沖縄からの通信

  「シュワーブ沿岸案」「北部要塞化」糾弾し10・30県民大会
    ふたたび島ぐるみ闘争へ

 十月二六日、日米は普天間移設の新基地建設について「シュワーブ沿岸案」で合意・決着した。
 この案は、嘉手納基地以南にある普天間基地、那覇軍港、牧港補給基地(キャンプキンザ―)等々の米軍基地を沖縄北部へ集約移設することを条件とするものである。沖縄とくに北部(ヤンバル)にとっては、SACO原案(辺野古沖案)を越える重圧である。
 原案が阻止され、日米が廃棄せざるをえなくなったことは、辺野古のテント村と海上における五五〇日に及ぶ非暴力実力阻止の闘いの成果である。このかん延べ数万人の人々がテント村を訪れ、沖縄の新たな民衆運動のエネルギーを生み出し、内外の世論を激変させてきた。これを闘いぬいた人々、支援した全島・全国の人々の力は、必ずや「シュワーブ沿岸案」をも破綻させるであろう。
 数々の「案」を取っ変えながら出てきたこの案は、日本政府が米政府に要求を呑ませ妥協させたものと宣伝されているが、米側の選択肢から一つを選ばねばならなかったことは交渉全体を見れば明らかである。そして、これとパッケージとされているのが北部移設やグアム移転である。しかし普天間を含む嘉手納以南の基地は、このかん機能を失った空箱となっている。これを「負担の軽減」と言うのは恥知らずだ。移設して機能強化ではないか。
 新案の押しつけは、日本政府による沖縄人を差別した「北部の要塞化」を意味する。この押しつけは、辺野古テント村で積み上げられてきた各界各層の人々の島ぐるみ的反撃にあうだろう。日本政府は、圧倒的な県民世論の前に稲嶺知事が「沿岸案NO」「県外移設」を正式に回答せざるをえなくなることを予測している。
 それで日本政府は、知事の権限を奪うための「埋め立て特別措置法」を準備している。九五年の大田知事による代理署名拒否の情勢にも似た、「島ぐるみ」闘争に政府は直面するだろう。
 ここ近年、大学人・知識人たちの市民運動への参画も著しい。かれらが言う「沖縄人の共通の課題」論(新崎盛暉)、「条件を付けないで基地を廃止するを県民の最大公約数とする結集体」(我部政明・宮里政玄)、「外交権を持つ沖縄の自治州」(島袋純)、これらはみな、日本政府に対して、さらにパワーアップした沖縄民衆運動の創造を提起するものである。基地県内移設との闘いは、日本政府に対決する沖縄人の独自の統一戦線の形成へと向うだろう。
 十月三十日の夕、「県民総決起大会」(主催・基地の県内移設に反対する県民会議)が那覇・与儀公園でかちとられた。
 雨にもかかわらず公園を埋める1万名の人々が、前日の「中間報告」に怒りを持って結集した。山内徳信共同代表が日米合意を激しく糾弾し、伊波洋一宜野湾市長も辺野古新案を強く批判した。
 大会は、「日米合意の撤回」「普天間の即時閉鎖」「辺野古などへの新基地建設断念」「あらゆる基地たらい回しをやめよ」の四項目を決議。集会後、「辺野古ありきの日米合意糾弾」「北部への基地集中阻止」などを叫んで、デモ行進した。
 沖縄民衆の島ぐるみ的攻勢が開始された。(三十一日・那覇T)