第三期二中総 情勢・任務決議

 広範な共同戦線で右派を打倒しよう

 
 わが党は、04年7月の第二期三中総で「左翼の政治的共同布陣の形成」という課題を決議し、05年7月の第三回党大会では、その課題を大会任務の一つとして確認した。第三期二中総は、これら二つの決議を継承しつつ、左翼の政治的共同戦線の形成という課題を中心として、現情勢と向こう一年余の方針を以下のように決定する。


      情 勢
 
 世界情勢は、第三回党大会の情勢・任務決議で確認された基調の内にある。そのことを確認した上で、労働者民衆の反抗が顕著になってきている点を指摘しておくべきだろう。
 米帝を主柱とする国際反革命同盟体制が、金融独占資本の多国籍展開のための新自由主義グローバリズムを推進し、全世界の民衆を主要な対象とする対決構造に入っている。グローバルな構造を獲得した産業が成熟を深め、資本主義的な仕方での社会の存立が困難になる兆しが現れてきた。諸国の革命運動は、新たな時代の階級闘争陣形を創造する課題に当面している。
 アメリカ帝国主義のイラク侵略戦争は、イラクにおいて民衆の広範な反米武装抵抗を呼び起こし、宗派間の内戦にも道を開きはじめ、泥沼化している。
 米帝に支えられたイスラエルは、レバノン侵略を開始した。レバノン人民の反侵略抵抗闘争を断固支持し、レバノン侵略の即時中止を求める。
 さらにブッシュ政権は、イランへの圧力など戦線の拡大による事態の打開を画策し、中東全体で矛盾を先鋭化させる方向に突き進んでいる。アメリカの覇権の限界が露呈し、アメリカ国内でも厭戦気分が広がりつつある。
 アメリカの世界覇権の下で新自由主義グローバリズムの攻勢は依然続いている。しかし、新自由主義を推進する諸国のブルジョアジーも、地域共同体の形成などによって、その社会破壊作用のある程度の緩慢化と市場競争力の確保を図ろうとしてきている。そして労働者民衆自身が、反撃しだした。中南米において反米政権・社民的政権が連鎖的に誕生していることは、その反映である。フランスでは、昨秋、差別と失業に苦悩する北アフリカ系若者たちが大暴動に起ち、今春には学生・労働者が三百万人の街頭デモ・全国ストライキを連続的に組織し、若者にたいする解雇の自由を合法化する「初期雇用契約(CPE)」をフランス政府に撤回させた。
 東アジアでもアメリカは、覇権を確保するために、米軍再編、アメリカの指揮下で戦争する国家への日本の改造、朝鮮敵視と南北分断、中国の軍事的封じ込めなどを強力に推し進め、その下で新自由主義グローバリズムの浸透を促進している。東アジア諸国のほとんどは、新自由主義グローバリズムの波にあらわれているが、相互に連携を強め、アメリカの朝鮮侵攻を政治的に押し止めている。日本だけがこの間、アメリカ一辺倒をやり、アメリカの思惑を超えて東アジアへの敵対を強めてきた。だがその日本でも、侵略・植民地支配の歴史の清算と東アジア外交重視が、政権をめぐる路線闘争の一中心課題として浮上してきている。
こうした中で東アジアでも、韓国、中国、タイ、フィリピンなどで新自由主義グローバリズムと対決する民衆闘争が湧き起こっている。日本の労働者民衆も、「格差社会」が政治問題化しだす事態のなかで、こうした東アジアの民衆運動に連動していくに違いない。
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 日本情勢について、第三回党大会の情勢・任務決議は、アメリカの一定の支配・統制下で日本が戦地派兵を拡大している現実、「靖国」問題や「東アジア共同体」問題が浮上するなどして東アジア諸国との関係をどうするか、外交路線が問われてきている現実、新自由主義がもたらしている自然破壊、諸個人のアトム化、格差の拡大と地域社会の崩壊、不十分な社会保障や少子高齢化とともに拡大する社会的諸矛盾といった現実等々、国家と社会の変化を構成する一つひとつの現実に焦点を当てた。そしてこうした現実を前にして、諸政党がそれらに対する態度を鋭く問われ、新たな政界再編の兆しも現れてきていること、左翼諸党派の広範な団結と共同作業が切実となっていることを指摘した。大会後の事態の展開は、この情勢認識の正しさを確認するものとなった。
昨秋の総選挙において、戦後のケインズ主義的・利益誘導型統治、ブルジョア階級の従来の「和の政治」のヘゲモニーが粉砕され、弱肉強食の新自由主義路線が完勝した。小泉政権の新自由主義的構造改革によって、資本主義の延命と社会の存立とを両立させるのが困難な時代の現実が浮き彫りにされるにしたがい、諸階級・諸階層の葛藤が熾烈化してきている。人々は、国家と社会の在り方についてのそれぞれの構想とその実現のための政治布陣を形成していくダイナミックな過程に突入しつつある。
支配階級は、内部抗争をあらわにした。小泉政権は、資本主義の延命のためには旧来型の社会の崩壊も意に介さぬ支配階級の中枢部分を、アメリカ一辺倒・市場原理主義の旗の下に結集した。小泉政権は、米軍に頼り、日帝の軍事力に頼る形で、金融独占資本のための世界的な権益拡張に突き進んでいる。アメリカと日本の金融独占資本の略奪者的本性に多少とも課せられてきた国内の法的・社会的制約を、全面的に取り払いつつある。失業・半失業の沼地を社会全体の足元に大きく広げてますます多くの人々をそこに投げ込み、労働者の使い捨てを日常的な現実とし、人々の横のつながりを寸断し、二極分解したその上層を体制内に取り込みつつ、下層に対する警察の監視・治安管理をますます露骨にしている。北東アジアの諸民族に対する敵視政策を一段と強化している。
支配階級は全体として、こうした新自由主義路線を採用せざるを得ない。だが、そのことによって自己の支配的地位を自ら危うくする。このため、新自由主義路線を推進しながらも、支配秩序を維持する方策として「共生」「参加」「セイフティーネット」などにより民衆を包摂していこうとする勢力が、支配階級の内部に形成されてきている。この勢力は、「アメリカ帝国」を受け入れながらも、アメリカ一辺倒路線と距離をとり、東アジア重視を主張する。支配階級のこの一半は、その性格上極めて寄せ集め的かつ動揺的で、対米追随・新自由主義をやるかと思えば、東アジア重視を唱え労働者人民の包摂に腐心する。新自由主義などを推進しながら、一方ではその結果の現れを糊塗せんとするマッチ・ポンプ路線である。
こうして自民・民主の二大ブルジョア政治勢力が国会で圧倒的多数を占め、相互に抗争しつつも、帝国主義と新自由主義の政治を貫徹する情勢が続こうとしている。労働者人民の改良的諸要求をそれなりに代弁してきた現代修正主義、社会民主主義の政治勢力は国会で圧倒的少数のままであり、ブルジョア議会制度と労働者人民の諸要求との間の乖離は拡大しつつある。ブルジョア政治勢力との当面の闘いのために、日共、社民党、革命的左翼などが共同できる可能性・必要性が大きくなっている。ここに、自民・民主と区別された国民的規模でのもう一つの政治勢力、あらゆる左翼的・民主的な諸勢力による共同戦線、すなわち「第三極」の形成の必然性が存する。
現在の情勢の要求は、直ちに労働者人民の政権を樹立するところにはない。情勢の要求は、まず右への政治の流れを止めること、アメリカ一辺倒・市場原理主義政権を打倒することにある。
 この焦眉の政治課題を達成するために、団結できる全ての人々と団結する。これがこの局面でとるべき基本的な政治態度である。全ての左翼は、革命的左翼を含めて大同団結し、共同して労働運動、民衆運動が発展する政治空間を押し広げていかねばならない。そこでは支配階級内部の労働者民衆を包摂していこうとする人々との一時的・部分的連携も、視野にはいっていなければならない。
こうした闘いの中で、労働者民衆は独自の政治勢力を「第三極」として立てるのである。それは、支配階級に包摂されている現実から労働者民衆が自己を解放していく一連の闘いにおいて、不可欠の環を成すものである。


     方 針

昨秋の総選挙における「小泉」の圧勝は、日本の戦後保守政治を終焉させ、新たなブルジョア政治再編に道を開いた。われわれはこの情勢展開の中で、第三回大会の情勢・任務決議を指針として、新たな時代をたたかい抜く労働者民衆の政治布陣を構築していかねばならない。

@ 「第三極」の形成

 小泉政権は、資本主義の延命と引き換えに旧来社会を崩壊させるアメリカ一辺倒・市場原理主義路線を確立した。この路線は、この秋に小泉が首相の座から降りようと、支配階級の中枢部分の路線として継承されていくだろう。これに対して支配階級のもう一半も、小沢が民主党の代表となることで、マッチ・ポンプ路線を包む大衆受けする政治主張の定式化と、勢力編成に突入した。
 こうした情勢は、社会の存立と自己の生存の必要に迫られ新たな社会を求めて動き出した労働者民衆に、自己の旗印の確立と独自の政治勢力の形成を求めている。それは、労働者民衆総体の利害を包括し・したがってまた諸潮流・諸傾向の大連合として、「第三極」として形成されねばならない。
 そのポイントは次の三つである。
 一つは、左翼の横のつながりである。
 「第三極」の形成には、労働者民衆の側の分裂状況を克服せねばならない。労働者民衆の側の分裂状況を促進してきた要素のひとつは、まぎれもなく左翼の破産と路線・戦術の相違だけでは正当化できない分裂の歴史、そして今日の時代の民衆運動への不適応である。左翼の自己変革と路線・戦術の相違を超えた横のつながりの形成は、「第三極」の形成にとって極めて大きな課題となっている。
 二つは、非正規・失業労働者を不可欠の一基盤として獲得することである。
 「第三極」は、「格差社会」の革命へと向かわずにいない非正規・失業労働者をその基盤としえないならば、自己を形成できないだろうし、形成できたとしても無力であるに違いない。「第三極」が労働者民衆の団結を形成して「格差社会」の廃絶へと導き得ない時は、現状打破への鬱積した欲求は右へと雪崩をうつだろう。われわれは、迫り来る歴史の岐路を見据え、事に当たらねばならない。
 三つは、「第三極」的統一戦線を地域で育て、地域から押し立てていくことである。
 崩壊がすすむ地域社会の再構築を目指す民衆運動は、地域的な統一戦線を発展させる。いまや、こうした地域的統一戦線の発展への一層の貢献が求められている。そして、各地の地域的統一戦線の横の連携を強め、全国的な「第三極」の形成を促進していかねばならない。
 この領域において、07年の統一地方選と参院選は大きな試練となる。この二つの選挙などにおいては各地で、「第三極」的共同候補を支持し、またそれが現実的でない場合は、「第三極」的勢力の前進を念頭におきながら、自・公の反動的政治からの当面の転換を実現するための選挙対応を推進する。

A 新しい労働運動の構築

 労働者民衆の政治勢力・「第三極」も、労働運動の現代的再建なしには力あるものとして形成することが出来ない。第三回党大会下のわれわれの方針の要は、大会決議で強調されているように、日本労働運動の新しい潮流を強力に支援し、その前進を具体的に実現することである。
情勢は、資本の横暴にたいする非正規・失業労働者の闘いの組織化を、連合・全労連・全労協の枠を超えた共同を、企業の枠をこえた個人加入の労働運動の主流への押上げを、協同組合やNPOなどの諸形態での労働者事業の発展・横の連携を、人と環境を大切にする地域社会づくりへの貢献を、労働運動に求めている。われわれは、この情勢の要求にいま一層応えていかねばならない。
政府、支配階級は新自由主義による弱肉強食の経済ルールをおしすすめ、いままた労働契約法の制定や労働時間法制の改悪を企てている。
これらの企ては、経営者による労働者の使い捨てを一層容易にし、結果として長時間労働や過労死をさらに深刻なものにする。また抑圧された労働者が、自分達の利益や権利、生命を守るためにたたかう武器となっている少数派労働組合の活動を圧殺するものとなっている。
政府、支配階級によっておしすすめられている労働法制の改悪をおし止める、たたかう労働戦線を構築するために奮闘する。
われわれは、第三回党大会で決議した「当面する労働組合運動におけるわが党の諸政策」を基本として、各地の情勢に応じた闘いを組織しつつ、全体的には非正規労働者などの最低賃金の大幅な向上、および新たな最低賃金制度実現の闘いを重視する。
 最低賃金の引き上げを勝ち取る闘いは、当該の労働者層にとって切実な要求であるだけでなく、賃金の全般的な下落に歯止めをかけ、賃金格差を解消していく方向性をもつ闘いでもあり、非正規労働者が多数を占める時代における労働者の階級的団結にとり、極めて重要な位置を占めるものである。われわれは地域において、全ての階層、職種を貫いて、また連合等々の枠を超えて共闘関係をつくりだし、非正規労働者の大衆運動を巻き起こして、関連企業全てに要求を提示し、一つひとつの企業に要求を受け入れさせ、その年の地域最賃を労働者の側から形成していくような運動を構想していかねばならない。
 支配階級は今、来年の通常国会上程を視野に入れて、地域別格差を再生産する全国地域別最賃法案への改定を狙っている。われわれは、現行最賃制が「企業の支払能力論」を基礎にしたザル法であることをふまえ、現行最賃制を抜本的に変革し、全国一律最賃制の実現にむけて奮闘する。

B イラク侵略戦争・米軍再編、戦争国家化との闘い

 アメリカは、イラク侵略戦争の泥沼にはまりながら、世界覇権を維持するための米軍再編を、東アジアでは中・朝をも射程に入れた仕方で推進している。そこでは、日本の侵略戦争への動員が不可欠の構成環に位置づけられている。日本の現在の政権は、アメリカに忠実であることによって自国金融独占資本の世界的権益の防衛を図る道を突き進んでいる。
 われわれは、アメリカ帝国主義に反対する全世界の労働者階級・被抑圧民族人民と団結して、米帝を孤立させ、その戦争政策を挫折させるためにたたかう。アメリカ一辺倒・侵略国家の道を歩む政府を打倒する。自衛隊のイラク撤退を勝ち取る。沖縄をはじめ全国各地で地域ぐるみ・自治体ぐるみの闘いとなってきている在日米軍・自衛隊基地の再編強化とのたたかいに奮闘する。
 憲法改悪、国民投票法、教育基本法改悪、共謀罪など反動諸立法を阻止する。直面する改憲国民投票法案、教育基本法改悪案を阻止する闘いは、「第三極」的な共同戦線を形成するうえでも重要である。
 「靖国」「領土」など具体的問題で侵略の歴史を正当化し、拉致問題をテコに朝鮮制裁を叫び、帝国主義的民族主義を扇動することで戦争国家化を促進している右翼勢力とたたかう。
 朝鮮民主主義人民共和国のミサイル演習に対する国連安保理での制裁決議策動は、朝鮮半島での新たな戦争に直結するものであり、これに断固反対し、米国と朝鮮との直接交渉、および日本の経済制裁中止と日朝国交正常化交渉の再開を要求する。

C 党建設

 われわれは、労働者民衆の政治勢力・「第三極」の形成に、最賃闘争などの具体的運動での共同を媒介にした新しい労働運動の発展に、反戦・反基地−改憲阻止のたたかい等々に貢献し、そうした諸活動とその成果を地域そして日本の政治の転換へと結実させていかねばならない。
わが党にいま求められているのは、打ち鍛えてきた政治主張、培かってきた組織性、党員の社会的影響力を政治的に活かし切ることである。情勢が要求する政治的役割を果たすことで党の存在価値を実証し、党の発展と共産主義者の団結・統合へひろびろとした道を切り拓いていこう。
         
                                     【以上】