非正規労働者と個人加入制労組の団結権確保へ一大闘争を
  労働者の団結を破壊する「労働契約法」

 厚生労働大臣が学識経験者を集めて開催した「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」が、最終報告を九月十二日に取りまとめた。今後、労働政策審議会で検討され、二〇〇七年春の通常国会に、労働時間に関わる労働基準法改正案とセットで「労働契約法案」が提出される予定である。
 この報告には多くの問題点があるが、大きな問題点は次のとおりである。第一に、使用者が常設の労使委員会を設け、労働条件の決定・変更に関する協議を行ない、就業規則の変更について5分の4の賛成があれば法的に有効性をもたせることである。
 第二に、雇用継続型契約変更制度を創設し、使用者に一方的に労働条件を引き下げる権利を与え、応じない労働者に解雇を迫ることである。
 第三に、解雇訴訟における金銭和解制度を導入し、裁判で解雇が認められなかった場合でも、使用者が一定の金額を支払えば解雇できることである。
 第四に、労働時間規制からホワイトカラーを除くホワイトカラー・イグゼンプションを導入することである。日本経団連の意見では、年収四〇〇万円以上の労働者をイグゼンプションの対象にしようとしている。
 このように、使用者が労働条件を一方的に引き下げ、労働者が応じない場合は解雇し、解雇が不当であってもカネを払えば良いという、あまりにも使用者に都合のよい制度なのである。
 報告の思想は、労働者と使用者は対等な関係で労働契約を締結するものであるという市場原理にもとづいている。しかし、実際には労使が対等な関係にないので、労働者が使用者と対等に交渉できるよう労働者の団結権が認められ、争議権を獲得してきた。このように労働法は民法の特別法としてつくられてきたのであるが、契約手続だけを定めた労働契約法は労働者保護に値しない。報告を書いた学者は、労働者の団結権・団体交渉権・争議権を否定していないと言うだろうが、報告は、労働者の団結とたたかう労働組合の存在を危うくするものであることは否めない。
 労働契約法制の必要性は労働側からも主張されていた。それは、解雇規制の四要件の法制化や、非正規労働者の権利を明確化するために必要であると言うものであった。
 解雇規制について、報告は解雇をより容易にしようとするものであることは明らかである。
 非正規労働者の権利確立について、労働契約法の適用労働者の範囲を労働基準法適用労働者にとどまらず、個人請負契約であっても経済的従属性が強い者は対象とすることを検討すべきであると報告では述べている。何をどのような範囲で適用するか述べていないので、期待はできないが、今後の労働運動にとって重要な課題であることは間違いないであろう。非正規労働者の意見を反映させる労働者代表制や使用者の安全配慮義務などが、どのように生かされるのであろうか。現実の派遣労働者や請負労働者の実態を見ると、法的には適用区分が整理されているが、実態はそうなっていないのが現実である。
 非正規労働者の労働実態を明らかにし、かれらの団結が保障され権利が生かされるようにすることが必要であろう。さらに、非正規労働者の政策要求としてまとめあげ、非正規労働者の団結と全国的な連携を作り上げる必要がある。
 報告にもとづく労働契約法の制定に反対する運動を、ただちに組織すべきである。今後の労働政策審議会でのたたかいは、審議会内部の議論に終始することなく、労働者の団結を守り、非正規労働者の権利を確立する要求を掲げた労働者の広範な運動と一体のものとして組織されなければならない。
 地域ユニオン、パートユニオン、合同労組、少数派組合など企業の枠をこえた労働組合にとっては、その存亡をかけたたたかいである。(Ku)


鉄建公団訴訟9・15判決
  不当労働行為認定と解雇容認とを「折衷」
       判決を機に国鉄闘争の団結回復を

 九月十五日、東京地裁(難波孝一裁判長)は鉄建公団訴訟について、JR移行時に国鉄による採用差別の不法行為(不当労働行為)があったことを原告の一部を除いて認定し、その慰謝料として原告一人五百万円の支払いを命じつつ、しかし同時に、国鉄清算事業団(その後鉄建公団、現鉄建機構)が原告らを解雇したことは正当であり、雇用存続や賃金等の損害賠償は認められないとする判決を出した。
 この判決の内容は、原告団自身によって「折衷案判決」と批判されている。国労への採用差別を裁判所の判断としては初めて認めたにも関わらず、その三年後の解雇は容認するという論理矛盾の「折衷」となっている。
 鉄建公団訴訟原告団・弁護団・共闘会議は当日、判決が「主として国労に所属していること、ないし国労の指示に従って組合活動を行なっていることを理由として、採用基準を恣意的に適用し、勤務成績を低位に位置づけたことによるものと認められ、不法行為と評価するのが相当」と明確に指摘したことは、原告の十八年間の闘いが正しかったことを証明したものと評価し、また判決が、組合差別による苦痛とJRに採用されるべき期待権の侵害を認め期待権としては比較的高額な慰謝料を命じたことは、原告の名誉回復の一助になると確信するとの声明を発表した。
 同時に声明は、「しかし、再就職促進法に関する法律判断を誤まり、国鉄清算事業団からの解雇に対する解雇無効の主張を認めず、解雇についての不法行為も認めず、賃金相当損害金も認めないなど全般的に極めて不十分な内容である」と判決をきびしく批判した。
 本来、国と鉄建機構はこの地裁判決による国家的不当労働行為の判定を厳粛に受けとめ、今こそ当事者間の解決交渉を開始すべきなのであるが、不当にも判決翌日には控訴した。原告団も九月二七日に控訴し、全面勝利の判決を求めることとなった。
 この判決は、国鉄争議の全面解決へ向けて政府への圧力となるものである。司法が行政の決断を促しているものと見ることもできる。しかし、総選挙で大勝し、郵政民営化法案の次には公務員労働者への大リストラ攻撃を開始しようとしている小泉連立政権が、簡単に国鉄争議の政治解決に応じるとは到底考えられない。われわれは判決の積極面を武器に、国鉄闘争の団結を回復・強化し、国鉄闘争を含めた新自由主義「改革」と闘う広範な連帯をつくり出していかねばならない。
 なお、国労本部は鉄建公団訴訟に対し、裁判闘争と政治解決要求は両立しないなどとしてそれを否定してきた。しかし国労本部側も、「本日の判決も認めた国鉄の責任をあらためて確認するとともに、この判決を機に、戦後最大の不当労働事件というべきJR採用差別問題の国労基本要求に基づく全体解決を」求める、との声明を出している。
 この国労声明に対し、鉄建公団訴訟に敵対しておきながら今更何を言うかという向きがあることも理解できるが、この声明は、国の責任を問う鉄建公団訴訟の意義を国労本部も認めたものと言うべきである。国労本部は国労闘争団員の一部に対する統制処分を解除し、鉄建公団訴訟を国鉄闘争全体の中に位置付けなおすべきである。
 小泉政権の新たな大攻撃を前に、労働者人民は国鉄闘争の団結の回復を含め、闘う連帯の前進を求めている。(W)


9・24イラク反戦世界一斉行動
  30万人がホワイトハウス包囲

 九月二四日、アメリカの反戦団体である「平和と正義のための団結」やANSWER(戦争と人種差別にいま反対を連合)などが呼びかけて、イラク占領を終わらせ、全ての占領軍を撤退させるための行動が世界各地で展開された。
 〇三年のイラク開戦強行の直前から、世界一斉の反戦行動が何回も行なわれているが、今回の最大の特徴は侵略戦争策源のアメリカ本国において、三十万人がホワイトハウスを包囲するなど大きな盛り上がりをみせたことである。
 アメリカでは、昨年イラクで息子を戦死させられたシンディ・シーハンさんの行動も契機となって、イラク撤兵の世論がかってなく大きくなっている。彼女らは、テキサスのブッシュの牧場で大統領に面会要求の座り込みをしていたが、その後八月末からは反戦バスツアーを行ない、二四日のワシントンでの反戦行動に合流した。すでに二千人近くの米兵が戦死し、遺家族や帰還兵士がイラク即時撤退の声を上げるようになっている。そこに、ハリケーン「カトリ―ヌ」被害でのおぞましい人災的状況が、「帝国」の実態を明らかにした。九月中旬のCNNやギャラップ社の世論調査では、イラク派兵は誤まりが59%で過去最高となった。
 9・24は北米を始め、「ストップ戦争連合」呼びかけのロンドンでの行動を中心にヨーロッパ各地で、またアジアでは日本、韓国、フィリピンなどで取り組まれた。
 日本では東京・中央区の坂本町公園で、ワールドピースナウの主催によって約四百名(主催者発表)が集会をもった。
 集会では最初に、許すな憲法改悪・市民連絡会儀の高田健さんが、「9・11の明治公園の反戦行動は大雨にたたられ、今日も雨ですが、わたしたちの意思を示していこう。総選挙後、自民・公明と民主が一致して憲法調査特別委員会なるものが国会に設けられるなど、攻撃が急速に進んでいる。今回の議席数は民意を反映していない。共同の取り組みを拡大して反撃していこう」と主催者あいさつを行なった。
 つづいて、アメリカの「平和と正義のための団結」、フィリピンの「イラク連帯キャンペーン」からの海外メッセージが全文読み上げられた。前者のメッセージは米国世論の変化を強調し、「占領軍を支援する各国政府に、支援をやめ、全ての軍隊を自国に戻させるよう圧力をかける重要な時期です」と訴えている。また後者のメッセージでは、「アジアの仲間に焦点を合わせ」、米英に次ぐ規模の派兵を続けている韓国軍の撤退を求め、韓国大使館へ行進するとしている。フィリピン軍自身は人質事件を機に、すでにイラクから撤退しているが、アキノ政府がブッシュの占領政策を支援していることに変わりはなく、これとの闘いが表明されていた。
 沖縄一坪反戦地主会関東ブロックをはじめ、諸団体が発言した。一坪関東の木村さんは海上新基地阻止にふれ、「九月二日の単管ヤグラ撤去は、沖縄・全国の闘いの大きな勝利です。しかし日米政府は、辺野古での別の案を含め県内移設を何としても押しつけようとしています。支援を一層ひろげ勝利しよう!」と訴え、大きな拍手が応えた。
 集会後、増えてきた参加者は、「すぐもどれ自衛隊」「終わらせようイラク占領」などを掲げて、銀座方面へのパレードを行なった。(東京W通信員)

労働者の主導権でアスベスト根絶を
     労災補償制度の根本的変革を問われる

アスベスト問題が日本全国を席巻して3ヶ月が経った。「クボタ旧神崎工場周辺に住んでいた住民に悪性胸膜中皮腫が発生し、クボタは見舞金を支給するという決断をした」というスクープが当日の夕刊をにぎわしてから、すべてのマスコミは「アスベスト」を取り上げはじめた。石綿対策全国連絡会議、中皮腫・じん肺・アスベストセンター、全国労働安全衛生センター連絡会議などが、これまでの政府の無策を批判し40年間で10万人の日本人男性の死亡が予測されるという最悪の職業病に対して根本的な対策を立てるよう強く訴えた。また全建総連や全造船機械などの労働組合が地域の労災職業病センターと連携して行なった電話相談を行い、そこには鳴り止まない電話が殺到した。
国会では社民党阿部議員の追求に対して厚生労働副大臣はアスベスト対策の非を認めた。これらの動きを反映して政府はアスベスト対策に乗り出し始めているが、それは自己の責任を認めず、逆にアスベスト問題の幕引きを狙おうとしており、根本的な対策とはまったくかけ離れたものである。我々は今幕引きを狙って出されようとしている「アスベスト新法」の狙いをはっきりさせ、それをアスベスト根絶の立場から変革させる闘いにまい進するべきである。
 アスベストの有害性は早くからわかっていた。しかし敗戦後日本石綿協会が誕生し、アスベストの「便利さ」を訴えてきた。アスベストの年間輸入量は50年代から加速度的にのびていき70年代後半にピークに達するが、これは日本石綿協会の「栄華」と表裏一体である。彼らは御用学者を囲いこみ、「アスベストは多少の危険があるが安全に使えば問題ない」とのキャンペーンをはっていった。この当時、さまざまな分野でアスベストは大量に利用され消費された。建築材料、造船、自動車、電車、機関車、配水管などの基幹産業から、ペイント、ベビーパウダー、日本酒にまで。80年代になりヨーロッパなどでアスベスト被害が拡大しアスベスト規制・禁止が広がったことに影響を受けて、またガンのリスクが高いことが世界的に認められるようになりアスベストの規制値が厳しくなったのを受けて、日本も遅まきながら対応を行なわざるをえなくなった。この動きに拍車をかけたのは学校のアスベストふきつけ問題やアメリカ軍のアスベスト不法撤去の摘発を行なった、労働者・市民・科学者のアスベスト全面禁止へ向けた根強い闘いであった。 しかし資本と政府は一部労働組合も巻き込んで、アスベストの一部規制はしたものの「その使用は引き続き是」とする政策をとった。「アスベスト対策の法律」も日の目を見ることがなかった。
当時政府が決意すればアスベストの根本的対策が出来たにもかかわらず、日本石綿協会をはじめとする資本の意向を是として事態を放置したため、現在「公害・職業病としては前代未聞の死者と被災者」を抱えることになったのである。この責任放棄は絶対に許すことが出来ない。
厚生労働省は国民からの大きな怒りに押され、やっとアスベスト被災者を出している企業の全リストを公表し、アスベスト全面禁止も繰り上げて実施すると発表せざるをえなかった。また8月26日には「アスベスト問題への当面の対応」を公表し、9月29日には再改訂を行なっている。各省庁はアスベスト対策の検証を行ない文書にまとめているが、それは自らがやってきた対策を羅列し自己弁護をしているにすぎず、ここまで被害を拡大させた責任を認めようとしていない。また環境省は大気汚染防止法改訂し、国土交通省は建築基準法の改訂を準備している。そして、新たな「石綿対策法」が来年の通常国会をめどに作る動きが活発になっているが、その中身はまだ霧の中にある。
この「アスベスト新法」がどのようなものになるかは、今後の労働者・市民・科学者の闘いのいかんにかかっている。日の目を見ずに終わってしまった過去のアスベスト法案の二の舞にしてはならない。すでに「アスベスト対策基本法」を追求するなど様々な動きが出ており、これらの動きが党派や団体の壁を越え大きく一つのうねりとなるために、わが党は各分野の先頭で闘わなくてはならない。
被災者にとっては「労災申請の時効問題」は死活問題である。なぜならば現労災保険の時効は最長5年であり、石綿によって亡くなったと知らずに死んでいった労働者の遺族の補償を求める声が大きくなっているからである。同時に石綿工場の周辺地域で亡くなった方への補償問題も深刻である。補償問題について従来の労災被災者との間に差別があってはならない。地域住民も、工場労働者も同様の処遇を受ける権利がある。
これを実施するためには日本の労働災害職業病行政、労災保険法の見直しが必要となるだろう。従来の日本の労災統計では、アスベストで死んだ数は正確に捉えられない。なぜならば行政の目は「時効」や「工場の外の被害」を認定しようなどとは夢にも考えていなかったからだ。我々は時効問題の解決は、従来の労災被災者との同レベルの補償にあることを基本におき、労災統計や労災補償制度の変革についても論議を起こすべきだと考える。
真のアスベスト禁止は日本からアスベストがなくなることであり、実施を繰り上げてアスベスト製造禁止をしたからといって被害が少なくなるわけではない。アスベスト漬けになっている日本の社会をどう変えるのか、アスベストの暴露を少なくするためにどうするのか、地震など大災害の対策をどうするのか等々検討することは山積みしている。これらの問題に目をつぶってしまうことは、真の対策にならないことは明らかである。補償の問題同様、アスベスト根絶について実効性のある対策を盛り込む必要がある。
今アジアの国々でアスベストが大量に使われており、その対策をどうすすめるのかはアスベスト被災を受けた国の対策として不可欠のことである。中国、タイ、ベトナムなどでアスベスト使用量は急速に伸びている。日本政府の責任は逃れることが出来ない。アジア的規模でのアスベスト根絶について、日本の果たす役割を明確にしていくべきである
アスベスト問題はまだまだはじまったばかりである。国民的な炎と燃え上がっているこの時に政府・資本の手練手管を許してこの火を消してしまうのか、アスベスト根絶に向けた法制度を整備し、労災補償行政の根本的変換を実施させる流れを強めていくことができるかは、ひとえに日本の労働運動がこの流れの中心を担うことが出来るかにかかっている。さまざまな労働運動の潮流、政党は違っていても大局での一致をはかり、この流れを強めること。アジア人民との国際的連帯を強め、アスベスト根絶の運動をアジア全域の流れに押し上げていくこと。アスベスト問題で労働者人民が主導権を握り、これらの課題のために全力で闘おう。