皇室典範改定案の今国会提出が頓挫
   天皇制は必要か、の論議を

 でっち上げの「建国記念の日」に反対し、天皇制強化に抗議する毎年の2・11の行動。今年は、皇室典範改定案をめぐり政府・自民党・右派勢力の内ゲバが露呈し、世間の関心が高まるなかでの行動であった。
 昨年十一月に「女性・女系天皇」容認などを内容とする「皇室典範に関する有識者会議」の最終報告が出され、小泉首相は通常国会が始まった一月二十日の施政方針演説においても、「皇位が将来にわたり安定的に継承されるよう、有識者会議の報告に沿って、皇室典範の改正案を提出する」と明言していた。
 しかし二月一日には、「日本会議国会議員懇談会」などが主催する国会提出反対集会が行なわれ、提出反対あるいは慎重審議を求める国会議員署名が百七十三名に達するなど、右派勢力の抵抗が広がってきた。昨年からの三笠宮寛仁による政治介入発言を力として、男系天皇制を死守せんとする極右妄動の巻き返しであった。
 小泉はこうした与党内外の動きに対しても、当初は改正案提出の方針を崩さなかったが、二月七日、天皇の次男の妻である秋篠宮紀子が妊娠したと宮内庁が発表すると急速に形勢が逆転し、九日には小泉内閣は、皇室典範改定案の今国会提出見送りに転じている。
 こうした過程は、天皇一族の一挙一動に(主権者国民の代表であるはずの)国会議員と閣僚たちが右往左往する正視に耐えない状況をばくろし、また天皇制の固守という枠内での「改革派」と血統主義者との醜悪な争いをばくろした。女系容認か、男系維持かという争点のみで、日本で君主制は必要か不要かという争点は最初から排除されているのである。
 皇室典範改定案の今国会提出が止められたのは、右派の策動によるものであり、天皇制廃止を求める、あるいは天皇制強化に反対する勢力の成果とはいえない。問題は先送りされただけであり、皇室典範改定論議は再び再燃するだろう。
 問われているのは左翼的・民主的勢力の態度である。日本共産党は、小泉内閣の皇室典範改正案に「妥当なもの」という評価を与えており、社民党はこのかん沈黙したままという体たらくである。なるほど両党は現行憲法の象徴天皇制を支持しているのであるから、天皇制を延命させる方策に反対する理由はないのだろう。しかし、主権在民と天皇制という現憲法の根本矛盾を積極的に打開しようとせず、現状を追認しているのは民主主義者としても失格なのではないか。

東京2・11
  「皇室典範改正」ではなく天皇制廃止を!反「紀元節」集会
    右翼・権力が異様な妨害

 こうした情勢下、東京では二月十一日、「『皇室典範改正』ではなく天皇制廃止を!2・11反『紀元節』集会・デモ」をはじめ、多くの諸集会が行なわれた。
 問われているのは、皇室典範改正論議ではなく天皇制の是非の論議だ、という正確な論点を示した上記の集会実行委員会の行動は、午後に中池袋公園からデモを行ない、夕方からは豊島区民センターで約一五〇名の集会を開催した。いずれも極右の妨害や警察の規制が激しかったが、「天皇制廃止」という民主的スローガンを掲げただけで異常な雰囲気が押しつけられるというのは、日本社会の深刻な問題である。
 集会では、きどのりこさん(児童文学者)、鵜飼哲さん(一橋大学教員)が講演。きどさんは、講談社の絵本を例に、天皇制と戦争体制への国民統合の様を批判した。鵜飼さんは現状の皇室典範論議を次ぎのように分析した。第一に反体制勢力が弱体化しているので体制側が抗争しておられるという大状況がある。しかし第二に、その対立はどうでもよい対立ではなく、小さくない矛盾である。天皇機関説と神権天皇主義。第三に結局、対立する両者は客観的には何をしているのか、天皇制の動揺である。我々は待ちの姿勢ではなく、この機をつかんで連帯を広げていこう。
 若い人も多く、熱気のある集会であった。(東京W通信員)

京都2・11
  「紀元節・日の丸・君が代」とたたかう京都集会
     沖縄民衆と連帯して

 京都では、「紀元節・日の丸・君が代」とたたかう2・11京都集会(主催・天皇制の強化を許さない京都実行委員会)が京都会館でもたれ、三五〇名が参加。
 冒頭、司会の寺田さんが、この実行委の取り組みも二十年来であるが重要性は高まる情勢にあると挨拶。また滋賀の大津市でも同様の集会が開かれていると紹介した。
 主催あいさつを部落解放同盟京都府連の大野昭則委員長が行ない、「今の情勢では、近隣のアジアとの関係を大切にしようという方向に民意が向いていない。アジア民衆との連帯の道筋を実践的に示していこう」と述べた。
 今年の集会は「日米基地再編と沖縄」がテーマ。講師の知花昌一さん(沖縄反戦地主・読谷村村議)に以下の様に語ってもらった。
 昨今、改憲の動きがあるが、改憲派が9条の是非を問うのであれば、1条(国民の総意に基づく象徴天皇制)の是非も我々から求めていくぐらいの運動をすべきだ。
 さて、沖縄でのここ十年来の基地再編の本質がどこにあるのか。十年来の闘いは、SACO日米特別行動委員会による米軍基地再編・強化との闘いであった。九五年の八万五千人県民大会などに畏怖した米軍当局は、十施設・五千ha返還などを合意したが、ほとんど実施されていないのが現実。負担軽減は見せかけで逆に、九七年の新・日米ガイドラインを機に日米共同戦争体制づくりに動き出す。SACOで基地削減を言う一方、砲撃演習を本土の日生台、東富士、矢臼別などへ移転し、実弾演習が強化されている。岩国基地の滑走路の沖合拡張でバースを建設し、イージス艦の着岸も容易にしようとしている。横田の共同使用、原子力空母の横須賀配備、そして沖縄での新・辺野古基地建設と北部要塞化、共同作戦体制が日本でも沖縄でも実現されようとしている。
 最後に知花さんは、「私には沖縄の心は絶対に譲れない。それで日の丸を燃やした」として、どんな小さなことからでもいいので戦争体制と改憲策動に反対する行動をおこしていこう、と話しをしめくくった。
 集会後は、、憲法改悪・天皇元首化を許すな!日米軍事再編反対!などを叫んで、四条河原町から京都市役所へ向けデモ行進をくりひろげた。(関西I通信員)