5・3東京
  緊迫する憲法闘争−「06年5・3憲法集会」に四千余
    9条は再び侵略戦争せずの誓約

 憲法記念日の五月三日、東京・日比谷公会堂において「生かそう憲法、高くかかげよう第9条 2003年5・3憲法集会が、二千五百人の参加により開催された。
 ピースボートの若い人たちによるダンス・パーフォーマンスをはさんで、多くの人たちが発言した。
 「右翼ががなりたてていたが、憲法をなくさせてなるものかという思いを強く集会場に来ました。憲法は私たちにとって命綱なのです」(エッセイストの朴慶南さん)
 「憲法を書いた人は、死者の想いに突き動かされながら書いたのではないでしょうか。憲法は、死者が私たちに贈ってくれたもの、国籍を超えたものだと思います」(翻訳家の池田香代子さん)
 土井たか子・社民党党首、志位和夫・日共委員長も発言した。
 集会は、有事法成立の策動が強まり、米帝による朝鮮侵略戦争の危険が高まる情勢を反映して、終始緊迫感につつまれ、成功裏に終了した。参加者は、集会後、銀座までのパレードを行った。


5・3福岡
  「九条の会・福岡県連絡会」主催で千三百名
    共・社系が合同集会

 福岡市では五月三日、市民会館で憲法集会が開催され、千三百人が集まった。県内各地の三十二団体で構成する九条の会・福岡県連絡会が主催したもので、憲法集会といえば昨年までは日共系と社民党系に分かれて開催されていたが、今年は合同の取り組みとなり、労組では日教組傘下の福教組や高教組、自治労傘下の福岡市職労などが取り組んだ。
 代表世話人の石村善治・福岡大学名誉教授が挨拶を行ない、幼児教育アドバイザーの熊丸みつ子さんが平和について子供たちに語り継ごうと講演。続いて教育基本法改悪を許さない立場から中村元気・県教組委員長が、また憲法改悪を止める立場から斎藤文男・九州大学名誉教授が講演を行なった。
 今年は憲法が公布されて六十周年になるが、これを記念して映画『日本の青空』の製作が進められており、集会では大澤豊監督の挨拶が行なわれた。
 憲法はアメリカ占領軍の「押しつけ」だから変えるべきだという批判があるが、当時、民間人による憲法研究会が作成した憲法草案が、実はGHQ案の手本になっていたという歴史的事実があり、その研究会で中心的な役割を果たしていたのが鈴木安蔵氏(治安維持法適用第一号といわれる学連事件で有罪とされ、京都大学を退学)である。映画は現在に生きる主人公が、今は亡き鈴木安蔵氏の娘を通じて当時の日記を手がかりに憲法誕生を巡る真実のドラマを明らかにしていくというものである。
 大澤豊監督は製作委員会への資金的協力要請を行なうとともに、「映画人九条の会」には千二百人に及ぶ映画関係者が結集していることを報告した。
 集会の後半は、地元の法曹関係者などで構成する憲法劇団ひまわり一座による憲法劇が行なわれた。これは、憲法改悪・国民投票法に関して特集を組んで報道する番組スタッフを、権力者があらゆる手を使って落とし込めようとするストーリーであり、メディア規制を目論む国民投票法案の反人民性を明らかにした劇であった。
 この劇中に使われた憲法第九条の条文をそのままメロディに載せた歌を出演者と会場の参加者が大合唱して、盛会のうちに四時間に及ぶ集会を終えた。(九州M通信員)


改憲国民投票法案の今国会提出阻止!
  許すな!小沢民主党の擦り合わせ

 三月三十日に衆院憲法調査特別委員会の理事懇談会が、衆院事務局による「憲法改正国民投票法制に関する論点一覧表」を受ける形で、改憲国民投票法案の「論点整理」に入って以降、憲法改悪の重要な段取りとしての国民投票法案の国会提出の危険が高まっている。
 四月十二日には、自民党憲法調査会が国民投票法制の自民「修正案」を決め、十八日には公明党もこれを了承した。この自民・公明の与党案は、昨年末の原案が「国民投票運動に関する規制」において報道統制を明確にしていたことが不評を買ったことから、「自主的な取り組み」つまり報道自主規制に変えるなどとしたものであるが、民主党との擦り合わせを念頭に入れたものである。
 この国民投票法案与党案は、第一に国民投票法は憲法改正のためと明確に位置付けられており、第二に「投票の方式」では、「憲法改正案に賛成〇、反対X」とするだけで、一括賛否なのか個別賛否なのかを明らかにしていない。昨秋の自民党改憲案は、個々の改定案ではなく新憲法案として出されていることから考えると、9条改定の個別賛否を避け、一括賛否に持ち込む狙いがあるといえる。
 第三に、報道自主規制と投票一週間前の関係広告の放送禁止を掲げる一方、国会に「広報協議会」を設置するとする。また公務員労働者の運動規制は、当然の前提となっている。第四に、賛成が「有効投票総数の二分の一」を超えたら憲法改正案は承認されるとしているが、前提の成立要件が書かれていない。現行の住民投票では有権者過半数で成立であるが、与党案はつまり、投票率がどうであれ国民投票は成立するとし、全有権者の四分の一以下の賛成でも憲法改定ができるとするものである。
 また第五に与党案は、国民投票法案と国会法改定案との抱き合わせとなっている。この国会法改定案は、「衆院百人以上、参院五十人以上の賛成」で改憲案を提出できるとするもの。憲法九十六条の改正手続きに書かれていない重要点を、国民投票法案と一緒に片付けてしまおうというものだ。
 こうした与党案に対し、民主党は、十八歳以上とか、改憲以外でも使えるものにとか意見を出しているが、基本方針が改憲国民投票法案賛成なのであるから、与党案との擦り合わせ合意は時間の問題である。
 小沢民主党になって、その危険は一層高まった。小沢一郎は根っからの改憲論者であり、一九九九年の自由党時代に「日本国憲法改正試案」を発表して改憲論議を具体化させる役割を果たしている。(小沢の9条改憲論の特徴は、彼の試案で「兵力の提供を含むあらゆる手段を通じ、世界平和のために積極的に貢献」としているように、国連決議のもとでの武力行使に非常に能動的であることだ)。
 民主党にとっては、改憲国民投票法案の提出に同意するかどうかは、もはや政局判断であるにすぎない。逆にいえば、自公政権と国民大衆との矛盾が激化する状況においては、与党に手を貸すことも出来にくくなるということである。
 提出された教育基本法改悪案、基地再編強化の押しつけなどに国民的な大反撃を実現し、改憲国民投票法案の今国会提出を破産させよう。(A)


共謀罪法案
  衆院法務委員会の強行採決阻止さる
     「修正」ではない、廃案だ!

 犯罪がまだ行なわれていないのに、それを話し合っただけで弾圧することができるようになる共謀罪法案(組織犯罪対策法改定案)は、四月二十一日に衆院法務委員会で審議入りが強行され、自民・公明は一部修正のうえ、たった一週間後の四月二十八日に委員会で強行採決しようとした。しかし、ついにそれは阻止された。もはや「修正」ではなく廃案しかないことが明らかとなった。連休後の国会で、三度の廃案に追い込もう。
 この一週間ほどの間、反対運動は盛り上がった。十九日、アムネスティ・インターナショナル日本、グリーンピース、日本国際ボランティアセンターなどの有力な市民団体が、共謀罪反対の共同アピールを声明した。二六日には、日本弁護士連合会の主催によって共謀罪反対の大集会が、霞ヶ関の弁護士会館で開かれた。市民団体などは連日の対国会行動を続けた。大阪でも、弁護士を中心とした大きなデモが闘われた。それに押されてマスメディアの注目も大きくなり、共謀罪に批判的あるいは慎重審議をもとめる報道も目立つようになった。こうして強行採決は阻止された。
 自民・公明は、二点の修正、適用団体を「組織犯罪団体」とすること、また「犯罪に資する行為」を入れることをもって、民主党などを抱き込み、世論の批判を乗り切ろうとしている。前者の修正については、組織犯罪対策法でいう「組織」が恣意的であるように、何ら意味のない限定である。二人以上で共謀が成立という点に変化はない。後者の修正は、予備行為が要件として入るので懸念されている共謀罪の本質が変わると、公明党などが主張しているものである。殺人の予備罪では、凶器を購入したなど具体的物証が必要だ。しかし「犯罪に資する行為」とは極めてあいまいであり、共謀罪の恣意性をかえって広げてしまうことになると強く批判されている代物である。
 民主党もいくつかの修正を要求するという対応であるが、いかに「修正」を入れようとも、共謀罪の本質の一つが「事件がおこる前に弾圧できる」という一点にあることは動かない。国家権力にとっての、その使い勝手の良さが損なわれるならば法案提出の意味はないからである。
 予防検束を復活させる現代版治安維持法、共謀罪を阻止しよう。(W)


全勝した4・23の三選挙
  共同戦線への教訓示す

 四月二十三日に投開票された岩国市長選挙、沖縄市長選挙、衆院千葉七区補選、この三つの選挙で自民・公明の候補がすべて敗北し、小泉連立政権の政治に批判的な候補がすべて勝利した。
 にもかかわらず小泉政権と自公与党は、四月二八日に教育基本法改悪案の国会提出を強行し、また五月一日には日米基地再編「最終合意」を強行するなど、政権末期の無責任な強行突破を図ろうとしている。ポスト小泉の政治抗争が強まるなか、自公連立政権と広範な労働者人民との矛盾が決定的になろうとしている。 

  岩国市長選

 岩国市長選挙は、三月二十日の旧岩国市と周辺七町村との合併に伴って実施されたものであるが、米空母艦載機の岩国基地移転の是非が最大の争点であった。三月十二日には旧岩国市で住民投票が市長発議によって実施され、艦載機移転反対が87・4%を占め、岩国移転の「白紙撤回」を堅持する市政の堅持を圧倒的多数の市民が求めていた。
 選挙結果は、井原勝介候補(前市長、無所属)が54144票を取り、自民推薦候補の23264票に大差をつけて圧勝した。自民党はこのかん、井原市長と住民投票をつぶすべく、住民投票ボイコットなどあらゆる策動を続け、選挙戦では地元山口県地盤の安倍晋三もてこ入れに来たが、移転容認派候補は井原氏の半分程度という惨敗に終わった。自民党は住民投票に対して「一週間しか効力がない」(山崎拓)などと誹謗していたが、七町村住民が加わった市長選での再度の市民の審判によって、住民投票で示された住民意思は新しい岩国市にしっかりと継承される結果となった。
 一連の過程で中央政府に完勝したといえる井原市長であるが、彼を支えた力は、このかんの岩国市民による住民自治と民主主義、基地強化反対の画期的な盛り上がりであった。井原市長にはそのことを忘れることなく、住民投票結果と市長選公約を今後も堅持し、政府に強力な姿勢で対処することが求められている。

  沖縄市長選

 沖縄市長選挙は、全野党が推薦する無所属の統一候補・東門みつこ氏(前社民党衆院議員)が28709票を取り、保守市政後継の自民・公明推薦候補の26659票を打ち破った。東門氏は、基地依存経済からの脱却と自立を訴えつつ、嘉手納基地への自衛隊共同使用、名護新基地の辺野古「沿岸案」など日米合意への反対を訴えた。嘉手納基地を抱える沖縄市で、革新系が市政を奪還したこと、社民・社大・民主・共産・自由連合の統一候補で勝利したことは、自公連立の日本政府に痛打を与えた。
 沖縄市での反基地陣営の勝利は、今年十一月の沖縄県知事選挙に連動する。稲嶺知事は五月一日の日米最終合意後も、「沿岸案」を容認せず、県外移設までの緊急的措置としてシュワブ基地内にヘリポートを建設するという対案を五月四日に発表した。沖縄市長選の結果をはじめとする沖縄民衆の意思が、知事をしてそうさせているのである。県知事選を意識すれば、日本政府に簡単に屈服できない。仮に稲嶺知事が容認へ転ずればどうなるか、今度の知事選こそ沖縄市長選のように統一候補によって闘われ、自公県政が終わりとなることは必至である。

  衆院千葉補選

 衆院千葉七区補選は、岩国市・沖縄市のように基地問題ではなく、小泉「改革」の是非、「格差社会」が主要な争点となったものであるが、二六歳の太田和美候補(民主公認、前県議)が87046票を取り、自民公認新顔の86091票に僅差で競り勝った。日共候補は14274票で固定票以下の惨敗であった。
 当初、「偽メール問題」で深い打撃を受けていた民主党は、不戦敗だけは避けたいとして、県議補選で県議となっていた二六歳女性の太田氏をとりあえず擁立したという感じであった。ところが、太田氏が「負け組ゼロ社会」を掲げて闘ううち、風向きが変わってきた。この変化は、太田氏が一時キャバクラで働いていたことを一部週刊誌が書き立てたが(職業差別の扇動である)、逆に彼女こそ「負け組」の代表だ、がんばって生きてきた仲間だと、若い層の支持が増える結果となったことに端的に示されている。「格差社会」批判が大きな争点となり、小沢民主党もそこに擦り寄った。
 また千葉補選は、小沢一郎が民主党代表となった時期と重なったことから、小泉自民党と小沢民主党の最初の一騎討ちとしても注目された。そのような意味では選挙結果は、ポスト小泉のブルジョア政界再編につながる意味をもっている。「自民党をぶっこわす」と称して人気を博した小泉「改革」の命脈が尽きたことを、千葉補選は鮮明にした。「格差社会」批判が、ブルジョア二大政党の抗争の一方に集約されるのか、それとも自立した労働者人民の運動の拡大につながっていくのか、それが今後の課題である。
 以上の選挙結果が、来年の統一地方選、参院選にもたらす教訓も大きい。自治体首長選挙、参院地方区においては統一候補を実現すれば、自公連立派をその多くで打倒できる。そうすれば、参院選で三分の一以上の改憲反対議席(民主党の一部を含めて)を確保することも十分可能である。自治体首長選挙では、都知事選で統一候補を実現し石原を打倒することの意義は大きい。
 日本共産党は今回、沖縄市では政策協定を得て、岩国市では政策協定なしの自主的支持によって、それぞれ勝利に貢献した。国政選挙は別なのか。現在の憲法・教育基本法改悪の攻撃、日米軍事一体化と東アジア外交の破綻という情勢下では、日本の右傾化を打破する当面の政治転換が必要となっている。この必要においては左翼が連携できる勢力は少なくない。この当面の闘いに勝利することを通じてこそ、党と革命運動の前進を語ることが可能となるのではないか。責任ある政治勢力の、共同戦線への政治的決断が問われている。(W)