憲法シリーズB
  海員、全国港湾が2・3憲法改悪反対共同アピール
    労働組合の横断的な憲法闘争を

 二月三日、全日本海員組合(井出本栄組合長)と全国港湾労働組合協議会(安田憲司議長)が共同で記者会見し、「憲法改悪に反対する共同アピール」を発表した。
 憲法改悪の段取りとしての国民投票法案が、自民・公明と民主の共謀によって今国会に提出されかねない情勢のなか、労働戦線からの広い社会的アピール、積極的な動きとして注目される。
 アピールは次ぎのように述べる。「平和憲法のもとにあっても、海員は世界で頻発する戦火をくぐり、尊い命を失う悲劇を経験してきました。港湾労働者もまた、朝鮮戦争に駆りだされ、ベトナム戦争に協力させられるという実体験をもっています。だからこそ、二度と戦争体制に組み込まれたくないという思い、平和への希望は切実です。」
 「『戦火の海に船員は二度と行かない』と誓って結成した海員組合と、『軍事荷役はやらない』と決意する全国港湾は、陸・海・空・港湾労組二十団体をはじめ、ナショナルセンターの違いを超えてすべての労働組合、宗教者や市民団体……など国民各層のあらゆる団体と憲法改悪反対の一点で共同し、平和憲法を守りぬくことを呼びかけます。」
 日本の船員は、第二次世界大戦では軍人の戦死率を上回って六万人以上が犠牲になっている。湾岸戦争でも犠牲者が出ている。戦争動員に敏感にならざるを得ない。また日本の会社の船で働いている外国人船員は、世界の紛争地でどれぐらい死傷しているのか、日本人船員より多いに違いない。
 「戦火の海に船員は二度と行かない」、「軍事荷役はやらない」、そうか、それで皆さんは憲法改悪に反対するのか、と納得ができる。
 日本教職員組合にも、かって侵略戦争に教壇から協力してきたことへの痛苦な反省から、「教え子を再び戦場へ送るな」という非常に有名なスローガンがある。現在、自衛隊イラク派兵で、文字通り「教え子を再び戦場へ送ってしまった」教員は相当多いはずである。9条が改悪されれば、この恐るべき事態は飛躍的に拡大する。しかし、不思議なことに以前よりも、このスローガンは聞こえなくなっているのである。
 日教組や自治労など多くの連合加盟組合が、連合中央の改憲支持見解案に対して批判意見を出して、また連合会長選挙での鴨さん善戦も影響して、一月十九日の連合中央委員会では憲法論議凍結、新しい統一見解は作らないということになった。
 これは、より悪くなるのを阻止したというだけのことではあるが、連合の中でゴチャゴチャやっているだけで、日教組や自治労としての、連合の外の広い世間へ向けた社会的アピールというものが欠けているのではないか。働く者として、自分の仕事を通じて、なぜ平和憲法改悪に反対するのか、広くアピールする努力や工夫が感じられない。今回の海員・全国港湾の共同アピールを見て、より大きい組合にはそう感じざるを得ないのである。
 ともあれ、労働戦線の憲法闘争として、ひとつの烽火が掲げられた。三月二五日には、陸海空港湾二十労組として、初めての憲法改悪反対集会が都内で開かれるという(千代田公会堂)。このかんの有事立法反対では陸海空港湾二十労組が軸になり、一定の広範な共同行動が実現されてきたが、その波及力には限界があった。より大きな共同でなければ憲法改悪は阻止できない。
 今回のアピールを機に、中央労働団体の枠を超えた、労働組合の横断的な憲法闘争が広がることを期待したい。(F)