国鉄闘争
  2・16採用差別事件の勝利解決をめざす
     1047名闘争団・争議団・原告団総決起集会

  
被解雇者の総団結で転換点に

 二月十六日、東京神田の日本教育会館で「2・16JR採用差別事件の勝利解決をめざす1047名闘争団・争議団・原告団総決起集会」が開催された。この集会は、このかん分裂状態にあった国鉄闘争が、被解雇者の総団結を軸にして、その闘う団結を回復し勝利解決を実現していく転換点として大きな成功を収めた。
 この日は十九年前、国鉄のJRへの看板変えで一挙に大量首切りを強行するという不採用通知が行なわれた日である。不採用となり、三年後に国鉄清算事業団から再び解雇された仲間が1047名である。この採用差別事件は労働委員会では全勝したが、JRを相手とする裁判では不当判決となったため、国労本部は「四党合意」で敗北的政治解決を図ろうとしたが、組合内外の批判で失敗。これで国鉄闘争の分裂的事態が生まれた。こうした中、被解雇者は国(旧国鉄、その後鉄建公団、現在は鉄建機構)を相手に鉄建公団訴訟を開始。国労闘争団からは二次に渡って、また他組合からも提訴は広がった。昨年九月十五日、この鉄建公団訴訟で東京地裁が、国鉄の不当労働行為を司法判断として初めて認定しつつも、職場復帰ではなく金銭解決を命じる不当判決を出した。
 9・15判決を機に、国鉄闘争の団結を回復し、今こそ勝利的解決をかちとろうという世論は高まった。判決後の国労大会は、鉄建公団訴訟に参加してきた組合員への統制処分を解除し、一月の国労中央委員会は訴訟容認へ方針転換した。
 こうして2・16集会が開催された。主催は次ぎの五団体による実行委員会、つまり国労からは鉄建公団訴訟原告団、国労闘争団鉄建機構訴訟原告団、国労闘争団全国連絡会議。そして全動労争議団・鉄建機構訴訟原告団、動労千葉争議団・鉄建機構訴訟原告団である。国労闘争団全国連絡会議を含めた統一行動は初めて。
 会場のホール内外は超満員の二五〇〇名が参加。入れずにやむなく帰った仲間も多い。闘争の転換点を印象付ける熱気であった。
 集会では、鉄建公団訴訟主任弁護士の加藤晋介さんが基調報告、「9・15判決は、この線で和解せよという中味であったが、一月に出された国側の控訴趣意書は不当労働行為などまったく認めず、せん滅戦をやるというもの。国側の姿勢に対し、この判決だけでは闘っていけない。被解雇者が統一し、そして国労本体にもう一度起ちあがってもらうことが必要だ。」と要点を突いた提起を行なった。
 つづいて国労、全動労(現建交労)、千葉動労のそれぞれの原告団が決意表明を行ない、国労闘争団全国連絡会議の代表は訴訟参加を検討していることを表明した。
 最後に集会アピールで、五団体が今集会を機に「被解雇者1047連絡会」を旗上げすること、今こそ勝利解決へ向け全国の仲間とともに闘うことを確認した。
 団結は人を元気づける。ともに闘おう。(東京W通信員)


1・30大阪
  市当局の行政代執行=強制排除に抗議する
  野宿脱却の根本施策を

 一月三十日、大阪市は大阪靫(うつぼ)公園(西区)のテントと大阪城公園(中央区)の一部テントに対し、行政代執行による強制排除を強行した。この強制排除は、靫公園においては「世界バラ会議大阪大会」(五月)の開催、大阪城公園では「全国都市緑化おおさかフェア」(三月〜五月)の開催に伴う公園整備を名目としている。
昨年十月より、市側の退去の工作の中で、本年一月五日、東部・西部各方面公園事務所が各テントに「弁明機会付与の通知書」を配布以降、市側は行政代執行へ向け手続きを急いだものである。靫公園四名、大阪城公園二名が原告となり、代執行中止訴訟と仮差止め処分申立てが行なわれたが、大阪地裁は十三日には仮差止めの申請を却下し、市は三十日に、当事者の抗議を、また大阪弁護士会長の緊急要請や各団体の抗議申入れを無視して、代執行を強行したものである。
大阪城公園において五人分十二テント、靫公園において十四名十五テントを撤去したと大阪市は発表したが、市職員二百名、警備会社より警備員合計六百六十名を動員して強制排除を強行し、一名を不当逮捕、数名が負傷させられた。当日、退去させられた受皿として設営された扇町公園のテントが撤去され、西梅田公園や西成公園が封鎖されるという強行措置も取ってきている。
大阪市において、〇二年の「野宿者自立支援法」制定後、市の「実施計画」が策定され、施策が行なわれているが、現状のシェルター、自立支援センター、舞洲アセスメントセンターだけでは、量、質において野宿労働者の野宿脱却には不十分な状態である。就労対策が本として行なわれるべきであるが、昨年八月に開所した「ホームレス就業支援センター」も業務が始まったばかりである。高齢者や病弱者を中心にした生活保護適用や「半就労・半福祉」の運用も十分とはいい難い。
今年正月、NPO釜ヶ崎支援機構の現場通信は、「職・食・寝場所」の、現在の低め安定=継続では野宿や路上死を緩和させているにすぎないとし、抜本的な対策を!と述べている。
今回の靫(うつぼ)公園や大阪城公園での市側の対策や態度は、十分な選択肢を用意し、当事者の声を反映させたものとはなっておらず、取組む課題を山積みとしたままで、代執行を強行したもので、野宿労働者を更に路頭に迷わすものである。大阪市は、野宿労働者の命綱に直結する行政責任を負っており、今回の強制代執行は、更なる野宿状況の強化を強いるものであり、強く抗議する。
抜本的な施策が実施されないまま、このかん仙台市の榴岡公園、都立野川公園や静岡市安倍川河川敷などでの排除の動きがみられると報告されており、強制排除の動向に反対し各地での取組みが行なわれている。
なお、今回の行政代執行の前、一月二十七日に、扇町公園に居住する野宿労働者が「転居届」が受理されなかった事に対し不受理取消しを求めていた裁判で、大阪地裁は、「公園は住民登録できる『住所』にあたる」との判決を出した。
この判決は、占有権を認めたものではないが、住民基本台帳法に基き、諸権利の行使の根拠となる住民登録は、緊急避難で、野宿を強いられて公園にテント生活をおくる野宿労働者に認められる、との正当な判断が行なわれたものである。(関西Si通信員)


コミュニティー・ユニオン運動の
          特徴と課題を考える
 
   『組合機能の多様化と可能性』(法政大学)から

 ユニオンを論じた本で、『組合機能の多様化と可能性』(法政大学現代法研究所叢書22、浜村彰・長峰登記夫編著、〇三年三月)という本がある。
 私が興味を引いたのは、第1章の「合同労組からコミュニティ・ユニオンへ」と、第2章の「コミュニティ・ユニオン運動の20年」である。ポイントが良くまとまっており、組織率が20%を切った日本の労働運動の戦略的課題、および個人加入型労働組合運動の射程を捉え返すのに必要な基本的知識として、一読をお勧めする。
 まず第1章の要点をかいつまんで見よう。
 「1950年代から60年代にかけて急速な広がりを見せた合同労働組合もまた、地域を基盤とした労働者の個人加入を原則とする地域組合としての性格を持っていた……ところが、この合同労組運動は60年代に入ってから失速といえるほどの停滞状況に陥り……そして、二十年余りを間に挟んだ80年代になってから、コミュニティ・ユニオンの全国的な台頭と共に、地域組合運動がまた脚光を浴びる事になったのである。」
 そこで筆者は、合同労組とコミュニティ・ユニオンの相違の分析に入る。
 まず合同労組とは、合同労組の全国組織である連合・全国一般(すでに自治労との統合がなされたが)の組織原則を引き合いに出し、「労働者の個人加入を原則とした地域単位の組合組織」と捉える。そして、その登場の背景を総評の1955年度運動方針を中心に解析する。
 そして、合同労組の停滞の要因を次ぎの三点におく。その一つは、組織化に付きまとう宿命的な難事…中小零細企業の流動性の高い労働者が対象。その二は、特定の企業内の組合員数が増加すると企業別組合として独立していく傾向……地域組合として加入労働者全体の利害の共有化と連帯意識を維持することの難しさ。そして最大の要因として、自主的な運動と言うよりも総評の「上からの働きかけ」であった、と見る。他方、「合同労組がその存在意義を発揮しえたのは、解雇撤回などの個別紛争支援・闘争活動である。いわゆる駆け込み訴え……一種の交渉請負的な意味での世話役活動……併せて福祉対策事業や各種共済制度の利用の促進」。
 これらに対して、コミュニティ・ユニオンの特徴として五点を指摘する。
 第一に、組織対象を中小企業の労働者に置くのではなく、パートやアルバイト、派遣労働者などの非典型型雇用労働者や管理職、女性労働者などの多様な労働者を組織している。……正規従業員によって構成される企業別組合に対するアンチテーゼとして結成された。第二に、「上からの組織化」ではなく、地域ごとに自主的に誕生した点でより大きな特徴を有している。第三に、地域密着度がより高い。全国単一組織化を志向していない。第四に、社会運動的性格を併せ持っている。第五に、その具体的活動において労働者の個別相談に応じて使用者と交渉を行なうという、その程度が徹底している。労働者の個別利益の実現を図る苦情処理型ユニオンとしての性格。
 合同労組との類似した問題としては、組織としての脆弱性から逃れられていない、しかし、それはそれでよいとする考え方も内蔵していると指摘。コミュニティ・ユニオンが、職場内で企業別組合が果たし得ないこうした組合活動をパート・アルバイトなどの非典型型雇用労働者等をターゲットとして地域レベルで独自に展開していくことは、まさに労働組合のもう一つの重要な役割を果たすものに他ならない。
 長い要約になったが、おおよその問題点の有様が網羅されている。
 やはり私としては、ここに付け加えるべきものとして一つ二つの重要な点が抜けていることを指摘しておきたい。
 その第一は、産業別構成の変化および非正規労働者が労働力構成の三分の一以上になったという労働市場の激変が、新しい労働組合の有り様を必要としていること。第二に、個人加盟、地域密着型、一定の組織対象への絞り込み、そしてそれらの全国的な緩やかなネットワークだけでは決定的に弱いところをどのように補うのかという事である。第三に、既成の企業別労働組合運動に対する態度である。第四に、個別労使交渉だけでは乗り越えることのできない社会制度、法定労働条件については、法律という枠組みを変えることを不可避としているが(最低賃金・労働時間等)、そのために必要な政治的力をどのように付けていくのかである。
 これらに焦点をあわせた内容が、この本では第2章で現在のコミュニティ・ユニオンの紹介や分析として展開されている。もっとも、これらは我々の直面している現実的課題ではある。(楓)