関係自治体への対策のための法案である。自治体への基地交付金を、環境アセスメントに着手、工事に着手、など基地受け入れの段階ごとに出来高払いするという極度に卑劣で悪質な内容である。
 軍事関係では、成立から四年目で七月に失効となるイラク特措法の延長案も、米軍の絶望的増派の中では、さらに度をふかめて重大問題だ。航空自衛隊をただちに撤収させよう。
 こうした重要法案を抱える安倍政権はしかし、すでに満身創痍の状態にある。一月二七日、柳沢厚生労働相が女性差別・人権無視の「女性は子産み機械」発言を行なった。この暴言への抗議、辞任要求が高まっている。安倍は解任を拒否し、冒頭から国会を混乱させている。柳沢暴言は失言ではなく、個人・人権よりも国家・国策を上位に置く彼の思想性を示すものである。安倍政権の少子化対策、お国のために子どもを産ませるという反動性がばくろされた。さらに柳沢が労働法制諸法案の担当相である以上、このままでは答弁責任すらおぼつかない。
 一月二九日のNHK番組改変裁判での東京高裁判決も、安倍首相への強烈な打撃になるべきものである。判決は、安倍ら政治家の事前接触を不当介入として認定しなかったが、安倍ら「相手方の発言を必要以上に重く受けとめ、その意図を忖度してできるだけ当たり障りのないような番組にする」改変を被告NHKが行なったと認定した。安倍は判決に対し、不当介入でないことが明らかになったなどと強がっているが、事前に圧力発言をかけたことは隠しようがない。
 年末に辞任を余儀なくされた本間政府税調会長、佐田行革担当相なども含め、安倍が任命した閣僚や要職者の失態が続出している。また久間防衛相が、防衛庁の防衛省への昇格による軍部発言力の強化を背景にしたのか好き勝手な発言を行なうなど、安倍の統率力には対米的にも疑問符が付いた。
 安倍の末路が、ブッシュの末路とともに見えて来た。安倍右派政権を早期に打倒し、憲法改悪・格差拡大の政治を一掃しよう。


米ブッシュ政権の絶望的「イラク新戦略」
  「最後の賭け」と日本は心中か

(1)
 超大国アメリカ・ブッシュ政権は、年明け早々、イラクでの敗勢の立て直しを意図する戦略転換を表明にした。
 一月一〇日のイラク新戦略演説でブッシュは、二万一千人の兵力増派(現在十三万人)、宗派抗争・内戦の軍事的抑制、シリア及びとりわけイランの影響力の排除、地域復興による治安回復の重視などを柱として押し出した。また一月二十三日の一般教書演説では、イラクにおける戦略転換を再確認し、五年で陸軍六万五千人(現在定員四十八万二千人)、海兵隊二万七千人(同十七万五千人)の計九万二千人を増員するよう提案し、戦線拡大による巻き返しという方向を一層鮮明にした。
 新戦略の増派方針は、ハイテク兵器システムを過信し、戦場に圧倒的に優勢な兵力を集中投入すべきという軍事の常識を時代遅れのものと否定したラムズフェルド前国防長官の路線から方向転換するものではあった。しかし、「常識」に戻ろうとしたが時既に遅く、中味は極めて中途半端なものに止まらざるを得なかった。よく指摘される逐次増派・戦線拡大という最悪のパターンにはまり込んだのである。これが今回の新戦略の本質であるだろう。そしてそれは、米国支配階級の超党派的対策会議「イラク研究グループ」が昨年末に緊急提起した米戦闘部隊の段階的撤退、イラン・イラクとの直接交渉という処方箋さえも無視し、一日も早い全面撤退を願う民衆を完全に愚弄するものであった。ちなみに、二十二日発表の米CBSテレビの世論調査(18〜21日実施)によると、ブッシュ大統領の支持率28%・不支持率64%、米軍増派賛成29%・反対66%となっている。

(2)

 アメリカがイラクで敗勢にある根本原因は、軍事というよりも、戦争の大義の欠如という政治問題にある。それは、アメリカがイラク侵略の口実としたフセイン政権による大量破壊兵器の開発という「事実」が全くのウソだったということだけを指して言うのではない。超大国や帝国主義諸国があれこれ口実をつけて他国を侵略・占領すること、当該国の国家体制や政策の転換を武力を背景に強要すること自体が問題なのである。超大国による侵略・占領の結果は、イラク社会の崩壊であった。国連バグダッド事務所の集計によると、イラクで殺された民間人は、昨年だけで三万四千人にのぼる。最終的には侵略者は民衆によって一掃される。軍事戦略の誤りは、その敗北過程を加速するものであるに過ぎない。
 既にアメリカは、この間各方面で戦線の拡大を開始している。
 首都バクダッドの治安維持活動の前面に米軍が再び進出し、スンニ派武装勢力の鎮圧作戦だけでなくとシーア派サドル師派マフディ軍の封じ込め作戦を始めた。アメリカは、スンニ派とシーア派の穏健派同盟形成を画策したが、シーア派の分裂を望まぬシスターニ師の反対にあって早くも挫折している。内戦の一時的かつ一定程度の軍事的封じ込めはなしえても、政治的解決への道が閉ざされ、米軍と市民の対立が前面化する方向に事態は進展しだしているようである。
 アメリカは、イラン核施設への空爆を狙って一空母戦闘群をペルシャ湾に増派(計三空母戦闘群となる)。イランへの戦線拡大の様相が深まっている。
 アフガンは、アメリカが「反テロ戦争」の名の下で最初に手を下した国であるが、そこにおいても、旧政権タリバン勢力の攻勢に直面して、アメリカから治安を移譲されてきたNATOが動揺し有効に対処できないでいる。アメリカは、二五〇〇人増派の意思表示(一月二十六日)を余儀なくされた。
 アメリカは、かつて民衆の手によって叩き出されたソマリアでも、昨年末エチオピアに侵略させてイスラム法廷連合の統治を駆逐、「暫定政府」の支配を維持しようとしている。米軍自身による空爆も決行した。ここでも、エチオピアと暫定政府に民衆の支持はなく、イスラム勢力の反撃が始まろうとしている。
 「最後の賭け」「背水のイラク戦略」(朝日新聞)の結末は、最初から見えてしまっているようである。

(3)

 「イラクはブッシュのベトナムだ」(エドワード・ケネディ上院議員)。大統領の無謀な増派決定に当惑したアメリカ人の脳裏に、ベトナム侵略の敗北の記憶がよみがえろうとしている。一月二十七日ワシントンで米軍の即時撤退を求める反戦集会とデモが行われた。
 だが安倍政権は、ブッシュの新戦略に即座に「協力」を表明。内閣官房幹部が、ブッシュ政権が苦境にある「こういう時こそ同盟国として支援すべきだ」などとうそぶく。支配階級の間からさえ、大義なき戦争にアメリカと心中していいのかと、危ぶむ声が出てこずにはいない訳である。
 「9・11」を契機に発動され拡大されてきたこの戦争は、いまや超大国アメリカとその帝国的世界支配の命運に関わる重大な岐路に差し掛かっているのではないかと思われる。ベトナムの時のように敗北してなお巻き返し、もう一つの超大国を打ち砕いて世界制覇を果たしたような生命力は、その社会・経済制度のうちには最早ない。撤退を演出できないならば、グローバルな規模での騒乱の世になっていくに違いない。われわれが問われる番ではある。(M)