統一地方選・参院選みすえ、憲法・教育基本法闘争に勝利しよう
  強大な政治的共同戦線へ

 憲法改悪のための国民投票法案の国会提出が、五月二六日に強行された。四月にすでに提出が強行された教育基本法改悪案とともに、この日本国憲法の命運に直結する二つの法案をめぐる闘いが、当面の焦点となっている。この二つの法案を阻止できるのか、それとも成立を許してしまうのかは、米日軍事再編を破綻させる闘いの成否とともに、「憲法決戦」を前にした労働者人民と支配層との力関係を左右してくるものである。
 六月十八日会期末の国会は、今のところ延長されない政局模様となっているが、日本の労働者人民は今こそ力をいれて、強大な共同戦線の形成を促し、当面のこれらの闘いに勝利できる力量をつけることが急務である。そして、その共同の闘いの成果を、来年の統一地方選挙と参議院選挙に、また沖縄においては今秋知事選挙に活かしていくことが問われている。日本の労働者人民の、当面の闘争展望はこのように立てられるのである。
 改憲国民投票法案については、自民党・公明党と民主党とが五月二六日にそれぞれの案を提出した。与党案は、国民投票法制と(改憲案の提出要件を規定する)国会法改定案を併せたもので、国民投票法制の目的を憲法改悪に絞った極悪なものである。民主党案は、「国政における重要な問題」も対象とするものとしているが、主として改憲を狙ったものである点は変わらない。
 両案とも、改憲案について逐条賛否なのか一括賛否なのかも明らかにしない(土壇場に密室で決めるつもりである)などデタラメであり、直接民主主義の法整備とはまったく無縁の、9条抹殺を狙った代物である。(民主党案は、直接民主制の法整備を求める人々を平和憲法改悪に取り込もうとする点では、より悪質だとすら言える)。
 このかん与党は、報道規制条項などで譲歩し、民主党を共同提出に巻き込もうとしていた。これは、小沢民主党の政略的な「対決」方針によって頓挫したが、与野党の擦り合わせが提出前から提出後に移ったということであり、状況はいぜん危機的である。改憲国民投票法案、その両案に明確に反対する運動と世論を大きくし、憲法改悪発議阻止の緒戦となるこの闘いに全力で勝利しなければならない。
 教育基本法改悪案については、与党が四月二八日に、民主党が五月二十三日にそれぞれの案を提出した。
 与党案は、「愛国心」を法的に強制する国家主義、資本の労働力育成のための新自由主義、国家の教育権確立を三本柱とする極悪なもの(前号一面参照)である。民主党案は、「日本を愛する心を涵養」と前文で入れて「愛国心」強要を与党案と競い合い、また「宗教的感性の涵養」を条文で入れて、自民・公明の分断を誘うなど政略的かつ反動的な代物である。
 両案は本質的に同一であり、労働者人民は民主党案にアイマイな態度をとることなく、教育労働者を先頭とした国民的決起によって両案を粉砕し、憲法改悪と一体の教育基本法改悪を必ず阻止しなければならない。
 また、共謀罪新設法案については、民主党の「修正」案との擦り合わせが行なわれていたが、衆院法務委員会での強行採決ができないままとなっている。その背景には、このかんの共謀罪反対の運動と世論の盛り上がりがあった。継続審議ではなく、廃案とせよ。
 以上のように改憲国民投票法案、教育基本法改悪案、また共謀罪法案をめぐる国会状況の特徴は、自民・公明と民主とによって大差のない反動的内容が出され、政府・与党案と対案あるいは修正案との擦り合わせが可能な状況にあることが本質である。しかしまた、当面の統一地方選・参院選を前にして、小沢民主党が「対決」方針を自党に有利と判断し、政権交代および政界再編成を自己目的化した政略的対応を取ることによって、国会状況が混迷しつつあることも特徴となっている。
 われわれ労働者人民は、この国会与野党の抗争が二大ブルジョア政治勢力の枠内にあり、両者の手打ちがいつでも可能であることを踏まえつつ、同時に、その抗争がおもわぬ波乱を引き起こし利用できる場合もあることを見ておくべきである。しかし、それを利用できるためには、自民・民主と対決する「第三極」的な、力をもった政治的共同戦線が形成されなければならない。
 小泉首相は自分の興味のあること(郵政民営化、行革推進法など)に執着し、これも好きなブッシュ詣で(六月末の日米首脳会談)を優先させ、他は放り出して退任しようとしている。会期末後は、自民党総裁レースに関心を引き寄せ、それ以外はワールドカップというメディア利用の謀略である。
 しかし、われわれ労働者人民の闘いに、臨時国会までの国会休会中の「休戦」はない。この時期には、憲法・教育基本法改悪を阻止できる共同戦線について、積極的な論議と行動が問われている。諸課題での大衆運動的な共同戦線についてはいうまでもない。
 意識的な検討を要するのは、政治的な共同戦線である。憲法状況など事態がここまで来ているにもかかわらず、社民党にせよ日本共産党にせよ、自党の議会主義的生き残りを第一としているのか、共同戦線の形成のための積極的な行動を未だに取ろうとしていない。
 とくに日共は、五月二十日『赤旗』論評(「参院選での『平和共同候補』を求める運動について」)で、共同戦線の形成について極めて後ろ向きの姿勢を示している。そこでは、「憲法改悪反対の運動を発展させるために何よりも必要なことは、『選挙共闘』問題などではなく、広範な国民各層の間で憲法改悪反対の声を広げること」としているが、これでは何も言っていない一般論である。改憲阻止のために、参院選で何ができるか具体性ゼロである。
 しかし、最近の各地方選挙や、憲法・教育基本法を始めとする諸運動では、日共系を含めた広範な共同戦線の傾向は強まりつつあり、それを底流にして全国的な政治的共同戦線を求める要求は強まりつつある。ブルジョア議会主義者は、諸運動では「課題の一点」で共同しても、選挙では一切の拘束を嫌う習性がある。しかし、無益なセクトに転落したくないのならば、労働者人民の広範な要求を無視し続けることはできないはずである。
 重大法案が国会に懸かったままで、かつ統一地方選・参院選が控えたここ当面は重要な時期である。二大ブルジョア政治勢力に対決する強大な共同戦線の形成のために、おおいに奮闘しようではないか。