「教育基本法・憲法の改悪をとめよう!3・31全国集会」に四千人
  改悪案提出阻止は山場

 教育基本法が施行されて、くしくも五九周年を迎えた三月三十一日、東京の日比谷野音で、「教育基本法・憲法の改悪をとめよう!3・31全国集会」が挙行された。会場には、花冷えを通り越したような冷たい風にもかかわらず、北は北海道から南は九州・沖縄まで、全国各地の教師、市民団体、諸個人など四〇〇〇人が参加した。主催は、「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」。
 集会は、午後六時から始まったが、その前に、プレイベントとして、「多摩じまん」の政治風刺の歌、ジャズ・ピアニストの高橋聡さんとトランペッターの山本ヤマさんの演奏がおこなわれた。なお、高橋さんは、〇四年四月、東京・中野区の公立小学校の新任のPTA会長だったが、都教委の君が代不斉唱教員の大量処分を批判したため、校長・教頭らによって会長辞任に追い込まれた。これに対して、人権救済を申し込み、東京弁護士会が、今年二月二十八日付けで、当時の校長・教頭に「警告」を発した。
 集会は、最初、主催者から、この間の経過報告があり、全国連絡会は、これまで四回の全国集会、五回の全国紙への意見広告、三回の院内集会、全国四〇〇ヶ所での一万七千人が参加の集会などをおこない、教育基本法の改悪をとめる活動をしてきた、と発表した。
 その後、集会は全国連絡会の呼びかけ人である小森陽一(東京大学教授)、高橋哲也(東京大学大学院教授)、三宅昌子(千葉大学教員)、大内裕和(松山大学助教授)の各氏、それに各地で活動する諸団体の代表らの報告があった。それは、「子どものために核兵器の廃絶を実現する藤沢の会」、愛知高教組の教師、平和を考える自治体議員の全国組織をめざす北海道議会の議員、同日、都教委から処分を受けた東京都立の拝島の教師、「教育基本法を守る岩手の会」、福岡筑豊から参加した女性である。政党としては、共産党、社民党からのあいさつがあった。
 各氏の発言は、口々に憲法改悪と教育基本法の改悪が連動し、戦場に送る人づくりのために、教育基本法が改悪されようとしている、断じてこのような改悪は許されない、というものである。この中で、三宅さんは、”教育基本法の改悪は、子どもを格差社会に振り分けるものである。国家は人間の尊厳をこわしてでも、しゃにむに人々を国家の命令に服従させようとしている。新自由主義と国家が人間の尊厳を奪うのを決して許すことができない。”と強調していた。
 この教育基本法の改悪を先取りしているのが、拝島の教師が述べるように、都教委の「日の丸・君が代」問題での処分である。この日、都教委は、今春卒業式での「職務命令違反」として、教職員三十三名を処分した。処分の内訳は、停職三ヶ月が一人、停職一ヵ月が一人、減給一割・一ヵ月が十人、戒告二十一人である。処分理由は、「ピアノ伴奏拒否」が一人で、あとは「君が代斉唱時の不起立」である。そして、この内、二十人が初めての不起立者である。
 都教委の強圧的な、常軌を逸した弾圧は、まさに教育基本法改悪の先取りであり、国家の締め付けで教師をがんじがらめにし、国家と資本の思いのままの教育を子どもらに押し付けるものである。
 なお、今ちょうど、旧日本軍の重慶無差別爆撃の謝罪を求め、中国の遺族らが東京地裁に訴訟を起こしたが、高橋氏の発言の際に、この原告団が紹介された。登壇した十数人の原告の人々は、横断幕をかかげたが、その中には、「珍愛和平」「反対戦争」の文字が躍っていた。
 今、与党協議会は四月上程を目指し、急ピッチで議論を煮詰めており、ここ三週間が山場となっている。教育基本法の改悪は、日本社会の方向を大きく曲げるものであり、後世に大きな悔いを残すことであろう。改悪反対の声を与党議員に突きつけ、是が非でも、改悪を断念させる闘いが、今まさに正念場となっている。集会参加者は、その後、国会へ向けてデモンストレーションをおこなった。全国連絡会のデモ・パレードが国会に向ったのは、初めてである。(東京T通信員)

都教委は「3・13通達」を撤回せよ
  生徒の「内心の自由」すら否定

 教育基本法改悪の主要な狙いの一つである国家主義的な国民統合を、極端な形で先取り実施しているのが東京都の教育行政である。
 「日の丸・君が代」強制と教職員大量処分で、その異常性が広く知られる東京都教育委員会は三月十三日、またもや「日の丸・君が代」強制の新通達を出した。
 この「3・13通達」は、「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について」と題され、都立学校校長に対し、「校長は自らの権限と責任において、学習指導要領に基づき適正に児童生徒を指導することを、教職員に徹底するよう通達する」というものである。この指示は、生徒に「日の丸・君が代」を強制することを教職員に強制するために、校長は教職員に職務命令を発せよ、ということである。
 〇三年の「10・23通達」は、その事細かな「実施指針」を伴って、教職員に対して「日の丸・君が代」を強制するものであった。今回の「3・13通達」は生徒「指導」へ踏み込み、生徒の思想・信条の自由を否定するレベルにまで「日の丸・君が代」強制が拡大したことを意味する。
 この新通達に先立って〇四年三月十一日には、「生徒に不起立を促すなどの不適切な指導を行なわないこと」とする「通知」が出されている。同月十六日の都議会で横山教育長(当時)は、「学習指導要領に基づき国歌の指導が行なわれていれば、歌えない、歌わない児童生徒が多数いるということは考えられません。その場合、指導力が不足しているか、指導要領に反する恣意的な指導があった、と考えざるをえません」などと答弁している。(ここで言う「不適切な指導」というのには、ホームルームや式の予行で教員が生徒に「内心の自由はありますよ」と指導することも含むのである。)
 昨年の十月には、「10・23通達」に基づく職務命令書に生徒指導の一項が追加されている。
 昨年十二月八日の都議会では、中村教育長が、「卒業式等において、生徒の多くが起立しないという事態が起こった場合には、その後、他の学校の卒業式等において同様の事態が発生するのを防止するため、生徒を適正に指導する旨の通達を速やかに発出する」と答弁した。
 しかし都教委が校長や教職員をいかに支配しようとしても、生徒には職務命令など何の関係もないことである。今年三月十一日、ある定時制高校の卒業式で、卒業生の多くが不起立であったらしい。これに慌てふためいて「3・13通達」を出してきた。
 都教委の愚行は、憲法・教育基本法を完全に無視している。学習指導要領や国旗国歌法にすら沿っていない。「学習指導要領に基づく国歌の指導については、児童生徒の内心にまで立ち至って強制しようとする趣旨のものではなく」(九九年衆院・首相)、「児童生徒が例えば国歌を歌わないということのみを理由にいたしまして不利益な取扱いをするなどということは、大変不適切なこと」(九九年衆院・文相)というのが政府答弁であるが、都教委はこの次元を飛び越えた反動ぶりである。
 教育現場に「職務命令」はいらない。職務命令による「教育」は、教職員を支配統制するだけでなく、生徒の自主性・主体性を冒涜し、破壊せんとするものである。石原都知事・中村教育長は「10・23通達」「3・13通達」を撤回せよ。(F)
 
 
アスベスト被災発端の地・尼崎で
3・3〜4アスベスト・プロジェクト全国集会

  「新法」では根本解決なし


 アスベスト・プロジェクトは、「石綿対策全国連絡会議」と「中皮腫アスベスト疾患・患者と家族の会」の共催で行なわれてきたが、今回はその17回目として、全国集会が兵庫県尼崎市で三月三日〜四日に行なわれた。
 三月四日(土)昼には、「クボタ」周辺を歩いて周り、アスベストが飛散した地域をみなで確認した。その後「新法相談マニュアル」にどう対応したらよいか、「尼崎の最近の動き」について討論された。
 五日(日)の集会では、肺癌の認定に当たって、日本の認定基準はヘルシンキ基準より厳しいが、中等度暴露については、暴露期間のみの認定要件とすることでよいのではないかなどという案が石綿対策全国連絡会議から提起されるなどした。また、職業暴露で一定の工場、造船所での研究がなされているが環境暴露肺癌の研究はほとんどない。今後なされる必要があるとの提起がなされた。
 アスベスト新法のスタート(三月二七日施行)にどう対応するか?ということに関して、安全センター事務局より、「新法」では救済給付が労災基準に至らない住民などがいて、公正な補償がなされていないことなどを批判し、今後の暴露も以前の暴露とあわせて、被曝のはっきりした人に対して健康管理制度を確立すること。アスベスト含有製品の製造販売使用などを速やかに全面禁止すること。アスベスト対策基本法の制定が必要なことの提起が行なわれた。
 次いで、「クボタ旧石綿工場周辺に集積した中皮腫の疫学評価と教訓」という報告が、奈良医大の車谷教授より行なわれた。中皮腫死亡は300m範囲内で、男性で最高17.8%、女性で最高54.1%と全国平均死亡より上回っていること。アスベスト職歴のない近隣住民に石綿暴露の特異的所見とされる胸膜プラークが存在することが明らかにされた。
 ついで 公害対策に長年携わってこられた宮本憲一大阪市大名誉教授からは、フロー公害は生産過程から発生した有害物質がなくなれば被害の増大を止められるが、アスベスト災害は複合型ストック(蓄積)公害で、使用をやめてもそのストックがある限り長期にわたり被害が継続する、と報告。新法に対する意見としては、発生源の責任と行政の不作為による責任を明確にすること。疫学調査を行い、情報の公開、被害の全貌を明らかにすることが必要などの提案がなされた。(関西H通信員)


06けんり春闘全国実行委員会が3・17統一行動
  非正規労働者の要求を前面に

 今春闘では三月十五日が連合の民間大手への集中回答であったが、ひさびさの「賃上げ」春闘と言われるわりには高くても一千円、回答先送り、ゼロ回答という状態であった。定昇分もない中小や非正規の労働者には、闘わなければより厳しい現状が押しつけられようとしている。
 その二日後の三月十七日に、全労協、全港湾、全日建、金属労組連絡会などが結集する「06けんり春闘全国実行委員会」によって、春闘統一行動が取り組まれた。
 午前中は、ストライキに突入した職場を激励する地域総行動を展開し、午後からは厚生労働省交渉、二時半からは約一三〇〇名を集めての厚生労働省前総決起集会、続いて霞ヶ関・新橋地区のデモ行進が行なわれた。
 むしろ旗を押し立てての厚労省前総決起集会では、主催者を代表して藤崎良三共同代表(全労協議長)が、「規制緩和によって大企業は空前の利益をあげているが、一方では非正規労働者が増加し、年収が大企業の一時金にも達しない労働者が増えるという二極分化、格差社会になってしまった。労働者は生活と権利、平和を守るために闘おう」とあいさつした。
 続いて全港湾、国労東京地本、都労連、全日建、全統一、東京労組、電通労組、鉄建公団訴訟原告団、全労協女性委員会、全国一般東京なんぶの外国人労働者(三月五日に外国人総行動マーチ・イン・マーチを展開)などなどの仲間が、それぞれの闘いを報告した。
 「けんり春闘全国実行委員会」としては二回目の春闘であるが、今年の取り組みの特徴は、非正規労働者の権利確立を求めて、労働契約法制やホワイトカラー・エグゼンプションの動向を踏まえて、厚生労働省交渉を行なったことである。
 厚労省への申し入れ内容は、「非正規労働者の労働者代表者選出の実態を調査すること」、「就労時間・日数が変化しても制度変更を伴わない社会労働保険制度を確立すること」、「委託契約・請負契約労働者の保護を図ること」など非正規労働者の要求を前面に出したものであった。
 このような要求をさらに深化させ非正規労働者の要求として浸透させていけば、この春闘実行委員会が総行動のための結集体であることにとどまらず、要求・政策にもとづく結集体としても前進し、非正規労働者と中小企業労働者の団結を強化させることができるだろう。(東京K通信員)
 

3・25「憲法を私たちの安全を考えるつどい」に750名
   労働者こそが憲法改悪阻止へ

 三月二五日の午後、東京・千代田区公会堂にて「憲法と私たちの安全を考えるつどい」が開かれた。陸海空・港湾労組二十団体が主催、憲法改悪反対労組連絡会の協賛で約七五〇名の労働組合員などが参加した。
 この集会は、このかん有事立法反対運動で広範な共同行動の軸となってきた陸海空・港湾二十労組が、憲法労組連とともに、憲法改悪反対の課題で初めて大衆集会を開催したものであるが、中央労働団体の枠を超えた労働組合の横断的な憲法闘争への取り組みとして注目されるものである。
 最初に主催者から航空安全会議の大野議長が挨拶し、憲法が改悪されたら労働者の権利は否定され、戦争協力に動員される、労働組合こそが改悪阻止の行動を開始しようと訴えた。
 講演は、評論家の佐高信さんが「憲法をめぐる特権と人権」、弁護士の坂本修さんが「自民党改憲案とは何か」と題して行なった。また連帯挨拶をフォーラム人権・平和・環境の福山事務局長が行なった。佐高さんは「憲法行脚の会」、坂本弁護士は自由法曹団団長、平和フォーラムは社民党系であるから、二十労組の憲法闘争への取り組みに多様な立場から期待が表明されたという印象であった。
 労働組合からの発言では、日本新聞労働組合連合が、一九四五年東京大空襲での報道統制の例(皇居の厩の鎮火しか報道されなかった)を引いて、メディア労働者が報道の自由と権利を守る闘いの大事さを語った。全気象労働組合も、戦時下では気象情報が軍管理に置かれ、台風予報などを国民に伝えることができなくなったが、この先輩たちの無念さを繰り返してはならないと語った。全国建設労働組合総連合、国鉄労働組合からも、それぞれの職能をふまえた憲法改悪阻止の決意が述べられた。
 最後に、全港湾の仲間の音頭で「団結ガンバロー」を行ない、憲法改悪と戦争動員を許さない労働者の闘いの発展を全体で確認した。
 さて、この集会に先立つ二月九日、陸海空・港湾二十労組は「声明」を発表している。これは、二月三日の海員組合と全国港湾とによる憲法改悪反対共同アピールに続く、労働者の憲法闘争宣言である。
 その2・9声明は、「私たちは、自衛隊法103条の運輸にかかわる『業務従事命令』の対象者であり、さらに武力攻撃事態法等で規定された『指定公共機関』に働くものたちです。」「日本が本格的に戦争する国となり、米国と共同軍事行動をとるようになれば、ますます、国民の『いのちと安全』が脅かされ、さまざまな職種の労働者が強制的に戦争に参加させられることになります。」「したがって私たちは、日本の有事体制を発動させないためにも、憲法改悪を決して認めることはできません」として、立場を超えた共同行動の広がりで憲法改悪を阻止することを呼びかけている。
 なお、集会を協賛した「憲法労組連」とは、連合や全労連に加盟していない中立系の単産が〇四年七月に結成したもの。現在は、新聞労連を事務局とし、映演共闘、銀行労連、航空連、私大教連、出版労連、全建総連、全港湾、全倉運、全損保、全大教、全農協労連、電算労の十三単産で構成。各単産が職能と業界史をふまえて「わたしたちは憲法改悪を許さない!」とアピールしている憲法労組連のリーフレットは、一読の価値がある。(東京A通信員)