イスラエルとアメリカ帝国主義は、レバノン侵略を即時停止せよ!
  世界を破壊するブッシュと手を切れ

 七月以降、レバノンおよびパレスチナ、イラン、朝鮮半島では、国連での対応を含め重要な事態が続いている。イスラエルによるレバノン侵略が七月十二日から開始され、今もなお拡大している。現在の緊急の最大課題は、国際社会がこの侵略戦争を一刻も早くやめさせ、即時停戦とレバノンからの無条件撤退をイスラエルとそれを支えるアメリカに強制することである。
 イスラエルによるレバノン全土への激しい空爆と南部への地上軍侵攻は、すでにレバノンの一般市民を一千名近く虐殺する言語道断の事態となっている。イスラエルは、レバノンのヒズボラ(ヒズブ・アラー)がイスラエル兵二名を捕虜としたことへの報復と称して攻撃を始めたが、レバノン政府の与党であり民兵組織を持つシーア派勢力・ヒズボラそのものの壊滅を目的とし、さらにはレバノンの政治的解体すら狙った不法な侵略戦争であることが明らかとなっている。ヒズボラによる武力抵抗は当然であり、イスラエル領内へのロケット弾攻撃も侵略戦争が続けられている下では正当な自衛権の行使である。
 レバノン侵攻に先立ち、これも捕虜・囚人交換交渉の拒否に端を発しているが、イスラエルは六月二八日からパレスチナ・ガザ地区への全面侵攻を開始し、スンニ派抵抗勢力・ハマスに属するパレスチナ自治政府の閣僚を多数拘束するなど無法極まる侵略を欲しいままにしている。ハマスは一月のパレスチナ評議会選挙で勝利し、合法的に自治政府を担うことになった勢力である。ブッシュ政権などが、ハマスがシオニスト国家否認の路線を堅持していることを最大の理由として合法政権を承認せず、財政援助を凍結するなどしていること、これがイスラエルの蛮行を誘発した。
 日本政府はイスラエルの侵略に遺憾の意を表するだけでなく、ただちにハマス政権の承認と財政援助の全面復活を行なうべきである。ブッシュ政権やイスラエルがハマスを「テロリスト」として扱い、交渉ではなくせん滅の対象としていることに日本は何ら同調すべきではない。ハマスは六月二七日のPLOファタハとの合意で、占領地撤退などを条件としたイスラエルとの平和的共存を当面の政策として受け入れており、現実的な責任ある勢力である。
 イスラエルによる現在のレバノン、パレスチナへの二正面侵略は、レバノンで地歩を強化するヒズボラ(昨年のシリア軍撤退後のレバノン総選挙で躍進し政権参加)、パレスチナで合法的に政権を握ったハマス、この両方の壊滅を狙った戦略的な侵攻である。ブッシュ政権はイスラエルと共に、ヒズボラを武装解除しない「即時停戦」は無意味だと反対し、抵抗勢力を壊滅するまで戦争を続けるなどとしている。イラクに続くブッシュ政権のイラン、シリアへの侵略策動の広がりと、今回のイスラエルの侵略は一体である。
 こうしたレバノン・パレスチナ問題では、国連は何もできないでいる。国連の停戦監視部隊が七月二五日にイスラエルに空爆され四名が殺害されたにもかかわらず、それをたんに「悲しむ」とするだけの安保理議長声明を七月二八日に出しただけである。ガザ侵攻停止の決議案は米国の拒否権でたちまち否決されてしまった。
 他方、朝鮮問題では七月十五日に国連安保理は、七月五日に行なわれた朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の弾道ミサイル発射実験に対して、朝鮮非難決議を採択した。また七月三十一日にはイランに対し、国連憲章第七章40条(暫定措置)にもとづき、ウラン濃縮など核関連活動の全面停止を求めるイラン制裁決議を採択した。
 これらを一見して明瞭なことは、朝鮮の軍事演習やイランの核活動という、戦争勃発はるか以前の平時の行為について「国際の平和と安全への脅威」だと大騒ぎして決議を挙げているにもかかわらず、現に戦争が起き、虐殺と破壊が日々拡大している事態については放置しているという国連安保理の状況である。いうまでもなく、この状況を生んでいる元凶はブッシュ政権下のアメリカ帝国主義である。アメリカの意向を抜きには安保理が機能し得ず、逆にアメリカが戦争を望むときには国連には拘束されないというわけだ。
 ブッシュ政権の軍事・外交政策の著しい特徴は、「テロリスト」「テロ支援国家」「ならず者国家」と決めつけた相手とは、それが主権国家の政府であれ何であれ、交渉相手として認めず暴力で対処する、直接に交渉せずに国際的包囲網なるもので対処するというやり方である。そして「自由と民主主義の拡大」を掲げて体制転覆もあえてやるというネオ・コン路線が、その対処の根底にある。もしブッシュ政権が、イランやシリアを、また朝鮮を対等な交渉相手として認め、何らかの合意を達成するという姿勢をもっていれば、かなりの紛争事案がそれなりの解決をみるだろう。「国際の平和と安全」を脅かしている最大の問題は、「テロ」ではなく、超大国アメリカの現在の路線である。テロリズムや核兵器拡散の問題は、超大国とその同盟者たちの横暴に対する反作用であるにすぎない。
 ブッシュ政権のこうしたやり方に同盟しているのが、中東ではイスラエルであるが、東アジアでは現在の日本政府である。安倍官房長官や麻生外相ら小泉連立政権の中でもきわだった反動派は、朝鮮ミサイル問題でも日朝のやり取りで対処しようとするのではなく、アメリカの後援の下に、いきなり国連安保理に第七章にもとづく制裁案を持ち出した。この制裁案じたいは中・ロの反対によって破産し、加盟国に強制力のない非難決議となったが、日米がこのような緊張激化策を取っていれば、朝鮮もますます軍事抑止力強化策に走らざるをえなくなる。このままでは、ブッシュ政権が戦争の口実を見つけやすい事態が生まれ、北東アジアでの戦争の危険は高まる。
 朝鮮は、核・ミサイルを含む軍事抑止力の強化によって米帝の攻撃を阻止するという「先軍政治」を掲げているが、その政府声明では、米国が現体制を認めて朝米協議に応じるならば、核問題の完全な解決と平和共存が可能であること、また朝鮮半島の非核化が目標であることを繰り返し表明している。軍事力で圧倒的に劣勢である方が、戦争を望むだろうか。ブッシュ政権登場による対朝鮮政策の転換が、問題の元凶であることは明らかである。
 小泉政権が今回、軍事制裁につながる第七章にもとづく朝鮮制裁決議案を待ってましたとばかりに提出し、また経済的・人的な対朝鮮制裁措置を日本独自で発動したことは、対朝鮮政策として誤まっているだけでなく、「戦争をする国」の実質作りとしても糾弾されなければならない。平和憲法を変え、軍事制裁に率先して参加するつもりである。
 非難決議ならよいのか。日共などは「有効で筋がとおったもの」などとして支持しているがとんでもない。日米はこれを制裁決議へ高めていく下準備として扱っている。朝鮮核・ミサイル問題を国連安保理で扱えば、そうならざるを得ないのが現実である。六者協議を金科玉条のようにいうのも正しくはない。昨年九月の六者協議は肯定的な共同声明をもたらしたが、朝米の関係進展がなければそれも具体化しないことが明らかとなっている。
 小泉後の日本政府に求められるものは、世界を不安定化させている米ブッシュ政権の軍事・外交路線への追随をやめ、アジア諸国などとの協調外交へ転換することだ。イランや中東地域とのいわゆる良好な関係の維持とイラクからの航空自衛隊の撤退、日朝ピョンヤン宣言にもとづく日朝交渉の再開、靖国参拝の中止などによる日中・日韓関係の再構築、これらは帝国主義的な枠内の転換であるとはいえ、情勢を好転する大きな転換である。
 ポスト小泉で、もし安倍晋三政権が登場するならば、日本のアジアからの孤立は深刻になるだろう。右翼ナショナリスト政権は、アジアからの不信の目に包囲され、進歩的日本人民との対立を激化させ、また外交路線をめぐる日本の支配層の分裂を促進するであろう脆弱な政権である。しかし戦争を引き起こせば…、先の朝鮮ミサイルでは日本領内に実弾が撃ち込まれたかのような挙国一致の雰囲気がかもし出されたのだから…という最悪な政権に違いない。
 反動派を打倒し、当面の政治を転換させ、闘いの隊列を前進させよう。