韓国・民主労働党への弾圧
日本では朝鮮総連を強制捜査

 日本では右傾化が強まり、韓国でも「太陽政策」への野党ハンナラ党などからの非難が出てきている。韓国で最近、民主労働党幹部が国家保安法違反容疑で逮捕されるという「スパイ団」事件が引き起こされたとは、韓国の右派の動きを象徴する出来事である。
 つまり十月二六日、国家情報院(元国家安全企画部KCIA)は、米国市民権を持つチャン・ミンホ氏、民主労働党副事務総長のチェ・ギヨン氏、前中央委員のソン・ジョンフン氏など五名の拘束を、チャン氏を主犯格とする「一心会」事件などとして発表した。
 この事件発表に対して、韓国の国家保安法廃止国民連帯などの民衆運動組織は、チャン氏は以前より捕捉されており、朝鮮の核実験に合わせて公表するという民主労働党を狙い撃ちにしたフレームアップであるとして、国情院を提訴した。
 この事件に対して、右派新聞『朝鮮日報』は、民主労働党幹部がチャン氏に包摂され、朝鮮労働党の指示でスパイ活動を行なったごとく報道している。また、チェ・ギヨン氏のお連れ合いは、「キム兄妹事件」(韓統連関連でデッチあげられた日本関連「政治犯」事件)のキム・ウンジュさんなのであるが、『朝鮮日報』はウンジュさんを記事で引き合いに出すという暴挙に出ている。「キム兄妹事件」では、安企部の工作員ぺク氏がベルリンで良心宣言を行ない、捏造事件であることが韓国中で注目を集めたという経緯がある。
 ミサイル・核実験で韓国国民にとっては「不安要因」が形成されていると言っても、同一民族の統一国家達成という悲願に決定的な変化をもたらすような情勢とはいえないだろう。しかし、次のように指摘する人もいる。韓国社会の基底には分断を要求し、かっての反共軍事独裁体制を作り上げ、支えた部分が少なからず存在し続けている。その一部が、今回の「一心会」事件で国情院や司法当局に現われたのであると。
 この部分が「親日」であれ「親米」であれ、反民衆・反民族の右派であることに違いはない。ノ・ムヒョン政権の過去清算事業がさらに徹底的に行なわれるべきであるのは、この点に最大の関わりがある。韓統連の名誉回復問題や、元在日韓国人「政治犯」事件の真相究明と名誉回復の要求も、この範疇、右派との闘いを意味するだろう。国家保安法の撤廃が要であり、対決の山場である。
 他方、日本では右派の巻き返しどころか、右派に政権を握られてしまった現況にある。
 しかし安倍右派政権は、朝鮮のミサイル・核実験にある意味救われ便乗しており、また日本人拉致問題の意図的かつ徹底的な政治利用に依存しているという、外交としては極めて底の浅い右派政権である。
 安倍は小泉内閣では官房長官として、ミサイル実験に対して「特定船舶入港禁止法」を即座に発動することを主導し、また首相としては、核実験に対して日本政府独自の制裁を発動し、日朝間のヒト・モノ・カネの全面断交という異常な措置を取っている。これによって、マンギョンボン号が全面入港禁止となり、朝鮮の肉親との行き来など在日朝鮮人の切実な権利が奪われている。
 十一月二七日には、警視庁公安部が朝鮮総連都本部と在日のおばあさんの自宅を強制捜査した。この七四歳の女性が五月に、点滴栄養剤を自身の入院に備えて六十パック持参してマンギョンボン号に乗ったことを、「薬事法違反容疑」とするものである。
 十二月五日には、兵庫県警外事課が兵庫県朝鮮商工会を、元職員の「税理士法違反容疑」で強制捜査した。
 朝鮮への対決姿勢と排外主義を煽り立てれば弾圧ネタはなんでもよい、とするものである。在日朝鮮人民を交戦国国民として扱う戦時措置を彷彿とさせるものであり、きわめて不当なものだ。排外主義は戦争の道である。
 特定船舶法の措置は半年で期限切れとなる。政府はマンギョンボン号への制裁を延長せず、ただちに解除せよ。
 朝鮮総連などの人々は十月以降たびたび、入港禁止解除要求・不当弾圧抗議等の国会前行動を行なってきた。この行動は、日本側の教育基本法改悪反対の国会行動と重なり合うものとなったが、より多くの日本側の諸団体が注目し連帯すべきものである。
 いまこそ日・朝・韓の民衆の連帯した力で、右派勢力を包囲・打倒しよう。(Ku)