労政審の最終報告案
  許すな時間規制適用除外
           労契法についても明確な反対を

 労働契約法制と労働時間法制の在り方について審議してきた労働政策審議会労働条件分科会では十二月八日、厚生労働省の事務局がこのかんの素案をまとめた最終報告案を提出し、これを〇六年内に政府への建議として提出しようとしている。この最終報告案は、十一月十日、二十一日、二八日の事務局素案がまとめられたものである。
 最終報告案は、労働時間では、「自由度の高い働き方にふさわしい制度の創設」と称して、「年収が相当程度高い」など四つの要件を満たすホワイトカラー労働者について労働時間規制の適用を除外する制度を示している。その年収額は明示しないなど曖昧な要件となっている。
 このかん厚労省は「30代の男性の四人に一人が週60時間以上働いている」と指摘し、最終報告案でも「長時間労働を抑制しながら働き方の多様性に対応するため」などと述べている。しかし、労働時間規制の適用除外(エグゼンプション)はかえって長時間労働を助長するものであり、「過労死促進法」と批判されている。適用除外されるのは、法定労働時間、時間外労働、割増賃金であり、週休二日と年次有給休暇は確保すると最終報告は述べているが、現在でも実効確保が充分になされていない労働時間規制について、適用除外をしておいて休日管理ができるのか疑問である。不払い残業(サービス残業)を合法化するだけでなく、「仕事と生活のバランス」を言いながら、労働時間管理を行なわないことにより「生活」と「仕事」の区分を無くしてしまうものである。
 また時間外労働については、一般労働者の割増賃金率を週40時間を超える場合は法定割増、時間外労働の限度基準(大臣告示)を超える場合は労使協議で法定を上回る割増賃金率、健康確保の観点から一定時間(月80時間以上か?)を超えた場合は現行より高い割増率を定める、という3段階方式が示された。
 労働契約法制では、「就業規則の変更が合理的なものであるときは、労働契約の内容は、変更後の就業規則に定めるところによるものとする」ことが示された。
 これまでの論議での、労使委員会による5分の4の賛成とか、過半数労働組合との合意などは消えて、その「合理的なもの」の判断基準の一つとして、「労働組合との合意その他の労働者との調整の状況」という表現になっている。これで少数派労働組合の権利が守られたと見るのは早計であろう。「労働契約と就業規則との関係等」の項で、「就業規則が法令又は当該事業所について適用される労働協約に反する場合には、その反する部分については無効とする」と書かれており、事業所の4分の3以上の労働者を組織する労働組合が合意すれば不利益変更も合法化されるのである。
 その他、解雇の「金銭的解決の仕組み」なるものが最終報告案でも残っていること、有期雇用労働者の正社員化の道(労制審が六月に中断する前の素案には記されていた)が閉ざされたこと、など多くの問題がある。
 労働契約法制については、未組織労働者のための法律が必要であるとか、整理解雇の4要素(要件ではない)が入れられるなど、「無いよりはあったほうがよい」と言って制定に賛成する意見が労働組合の中にも多い。しかし、今回の労働契約法制案は「正社員の労働条件不利益変更手続法」とでも呼ぶべき内容であり、その立法化を絶対に許してはならない。
 八時間労働制を求めて闘ったメーデーの起源を思い起こし、労働契約が適用される労働者とはどこまでの範囲かを考慮しながら、労働契約法制反対・労働時間規制適用除外反対の広範な運動を組織していこう。(K)


許すな過労死促進法!12・5全国集会
   提出すれば一大闘争に

 十二月五日の夕刻、労働政策審議会での審議が山場にきている情勢下、「許すな過労死促進法!人らしく生きるための労働時間・契約法制を!12・5全国集会」が東京・日比谷野外音楽堂でひらかれ、全国各地から約一五〇〇名が結集した。主催は、コミュニティ・ユニオン全国ネットワークや中小労組政策ネットワークなどに参加の諸労組や諸団体による集会実行委員会。
 最初に、主催者挨拶として日本労働弁護団の棗(なつめ)弁護士が、次のように訴えた。「今の日本では、いわゆるサービス残業を強いられ、時間ドロボーが私たちの時間を奪っている。労政審で検討されている『ホワイトカラー・エグゼンプション』は、この時間ドロボーの新たな道具であり、サービス残業を合法化し、さらに8時間労働時間規制自体をなくしてしまうものである。労働時間規制を撤廃し、過労死を促進する法律を絶対に許してはならない。労政審の建議を許さず、またこの過労死促進法の来春国会提出を許してはならない。もし、それを厚生労働省が強行するならば、私たちは統一地方選や参院選挙で、この法案をすべての労働者・家族に関わる重要問題として争点化させ、おおきな闘いを実現し、必ず廃案にするまで闘う。」
 次に労政審労働条件分科会の審議報告を、労働側委員(労政審は公・労・使七名づつで構成)の一人である小山正樹さん(連合・JAM労組)が行なった。「厚労省の事務局は十一月十日、『自由度の高い働き方にふさわしい制度の創設』と称して時間規制をなくす新たな素案を出してきた。十二月八日には最終報告案を出そうとしている。私たち委員もこれの阻止のために闘っているが、審議会の中だけでは勝てない。みなさんの大きな闘いが必要だ、ともに闘おう」と訴えた。
 全労連、全労協から代表連帯挨拶が行なわれ、社民党、日本共産党、民主党(メッセージ)からも連帯挨拶があった。(なお、小山さんの報告以外には連合からの挨拶はなかったが、翌十二月六日には同じ野音で、連合が主催する「STOP!THE格差社会・働くもののためのワークルールの実現12・6中央決起集会」が約五三〇〇名の参加で開かれている。連合もこの集会で、日本版エグゼンプションには強く反対する姿勢を打ち出しており、時間規制問題においては全労働勢力が一致して闘える現況にあるといえるだろう。)
 つづいて、「東京過労死を考える家族の会」の中野とし子さんが登壇した。中野さんは、「会は二十年前に始まりましたが、私の夫は十八年前に仕事を自宅に持ち帰っているなか、くも膜下出血で死亡しました。公立学校の教員でしたが業務外とみなされ、公務災害に認定されませんでした。教員をはじめ多くの仕事が、労政審の言う『自由度の高い働き方』とみなされ、いっそうの長時間労働と過労死、さらに労災不認定が危惧されます。私たちと同じ悲しみはもうたくさん。強く過労死促進法に反対します」と訴えた。
 なお中野さんを含め、全国過労死を考える家族の会は十二月十一日、厚労省に対し時間規制撤廃反対などの要請交渉を独自に行なった。その様子はテレビでも報道され、厚労省と経団連の策動に警鐘を鳴らす大きなアピールとなった。
 集会は、時計の仮面や、メイドのコスプレ(性差別論議にはならないのか?)の仲間たちがカンパを訴えたあと、集会決議「私たちの時間を取り戻そう!」を拍手で採択し、銀座・東京駅方面までデモ行進を行なった。
 この集会には大規模な組織動員はなかったが、武庫川ユニオンなど兵庫の連帯会議、せんしゅうユニオンなど大阪の共同行動、ユニオンみえ、大分ふれあいユニオンなどなど、全国各地からの多くの行動参加や連帯メッセージが行なわれている。首都圏からは神奈川シティユニオン、全統一、フリーター全般労組などの結集が目を引いた。
 また、この日の日中には、12・5けんり総行動実行委員会によって国鉄闘争や韓国山本製作所闘争など諸争議での東京総行動が行なわれている。正午には、国鉄不採用問題の解決交渉テーブルの設置を求める国土交通省ヒューマンチェーン行動が取り組まれ、国労闘争団をはじめ東京総行動の仲間たちもその後、野音集会に合流した。(東京W通信員)