日米「最終報告」を延期させた各自治体での闘いの前進
  対峙から攻勢へ全国闘争を

 このかんの「本土」と沖縄の労働者人民による米日軍事再編・強化に反対する闘いによって、日米両政府はその「最終報告」の三月中の強行を延期せざるを得なくなった。しかし小泉連立政権は、自治体の頭ごなしに昨秋の日米合意「中間報告」を押しつけてきた経緯などに何らの反省もなく、四月中にブッシュ政権との最終合意を強行せんとしている。
 沖縄県、岩国市、座間・相模原市などをはじめとする各自治体でのこのかんの闘いは、従来の革新系の行動という次元を大きく越えた全民衆的な基地強化反対運動として前進している。米日軍事再編「最終報告」の強行はできるのか、できたとしてもその強行は、小泉政権と国民多数との間に大きな亀裂を拡大することなくしては不可能である。
 政権末期の小泉政権は、今現在としては、この米日軍事再編に何とか当面の決着をつけてしまうことと、小泉「改革」路線を次期政権に継続させる担保としての行政改革推進法案を成立させること、この二つを最優先課題としているようである。もちろん、この二つの課題の内容である日米安保グローバル化や新自由主義改革と一体のものとしての、教育基本法改悪案と改憲国民投票法案を今国会で提出へ持ち込むこと、また共謀罪法案などの成立を強行する策動も強められている。
 住民ぐるみ・自治体ぐるみ、超党派の広範な闘いのさらなる継続・発展によって、米日軍事再編を挫折させることは可能だ。その闘いの勝利は、憲法・教育基本法改悪など小泉政権の政治プログラムの破綻に連動せざるをえない。
 基地再編関係自治体での、ここ一ヵ月余のおもな闘いを振り返ってみよう。
 二月二六日、空中給油機などが普天間基地から航空自衛隊鹿屋基地へ移転されようとしている鹿児島県鹿屋市では、自治体ぐるみで八二〇〇人の市民が反対集会を行なった。自衛隊と「共存」してきた町でも、米軍基地化されることに対しては政治的立場を越えて反発が強力であることを政府にみせつけた。
 航空自衛隊基地のある他の自治体でも、同様である。三月四日、嘉手納基地のF15戦闘機訓練の移転先の一つとされる北海道・千歳市では、労働組合を中心に七百人が集会・デモを行なった。同じ移転予定地の一つ、福岡県・築城基地の行橋市では三月十八日に千五百人の労働者・市民が決起した。
 三月五日、「普天間基地の頭越し・沿岸案に反対する沖縄県民総決起大会」が、普天間基地のある宜野湾市で開催され、海浜公園を埋める三五〇〇〇人が参加した。
 この県民大会は、大会スローガンとして「普天間基地の頭越し・沿岸案反対」「普天間基地の即時閉鎖・早期返還実現」「在沖米軍基地の北部への集中強化反対」「県知事の許認可権限を奪う特別措置法制定反対」等をかかげ、「沿岸案」撤回を日本政府に対し断固要求する集会決議を採択した(集会決議・別掲)。県議会与党と知事が参加を見合わせたが、かれらも「沿岸案」には反対であり、保守派の比嘉幹郎が実行委員会共同代表として参加した。与党側が公式には参加しなかったにもかかわらず、3・5県民大会が九五年県民大会に次ぐ圧倒的結集を実現したことは、「沿岸」案拒否が超党派の県民総意であることをみせつけ、日本政府に痛烈な打撃を与えている。
 この日、五日には、山口県岩国市の錦帯橋河川敷では一五〇〇人が集まって、「住民投票」成功のための集会・人文字行動が行なわれ、沖縄とのメッセージも交換された。
 三月十一日、米軍・自衛隊の司令部統合など横田基地強化に反対し、東京・三多摩でも労組を中心に六〇〇人が行動。二十一日には、横田基地のMD(弾道ミサイル防衛)基地化反対を明確にして、市民デモも行なわれた。
 三月十一日、米陸軍の第一軍団司令部(統合作戦司令部UEX)の移転と陸上自衛隊の中央即応集団司令部の設置が強行されようとしている座間基地の神奈川県座間市では、一九〇〇人の市民大会を実現し、第一軍団移転反対・基地恒久化許さずの意思を政府に突きつけた。翌十二日には、労働者・市民によって座間・相模原集会が二六〇〇人を結集して行なわれた。
 三月十二日、米空母艦載機の厚木から岩国基地への移転の是非を問う岩国市の「住民投票」が行なわれた。住民投票はみごとに成功し、圧倒的に勝利した。その投票率は、組織的なボイコットなども行なわれたにもかかわらず58・7%に達して住民投票を早々と成立させた。その内、艦載機移転に「反対」が87・4%の圧倒的多数を占め、この反対票は全有権者の過半数を制する51・3%となった。岩国市民と市長が示した、岩国移転「白紙撤回」のこの圧倒的な意思表示は、日米両政府に強烈な打撃を与えた。
 岩国住民投票の成功・勝利に対して、小泉政権側は、これまで井原市長の住民投票発議を阻止するために必死で画策するなどしてきたが、「住民投票をすればどこでも反対でしょうね。そこが安全保障の難しいところ」(小泉)と努めて平静を装い、軍事再編に自治体は関係ない、地域エゴだ、などと居直っている。現行住民投票に法的拘束力はないにせよ、政府側に岩国住民投票の結果を「尊重する」の一言もないのは、地方自治を無視する憲法違反である。
 自治体当局には、住民投票結果の尊重義務があるのは当然だ。周辺町村合併後の新岩国市の市長選挙が四月二十三日に行なわれる。3・12住民投票の結果に合致した市政が今後も堅持されることを前提として、井原前市長を支持することができる。「白紙撤回」を堅持する井原候補が、自民党山口県連推薦の刺客候補を打ち破るならば、住民投票の成果はさらに強固なものとなる。
 その住民投票後の三月十九日には、連合中国ブロックや山口県平和センターなどによって、三五〇〇人の岩国現地集会・デモが行なわれた。住民投票の成功・勝利が、労組レベルにも関心の高まりを引き出していることが示されている。
 三月二七日から沖縄では、島袋名護市長と日本政府の「交渉」に断固反対し、市民・住民が「市長は沿岸案反対の公約を守れ!」と名護市役所に連日おしかけている。名護は、緊迫た現況にあるが、宜野座村民大会の開催など東海岸全体の「沿岸案」反対はますます明確になっている。
 このように基地再編に関わる各地で多くの行動が展開され、とくに沖縄の県民大会と岩国住民投票の成功によって、三月「最終報告」強行は順延へ追いやられたのである。
 政府とマスコミは、沖縄海兵隊司令部のグアム移転案で、米国側が日本側に七十五億ドル(約一兆円)の負担をふっかけていることを日米合意が遅れている原因としてクローズアップしている。小泉政権は米側の負担要求に抵抗しているかのようなポーズを取って、自治体の頭ごなしに基地再編を合意するなどして現在の膠着状態を生んだ失策をおおいかくそうとしている。
 もともとブッシュ政権には米領グアムの基地拠点化計画があり、沖縄ではカデナ以南に限れば基地空洞化が進んでいた。米側にとっては沖縄北部への基地集約・要塞化と、グアム基地強化の両方を日本のカネを使ってやろうということである。小泉政権は半分ほどに値切って妥結しようとしているが、ビタ一文であっても日本国外の米軍基地建設に血税を出すなどということはあってはならない。そのための特例法などは断じて認められない。
 基地再編・強化とたたかう各地の行動が一巡し、各自治体・労働者市民と小泉政権との対峙が続いている。各地の行動は何巡でも重ねられるであろうが、各地の運動を集約した全国的行動、対政府・国会闘争が問われている。後半国会での改憲国民投票法案阻止などの重要課題と関連づけて、対峙から攻勢へ出る大きな共同行動が必要だ。
 フランスでは、若年新雇用法(二六歳以下に首切り自由の二年間試用期間を導入)の撤回を要求して、三月二八日ゼネストを始め、青年層を先頭とした全国民的闘争となっている。ドビルパン政権の危機であるだけでなく、新自由主義政策を取る小泉を含む世界中のブルジョア政権への攻勢である。
 街頭で意思表示を行うことは民主主義の基本であり、フランス人の過激な特性などではない。フランス人民の闘いに続いて、基地強化・新自由主義の小泉政権を打倒しよう。
 

 3・5沖縄県民総決起大会
   普天間基地の移設先「沿岸案」に反対する決議

 昨年10月29日、日米安全保障協議委員会(2+2)において在日米軍再編に係る「日米同盟 未来のための変革と再編」が関係自治体の頭越しで合意された。
 最大の争点になっていた普天間基地の移転先について、1996年のSACО合意に基づいて強行に押し進めてきた名護市辺野古沖計画を断念し、新たに大浦湾からキャンプ・シュワブ南沿岸部の地域に滑走路(1800m)と駐機場を含むL字型の基地を建設するという計画、いわゆる「沿岸案」が示された。この「沿岸案」は、SACО合意前に何度となく検討された経緯があり、安全・騒音・環境問題がクリア出来ないということを理由に立ち消えになったものである。
 政府は在沖米海兵隊の七〜八千人削減を以て大幅な負担軽減であると強調しているが、基地被害の元凶とされる実戦部隊(キャンプ・ハンセン、シュワブ)の歩兵大隊の削減はない。また、嘉手納基地から南の米軍基地機能の大部分を北部(キャンプ・シュワブ)に集約することと、在沖米軍基地を自衛隊と共同使用することなどを日本政府は示唆している。
 さらに、現行法で県知事に与えられている公有水面の埋め立て許認可権限を取りあげるための特別措置法制定が検討されていることが伝えられている。地方自治を否定し、強制的に新基地建設を押しつけるための特別措置法制定を私たちは絶対に許すことは出来ない。
 「沿岸案」に沖縄県民の72%が反対しており、その内84%が普天間基地の米国移転を求めている。また、稲嶺県知事、名護市長をはじめ関係市町村長もこぞって「沿岸案」に強く反対している。県議会及び関係市町村議会でも「沿岸案反対」の意見書が全会一致で採択されている。このように「沿岸案反対」は正に県民の確固たる総意となっている。
 日本政府は沖縄県民の意思・総意を真摯に受け止め、米国政府との交渉に臨むよう強く求めるものである。
         2006年3月5日
           普天間基地の頭越し・沿岸案に反対する沖縄県民総決起大会