右翼国家主義・安倍新政権を打倒しよう
  全力で教育基本法改革阻止を

 安倍晋三が九月二十日に自民党総裁になり、九月二六日に始まった臨時国会で自民・公明の支持により首相に選出され、同日、戦後歴代内閣の内でも最も右翼的で国家主義的といえる安倍連立政権が成立した。
 安倍首相は九月二九日の衆議院での所信表明演説において、臨時国会に継続している重要諸法案の内とくに二つを明示し、「まず、教育基本法案の早期成立を期す」、「まずは、日本国憲法の改正手続きに関する法律案の早期成立を期待する」と述べた。安倍政権が憲法改悪のための政権であり、その第一段階として教育基本法改悪を断行する政権であることを自ら明らかにしたのである。
 現在の臨時国会には、重要対決法案として教育基本法改悪案、改憲国民投票法案、共謀罪新設法案、防衛省昇格・派兵本務化法案、また十一月に期限が切れる対テロ特措法の延長案などがあるが、安部政権は教育基本法改悪案の成立を臨時国会での最大課題として臨もうとしている。政権の求心力を高め、最初の政権実績を作るものとして、教育基本法改悪の強行は確かに安倍政権の右翼国家主義的体質には似合ったものである。
 安倍が所信表明演説で、教育基本法の「改正案」と言わず「教育基本法案」と言ったのは、おそらく言い間違いではなく、提出法案は現行教育基本法の抜本的否定、新しい教育勅語作りであるという本音を暴露したものであろう。これは、自民党が憲法改正ではなく新憲法制定としていることに対応している。民主党案ですら、改正案と言わず「日本国教育基本法案」と言っているのである。
 安倍は演説で、「美しい国、日本」を実現するためには「教育再生」が不可欠とし、「教育の目的は、志ある国民を育て、品格ある国家、社会をつくることだ」と本質的言辞を吐いている。教育基本法改悪案に残っている「人格の完成」「平和で民主的な国家及び社会の形成者」の文言すら消し去り、現行法の「個人の価値」「自主的精神」などには目もくれていない。まず天皇制国家ありき、それに奉仕する志を国民に植え付けるために教育があるのだとする、どうしようもない右翼国家主義者である。そして「教員免許の更新制度の導入」、教員・学校の「外部評価の導入」を唱え、国家主義に沿わない教員を合法的に追放し、また同時に新自由主義の手法で学校教育を市場原理のふるいに掛けようとしている。
 こうした反動的かつ新自由主義的な施策を進めるために、内閣に「教育再生会議」を早急に発足させると強調した。安倍政権のセールスポイントに位置付けられた「教育再生会議」の議長には、ジェンダー・フリー攻撃の先頭に立ってきた山谷えり子を首相補佐官として当てるという。安倍の極右的取り巻きを集める「教育再生会議」と、伊吹文科相下の中教審とが競い合って、教育基本法抹殺を進めていこうというわけだ。
 ところがその出鼻で、教育基本法と憲法にのっとり東京都の「日の丸・君が代」強制を明確に否定した9・21東京地裁判決が勝ち取られた(三面参照)。敗訴したのは都教委であるが、小泉から安倍への政府・文科省が負けたに等しい。
 この地裁判決を活かしきり、臨時国会での教育基本法改悪阻止の闘いを大きく攻勢的に実現することが問われている。本質的に極右であるがために政権基盤が脆弱な安倍政権は、臨時国会で教育基本法改悪などにつまづけば急速に弱体化する可能性もある。広範な共同戦線で右派政権を打倒しよう。
 
 
つぶせ改憲国民投票法案
  集団的自衛権行使の解釈改憲も策す

 安倍政権の登場によって、憲法情勢もより厳しくなってきた。新総裁就任後の記者会見で安倍は、「五年を目途とした新憲法制定」を唱え、教育基本法改悪案のみならず、あわよくば臨時国会で改憲国民投票法案も成立させようとしている。
 安倍の所信表明演説は、九月一日の政権公約に比べると、「戦後レジームからの船出」という安倍の基調的文言を使っておらず、つまり憲法改悪を前面に出すことを避けて、戦後のブルジョア民主主義支配体制を右から否定せんとする政権公約での凶暴な姿勢を薄めている。これは、連立相手である公明党への配慮という面もあるが、このかん、安倍の極右的姿勢に対し、国内的以上に国際的に、アジア諸国をはじめ米国の議会や主要メディアが警戒の声を強めたことに配慮せざるを得なかったものと考えられる。しかし、いぜん安倍は、侵略戦争をそれなりに反省する九五年「村山首相談話」に対しその継承を認めておらず、「歴史家が判断すること」などとして、その反動的歴史認識を居直り続けている。
 安倍は自民党三役人事では、NHK番組改ざん政治介入の共犯コンビである中川昭一を党政調会長に据えるなど、「自虐史観」反対の極右仲間を党執行部・内閣・首相補佐官に呼び寄せている。
 こうした安倍の反動性は、政治的に配慮した所信表明演説にも隠しようはない。安倍は、「国の理想、かたちを物語るのは、憲法です」とし、彼の国家主義的な憲法観を開陳した。主権在民制の国では、まず国民の権利が明確にされ、その権利保障のために国家が作られ、また国家権力が制約されることを明記するのが憲法であるはずだが、安倍にとっては国民よりもまず国家があるのである。
 そして安倍は、「占領時代に制定されて六十年たったので新しい時代にふさわしい憲法の在り方を与野党で議論し、方向が出ることを願う」として、わざと漠然とした改憲容認論を振りまき、改憲国民投票法案の早期成立を期待すると結んでいる。議論するのはいいじゃないか、改正手続きを整えること自体は必要じゃないかとして、アメリカと一緒に「戦争をする国」を実現するという改憲の目的を前面に出さないようにしている。
 しかし、この目的を隠しようはない。安倍政権は、「五年目途」の改憲とセットで、集団的自衛権行使を可能とする解釈改憲の方針を打ち出している。憲法を変えてしまう以前にも、自衛隊が海外で米軍とともに戦闘状態に入れるように、政府の憲法解釈を変えてしまおうということである。所信表明演説では、「日米同盟がより効果的に機能するために、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即して、よく研究していく」としている。どういう場合なら、海外での武力行使が現憲法下でも可能なのか、早く明確にしようということである。
 安倍自身は従来から、「現在でも集団的自衛権は行使できる、改憲によってクリアになる」という持論であるが、これまでの内閣法制局見解は、集団的自衛権は持っているが九条によって行使できない、である。安倍政権の成立によって、この内閣法制局見解の変更が断行される危険が高まっている。安倍が祖父・岸信介元首相から受け継ぐ、日米安保の「片務」性から「双務」化への野望が完成するのである。
 安倍政権が、集団的自衛権行使の解禁を急いでいる理由としては、今夏から日米共同のミサイル防衛態勢が実戦配備に入ったことが大きいだろう。日本と朝鮮半島の間の公海などを活動領域とする迎撃ミサイル搭載の米艦が新たに横須賀基地に配備され、九月末からは嘉手納基地に米軍MD部隊の装備搬入が始まるなどしている。集団的自衛権の行使を一定の条件下で可能とする安倍の策動は、日本海などの公海上で、自衛隊が米軍とともに戦闘状態に入ることを想定しているものと言わざるをえない。その解禁は、現在の航空自衛隊によるイラク派兵も、アラビア海などでの海上自衛隊の活動も、その任務内容を一変させることになる。
 こうして安倍政権の登場によって、憲法改悪策動の進展を阻止する闘いとともに、集団的自衛権行使を可能とする解釈改憲の強行を阻止する闘いが大きく問われるようになっている。
 臨時国会での改憲国民投票法案の阻止とともに、現在進行の戦争策動を阻止しなければならない。ブッシュ政権に追随して戦争をする「醜い国、日本」から、直ちに引き返さなければならない。(S)
 
 
沖縄知事選
 統一候補・糸数慶子さんの必勝へ
    辺野古新基地建設阻止!平良夏芽牧師不当逮捕糾弾

 九月十九日、人選が難航していた沖縄県知事選挙(十一月十九日投票)で、糸数慶子さん(無所属参院議員、沖縄社会大衆党副委員長)が野党統一候補として立つことが決まり、事実上の出馬表明が行なわれた。
 これにより沖縄知事選は、野党「一本化」候補の糸数さんと、稲嶺県政の継承を掲げ自民・公明与党が支持する仲井真弘多氏(前県商工会連合会会長)との一騎撃ちとなる見込みとなった。
 来たる県知事選において糸数さんを勝利させることは、沖縄にとっては、辺野古崎沿岸の新基地建設を拒否するための大きな勝利であり、八年ぶりの革新県政の復活ともなるものである。また全国的にも、日米軍事再編合意を継承しつつ国政の右傾化をすすめんとする安倍新政権への痛烈な打撃となるものである。県内外から、糸数さんを支持し、沖縄県知事選必勝の支援を強めることが必要だ。
 このかん、四月から野党五党(社民党、社大党、民主党、共産党、自由連合)によって、統一候補者選定の協議が行なわれ、五月には四項目の「基本姿勢」が、「米軍再編による基地機能強化と沿岸案、新基地建設を許さず、基地の整理・縮小、撤去をめざします。」「憲法の平和理念・9条を守り、県政と県民の暮らしの中に生かします。」「愛国心の押しつけ等戦争につながる教育基本法の改悪を許さ」ない等として確認されていた。
 その後、保守分裂勢力である下地幹郎衆院議員の政治団体「そうぞう」が、野党の中の保革共闘を教条化する人々によって迎え入れられ、六者協議となったあたりから混迷が始まった。最終的には山内徳信氏と下地氏に絞りこまれたが選定できず、九月一日には六者協解散となった。その後、事態を打開するため社大党が糸数擁立を党決定し、社民、民主が支持し、この三党の動きを共産党などが受け入れ、山内氏も「一本化」のために出馬を断念するという形になっている。この過程には不透明な部分もあるようだが、四年前の知事選で社民・社大・民主と共産との「二本立て」で稲嶺再選を許したことに比べれば、大きな前進である。県民世論が「一本化」を実現する圧力となり、また糸数さん擁立なら戦えるという声も強い。
 下地氏も糸数擁立に同意しているが、選挙で糸数支持なのかどうか明確ではない。しかし、それはもう重要な問題なのではない。彼がどうするにせよ、沖縄民衆と野党五党は「一本化」候補を実現した。あとは「基本姿勢」の政策を堅持・発展させ、糸数必勝をかちとるのみだ。
 一方、政府と県の基地再編協議が八月末から開始されている。九月十五日には辺野古現地に初めて機動隊が導入され、九月二五日には平良夏芽牧師が不当逮捕された。辺野古の闘いでの初めての逮捕である。これは、沿岸案を前提としたシュワブ基地内予定地の遺跡調査が県教委によって強行されたためである。沿岸案に同意していないとする県は矛盾している。夏芽さんを直ちに釈放し、調査を中断せよ。
 糸数県知事選に勝利し、新基地建設を阻止しよう。(沖縄T通信員)