2006年
新年アピール

 社会崩壊と政治反動に抗し、労働者民衆の連帯を!
   新しい労働運動の前進を要に
                       労働者共産党中央常任委員会 

 ここ一年を振り返り、新年のたたかいの方向を展望しよう。
 旧年の日本での最大の政治的事件は、小泉首相の解散強行・総選挙勝利であると評されている。しかしその政治の表舞台の裏で、深刻な社会的危機の進行が明らかとなったことも旧年の特徴であった。
 四月二五日、JR西日本の福知山線で衝撃的な大事故が発生し、百七名もの命が奪われた。事故調査委員会の報告は死亡した運転手の異常な速度超過を強調したが、直接の事故原因の背景には、異常な労務管理と、「安全」よりも「利益」を優先させた会社の体質があった。国鉄分割民営化を通じた市場原理主義の貫徹、労働組合の規制力の破壊、それがこの事故の真の原因であった。
 六月末、奇しくもこの事故現場に近いクボタ尼崎工場で、周辺住民にまでアスベスト被災の中皮腫死が多発していることが明らかとなった。これを機にアスベスト問題が、一挙に全国民・全住民の生命に関わる問題として広がった。この前代未聞の大量被災は、資本の利益のために、行政が有害危険物質の生産・販売を長年放置してきた結果であった。「アスベスト新法」が不徹底なものに終わるならば、被災は今後も続くのである。
 そして更に十一月には、耐震偽装問題が明らかとなり、社会を揺るがしている。これは建築士一個人の犯罪ではなく、元請をはじめとした業界ぐるみの構造的犯罪である。日本では、極端な手抜き工事が平然と行なわれ、行政であれ民間によるその代行であれ建築確認検査が事前にこれをチェックできていない。九八年の建築基準法改定など資本のための規制緩和の流れが、事件の背景にあることは明らかである。行政責任も重大であるにも関わらず、政府はこの問題が不動産不況につながることをおそれ、被害居住者への場当たり的な「公的支援」で事態を沈静化させようとしている。
 以上の三つの事件に通底するものは、小泉「改革」が進めている市場原理主義、新自由主義にほかならない。小泉連立内閣は「テロの脅威」を叫び有事体制を作りつつあるが、交通・有害物質・住生活などでの、はるかに現実的な脅威に何ら根本的対策を打たず、労働者人民の安全を脅かし社会生活を破壊しつつある。
 他方、ここ一年の軍事・外交面での特徴は、自衛隊イラク派兵を機としての「世界の中の日米同盟」路線の明確化、それと関連しての中国・韓国との対立激化、日本の東アジアからの孤立化であった。
 二月、日米「2プラス2」協議が、中国を日米安保の対象に入れるなど「共通戦略目標」を示す共同発表を行なった。そして、米軍・自衛隊再編では十月二九日、沖縄・辺野古崎に新基地を建設などとする日米「中間報告」合意を強行した。
 その間の四月、中国では、小泉の靖国参拝や日本の常任理事国入りなどに反対しての対日抗議行動が繰り広げられた。三月には、韓国ノ・ムヒョン政権が「対日新政策」を打ち出し、過去を清算しない日本政府に対しては原則的に対処することを明確にしている。
 これら東アジアの動向に対し、小泉は愚かにも十月に靖国参拝を強行して挑発し、十一月のブッシュ来日時には、日米同盟の強化によってアジア諸国に対処するという方針を露骨にした。中国や韓国からの批判に対しては、「参拝は精神の自由」などと問題の性質をはぐらかし、「内政干渉に屈するな」とナショナリズムを煽って対抗している。他国に批判されようがされまいが、侵略戦争を賛美し戦争犯罪者を祭神としている一神社に対し、それを政府が実質的に戦死者追悼の中心施設としている異常性は即刻是正されなければならない。
 この靖国問題を放置したまま、小泉自民党は十一月に「新憲法草案」なるものを発表した。その主眼である憲法第九条の抹殺は、日本が再び「戦争をする国」として行動することを、かっての被侵略国に、アジア諸国に宣告することである。改憲策動の進行は、東アジア外交の改善をさらに難しくする。
 こうしたデタラメな政治にも関わらず、九月十一日の総選挙で小泉自民党は、議席では単独過半数を上回る大勝利を収めた。これは小泉自民党が、日本の行き詰まった現状を打破する強力な改革者であるかのようなイメージを打ち出すことに、もっとも成功したからであった。郵政民営化そのものの是非ではなく、「自民党をぶっこわす」というその野党性が大衆一般の喝采を受けたのであった。そのメインスローガン「改革を止めるな」の補強として使われたのが、公務員攻撃とナショナリズムという大衆操作の常套手段であった。
 こうした「小泉革命」は、当面の政治日程をより危険なものにしている。しかし、それが労働者人民の現状打開の欲求・要求をだまし取ったものである以上、小泉の勝利は大局的には、小泉自民党と日本の支配体制の大規模な崩壊に導かれるというのが我々の見解である。しかしそのためには、この日本の労働者人民の欲求・要求と結びつき、連帯した自立した個々人として組織しようとする意識的運動が前提となる。「会社」にも「労働組合」にも帰属しなくなった「砂のような」個々人を、ポピュリズムやナショナリズムが組織しようとするのか、それとも新しい労働者人民の運動が組織するのか、課題の核心はこう立てられるだろう。
 この課題に応え、わが労働者共産党は昨年七月、第三回党大会を開催して、労働運動政策決議「当面する労働組合運動におけるわが党の諸政策」などの諸決議を採択した。またすでに〇一年には、「企業の枠にとらわれない、個人加入のゼネラルユニオンや地域ユニオンを日本の労働組合運動の主流におしあげ、広範な労働者の階級的団結を固めることこそ、労働者階級の解放を前進させる道」であると論断した三中総・労働組合決議を採択している。この二つの決議は、個人加入制の新しい労働運動を前進させることをカナメとして、日本の労働者人民の闘争態勢を階級的基礎から立て直そうとするわが党の意思を明確にするものである。
 すでに非正規労働者は全労働者の三分の一を超え、青年労働者では過半数となっている。これを主因として「格差社会」が進行している。企業別正規労働者の組合で成り立つ連合では、この事態に基本的には対応できない。十月の連合会長選挙で全国ユニオン会長が善戦し、非正規労働者の運動潮流が今こそ求められていることを広くアピールすることに成功した。しかし連合内でのこの動きは、連合の外の個人加入制中小組合や労働者・民衆の諸運動と固く連携していることが必要だ。
 わが党は、この新しい労働運動を前進させる中で党建設をすすめると共に、新しい労働運動・民衆運動を階級的基礎とした左翼勢力の共同・統合を推進していく。そして広範な共同戦線の形成を支援して憲法改悪阻止の闘いをすすめ、日米軍事一体化に反対して東アジア労働者人民の連帯をすすめる、これら「四つの任務」を労働運動の新しい再建の任務をカナメとしておしすすめる。
 社会の根底からの運動の再建、労働者人民の連帯、これをめざして新年を共に闘いぬこう!