第四回「六者協議」朝鮮半島非核化などを合意
  米の「平和利用」封殺は不当

 九月十三日に再開された第四回六者協議は、初の共同声明を採択した。しかしながら協議終了まもなく、アメリカ、朝鮮民主主義人民共和国(共和国)との間で共同声明の解釈をめぐり、鋭い意見の対立が発生した。東アジアの平和を勝ち取る立場から、共同声明の中身を検討しよう。
 共同声明の骨子は、@六者協議の目標は、朝鮮半島の検証可能な非核化の実現。A北朝鮮はすべての核兵器および既存の核計画を放棄する。核不拡散条約(NPT)、国際原子力機関(IAEA)の保証措置に早期に復帰することを約束。B北朝鮮は原子力の平和利用の権利を持つ旨を発言。他国はその発言を尊重する旨を述べ、適当な時期に軽水炉提供問題について議論することで合意。C米国は朝鮮半島で核兵器を持たず、北朝鮮を核兵器や通常兵器で攻撃、侵略する意図はないことを確認。D米朝は、相互の主権を尊重し、平和に共存し、関係正常化のための措置をとる。E日朝は、ピョンヤン宣言に従って過去を清算し懸案事項を解決し、国交正常化のための措置をとるとなっている。しかし、その合意内容は具体性に欠け玉虫色になっている。    
 今回の六者協議は七月二十六日に始まり、八月七日にいったん休会、九月十三日に再開されるという変則開催であった。そして休会以前の朝米間の対立点は、共同声明が採択された後もその溝が埋まっていないことを露呈させた。この対立点は、共和国の主張する「同時行動原則」か、米国ブッシュ政権の主張である北の核兵器および核計画の放棄が先決か、という形を取っている。
 ここでの問題点は、休会以前も以後も、米国代表ヒル国務次官補が「平和利用」も含めて全ての核計画を共和国には認めない、という立場を取り続けたことにある。この立場は、ブッシュ戦略=対テロ戦争の一環として構築されており、クリントン政権時の米朝合意(黒鉛炉廃棄と代替の軽水炉の提供)を完全に破棄するものである。米国の物差しで、ある国は原子炉を持ってよい、ある国は持ってはならないなどとするのは極めて不当なことである。電力不足に悩む共和国にとって、まったく呑めない要求をアメリカ帝国主義は突きつけてきたのである。
 しかし六者協議の最終晩に到って、議長国の中国が調停案とも言うべき共同声明の案文を提起することにより、声明文が採択されたのである。この確執は、十一月に予定されている第五回六者協議に持ち越さる事となった。
 以上の点を考慮するならば、われわれは第四回目を迎えて初めて共同声明が採択され、問題が国連安保理に付託されて戦争の危険が高まる事態が当面避けられた点を率直に評価する必要がある。しかしながらこれは出発点でしかなく、朝米間の関係改善、その国交正常化と朝鮮戦争休戦協定の平和協定への転化というハードルはいまだに高いと言わねばならない。ただ米帝にとって、イラク侵略戦争の挫折やハリケーン被害によるアメリカ民衆のブッシュ政権からの急速な離反を見るとき、ドラステックな変化を起こさないとは限らない。ただし現状では労働者民衆は、今回の合意を過大に評価することなく、米帝やこれに着き従いなんら北東アジアの平和に寄与しない日本政府を監視し、共同声明の誠実な履行を求めねばならない。
 また共和国に対しては、その国家戦略上の「核抑止」政策から、原子力「平和利用」の確保を含む平和的手段としての外交の推進という現在の手法への転換を、東アジアの平和にとって好ましいものとして評価することが必要である。それゆえ韓国からの二百万キロワットの電力供給(この案は北の原子炉放棄を前提としている)を断ったことも理解できる。米帝を始めとする国連常任理事国・諸列強の核独占、核物質の非民主的な形での統制に反対する立場からも、このような共和国の立場は支持できるものである。
 しかし我々は、朝鮮半島のみならず全世界から核兵器の完全廃絶を求めると共に、核エネルギーをコントロールできない現代科学の水準から推しても、環境への多大な汚染を招く現段階においては、朝鮮半島での原子力の「平和利用」にも原則的には反対するものである。とはいえ、この課題では日本人民は、まずもって自国・下北半島の核再処理施設の稼動をこそ止めるべきである。
 労働者民衆は今後の六者協議を注視しつつ、核心としての朝米間の和平の実現、そして日朝国交正常化を求め、朝鮮半島の自主的平和統一を求める韓国・朝鮮民衆と連帯し、日米帝の戦争策動と引き続き対決することが必要である。(K)


9・17大阪
 日朝ピョンヤン宣言3周年・日朝国交
 正常化の早期実現を求める大阪の集い

   
歴史を総括し早期正常化を

 九月十七日の午後、「9・17日朝ピョンヤン宣言3周年 日朝国交正常化の早期実現を求める大阪の集い」が、大阪市のクレオ大阪中央で開催された。
 この集会は、大阪の在日と日本人の共同で七月一日に行なわれた経済制裁反対・日朝正常化実現の集会を継承するものであり、実行委員会の主催で労働組合、朝鮮総連、韓統連・韓青同、市民団体など約五〇〇名が参加した。
 オープニングの東大阪朝鮮中級学校合唱部による詩の朗読と合唱で、集会が始まった。
 主催者を代表し松本健男弁護士が、「今日の三年前、ピョンヤン宣言が発表されました。現在の右翼化傾向のなか、わたしたちはアジアの平和と安定のためにも、日朝国交正常化を実現させていかなければなりません」とあいさつ。
 続いて、パネルディスカッション「南・北・日本のそれぞれの立場から日朝国交正常化にむけて」が行なわれた。提言パネラーとして康宗憲氏(カン・ジョンホン、韓国問題研究所代表)、韓東成氏(ハン・ドンソン、朝鮮大学政経学部教員)、北川広和氏(『日韓分析』編集人)のご三人、コーディネーターは長崎由美子さんで、質疑・討論が行なわれた。
 カン・ジョンホンさんは、「韓国から見た日朝正常化」として次のように述べた。冷戦期、南北関係は対立関係であったが、その後キム・デジュン、ノ・ムヒョンの各政権は北の存在を認め、平和共存、和解と協力、北の経済再建支援、大規模な人の往来など「太陽政策」を堅持している。野党ハンナラ党もこの政策を支持している。南北がお互いに認め合っており、統一への道は拓かれつつある。日本と北の国交正常化は、この統一を促進するものとなるだろう。
 ハン・ドンソンさんは、「朝鮮民族にとっての朝日関係改善、在日朝鮮人にとっての朝日関係改善」について述べ、また東北アジアの平和と安定にとっての朝米関係の正常化の必要も強調した。
 北川広和さんは、「東アジアのなかで日朝関係を捉える」として次のように述べた。このかんの経過を分析すると一つの傾向がある。九十年の汎民族大会、日朝三党共同宣言、二〇〇〇年南北首脳会談、〇二年日朝首脳会談など、南北関係・日朝関係が進展するたびに、アメリカは必ず「北朝鮮脅威論」「北の核疑惑」を持ち出して妨害してくる。それはなぜか、在韓在日米軍の存在理由が否定されるからである。また、日朝国交交渉で小泉が訪朝したのは、戦後処理で行ったのではなく、財界の要請に応えて行ったのである。ピョンヤン宣言でいう「経済協力」は一兆円と言われているが、その一兆円のインフラ事業を日本企業に回させるという事である。将来的には、南北縦貫の鉄道・道路・パイプラインなど大きな事業がある。こうした動きは、植民地支配の過去の清算とはいえない。わたしたちは正しい歴史認識を持って、日朝国交正常化を実現していこう。
 集会は最後に行動提起とともに、小泉首相への申し入れ文「ピョンヤン宣言の誠実な履行と日朝国交正常化の早期実現を求める」を大きな拍手で確認した。
                                  (大阪N通信員)