2006春闘

  労働組合は憲法改悪阻止の先頭に立とう
    今春闘で「格差社会」是正へ

 2006年春闘は、景気の回復基調を背景に「賃上げ復活」などといわれている。
 日本経団連は、「自社の支払能力を基本に、中長期的な見通しに立って判断する」と賃上げ容認を打ち出した。連合も「賃金改善は月例賃金重視」を掲げ、実績を一時金で配分させるいままでの方法を転換しようようとしている。
 しかし実際は、賃上げ可能な企業はいわゆる「勝ち組」の一部大企業であって、「負け組」の企業では定昇も獲得できないと、春闘に取り組む前から語られる現実がある。可処分所得が下がるなど定昇割れや実質賃金の低下が引き続き進行している。
 小泉連立政権は今年度から、増税・社会保障負担増をはっきりと打ち出し、労働者・一般国民の生活を苦しめている。さらに小泉の退任後は、消費税率の大幅アップを見込んでいる。
 現在でも、可処分所得を維持しようとするならば、年収500万円で配偶者・子ども二人の労働者は、〇六年春闘で4100円、〇七年春闘では5900円の賃上げを獲得しなければならないと試算されている。まして年収500万円という「中流」が解体し、年収200万円以下の労働者が増えている二極化、格差拡大の中、底辺労働者の生活を改善できる賃上げが獲得できるのだろうか。〇六春闘は、二極化の流れを変える転機である。「格差社会」に真っ向から是正を求める、そういう春闘であるべきだ。
 連合も一方では、格差是正・均等待遇を打ち出している。昨年の連合会長選挙でも明らかとなったが、増大する非正規労働者への対応ができなければ、連合の社会的役割が問われる時代にもなっている。それで今春闘では連合も、中小共闘センターに続いて「パート共闘センター」を設置して、たたかう体制を一応は作っている。わずか十円であるが、パート時給の賃上げ目標を出している。
 連合はこのように、賃金の底上げを図ろうとしているわけだが、「賃上げ(ベースアップ)」とは言わず「賃金改善」と唱えている。これまでの生産性基準原理などに代わる、新しい賃金闘争の考え方が立てられているとは言えず、小手先の対応である。
 〇六年春闘は、賃金の底上げ、格差是正・均等待遇の実現へ確かな一歩を踏み出すことが第一の課題である。そして春闘を、年功序列賃金から社会的に規制された仕事給賃金へ、企業別賃金から産業別賃金へ、家族賃金から両性が自立して生活できる生活賃金へ向う契機としていく必要がある。こうした新しい賃金闘争のあり方と、労働組合が非正規労働者・底辺労働者を大きく組織していくこととは表裏一体の関係にある。
 次ぎに「労働契約法」制定の問題である。「労契法」による労使委員会制度の導入により、労働条件の決定権を労働組合から奪うことになる。労働組合としてはまさに存在が問われる課題である。労働条件の不利益変更の容認、雇用継続型契約変更制度、解雇の金銭解決制度、試行有期雇用契約制度、ホワイトカラー・エグゼンプション(労働基準法からの除外)など、資本側にとってのみ有利な制度が提案されている。現在これをめぐる労働政策審議会が行なわれているが、〇七年通常国会に提出される前に、この労働契約法制案をつぶす必要がある。
 さらに憲法改悪を阻止する闘いである。米軍の再編にともない日米の軍事一体化が強められようとしている。自民党の新憲法草案は、この軍事一体化を支え、海外で日米両軍が共同して武力行使を行なうことを可能にするものである。改憲国民投票法案に反対し、憲法改悪を阻止する幅広い戦線を組織することが求められている。多くの労働組合の闘いによって、連合による改憲への意見統一は破産した。さらに改憲阻止の圧倒的多数派を形成するために、今春闘で労働組合こそが先頭に立とう。
 「もうひとつの日本」を展望できる新しい労働運動を創ることができるのか、それとも労働組合の存在が無意味なものになるのか、それが問われる今春闘である。(K)

        第36回釜ヶ崎越冬闘争

  「低めの安定」を固定化させず
    職・食・寝場所の根本改革を

 釜ヶ崎で、第三十六回釜ヶ崎越冬闘争が闘い抜かれた。
 昨年十二月十九日、西成市民館に八十名が参加して、「支援連帯集会」が行われた。基調提起、越冬実各班の決意と、キリスト教友会、釜ヶ崎講座などの支援団体・個人が取り組みへの決意を述べ、反失連の本田さんがまとめを行った。なお反失連は、十二月十三日に、府・市に対し、就労・生保・健康・シェルター等について十五項目にわたる要望書を提出している。
 二十五日、三角公園で、八十名を集めて越冬突入集会が行われた。第三十六回越冬闘争のスローガンは、「安心して働き、生活できる釜ヶ崎を!」をテーマとし、一、越冬対策をやらなくてもよい施策を! 二、野宿をしなくてもよい仕事を中心にした支援策を! 三、生活保護の改悪は許さない! 四、戦争・基地はいらん!平和憲法を守れ!―である。
山田越冬闘争委員長は、「現在小泉政権下で、グローバリズムの掛け声による規制緩和・新自由主義で、労働者にとって厳しい世の中になっている。現在、我々に問われているのは、高度成長経済のおこぼれで、かろうじて保障されていた過去の生活への願望でなく、一部のものへの巨大な富の集中でもなく、富の分配と仕事の仕方、社会環境、自然環境の整備を含めた新たな社会制度の創設を目指した改革を、この越冬闘争や、反失業の闘いと結びつけて闘うことが問われている」と、力強くアピールした。
二十九日よりは、集中期の始まりである。この日より、南港臨時宿泊の受付けが始まり、三十日までに千六百八十一人の仲間が入った。越冬実では、狭さや、生活の不自由さはあるが、野宿せざるを得ない仲間には、一年の野宿生活の疲労・衰弱を少しでも取り戻し、次への闘いに備えるため、臨泊の活用を呼びかけ、市立更生相談所での申し込みを行った。
三十日には、その中間報告集会が三角公園で行われるとともに、八時より野宿の仲間の安否確認と激励の「人民パトロール」が開始された。百名を越す仲間が、釜ヶ崎周辺を見回った。簡単な非常食とカイロを配り、「大丈夫か」と声をかける人民パトは、三十一日以降には、釜地区外へ展開した。
三十一日から三日までは、越冬まつりが行われた。炊き出しも一日二回となり、三が日は三食となった。
四日は、大阪市・府に対する「お礼まいり」が行われた。七時より、センターで集会、八時より地区内をデモし、九時に「勝利号」で大阪市役所に「要求書」を提出して交渉にあたった。続いて、府庁にも押しかけた。
十日まで、越等闘争は続けられた。厳寒の今年、残念ながら越冬の取り組みの中でも、釜の中で数名の仲間が亡くなってしまった。二十八日にも、センター下の布団しきの現場で一人の仲間が冷たくなっていた。「一人の死者も出すな!生きて春を迎えよう」のスローガンは果たせなかった。が、わずか、支援センターの三ヶ所の建設で、三角公園横のシェルターも六年目となり、「臨時宿泊所」が固定化されている。NPO釜ヶ崎支援機構の『現場通信』は、もはや特掃・夜間宿所・炊き出しの三点セットで頑張る時ではない、「低めの安定」を固定させず、職・食・寝場所の根本改革を、と呼びかけた。第三十六回越冬闘争は、闘いの転換を模索し、新たなる闘いの準備となった。

  恒例の1・3釜ヶ崎ツァー
    「釜ヶ崎講座」は4・15

一方、一月三日、「釜ヶ崎講座」は恒例の「越冬・釜ヶ崎ツアー」を行った。水野阿修羅さんの案内で、釜ヶ崎を回った。今年は、高校生も参加し、新たなメンバーが多かった。案内も、今年は「何故、釜では自転車が多いのか」、「地区内の映画館は、連日オールナイトなのは何故か」など、参加者に問いかけながらの釜ヶ崎ツアーとなり、参加者に好評だった。
講座は、一月二十一日に、「会員の集い」を、設立以降初めて行い、これまでの活動のまとめを行い、NPO支援機構の松繁事務局長の記念講演の集まりをもった。来る四月十五日には、「福祉」をテーマに、第十回目の「講演の集い―フォーラム」を行う予定となっている。(関西S通信員)
 

1・15日雇全協反失業総決起集会
     仲間の不当逮捕を弾劾する
        日雇労戦の再構築へ

 「佐藤さん・山岡さん虐殺弾劾!金町一家解体!1・15日雇全協反失業総決起集会」は新年一月十五日午前十時から、東京・山谷の玉姫公園で約二五〇名の結集で闘い抜かれた。
 政府・資本の規制緩和と改憲攻撃、搾取と抑圧が強まるなか、労働者人民の下層は増大し、下層労働者・非正規労働者の闘いもしだいに拡大しつつある。この状況下、野宿労働者と日雇寄せ場労働者の闘いは、全国において日雇全協の闘いと結合しながら、新たな年の階級闘争を準備しつつある。
 この日の集会・デモは、その出発点として意義ある闘いであった。これに対し、政府・権力は、機動隊と浅草署を中心に徹底弾圧で臨み、一名の仲間を逮捕した。仲間たちは弾圧に屈せず、「金町解体!」「屋根と仕事をよこせ!」「官憲の弾圧を許すな!」「排除を許さないぞ!」とシュプレヒコールを唱和して、山谷大通り・清川通りを全面的に解放しながらデモを敢行した。
 デモ前の集会では、山谷争議団の仲間の司会の下、全協結成から佐藤さん・山さん虐殺の過程、対金町戦の過程と総括が述べられ、現段階の闘いの過渡的な位置と、いかにして政府・権力と闘い金町を解体していくかが提起された。つづいて全協各支部・支援共闘の決意表明が行なわれた。午後からは交流会を持ち、団結を打ち固めた。
 日雇全協は一九八一年結成以来、労働戦線の下層からの推進翼、また反天皇制闘争の牽引者として、今日では野宿労働者と反失業闘争を結合させるものとして、ねばり強く闘い抜いてきた。その意義は計り知れない。しかし、依然として金町を解体できていないし、大衆の結集ももっともっと拡大しなければならない。そして何よりも、小異を残して大同に付く団結と共闘を更に拡大していくべきである。
 常に大衆とともに闘い、大衆とともにその闘いの発展段階を踏まえて闘うことが要請されている。かって旧山谷現闘委が解体され、冬の時代と言われた時代に、大阪では釜共闘の限界を釜日労としてのりこえ、各地では寿日労、笹日労などとして日常活動を闘う中から、八一年に労働組合としての日雇全協を結成してきた地平を今一度総括すべきではなかろうか。
 それを通じて今日の限界・弱点を克服し、さらに大きな共闘・団結を目指さなければならない。(東京Y通信員)


 三里塚闘争の06年旗開き(1・15現地、1・22関西)

    反空港の中から
          もう一度「世直し」へ


 一月二十二日、尼崎市立労働福祉会館において、四十名の参加で、関西三里塚闘争相談会、同連帯する会の旗開きが行なわれた。まず渡邊より、主催者あいさつが行なわれれ、現地・反対同盟の柳川秀夫さんが、「暫定滑走路の北伸が決定した。しかし、南側の延長がなくなった訳ではない。もう一度、反空港の闘いの中で『世直し』が問われているのでは、と考えている。しかもこの経済社会や民主主義の『物差し』そのものの新しい『物差し』への転換を創り出す取組みをやっていこう」と、あいさつを行なった。
昨年、一億円余の損害賠償をカンパ活動で集めきり、国につき返し勝利した、3・26管制塔占拠闘争の元被告の津田光太郎さんが御礼をのべるとともに、占拠闘争のエピソードを語った。
参加者には、3・26闘争の元被告や闘争参加者も多く、思い出と、?たな闘いへの決意が続いた。
現地では、この一週前の十五日、「農業研修センター」に五十名が集まり、三里塚反対同盟の旗開きが行なわれた。柳川秀夫さん、石井恒司さんの他、東峰から樋ケ?守男さん、平野靖識さんが参加した。管制塔カンパ運動の成果を確認し、和多田、中路、中川の三元被告が参加し、感謝をのべた。
二月十六日には、神戸空港が強行開港される。前日、反対集会が行なわれ、当日には神戸市役所前で抗議行動が予定されている。
静岡空港での強制収用への策動、石垣島白保でも同様の動きが今年予想される。ムダな公共工事で自然と農業・漁業を破壊し、戦争への準備となる空港建設に対し、今年も闘いを強めていこう。(東峰団結小屋維持会 渡邊)


「共謀罪」新設法案を阻止しよう
   話し合うことが罪になる

 今国会での重要課題の一つは、「共謀罪」新設法案を阻止し、政府・法務省・検察官僚がこのかん執拗に続けてきた「共謀罪」新設を今国会でこそ断念させることである。
 この法案、共謀罪を組織犯罪対策法の中に新設する組対法改定案は、越境組織犯罪国連条約を日本が批准したことに対応するとして、〇三年三月にはじめて国会に提出されたものである。しかし以来、二度に渡って廃案となっている。市民運動や法曹界の反対運動とともに、あまりにもファッショ的かつ恣意的であるため、昨年の延長国会でも審議が進まず結局「郵政解散」で廃案となった。それでも小泉連立政権は総選挙勝利での数を頼みに、昨秋の特別国会で三度持ち出したが、与党側からも疑問が出され継続審議に持ち越されたわけである。
 一月二十日開会の今国会では、条文の若干の修正で強行採決される危険がある。与党・公明党と、民主党の一部は、「組織犯罪集団」と「準備行為」の文言を入れることを考えているようであるが、組織性のみの限定では恣意的運用を阻止することはできず、また準備行為を要件とする修正には自民党が応じるとは思えない。共謀罪法案は廃案しかない。
 「共謀罪」法案は、広く批判されているように第一に、犯罪事件が発生する以前に処罰時期を著しく早め、話し合っただけで犯罪の構成要件とするものである。未遂罪・予備罪にも必要である客観的行為の明確性を欠き、罪刑法定主義を根底からくつがえすものである。言論や思想を弾圧することに通ずる。
 したがって第二に、犯罪を話し合ったという要件を得るために、盗聴法の改悪、自白偏重、スパイ潜入などの捜査手法の拡大と連動するものである。監視社会の決定的強化となる。第三には、越境組織犯罪条約の国内法対応として「共謀罪」が義務付けられている訳ではないにも関わらず、それを口実として、権力は使い勝手のよい治安弾圧法を得ようとしている。あらゆる社会運動弾圧や言論・思想弾圧に、すぐにではなくても将来、広範に使える武器を与えることになる。
 こうした、とんでもない悪法が成立しかねない今国会に対して、全国各地で「共謀罪」反対の動きは一層強まりつつある。

東京1・26
   市民団体共同声明、請願署名をさらに


 東京では一月二六日、「話し合うことが罪になる、共謀罪の新設に反対する市民の集い」が文京区民センターで日本消費者連盟などによる集い実行委員会の主催でひらかれ、約二五〇名が参加した。
 最初に、海渡雄一弁護士が「共謀罪」の危険性を解説。「共謀罪には、未遂も中止もない。話し合いで共謀したとされる人は、犯罪の事実が無いのに、出頭して刑を減免してもらうしかない。信じがたい事ですが、法案はそうなっています。」「越境組織犯罪条約の批准では、準備行為を要件とすること、マフィア、蛇頭など国際犯罪組織に限定することは認められているのに、日本政府はそうしようとはしないのはどういう訳か」。海渡さんは、共謀罪が検察官に万能の権限を与えるものであることを強調した。
 つぎに萩野富士夫教授(近代史)が、「治安維持法と共謀罪」について講演。一九二五年成立の治安維持法がその後改定等を通じ、国内と支配地において、また戦争の拡大とともにどのように拡張していったかを追う内容であった。現在の「共謀罪」を治安体制全体の中でとらえること、また「共謀罪」の今後の拡張を示唆する講演であった。
 集会は、教科書ネット21など諸団体の連帯発言の後、衆院議員会館での1・31議員と市民の集いへの参加、共謀罪反対の「市民団体共同声明」への賛同、「共謀罪の新設に反対する請願署名」への取り組みが訴えられた。(東京W通信員)

京都12・20
   法案の恣意的性格は明らか


 京都では十二月二〇日、ハートピア京都にて「『共謀罪』を語ろう!議員と市民の集い」が約一五〇名の結集でひらかれた。出席議員は、社民党から(辻元清美に代わって急遽)保坂展人、共産党から井上哲士、民主党から泉ケンタの三議員。コメンターは村井敏邦(龍谷大学教授)、岩佐英夫(弁護士)。
 集会は冒頭、どういった行為が「共謀罪」に当たるかのクイズから始まった。十問近い質問で全問正解者は五名ぐらいしかいなかった。法務委員会の二名の国会議員を含め法曹関係者が多いと思われる集会参加者の中での結果である。このことは、いかに「共謀罪」があいまいかつ不明確な法律であり、警察によって如何様にも恣意的に行使されるものであるかを物語っている。(ちなみに三名の国会議員は回答全滅であった。)
 各議員からは、この法案のさまざまな問題点が指摘されると共に、これと連動した、「強制執行妨害罪の拡大・重罰化」、「サイバー犯罪対策としての令状無しでの通信履歴保全要請、また一枚の令状で全ネットワークの記録差し押さえが可能」、また「盗聴法」の改悪等、めじろ押しの治安立法の危険が警鐘された。
 このような悪法が可決されれば、反戦平和運動は言うに及ばず、自主的な市民・住民・労働運動が壊滅的な打撃を受けることは火を見るより明らかである。日本のこれまでの刑法体系を覆す悪法(新治安維持法と称されている)が、今国会で自民党・公明党の強行採決で議決されようとしている。条文のわずかな修正で採決されんとしている。
 「共謀罪」は、「四年以上の懲役又は禁固の刑が定められている罪」(したがって、なんと557種類もの範囲)に関わり、二人以上で(冗談でも)話し合っただけで罪とするもの、実行に移されなくても、数年後にでも事後逮捕もできるようにするものである。一括してあらゆる人々を網に引っ掛け、警察官僚の専制支配へと導くと共に、侵略戦争ができる国家への道を掃き清めんとしている。
 国会状況を見るならば、いかに広範な労働者・市民がこの現代版治安維持法を阻止するために立ち上がるかに全てはかかっている。全国から、地域の自民・公明や、また安易な妥協に走りかねない民主党に圧力をかけ、総力を挙げ国会を包囲する闘いを準備しなければならない。(京都K通信員)