米日の朝鮮侵略戦争断固阻止
  すべての核実験に反対し、全世界から核兵器を廃絶しよう

 朝鮮人民民主主義共和国(以下、朝鮮)による地下核爆発実験の強行以降、一ヵ月がたった。この朝鮮の核実験等に対して、おもに経済制裁を加える国連安保理決議が採択され、また一方では、十月末に北京で朝米中が非公式に協議して、早期の六者協議再開で合意するという情勢の展開となっている。
 朝鮮の核実験に対して、日本の与野党やマスメディアが情緒的な朝鮮非難一色となり、国連安保理の制裁決議に共産党や社民党なども含めて拍手喝采を送るという状況のなか、われわれ労働者共産党は十月十七日、以下の声明をインターネットで発表した。
 朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)が十月九日に核実験を行ない、それに対し国連安全保障理事会が十月十四日に朝鮮制裁決議を採択した現情勢に際し、緊急に以下を声明する。
 一、 国連安保理の制裁決議によって、北東アジアでの戦争の危険が高まった。安保理決議を名目とした米日の侵略戦争策動を阻止することが、現在の情勢の第一の課題である。国連安保理が米ブッシュ政権の案を本に、憲章第七章に基づいて軍事制裁に連動する制裁決議を採択したことは、ここ十数年来の朝鮮半島核問題の解決に著しく公平性を欠き、また朝鮮半島と北東アジアでの戦争勃発の危険をかってなく高めるものであり、制裁決議に断固反対する。日本安倍政権による周辺事態法の発動をはじめとする、戦争策動に断固反対し、阻止しよう。
 二、 朝鮮による核実験は、核兵器の廃絶を求める世界人民の願いに反し、朝鮮半島南北非核化共同宣言をはじめとする国際的諸合意に違反するものであり、きわめて遺憾である。米政権による朝鮮軍事攻撃の危険の除去を先決としつつ、朝鮮がすべての核兵器開発を放棄することを歓迎する。
 三、 朝鮮核実験は遺憾であるが、ブッシュ政権によるこのかんの戦争政策と対朝鮮政策転換に対し、いわゆる「自衛の核」としての対処を強いられたというのが基本的経過であり、朝鮮半島核問題の公正かつ根本的な解決は、朝米直接交渉と朝米関係の正常化なくしてはありえない。米国が朝鮮との直接の二国間交渉に応じること、また九四年合意に替わる新たな米朝合意が達成されることを米朝二国に強く要求する。昨年九月の六者協議共同声明での肯定的内容は、米朝会談の開始によってこそ活かされるものである。
 労働者共産党は、北東アジアの平和と解放のために、また朝鮮半島の非核化と北東アジアの米軍核戦力の追放のために、北東アジア諸国人民がいまこそ団結し全力で闘うことを訴える。
 以上のわが党の声明が訴えている第一は、戦争勃発の阻止である。その後、六者協議の再開合意によって当面、安保理決議から第二次朝鮮侵略戦争へというストレートな破局的展開は避けられる見とおしとなっているが、アメリカ帝国主義が主導した(また議長国日本がその手先となった)制裁決議の性格からいって、偶発的衝突などから戦争に発展する危険はいぜん続いている。米日の戦争準備の一切に強く反対し、またすべての関係諸国の緊張激化につながる行為に反対し、広範な戦争阻止の国内的国際的な盛り上がりをつくること、これが実践上の緊要な課題である。また、朝鮮の核実験に対して多少の見解の相違があっても、戦争阻止の闘いは共同で前進させていくという態度が必要だろう。
 安保理決議に対する態度では、日本共産党などが「非軍事的措置によって事態の解決をめざす」ものであるとして明確にこれを支持し、同様に社民党も「歓迎する」などとしている。こうした態度は情勢の全局を見誤り、米日の戦争準備に客観的には手を貸す誤まった態度である。
 諸国の核実験に対して、国連憲章第七章に基づく制裁決議が行われのはきわめて異例である。九八年のインド、パキスタンの核実験に対する安保理の対応は、単なる非難決議であり、核関連物資の禁輸などを加盟各国の判断にまかせるというものにすぎなかった。現在、ブッシュ政権はインドと核「平和利用」協定を結んでインドを「責任ある核保有国」と認定し、またパキスタンを対「テロ」戦の同盟国として扱い、その核武装を問題にしていない。結局、米帝にとって都合がいいか悪いかで核実験国を選別する、はなはだしい「二重基準」である。
 核兵器の廃絶を長年訴えてきた我々日本人民からすれば、すべての核実験・核保有国に対し、核兵器を廃棄するまで一切の区別なく経済制裁を加えたいところである。その意味では朝鮮に対しても例外ではない。しかし残念ながら国際政治と国際法の現実は、自衛権の名による核武装を非合法としておらず、(NPT条約の外に出れば)どの国も核兵器開発を進めることを禁止されてはいない。国際法が核実験・核兵器を全面的に禁止できていないのは、核大国とくに米国に責任がある。今回の制裁決議のように、そうした核超大国・米国の「二重基準」が正当化されるならば、核拡散の混迷は深まるばかりである。
 また、制裁決議は米朝関係という面でも、まったく公平性を欠いている。朝鮮の核実験は、このかんの長期の朝鮮と米国の敵対関係、とくにブッシュ政権がその登場とともに朝鮮を「悪の枢軸」と規定し、対朝鮮政策を転換し、朝鮮敵視政策を強めてきたことの一つの帰結である。安保理は、紛争両加盟国の調停という立場をまったく放棄している。米国は、核兵器先制不使用の約束を拒否しているほとんど唯一の核保有国であり、朝鮮に対する核先制攻撃計画を保持し、つまり国際法違反の核威嚇を行なっている。米国は制裁を受けなくてよいのか。
 米国務長官ライスは、「六者協議共同声明で、米国は北朝鮮に攻撃または侵略を行なう意図はないとした。北に安全は保障している」としているが、これは笑止だ。ブッシュ政権登場以降の核軍事ドクトリンが保持されたままでは、朝鮮にとって何ら安全ではない。まして(米帝に限らないが)自衛権の行使あるいは国連決議の執行と称して、戦争は開始されるのである。また六者協議後の金融制裁が共同声明の信用性を破壊した。
 今回の決議は、戦争につながる制裁決議である。中国、ロシアとの妥協の産物であるため、「41条に基づき」や「全関係国が外交努力を強化し、緊張を激化させる行動を避け」などの文言が入ったものの、米国とその同盟国のPSI(拡散防止構想)に沿った臨検が、決議を盾に可能になっている。決議では「貨物検査」とアイマイな表現になっているが、米国にとっては臨検であり、船舶などへの強制的な臨検は交戦権の行使である。
 また、核と運搬手段についてのみならず、大砲などの通常兵器についても供給禁止としている。かねてから米国は、核開発とミサイルのみならず通常兵器を含め三点セットで「北朝鮮の脅威」としている。この政策が決議に貫徹されている。38度線沿いの長距離砲などを、武装解除せんとしていると考えられる。米帝は現実の戦争に備えているのではないか。
 以上のように、今回の制裁決議は事態を平和的かつ公正に解決できるものではなく、その正反対である。米国による朝鮮の船舶に対する臨検で武力衝突が発生した場合、本来安保理は両加盟国の衝突停止のために動かなければならないが、現実はそうならず、今回の決議が想定する「追加措置」の軍事制裁決議案が提出されるだろう。中国などがそれに反対すると、いわゆる有志連合による戦争へ突き進む。このように事態はいぜん予断を許さない。
 事態の平和的かつ公正な解決の道は、朝米直接交渉にある。来たる六者協議がそれを促すものとなるならば、肯定的役割を果たすだろう。事態は、破局的戦争の危険性がある一方、朝鮮戦争停戦協定を平和協定へ変えることをはじめとする恒久的平和への踏み出しに転化する可能性もある。
 安倍連立政権は、事態の平和的かつ公正な解決に何ら貢献しておらず、逆に戦争と核軍拡競争をあおっている。日朝ピョンヤン宣言は、日本による対朝鮮通商の全面断交という異常な独自制裁の強行と、朝鮮の核実験とによって、今や危機に瀕している。しかし本来は、日本が近年の日米軍事一体化の政策を選択せず、また日朝国交正常化交渉を維持していたならば、朝米関係の進展を仲介する立場も日本には可能だったのである。朝鮮核実験は異常な朝米関係に規定されたものであり、日朝関係から発生しているのではない。
 にもかかわらず、「朝鮮の核の脅威を一番うけているのは日本だ」として、日本核武装論が再び台頭するゆゆしき情勢となっている。自民党の中川昭一政調会長が十月十五日に、「憲法でも核保有は禁止していない」とデタラメを言い、「日本の周りの状況を考えたとき、当然、持つべしという意見が出てきて、議論を尽くす必要はある」と口火を切った。「核というものはあることによって、攻められる可能性は低い、あるいはない。やればやり返すという議論はある」、これは金正日国防委員長の発言かと思ったら、中川の発言である。中川とその同調者には、朝鮮核実験を批判する資格は一切ない。
 続いて麻生外相が翌日、「隣りの国が持つとなった時、一つの考え方として、いろんな議論をしておくことは大事だ」と述べ、政府外相と与党の政策責任者がそろって核武装論議を提唱する事態となり、日本への国際的な懸念が一挙に高まった。これに対し、安倍首相は非核三原則に変更はないと答弁しているが、彼はかって早稲田大学で中川と同じ暴言を述べたこともあり、「論議は自由」として事態を放置している。
 安倍は、中川、麻生をただちに辞任させよ。政府・与党の要職にある者に「議論の自由」は通用しない。世界平和にとっては、朝鮮の核保有よりも、日本帝国主義の核保有のほうがより重大な危機である。朝鮮核実験を利用して、日本核武装論を解禁した安倍反動政権を打倒しよう。
 安倍政権の周辺事態法発動の策動に断固反対し、日米の朝鮮侵略戦争を阻止しよう。
 朝鮮半島非核化の堅持を支持し、日米軍事一体化の核・ミサイル戦争態勢を粉砕しよう。
 朝鮮の核実験を含むすべての諸国の核実験に反対し、とりわけ核超大国アメリカの核兵器強化に断固反対し、全世界から核兵器を廃絶しよう。