臨時国会の終幕−展望なき安倍政権の強行策
  広範な統一戦線で打倒しよう

 臨時国会では、安倍連立政権と自民・公明与党が、教育基本法改悪案の強行成立を十二月七〜八日頃にも図らんとする暴挙に出ている。この暴挙と十五日会期末延長を断固許さず、闘いによって安倍政権が国民から孤立している姿を浮きぼりにさせ、来年の闘争の展望を拓いていくことが重要だ。
 教育基本法改悪案に反対する闘いは、十一月中旬の衆院強行採決の前後からではあるが、県教組・高教組にまだ力量が残っている地方をはじめとして、全国各地で一定の盛り上がりをみせた。
 しかし全国的には、政府を圧倒できるような規模の共同闘争の実現にはほど遠いものがある。教職員組合を始め労働組合での枠組みを超えた共同、市民運動のネットワーク、個々人、これらが大きく合流する共同戦線を地域で創造・継続・拡大させ、さらにその共同戦線を地方から中央へ発展させていくことが問われている。
 教育の憲法に当たる教育基本法の改悪との闘いは、安倍政権が「五年以内」とする憲法改悪との闘いに直結している。このかんの教育基本法改悪との闘いをふまえ、改憲阻止の全国民的共同戦線へ具体的に踏み出していくことが、すべての民主的・左翼的な諸勢力・個人にきびしく問われてきている。そうした観点から、来春の統一地方選、参院選挙に対しても意識的に臨んでいくことが重要だ。
 教育基本法改悪の狙いは、臨時国会の質疑を通してもその核心が一層明らかとなった。政府与党の改悪案は、現行法の「教育は、不当な支配に服することなく」の文言を残しつつ、「国民全体に対し直接に責任を負って行われる」を削除し、代わりに「この法律及び他の法律の定めるところにより行われる」を新設している。これは何を意味するか。
 十一月十五日の野党欠席のままの衆院特別委員会で、伊吹文科相は次のように述べた。「法律に基づいて行なわれる教育行政は正当なものであることははっきりしている。むしろ、特定の組合に属する教職員に分かってもらわなければ」と。そして二六日の参院特別委員会では、「新法によれば法律によって行われるので、行政による不当介入はありえない。法の解釈権は内閣にある。内閣は不当な支配はしない。異論があれば司法に訴えればよい」などと述べている。
 これらの答弁は、「不当な支配」が行政権力の不当介入を主として意味することを真っ向から否定し、「むしろ」教職員などの自主的教育活動のほうが不当介入だなどとするものである。天皇主権の軍国主義教育の反省から生まれた現行法の核心を否定し、「国家の教育権」を再建するものである。この権力の教育支配の下に、「愛国心」強制や市場原理主義の教育政策をすすめんとしている。
 しかし、こうした国策教育は、一部の開発独裁的国家では存在しえても、ブルジョア民主主義的な教育の世界標準からいっても明確に批判されるものでしかない。安倍政権の反動性は、世界的にも異様なものなのである。
 防衛省昇格・派兵本務化法案のほうは、民主党が帝国主義ブルジョア二大政党の一つであることを決定的にばくろしつつ、衆院を十一月  日に通過し、成立させられんとしている。このことは、民主党内の分岐を促しつつ民主党をばくろし、我々が自民・民主に対決する「第三極」の形成へ進まなければならないことを示している。また、この法案の成立は、世界へのきな臭いメッセージであり、安倍政権に対するアジア諸国などの警戒心は一層高まらざるをえない。
 共謀罪新設法案は、その立法化が組織犯罪国際条約の国内要件とはいえないこと、米国ですら各州が共謀罪を留保していることが明らかになるなどして、審議が中断していた。いぜん与党は終盤国会での審議再開を強行せんとしているが、今度こそ廃案とせよ。
 改憲国民投票法案は、自民・民主の擦り合わせがさらに進んでおり、危険な情勢にある。教育基本法改悪を最優先とする安倍政権のもくろみからすると、来春通常国会が正念場となる。教育基本法改悪でも、その民主党案との擦り合わせを当初は考慮していた政府与党であるが、結果は全野党との対決法案となり、強行採決の失態となった。民主党の支持団体を含め労働者人民の広範な反対運動があれば、自民・民主の擦り合わせも順調にはいかないということである。改憲国民投票法案を阻止する広範な共同戦線を形成しよう。
 現在、安倍政権は、当初安倍が打ち出した戦後体制打破などの極右的本質をペテン的に隠し、中道右派あるいは保守穏健層をつなぎとめる方策を取っている(関連記事・三面)。対抗する民主党も同じ層の獲得を重視した参院選政策を出しており、一見、安倍政権の孤立化が露呈しにくくなっている。
 しかし世界動向的には、安倍政権の孤立化は明らかである。十一月七日の米議会選挙は、民主党の十二年ぶりの上下院完勝となり、ブッシュ共和党のイラク政策などが米国人民から明確に否定された(関連記事・三面樋口氏論稿)。米民主党にしてもイラク段階撤退論であり、過大な意味付与はできないが、このかんのブッシュ戦争政策とネオコン路線が転換局面に入ったことは明らかだ。
 安倍と前職小泉とには政治手法などに違いはあるが、ブッシュ戦争政策への日本の一体化および新自由主義路線という路線には違いがない。本家で否定されたのに、日本版ネオコンがそのままでありえるはずはない。プッシュと小泉が合意した日米軍事再編も、全面的に見直されて当然なのである。
 十一月十九日の沖縄県知事選挙では、自公の異常な期日前投票への動員などによって、反基地統一候補の糸数けい子氏が惜敗する結果となり(詳報は次号)、一見、日米軍事一体化は救われたかのようにみえる。しかし、米共和党の敗北、対「テロ」戦の泥沼化、南米の反米潮流拡大など世界動向をみれば、現在の日米同盟こそが修正を迫られていることは明らかである。
 確かに国会状況と沖縄県知事選の結果には厳しいものがある。しかし大局は、ブッシュや安倍を歴史のくずかごへ投げ捨てつつある。確信をもって、〇七年の闘いへ前進しよう。


本音隠しの安倍反動政権―支持率は急落
  大衆増税で企業優遇減税

 九月二十六日に発足した安倍内閣の支持率が、大手新聞社などの世論調査によると、最近、急速に低下している。
 『朝日』では、内閣発足直後と中韓訪問直後の十月上旬には、それぞれ六三%であったのが、十一月中旬には五三%へと、十ポイント低下した。『毎日』では、内閣発足直後の六七%が二ヵ月後の十一月下旬には五三%へと、十四ポイントも下落した。共同通信社の調査では、十月中旬に六二・七%であったのが、十一月下旬には五六・五%へと、六・二ポイントも低下した(『東京新聞』十一月二十七日付)。『読売』でさえも、十月中旬の面接調査では七〇・〇%もあったのが、十一月下旬のインターネットモニター調査では六六・四%へと、低落している。
 支持率が急落している最大の要因は、二十代、三十代の若者層と無党派層の離反である。『朝日』の十一月二十五日の記事によると、若者層の離反は、中韓訪問以降、傾向的に低下している。
 この間の政治課題の面からいうならば、教育基本法に関連して、タウンミーティングの「やらせ」発言と「さくら」の動員があばかれ、高校生の未履修問題もまた露呈、また自殺者が続出する「いじめ」問題、さらには「郵政造反議員」の無節操な復党問題、失業者や非正規労働者の生活破壊の現状を放置したまま企業減税には熱心な経済政策などが、支持率低下の諸要因と言えるであろう。
だがこれらに加え、無視し得ない大きな原因に安倍首相の政治姿勢の「あいまいさ」や政治手法の狡猾さもあるといえる。『朝日』の前述の記事によると、「11月調査では、安倍氏が政治的な信念や考えを『あいまいにしている』が55%で、『きちんと説明している』の31%を大きく上回った。『あいまい』は20代〜40代では60%を超え、無党派層でも60%近くに達する。」といわれる。
まさに、安倍政権の政治手法の特徴は、反動政権としての本音を隠した上で、世論を操作しつつ自らが画策する目的に近づけるという、いかにも姑息な手段を弄するところにある。したがって、世論操作の過程では、必然的に「あいまいさ」が頻発するわけである。
中国や韓国との外交関係の「回復」も、あまりにも拙劣な小泉外交の修正を内外から迫られ、また朝鮮の核実験に結果的に助けられたためであり、安倍個人としての本音、すなわち靖国神社への首相の公式参拝、歴史認識(A級戦犯の戦争責任や日帝の侵略などを認めたくない)などはなんら変わっていないのである。
この間の、麻生外相や中川昭一政調会長の「言論の自由」を逆手にとった、核武装についての自由な論議の提唱も(非核三原則は堅持するといいつつ)、本音は核武装への地ならしのために一つの手段でしかない。安倍首相は、非核三原則を堅持すると言いつつ、論議自身は容認すべきと言う態度をとったが、彼自身もまた本音は麻生外相や中川政調会長と同じなのである。
 本音隠しの姑息な政治手法は、従来の自民党でもしばしば使われた政治手法であるが、安倍首相の右翼的信念に期待した層においては、とりわけ「期待はずれ」なのであった。  
それに追い討ちをかけたのが「郵政造反議員」の復党問題である。筋も論理もない支離滅裂の復党問題は、参院選対策のために「情」を持ち出す青木参院会長などの主張におされて取り組んだものだが、それは党利党略のごまかし政治そのものである。
税制問題でも、小泉前首相同様に、企業減税を個人所得などの増税で埋め合わすと言う反人民的な方法を踏襲しているが、参議院選挙後には消費税率をアップして、さらなる企業減税を行なおうという本音をまたひた隠しにしているのである。(T)