第三回大会 情勢・任務決議


    世界情勢

 前回の党大会は、「ソ連崩壊後の十年の変遷の帰結」としての二十一世紀初頭の世界情勢を、次のように特徴付けた。
 第一に、「米帝を主柱とする国際反革命同盟体制がグローバル資本主義に抗議する全世界民衆を主要な対象とする対決構造に入った」。第二に、「グローバルな構造を獲得した産業が成熟を深め、資本主義的な仕方での社会の存立が困難になる兆しが現れてきた」。第三に、諸国の革命運動は、「国際連帯の構築・強化を一段と問われる」「資本主義社会にかわる高次の社会への希求の増大を背景に、新たな時代の階級闘争陣形を創造する課題に当面する」とした。
 われわれは、前回党大会以降の事態の展開の中で、この諸特徴が依然、情勢の基底に在ることを確認できるだろう。その上に立ってわれわれは、前回党大会において既に指摘されてはいたがまだ相対的に小さかった要素の増大を見ておかなければならない。それは米帝による武力行使の拡大、国際反革命同盟体制の内部矛盾の広がり、米帝の横暴下での混乱の増大である。
 超大国アメリカによる単独行動主義的なイラク侵略がその扉を開いた。米帝に占領されたイラクは、ブッシュによる勝利宣言にもかかわらず、増大する反米闘争の最前線と化した。にもかかわらずアメリカは、イランや、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)などを「圧制の拠点」と呼びなおして武力介入の対象をさらに拡大しようとしている。これと連動して、覇者・米帝から一定距離を置く態度が、欧州や東アジアなどでじわりと強まった。世界的に連携した一千万人を超える人々によるイラク反戦運動が出現した。
 このような情勢は、労働者階級・人民の運動に政治的進出の機会を与える。われわれは、もう一つの社会を模索する質を獲得する課題とならんで、戦略の獲得を課題としていかねばならない。

  1、米帝による武力行使の拡大

 超大国アメリカの絶頂は、「9・11」を利用し「反テロ」を旗印に掲げて強行したアフガン侵攻であった。あの時は、アメリカの侵略戦争の発動に対し、ほとんどの国が批判できず、その前にひれ伏した。アフガンにおける反米抵抗闘争はタリバン政権崩壊後も継続しているが、世界的には無視される。人々は、アメリカ「世界帝国」の出現を意識するようになる。だが、この絶頂は長く続かなかった。国連決議を欠いたイラク侵略戦争の発動が、この超大国を動揺させだしたからである。
 アメリカがイラク・フセイン政権を「悪の枢軸」「ならずもの国家」と非難し、大量破壊兵器を保有していると言いがかりをつけて、この政権を暴力的に破壊した後にイラクに現れたものは、新しい秩序ではなかった。戦争の名分のウソが明らかとなり、勝者による石油利権あさりが始まり、米軍のイラク人に対する虐殺・虐待が横行し、民族・宗派の違いや旧来からの対立を利用し、その対立を拡大させる占領支配策が行われた。その中で反占領闘争が粘り強く展開され始めた。民族自決権を尊重しない態度の不可避的帰結である。米帝は、このイラクに十数万の米軍を釘付けせざるを得なくなり、莫大な戦費が国家財政を圧迫していく事態に陥ったのである。
 イラク侵略戦争の発動は、超大国アメリカに対して仏・独が反発する関係をもたらした。それは、アメリカのイラク侵略が、これら諸国ブルジョアジーのイラクにおける石油等経済利権を脅かすものだったからであり、またこれら諸国民衆の反米・反戦運動の巨大な高まりによるものであった。アメリカは、英国と組んで国連安保理常任理事国の合意さえ無しにイラクを侵略した。日本など自己に追随する諸国を募って有志連合を形成し、占領支配を遂行してきた。しかし侵略・占領の名分が崩れ、イラク民衆の抵抗運動が激しくなるにしたがって、有志連合もスペインが去り、オランダが去りと先細りとなってきている。これは、超大国アメリカの圧倒的な支配的地位は揺るがないにせよ、アメリカの覇権の限界性が明らかとなる過程となった。
 米帝は、二〇〇五年二月の第二期ブッシュ政権発足を契機に、仏・独など欧州との関係修復で国際環境を立て直しつつ、更なる攻勢にでる戦略的方向を確認した。すなわち、「わが国の自由が生き残るかどうかは他国に自由が広がるかにかかっている。世界平和のための最善の希望は、全世界で自由を発展させることだ」と。ここでの「自由」とは、アメリカ多国籍資本による搾取の自由であり、それを保障するブルジョア民主主義であり、米帝の監視と軍事介入の自由に他ならない。
 第二期ブッシュ政権の実践的基軸は、イラクの治安回復、支配秩序の再構築におかれている。つまり、シーア派中心の移行政権とその憲法起草過程とを統制しつつ、スンニ派民衆の武装抵抗を抑え込むことである。だが、イラク国民議会選挙と移行政権形成が、イラク人民の政治統合をもたらすものとしては成功しなかったことから、武装抵抗は鎮静しなかった。それどころか移行政権の形成が契機となって、シーア派民衆の間でも米軍撤退要求が一段と大きくなった。こうした中で米帝は、イラク移行政権の背後にあり、核武装を企てているとにらむ、しかも豊富な石油資源をもつイラン・シーア派国家の解体を、緊要な課題に押し上げ画策している。武装抵抗するスンニ派民衆の後方に位置するシリアに対する圧力も強めている。ブッシュ政権は、帝国主義者の常で、戦線の拡大による事態の打開を目論んでいるのである。
 またブッシュ政権は、共和国の体制を解体の対象に挙げる。ただ当面は、「イラク」を中心とした中東問題に力を割かざるを得ないことから、中・韓・朝・米・ロ・日の六カ国協議をとおして共和国に核武装を放棄させるとしているのである。実際、六カ国協議におけるアメリカ政府の共和国に対する要求の中身は、武装解除したら安全を保障し経済援助もしてやるという、実質的に降伏勧告である。
アメリカは、降伏勧告を受け入れなければ武力行使もやむなしという合意を、共和国以外の六カ国協議参加諸国との間で形成しようと画策しているのである。北東アジアの戦争の危険も高まらずにいない。
 第二期ブッシュ政権は、一期目の事業の継承・完成の道、すなわちアメリカの覇権の世界の隅々までへの拡張、世界の治安を管理する体制への国家再編の完遂を目標に掲げた。米軍のトランスフォーメーションはその集中的表現に他ならない。アメリカは、軍事力の圧倒的優位をテコに、先端技術と資源の独占を一層高めるとともに、新自由主義政策を強制して金融と市場でも一人勝ちをさらに促進しようとしている。だがこの過程において、一期目で既に現出したアメリカの覇権に対する抵抗が、諸国の支配階級の間でも、民衆の間においても、一段と大きなものなって浮上するに違いない。
 
   2、新自由主義グローバリズムの時代における地域的共同体の発達

 アメリカの世界覇権の下で拡大する新自由主義グローバリズムの一方で、それに一定距離を置く仕方で欧州連合(EU)やまだ構想段階だが東アジア共同体など国民経済の枠組みを超えたブルジョア的な地域的共同体が発達する流れが生み出されつつある。
 EUは、加盟二十五カ国を超えた独自の議会・官僚機構と予算(〇四年、約十三兆円)をもち、共通通貨ユーロを発行し、対外的な統一的通商政策を実施する世界最大の単一市場を形成している。
 このEUの基軸国を成すフランスとドイツは、アメリカのイラク侵略に対し「平和主義的」にふるまった。それは、アメリカの侵略によってイラクに蓄積してきたおのれの経済権益が脅かされるからであったが、同時に、アメリカの新自由主義グローバリズムに反対して高まる国内・域内世論を包摂しておくことが、対米関係におけるEUの自立性を確保するためにも、階級関係を安定させ域内で新自由主義政策を推進しやすくするためにも、必要だったからである。EUは、アメリカのイラク侵略・占領をめぐって、これに反対する仏・独と英・伊などに政治的態度が割れた。
 アメリカは、イラクに一大軍事拠点を確保し、イラクの石油権益を獲得した上で、フランス、ドイツなどとの帝国主義同盟の修復に乗り出した。その当面の目的は、イランとシリアの処分である。この米帝による「中東民主化」については、EUの軍事・外交的な独自性・統一性は明確になっていない。
 EUは、共通の軍事・外交、司法・警察の形成を推進しており、この間、EU憲法条約の加盟各国における批准を進めてきた。しかし〇五年六月のフランスにおける国民投票で批准反対が多数を占めたことを契機に、現在EUの統合は失速局面に入っている。EUでは、超大国アメリカと連結するイギリスが主導権を強め、EUの独自性の強化を推進してきた仏・独の政府・支配階級は、域内労働者人民の支持取り付けに腐心せざるを得なくなっている。
 アメリカは、金融、先端技術、石油等資源、農産物など経済的管制高地を制し、資本の多国籍展開で先行していることから、基本的に地域統合に批判的であった。しかし、EUによる大規模な地域統合に対抗するため、一九九二年にNAFTA(北米自由貿易協定)をカナダ、メキシコとの間で結び、現在中南米諸国を加えたFTAA(全米自由貿易地域)の設立を目指している。アメリカ主導のFTAA設立に直面している中南米では、これに反対する労働者民衆の運動が広がっており、この民衆運動の広がりがベネズエラのチャベス政権やブラジルのルーラ政権に代表される社民的政権の誕生をもたらしている。
米帝が本質的に地域統合に反対のスタンスにあることは、現在も変わらない。米帝は、圧倒的な軍事力とその世界展開を背景に、欧州では英帝の軍事力を米軍と一体化してEU独自の政治・軍事統合を阻害し、東アジアでは日帝の軍事力を米軍と一体化して東アジア共同体形成の動きに楔を打ち込み、これらを足掛かりにグローバルな支配システムを再構築しようとしている。
 〇四年、東アジア共同体の形成をめざす動きがASEAN、中国、韓国を推進翼に大きな流れとなった。〇五年末には、東アジアサミットの開催が予定されている。
 東アジア諸国を「共同体」へと突き動かしたのは、一つは、アメリカからの投機資本に依存して起こった九七年のタイに始まり東アジア諸国に波及していった通貨危機である。もう一つは、韓国、中国、ASEANの急激な経済的発展、および、〇四年には日中貿易が日米貿易を凌駕したことに象徴される東アジアの経済的相互依存関係の深まりである。
 東アジア共同体形成の動きは、ASEANと中国、韓国、日本の間で、またASEAN各国と中国、韓国、日本との間で、さらに日本、韓国、中国の間などで自由貿易協定(FTA)が締結されていく形でじょじょに進行している。この中で日、中、韓、朝の政治的な共同性の形成が最大の課題となってこようとしている。それは結局は日本の問題なのである。日本に問われているのは、東アジア、とりわけ中国、韓国・朝鮮に対する侵略・植民地支配の実際の反省・清算と首相の靖国参拝の中止、拉致問題をテコとした共和国に対する侵略政治(体制転覆運動)の停止と日朝国交正常化、領土的野心の放棄、そしてアメリカと一線を画す姿勢の確立である。中・長期的に東アジア共同体が不可避とされる中で、日本の支配階級は東アジア共同体の中でアメリカの代弁者となり、アメリカを後ろ盾に支配的地位を確保しようとするのか、東アジアと共に歩むのか、基本的スタンスが問われずにいない。
 こうした東アジア共同体の形成は、基本的に超大国アメリカを主柱とする諸帝国主義・諸国家の反人民的な連携の枠内で、そこにおける地域的な一定の自立性確保の動きに過ぎない。しかし労働者階級・人民が、いきいきと闘い生活できる政治空間を押し広げ、自己の国際的な連帯のネットワークを発展させていくうえでは、まず自国の支配階級の抑圧や搾取と闘い、労働者人民の諸組織を拡大発展させることを基本としながら、アメリカの新自由主義グローバリゼーションに対する一定のブルジョア的抵抗としてある東アジア共同体形成の動向は、利用可能性のあるブルジョア階級の内部矛盾として対処していかねばならないものである。
 ロシアは、旧ソ連邦の諸国の多くを自己の勢力圏に押しとどめるためにCIS(独立国家共同体)を設立してきた。またロシアは、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンとの間で統一経済圏の設立を目指してきた。しかしこれらは、政治的に極めて抑圧的な古い型の「共同体」で、経済的にも勢いが生まれていない。足元のチェチェン共和国で独立運動が激しく継続し、9・11後の「反テロ」アフガン侵攻を契機に中央アジアへの米軍の駐留を認めざるを得なくなり、またウクライナにおいて〇四年末の大統領選を契機に欧米志向政権が誕生するなど、勢力圏の解体、後退に歯止めがかからない状況にある。
 以上のようないくつかの地域的共同体の外部に、アメリカが「不安定弧」と位置づける中東〜南アジア〜台湾海峡〜朝鮮半島を結ぶ広大な地域とアフリカがある。
 アメリカにとって「不安定弧」は、石油権益と輸送ルートという点で重要であるだけではない。アメリカは、アメリカの安全と権益のため、諸国を動員したこの地域での武力行使において主導権をとり、またそのことを通してEUや東アジアの内部に亀裂を持ち込み、そうすることで自己の世界覇権を再生産していこうとしているのである。こうして、アメリカによってこの「不安定弧」は不断に戦争の犠牲に供せられ、「不安定」であることを運命付けられようとしている。
 アフリカは、債務返済の困難な最貧国や政情不安定な国が多い。またアフリカは、当面、核武装などを画策してアメリカを頂点とする世界支配秩序を脅かす状況には無い。ということでアフリカは、帝国主義諸国から半ば無視されているのである。

   3、労働者民衆の運動

 自分さえ安全で自分さえ儲かれば、世の中が無秩序化しようと、地球環境が駄目になろうと構わないとういう超大国アメリカ(米系多国籍企業)の態度は、アメリカン・スタンダードの新自由主義グローバリゼーションの高波となって全世界を襲った。既存のブルジョア世界支配秩序が確実に崩れだした。崩壊する社会の民衆自身による再構築活動が広がり、その中から新しい社会への胎動が現れてきた。
 この事態は、ブルジョア階級の間においてさえ、その支配的地位を保持する立場からするアメリカ型の新自由主義グローバリゼーションへの危機意識を高め、民衆自身による社会再構築活動を支援し政治的に取り込もうとする傾向を生じさせ、路線的葛藤を引き起こし拡大させた。欧州連合(EU)、「東アジア共同体」形成の動き、中南米の複数の国における社民的政権の登場は、ブルジョア階級内部のこうした危機意識や傾向を色濃く内包してもいた。
 そして共産主義運動こそは、この新しい社会への民衆的胎動と結合できる質の獲得を問われてきたのである。環境、育児、学習、労働、介護、福祉、医療などの在り方が、総じて地域社会の在り方が、実際に事業を組織することを含めて運動の中で問われてきた。失業労働者の仕事と生活を再構築するたたかい、非正規雇用労働者・移住労働者の組織化、地域の市民運動との結合などの課題が浮上し、今日的な階級的団結の在り方が労働運動の中で問われてきた。民衆運動自身が広く深く国際的に結びついて発展し、もう一つの世界を構想し始める中で、国際連帯の現代的在り方が問われてきた。
 とはいえこれらは、主として思想的な質的転換だったといってよいだろう。それ自身は、現実の攻防の必要からいえば、立ち遅れではある。われわれは、いまや労働者民衆の政治的進出への構想を問題にしていかねばならない。
 世界の大勢を俯瞰すると、ウクライナの民主化に象徴されるように、またソ連・東欧の崩壊で山を越えた後も「社会主義」を騙る官僚制国家資本主義の「改革・開放」的解体過程が継続していることに象徴されるように、さらには戦後のケインズ主義的な国家独占資本主義の「改革」もいまだ現在進行形であることに象徴されるように、新自由主義グローバリズムの進撃がまだそれなりに続いている。そこでは新自由主義グローバリズムは「進歩」的装いをある程度保っている。
 しかし、アメリカがアフガン・イラク侵略によってイスラム社会との対決に突入したことで、状況は大きく変化した。とはいっても新自由主義グローバリズムが、イスラムとの比較において時代遅れの烙印を押された訳ではない。大きな変化は、新自由主義グローバリズムの社会破壊的性格が前面化したことにある。それは、イスラム社会の憎悪を掻き立て、イスラム民衆の不屈の抵抗闘争を拡大させ、イスラム原理主義を政治的に伸長させた。他方では、アメリカの新自由主義グローバリズム的攻勢は、パレスティナにおいて、第二次インティファーダの高揚の波が引く流れにも重なって、イスラエルとの和平を推進するアッバス自治政府の登場を条件付け、レバノンにおいて、シリアの影響力の一掃を促進してもいる。
 多国籍展開する金融独占資本の支配(新自由主義グローバリズム)の足元で胎動する労働者民衆の運動がはじまっている。
 世界社会フォーラムはそうした国際運動の一つであり、多様な課題に取り組む人々が国境を超えて大規模に横につながり、共にもう一つの世界を模索する運動である。〇四年一月にインドのムンバイで開催された第四回の時は10万人が、〇五年一月にブラジルのポルト・アレグレで開催された第五回の時には、135ヶ国から二千を越えるNGO、15万5千人が参加した。世界社会フォーラムには、資本側の「世界経済フォーラム」にあいまいな態度を取る部分も参加していること、また政党と軍事組織の参加を除外していることなど若干の検討すべき点もあるが、これらの論点が正しく解決されるならば、欧州や南米をこえて、アジアやアフリカなど世界の各地域に、広範な基盤を持った運動を展望していくことができるだろう。
 04年、日本の労働組合、市民団体は、広範な団結によって世界アスベスト会議を成功させ、草の根の世界的ネットワーク形成に大きな役割をはたした。
 西欧では、〇四年あたりから政府・資本の側が、労働時間延長、賃金抑制の方向へ流れを変えようと攻勢に出てきている。これまでの労働時間短縮への流れが変えられようとしているのである。欧州連合(EU)の東欧への拡大の下で、労働力の安い国への工場移転による大量解雇か労働条件切り下げかと、資本が労働者に迫りだしたのである。これに対し、EU憲法の批准がフランスなどの国民投票で否決されるなど、労働者の反撃が始まっている。
 東アジアでは、新自由主義グローバリゼーションとの闘いにおいて韓国の労働運動が先進的位置を獲得してきている。九七年に東アジアを襲った経済危機に韓国も巻き込まれ、救済策としてIMF主導の新自由主義的経済政策が導入されたことに対して、民主労総を中心とする韓国労働運動はこれと正面から激しくたたかった。これと、南北の自主的平和統一、米軍基地撤去などを求める運動が結合した。その中で民主労働党が、二〇〇〇年に結成され、そして〇四年の国政選挙で十議席を獲得し、労働者を代表する政党がはじめて国政議会への進出を果たした。社会的に責任ある位置を獲得した韓国の労働運動は、今後、韓国階級闘争と南北統一という民族的課題を結びつけた闘いの一層の発展が要求されている。
 中国では、「改革・開放」政策の下で深刻化する党・国家官僚の腐敗、貧富の格差の拡大、開発に伴う農地の詐取などに抗議し、労働者、農民の闘いが各地で爆発し始めている。中国の労働者民衆のたたかいは、中国の体制を揺るがすだけでなく、アメリカを策源とする新自由主義グローバリゼーションに対抗して、東アジア全域に波及するであろう巨大な反撃の波を引き起こすエネルギーを潜在させている。
 こうした中で、韓国や中国など北東アジア諸国の民衆は、小泉靖国参拝問題、歴史教科書改悪問題、領土問題、日本の安保理常任理事国入り問題などを媒介に、アメリカを後ろ盾に東アジアへの敵対的スタンスを強め始めた日本に対して、侵略・植民地支配を実際に反省し東アジアと共に歩む方向へ転換することを求め、起ち上がり始めた。日本の労働者民衆は、これに応えて起ち、東アジア・北東アジアの民衆的連帯を構築していかねばならない。 日本の政府・支配階級が、アメリカとともにアジア侵略へと向かうのか、それともアメリカと一線を画した東アジア共同体形成に向かうのかで内部抗争を強めている状況の中で、日本の労働者民衆の政治的動向は、極めて大きな意味を持とうとしている。
 世界情勢は、大きな岐路に差し掛かっていると言えるだろう。アメリカの覇権は、イラク侵略・占領の泥沼化でその限界を露呈し始めた。もう一つ二つ戦線を拡大するようなことがあれば様々な危機的様相が現れるに違いない。厭戦気分の拡大、財政赤字の肥大化とドルの暴落、「東アジア共同体」など地域的共同体形成の加速と対米非協力の蔓延、等々。共産主義者は、労働者民衆の現代的な団結と政治的進出を積極的に促進していかなければならない。
                                  (以上)


   日本情勢

1、 支配階級の当面の内外政策の特徴

 日本資本主義は、バブル崩壊以後の長期化するデフレ、景気の停滞・不安定局面をいまだ全面的には脱却できていない。国内総生産(GDP)の実質成長率は、01年度−1.1%と98年度以来三年ぶりにマイナス成長となった。その後、02年度0.8%、03年度1.9%とマイナス成長からは脱するが、それは主に中国・アメリカなどへの輸出増大と、IT関連などの設備投資の伸張などによるものである。だが、この回復局面も04年4〜6月期から急速に退潮し、04年4〜6月期マイナス0.6%、7〜9月期マイナス1.0%と2四半期連続でマイナス成長となり、10〜12月期プラス0.2%へ転じるが、依然として、景気回復と景気後退の小さな波がくりかえし、不安定な局面が続いている。 
その最大の要因は、デフレの長期化である。デフレは、地価・株価などの資産価格の下落の長期化、金融機関の不良債権処理の長期化に伴う金融機関の信用創造力の喪失、日系多国籍企業の本格的活動により中国、東南アジアなどからの製品輸入の増大に伴う「価格破壊」、企業収益の改善を狙って大規模な首切り、賃金カット、さらには正規労働者を非正規労働者に置きかえるなど賃金総額の圧縮・削減の持続化など、さまざまな要因の複雑な絡み合いによるものである。
 今日、日本経済の「分極化」は明白である。『法人企業統計』によると、近年、日本企業(全産業)の経常利益は30兆円台を回復しバブル期に匹敵する規模となっているのに対し、労働者階級は大量失業が構造化し、賃金カットや非正規労働者の増大などで生活はますます苦しくなっている。そのうえに、世界経済に直接リンクした多国籍企業の利益伸張は記録的水準であるが、他方、雇用の約70%を占める国内産業では低迷が続き、賃金を含めて「価格破壊」が進行している。統計数字で示される好況感は、大多数の労働者にとっては、無縁のものなのである。
 ここにきて、小泉政権の「構造改革」なるものは、一方で、元来が新自由主義路線に基づくが故に、労働者人民に「痛み」を押し付けるだけの反動的なものであることがますます大衆的に明らかになってきている。他方では、「構造改革」なるものが、小泉内閣と族議員・高級官僚との妥協により推し進められているが故に、行財政改革そのものが行き詰まりを見せつつある。このことは、国債発行の年間30兆円を超えないという公約の恥知らずの反故、道路公団改革の見事なまでの破産、厚生官僚に丸投げした年金制度改革の失敗、公務員制度改革の引き伸ばしと労働基本権付与への敵対、体質化している中央集権主義により進捗しない地方分権、「構造改革の本丸」とした郵政改革では、新たな公共サービスの確立ではなく巨大な金融資産の民間資本への開放という狙いを持って、守旧派との徹底した妥協など、取り上げてみれば枚挙にいとまもない。
行き詰まりは、とりわけ行政機構の改革と財政改革に顕著である。前者の代表例は、道路公団改革である。道路公団改革は、財政投融資の出口部分である「特殊法人改革の手本」と宣伝されたが、結果は周知のように、族議員や官僚との妥協に終わり、なんらの改革にもならず、「無駄な道路をつくらない」、「巨額債務の返済」なる主張も見事に破産した。後者の財政改革は、改革どころか、消費税、定率減税の廃止など大衆増税による一時しのぎの方向性が歴然としている。04年度末現在、国の借金は781兆5517億円に上り、地方の借金と合計すると、1000兆円を突破したのは、確実とみられている。中央政府の財政は、一般会計(05年度の当初予算で82兆2000億円)だけではなく、他に特別会計(重複分を除いて同じく205兆2000億円)、特殊法人など政府関係機関(同4兆6000億円)の三つの会計で成り立っている。したがって、一般会計の「数字合わせ」だけでは、財政改革とはならない。税収が歳出の半分にしか過ぎない構造を含めて、財政の全面的かつ抜本的な改革が厳しく迫られている。
小泉政権は、超大国アメリカの一定の支配・統制下に在ることにより、また独占ブルジョアジーの政治的代理人であるという階級的性格により、国際資本のグローバリゼーションに対応して、規制緩和・撤廃を次々と推進し、自由な資本活動の枠を拡大し労働者の権利を剥奪している。だが他方、政権運営が官僚と自民党などに依拠する政権であるため、行財政改革が妥協と中途半端性に終わり、中央集権的性格が根強い伝統的な官僚主義を再生産しているのである。
しかし、小泉政権はその政治的本性から、権益を世界的に拡大しつつある日本の多国籍企業の利益を政治的軍事的に保障するために、超大国アメリカが日本に要求する軍事的役割を積極的に受け入れ、自衛隊の海外活動の強化、9条を眼目とする憲法改悪策動、そしてこれらに連動し支配秩序を強化再編するための教育基本法の改悪策動などを、近年、強力に推し進めている。
日本帝国主義の基本動向において、党第二回大会(02年夏)いらいの最も大きな変化は、自衛隊の海外戦地派兵である。すでに、91年の湾岸戦争後の掃海任務のための海上自衛隊の出動や、92年PKO等協力法の成立などにより、自衛隊の海外派兵の道は開かれていた。それが、01年10月のテロ特措法の成立、同年11月の海上自衛隊艦艇のアラビア海出動により、初めて戦時派兵という事態に発展する。そして、米英帝国主義などの大義なきイラク侵略を支援するために、03年7月にイラク復興支援特措法が強行採決され、04年1月に同法に基づくイラク派兵のための承認案件がやはり強行採決され、陸海空自衛隊は戦地イラクに派兵された。
 アフガニスタン侵略、イラク侵略に便乗した日本帝国主義の戦時派兵は、また当然にも国内の戦争遂行体制のための有事法制を促進しつつ、日米の共同戦争体制の構築をちゃくちゃくと推し進めることとなった。
 昨年12月に小泉政権は、今後十年間の安全保障政策の基本方針を示す新たな「防衛計画の大綱」を閣議決定したが、そこでは今や解釈改憲で誤魔化してきた自衛隊の任務、性格、体制が公然と転換し、帝国主義者たちが長年狙ってきた海外派兵の体制が全面的に実現されようとしている。かつては、米軍の支援を前提としつつ、「必要最小限度の基盤的防衛力」によって、日本領域の防衛を軍事目標としていたのが、新防衛大綱では、「国際的な安全保障環境を改善し、我が国に脅威が及ばないようにする」という目標が、領域防衛という目標と同列に立てられるようになった。この結果、自衛隊の海外任務は、付随的任務から本来任務に格上げされることが明確となり、「派兵恒久法」の成立も画策されている。従来唱えられていた「専守防衛」は、いまや名実ともに放棄されたのである。
 「国際的な安全保障環境の改善」は、米帝の統制下で日米が戦略目標を共有して役割分担をするものであり、日本としては中東から東アジアに至る地域において積極的に関与する方向である。そして、日本周辺の情勢に関しては、朝鮮民主主義人民共和国を「重大な不安定要因」とみなすと共に、中華人民共和国についても、近年の軍事力の近代化や海洋での活動範囲拡大などを指摘し、警戒感を明記している。日米帝国主義の戦略目標の共有は、今年2月の日米安保協議委員会(2プラス2)でも合意されている。憲法九条改悪、集団的自衛権の行使を射程に入れた日本帝国主義は、アメリカとの協力関係を一層強め、「世界の中の日米同盟」を明確にしているのである。
小泉政権は、新防衛大綱の閣議決定にあわせ、「武器輸出三原則」の大幅緩和、すなわち実質的な破棄を行っている。「武器輸出三原則」の見直しは、すでに以前から経団連などによって提言されてきたが、小泉政権は軍事路線の大転換にあわせて、独占資本のこの要求に応えたのである。
憲法改悪の動きについては、自民党や経団連を先頭とする改憲勢力は改憲の世論作りの段階から、改憲の具体的着手の段階へ入っている。改憲国民投票法案の成立を計りつつ、憲法「改正」案の発表を競い合っている。
日本帝国主義の軍事路線の転換と憲法改悪策動は、単にアメリカ追随、アメリカ一辺倒だけを理由としているものではない。日本帝国主義自身の利益と狙いもまた秘められているのである。
21世紀の前半は、中国、インド、東南アジア諸国などの経済が目覚しく発展するという見通しが、多くの国際機関によっても行われている。その中で、97年のアジア通貨危機を教訓に、北東アジアと東南アジアを含めた地域統合としての東アジア共同体を形成する動きが近年活発になり、東アジア諸国間のFTA交渉のみならず、今年から東アジア・サミットも開催されることになった。東アジア共同体形成においては、日本と中国、それに域外国ではあるがアメリカも加わり、熾烈なヘゲモニー争いが展開されている。
日本帝国主義は、この東アジア共同体の形成において、従来のようにアメリカ帝国主義の鼻息をうかがっているだけでは、済ますことのできない状況におかれている。それでは、東アジア共同体の形成にイニシャチブを発揮できないか、あるいはそれから弾き飛ばされて孤立するだけだからである。というのも、アメリカ帝国主義がいくら唯一の超大国といっても、経済統合の側面を持つ東アジア共同体に地域外のアメリカは加わることはできないからである。したがって、日本帝国主義はアメリカ依存に終始するわけにはいかず、日本自らの外交力を強め、十全に発揮させる点においても、その背後の規定力としての軍事力の強大化とりわけ自衛隊の海外活動の能力強化が不可欠になっているのである。
当面する日本帝国主義の外交路線は、日米同盟最優先によってアジアで孤立するのか、それとも日米同盟を相対化し東アジア共同体形成に積極的に参画するのか、あるいはまた、不確定戦略によって場当たり的な対応に終始するのか―― 支配階級の路線選択は、ますます厳しく問われる状況になってきている。

   2、労働者階級人民の状態と要求

 グローバリズムという世界的傾向に対応した日本資本主義の「構造改革」は、そのしわ寄せを全面的に労働者人民に押し付けている。
 大規模な首切りやリストラで、完全失業率は政府統計でも95年に3%台、98年に4%台と急テンポで上昇し、01年7月からは5%台(300数十万人)となる。01年5.0%、02年5.4%、03年5.3%という高水準である。04年は4.7%とやや緩和されたが、依然として高水準である。雇用動向で深刻な点は、失業水準が「高止まり状態」であること、とくに高齢者と若者の失業率が高いということである。そして、この間の首切り・リストラで、正規労働者が賃金・労働条件の劣悪な非正規労働者に置き換えられ、その非正規労働者の労働者全体に占める割合が、35%前後にまで増大していることである。大量失業者の構造化、非正規労働者の増大は、首切りを免れた正規労働者にも大きな影響を与えている。すなわち、労働密度の強化、賃金・労働条件の劣悪化などである。
 国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、「民間企業に一年を通じて勤務した給与所得者」の03年の一人当たりの平均給与は、444万円で、前年よりも4万円減少している。これで平均給与の額は、97年(467万円)をピークに6年連続して減少している。また、非正規労働者とくに女性労働者や中小企業の労働者の賃金は一層劣悪なものとなっている。
 多くのコミュニティユニオンはパート労働者の待遇改善要求の柱の一つとして時給1200円以上の要求を打ち出している。これは年間2000時間働いたとしても年収240万円にしかならない賃金である。まさに世に言う「年収200万円」時代が到来している。非正規労働者や中小企業の労働者の多くは、いまこのレベル以下の賃金で働かされている。
 雇用不安、賃金の連年の減少などで、勤労者世帯の実質消費支出も98年いらい6年連続で減少している(対前年比)。04年はようやくプラスに転化したが、それでも同年7〜9月期より再びマイナスにもどっている。さらに近年は家計貯蓄率(所得に占める貯蓄の割合)も、急速に落ちてきている。国民経済計算によると、最も高かったのが70年代なかばの約23%であったが、その後一貫して低落し、特に改定された国民経済計算(93SNA)でみると、2000年には5%台にまで急落している。これは、急速な高齢化がベースにあるが、それに加え、大量失業・賃金低下などで収入が落ち込み、貯蓄もままならないのである。それどころか、貯蓄の取り崩しさえ近い将来には十分予想しうるのである。
 新自由主義路線の下で、資本活動は情け容赦なく弱肉強食を推し進めている。そしてこの結果、あらゆる分野でとてつもない格差が形成されている。たとえば、企業規模間の格差では、財務省の「法人企業統計」によると、資本金10億円以上の企業と1000万円未満の企業との収益格差は、90年度には前者が後者の4.3倍であったのが、03年度には24倍に拡大している。なかでも、収益格差の拡大は、世界経済に直接リンクした大手多国籍企業とその他の国内企業との間で顕著である。企業収益のこのような格差増大は、当然にもそれぞれの規模に所属する労働者に影響する。格差は、企業規模別、業種別、地域別、性別などの指標でみれば、歴然たるものである。社会諸分野での複雑な格差と差別の再生産をみれば明らかなように、独占資本による重層的な支配構造は、今日もまた新たな形で再生産されている。
 雇用不安、賃金・労働条件の悪化、さらには年金など社会保障の空洞化による将来不安など、厳しい状況に追いこめられた労働者階級は、切実に現状の生活悪化と将来不安からの脱却を求めている。だが、大企業労組など労資協調・労資一体の企業内労組が多く結集する連合は、労働者階級とくに下層の労働者の生活要求に応えていない。それどころか、大企業労働者の首切り、賃金カットさえも食い止めることができず、逆にそれを手助けし資本の国際競争力強化なるものに協力し、労働組合に対する社会的信頼をさらに低下させている。企業内労組の破産は明白である。今こそ、個人加入制のゼネラルユニオンの形成や、地域ユニオンの発展が切実に求められている。
 弱肉強食の資本活動は、労働者階級に襲いかかっているだけではない。農民や自営商工業者もまた全般的に没落させられている。
 農林業も含めた自営業主とその家族従業者をあわせた自営業従業者の数は、1980年代の10年間で約170万人(年平均17万人)、1990年代で約320万人(同32万人)、2000年以降の4年間で150万人(同38万人)と、近年の減少傾向はますます激しくなっている。この結果、1989年に1427万人いた自営業者は、1999年に1110万人、2003年に957万人(農林業227万人、非農林業730万人)と、ついに1000万人規模を割るに至っている。支配階級は、かつてのような与党の選挙票目当ての保護政策もグローバリセーションや財政赤字で困難となり、今や自営農家や小規模零細商工業者を切り捨てる方向性を明確に強めている。
 農業においては、一方で自営農家の没落や離農が進み、他方で資本家的経営も含めた大規模経営がじょじょに拡大している。いわゆる「昭和ひとけた世代」のリタイヤで、離農は格段に進展する。これまでの農政により農業は荒廃してきたが、このうえ、資本の参入で更に進展するであろう。農村での耕作放棄地の増大、都市での「シャッター通り」の増大は、今日の中産階級の没落を象徴している。
 新自由主義が推進する弱肉強食は、労働者人民に失業の不安、デフレ下の生活不安、年金など社会保障の空洞化による将来の不安などを押し付けるだけではない、多国籍企業の海外権益をめぐって、戦争の不安をも引き起こしている。小泉政権のこの間のイラク侵略への加担、自衛隊の戦地派兵は、戦争への不安を現実のものとし、広範な人民のイラク侵略反対、自衛隊派兵反対の反戦闘争が全国各地で高揚した。だが、労働組合の参加が少ないこと、活動の計画性・持続性の弱さなどの問題点も存在している。
 資本のグローバリズムは、人々の生活や命さえも脅かすものであり、人々の日常を支える地域をも破壊する。すでに高度成長期以降の大量生産―大量消費―大量廃棄の生産方式、生活様式は、自然を破壊し、諸個人のアトム化を促進してきた。新自由主義の弱肉強食は、これを解決するどころか、人々を資本の競争に、世界的規模での激烈な競争に巻き込むが故に、さらに促進する。
今日においては、資本のグローバリズムに対決し、地域を拠点に、自然破壊に反対し、諸個人の格差と差別による分断に反対し、自然との共生、諸個人の自立した連帯、平等と相互扶助の地域生活を再建することが、強く求められている。そのためには、自然破壊と闘い、原発と闘い、さまざまな差別と闘い、福祉・教育・医療などの改革をもとめる住民団体、市民団体などと労働組合は、団結し、連帯し、共同の闘いと共同の日常活動を発展させることが求められている。

  3、諸政党の性格と相互関係

 近年の諸政党の再編と消長は、主要には新自由主義、安保・自衛隊問題、憲法評価などを軸に展開されている。
自民党は、55年体制下で政権を独占し、独占ブルジョアジーの利益を代弁してきたが、内外情勢に迫られて93年に小沢派が脱党して分裂した。その後、細川反自民政権の一時期下野したが、すぐに社会党などと連立し、政権に復帰した。以降、自民党内では、旧来のケインズ主義・利益誘導型政治に固執する部分と、規制緩和・市場原理重視の新自由主義を推進する部分との分岐が進んでいる。だが、米英帝国主義などのアフガニスタン侵略、イラク侵略を支援しつつ、自衛隊の海外戦地派兵を強行し、日米同盟の強化拡大を推進し、さらには憲法第9条を改悪する方向性では、大きな不一致は無い。
しかし、自民党は再び与党に復活して以降は、連立なくしては政権を維持できなくなっている。そして、経団連など資本家団体の強い支援にもかかわらず、新自由主義が浸透する新たな時代に即応した新たな支持基盤を形成できず、不安定な傾向を露呈させている。
民主党は、自民党以上に新自由主義を推進しているブルジョア政党である。民主党は、03年の総選挙、04年の参議院選挙で議席を伸ばし、二大政党制的状況を初歩的に作り出している。だが、自民党以上に寄り合い所帯の性格が強く、安保・自衛隊問題や憲法評価などでは、基本的な見解の統一が必ずしも形成しえていない。経団連は、自民党は評価するが、民主党に対する評価は厳しい。連合は、基本的には民主党を最も評価し、支援している。
公明党は、創価学会幹部の指導に従う小ブルジョア政党である。公明党は、従来、「平和の党」「福祉の党」を売り物にしてきたが、近年、とくに与党になってからは、自民党と共に自衛隊の戦地派兵や有事法制の成立などを推進し、実質的に「戦争の党」になっている。年金問題では、官僚の策動に乗って「百年もつ年金制度」などと虚偽と欺瞞の宣伝を行い、「福祉の党」でも落第している。公明党は、与党になって、 小ブルジョア政党の本質を露呈させ、ますます日和見主義とポピュリズムを強めている。
日本共産党は、55年体制下での政権与党の利益誘導型政治に反発しつつも、ケインズ主義政策に対する改良主義的分派としての性格を色濃くもち、また、抑圧民族の民族主義を克服できない小ブルジョア的政党である。社会党が安保・自衛隊問題で路線転換し急速に凋落した後、その離反票の受け皿として一時期勢力を拡大した。しかし、そのセクト主義・官僚主義の組織体質は依然として変わらず、議会主義路線にもとづく現実主義政策により、連合政権段階での安保、自衛隊、天皇制などの容認をおこない、「革新政党」の色あいさえも薄めている。04年1月の党大会では綱領全面改定を行ない、その議会主義と改良主義を綱領上でも明確にした。
社民党はその前身の社会党時代に、総評の解体で強固な支持基盤を失い、村山政権時代には安保・自衛隊問題で大きく路線転換し、党勢を決定的に凋落させた。その後、護憲と女性の利益などを押し出し、党勢の回復をはかったが、秘書給与問題でさらに打撃を受け、新たな時代に向けた展望も出せず党存続の危機にさらされている。
左翼諸党派は、未だ復調しているわけではない。だが、その一部が連携し、労働組合運動の階級的再建や、反原発反自然破壊などの社会運動、さらにはイラク反戦闘争などの大衆的闘いに立脚しつつ、新たな階級闘争の発展を模索している。
 資本主義的なグローバリズムの下で、支配階級は明治維新以降のアジア侵略を教訓としないで、多国籍企業の権益を政治的軍事的に保障する軍事・外交路線を強めている。ほとんどの議会諸政党は、新自由主義がもたらしている弱肉強食による諸階級層の格差・分断と地域社会の崩壊、不十分な社会保障や少子高齢などとともに拡大する社会的諸矛盾などに対して、より広範な下層の労働者人民の立場にたって対処しえていない。いまや小泉政権に対する幻想も大きくはがれつつあり、新たな政界再編の兆しもみえている。
左翼諸党派は、自民・民主のブルジョア政党の反人民性を明らかにしながら、労働者人民の自主的な社会政治運動の大衆的な発展に貢献しつつ、相互の連携や団結を強化することが求められている。支配階級の軍事路線の転換、憲法改悪に対決し、左翼諸党派の広範な団結と共同作業が切実となっている。                                              (以上)


     任務


 以上の世界・日本情勢をふまえつつ、わが党は、向こう数年間の党の任務を次のように定める。

1、 当面の「四大任務」

 わが党は向こう数年間において、右への政治の流れを止め、日本の政治の転換を闘いとりつつ、日本革命に勝利できる強大な革命政党と全人民の統一戦線またその基礎としての地域的統一戦線を形成する基本的任務の下に、以下の諸任務を「三大任務」として闘いぬく。
 @党は、第一期三中総・労働組合決議、今大会での労働運動決議などを指針として、ユニオン・個人加入制中小単産を主力とし地域社会に根ざした日本労働運動の新しい潮流を強力に支援し、その前進を具体的に実現するために闘う。
 A党は、第二回大会・憲法闘争決議などを指針として、憲法改悪反対運動への支援を強め、改憲阻止の歴史的勝利をかちとり、それを通じて日本の労働者人民の闘争隊列を強化するために闘う。
 B党は、自らの党建設に力を入れつつ、日本の左翼政治勢力の広範な共同を支援し、左翼の再生・結集軸を具体的に実現するために闘う。また党は、この左翼結集の闘いを進めつつ、同時に共産主義者の団結・統合を引き続き独自に追求する。
 C国際的任務として党は、アメリカ帝国主義に反対する全世界の労働者階級人民・被抑圧民族人民と固く団結し、米帝と他の帝国主義・諸政府などとの矛盾を利用しつつ、米帝を孤立させ、その戦争政策を挫折させる闘いを重視する。この観点から「東アジア共同体」形成の動きに対処し、東アジアでの平和構築と人民連帯の条件を有利にしていく。党は、日本帝国主義の侵略加担に反対して自衛隊イラク撤退をすみやかにかちとり、「有志連合」に重大な打撃を与え、米帝の孤立を促進させる。党は、朝鮮、中国への軍事介入、侵略戦争の策謀に断固反対する。党は、日米安保のグローバル化に反対して全世界人民の連帯を対置し、北東アジア諸国の労働者人民の団結をとくに重視しておしすすめる。
 「四大任務」において、カナメとなる任務は、労働運動を基礎とした党建設の推進、すなわち@の任務である。

2、 党と労働者階級人民の闘い

 D党は、日本の労働組合運動において、企業別の枠を超えた個人加入の地域ユニオンや中小単産の運動を最も重視し、その発展のために力を入れる。連合内外での地域ユニオンの全国的ネットワークの強化、個人加入制中小単産の前進とゼネラル・ユニオンへの発展を引き続き支援する。党は、増大する非正規労働者を、これら新しい労働運動の潮流に大規模に引き入れることに特に配慮する。党は、既存の民間企業別労組や公務員など公共サービス労組での工作を、これら個人加入労組での工作と結びつける。
 E党は、公務員などによる公共サービス労組の運動を重視して闘う。自治体の労働組合運動では、労働者人民の地域的統一戦線の中軸となるよう工作する。教職員の労働組合運動では、父母・住民すなわち地域の労働者人民との結びつきを強め、当面、教育基本法改悪反対の先頭に立てるようにする。郵政の労働組合では、特に非正規労働者の組織化を重視し、当面、郵政民営化の攻撃を粉砕する。また、公務員労働者への争議権・団体交渉権など労働基本権の完全な付与を要求し、それを欠いた公務員制度改革に断固反対する。
 F党は、寄せ場など日雇労働者の労働組合運動の発展、およびその全国的団結のために引き続き闘う。
 G党は、野宿労働者・失業労働者の運動を、引き続き強く支援して闘う。「ホームレス自立支援法」の空洞化を許さず、公的就労をカナメとした要求実現をかちとる。自前の仕事づくりを強化する。野宿労働者・失業労働者と就業労働者との分断を許さず、あらゆる契機においてその連帯を促進するために闘う。
 H党は、人を大切にする、差別のない地域づくりとその為の闘いを、福祉、介護、医療、労働条件、教育、育児、自然環境等々にわたって推進する。そこにおいて、労働運動と市民運動の協力、NPO、協同組合の発展を促進する。
 I党は、決定的情勢に入りつつある憲法闘争を重視し、その勝利のために闘う。党は、全国各地で憲法改悪反対運動との結びつきを強める。党は、地方組織・細胞レベルから憲法闘争への関与を意識化し、党中央の調整・指導機能を強める。改憲阻止の広範な共同戦線の形成を支援し、党はその一翼を担って闘う。直面する闘いでは改憲国民投票法案の策動を粉砕し、当面、憲法改定案を国会に提出することのできない政治情勢の実現をめざす。改憲発議が強行された場合は、国民投票に完全勝利するために全力で闘う。
 J党は、第二期二中総・三中総の各反戦決議などを指針として、自衛隊イラク派兵の中止と即時撤退を引き続き求め、日米安保体制のグローバル化と在日米軍基地の強化に断固反対して闘う。在沖米軍基地の日本国内たらい回しに反対し、米本国への撤去のために闘う。有事立法体制との闘いでは、「指定公共機関」など関連労働者の独自の闘いを重視する。
 K党は、沖縄民衆の軍事基地撤去の闘いを強く支持する。とくに、重要局面にある名護海上基地阻止の闘いを全国から支援し、完全に勝利するために闘う。普天間基地の即時返還を求め、あらゆる類の沖縄県内移設の策動に断固反対する。
 L党は、朝鮮民主主義人民共和国への経済制裁に断固反対し、日朝国交正常化交渉の即時再開を要求する。党は、朝鮮民主主義人民共和国に対する敵視政策および朝鮮人民に対する排外主義と闘う。朝米交渉の再開による、核問題の公正かつ平和的な解決を求める。
 M党は、朝鮮半島・東アジア・全世界の労働者人民と日本の労働者人民との連帯を強め、その共同闘争の発展のために闘う。とりわけ日韓の労働者階級人民の連帯を、あらゆる課題で重視する。自然環境および労働者の生活と権利を破壊する資本のグローバル化、投資・貿易自由協定に反対し、労働者人民の運動のグローバル化を前進させる。
 N党は、大規模「公共」事業・軍事利用・環境破壊に反対する全国各地の反空港闘争と、その全国的連携を支援する。特に成田空港での暫定滑走路延伸阻止、静岡空港建設での強制収用阻止に勝利する。
 O党は、女性解放運動、障害者解放運動、部落解放運動など、あらゆる反差別闘争を支持する。党は、右派勢力からするジェンダーフリー批判と闘い、女性の一層の社会進出を支持するとともに、女性差別を構造化した賃金体系、労働条件などを変革する為に闘う。障害者運動では、地域での自立的な障害者運動の支援を基本として闘う。「障害者自立支援法案」など福祉サービス切り捨てに反対し、また、「医療観察法」の廃止と保安処分施設作りの中止を求める。部落解放運動では、狭山第三次再審闘争を支援しつつ、地域での反差別共同戦線の形成を重視する。
 P党は、社会保障と地方分権の確立のために闘う。「年金改革法」を廃止し、定住外国人を含む皆年金制度の新設を求める。これに関連し、消費税率アップを断固阻止する。「三位一体改革」による社会保障切り下げに断固反対し、財源移譲を伴なう地方分権を支持しつつ、労働者人民の自治体での闘いを強化する。

3、 党建設と左翼結集のための闘い

 Qわが党自身の党建設、党性強化と党勢拡大を、力を入れておしすすめる。特に各地方組織で党勢拡大の活動を具体的におしすすめ、それを指導する党中央活動を強化する。現代修正主義、社会民主主義などとの党派闘争を堅持するとともに、多様な左翼的・民主的勢力と広く共同する柔軟な活動を堅持する。
 R党は、左翼の共同を具体的に支持・支援する活動を強める。左翼政党・政派・個人による各種の共同形態を支援し、その合意の発展を支持する。政治内容では、労働者人民の運動の現代的発展に立脚し、北東アジア・東アジアの労働者人民の連帯を追求するなどの一致点を重視する。左翼結集の前進の中で、政党・政派間の統一戦線(政策協定など)の可能性を考慮する。
 S党は、共産主義者の団結・統合を引き続き追求する。二回大会決議における統合協議の方法・観点を堅持し、また左翼結集に参加する政党・政派・個人の中から、団結・統合の対象が生まれることを考慮する。
 以上の、三方面の闘いにおいて当面カナメとなる闘いは、共同あるいは統合の責任ある主体となる我が党自身の理論政策的・組織的な強化、すなわちQの闘いである。そのうえで党の指導部は、共同あるいは統合の前進に有利な状況がある場合は、それに関する諸方針を機を逸さずに決定し、果断に実行していく。                                         (以上)


労働政策決議など武器に
  地域的統一戦線の実現へ

                     首都圏委員会

 今年七月の我が党の第三回大会は、全国的なゼネラルユニオンの形成など個人加入の新しい労働組合運動を日本労働運動の主流に押し上げていく基本方向の下、当面の労働組合運動の諸政策を決定した(前号掲載)。それは、我が首都圏党にとっても歓迎すべきことである。
 首都圏委員会は、この決定方針に基づいて当面、同志が参加する各地域ユニオン運動の拡大と発展のために奮闘する。そして首都圏各地方のユニオン運動の発展にも必要な努力を行ないたい。また、ゼネラルユニオン形成などの方向と関連づけて、公務員や大企業の労働者が何をすべきか、そのことについても実践を積み上げていきたい。
 我が党の専門部「労働運動部会」は、今回の政策決議を勝ち取るために要となって活動してきた。今後は、方針をどう具体化するかが問われてくる。首都圏党は、労働運動部会にも協力を惜しまず奮闘したい。
 また大会は、情勢・任務決議を採択した。首都圏党は、その「四大任務」にのっとって闘いを前進させる。首都圏の同志たちも、イラク反戦・自衛隊撤退、憲法改悪阻止をはじめ多くの運動の中で、様々な人々と出会いながら活動をすすめている。労働者・市民のネットワークをはりめぐらし、地域づくりをも視野に入れた活動が始まっている。首都圏党はその取り組みを前進させ、地域的統一戦線の実現のために奮闘する。
 首都圏の三千万労働者人民とともに、日本革命への道を邁進しよう!


これまでの闘い基礎に
  「四大任務」の遂行へ

                関西地方委員会


 第三回大会が成功裏に終了した。関西からも代議員が参加し論議を尽くした。
 今回は「情勢・任務決議」のほか「労働運動決議」が決定された。「労働運動決議」案作成への過程は必ずしも関西は十全とはいえなかったが、学習会を開き大衆的な討議を経てきたので、決定は喜ばしい限りだ。
 「労働運動決議」で述べられた企業の枠を超えた労働者の団結、ユニオンの推進など、関西でも労働運動にかかわる党員は、これから積極的に引き受けていくことになるだろう。       更に、野宿労働者の反失業闘争と日雇い労働者の労働運動の再構築、非正規労働者の団結問題の方向の方針提起は、釜ケ崎での半失業闘争の更なる発展を、関西地方委員会総力で取り組んでいくことが求められていると受け止めている。
 また論議で追加されたJR西日本事故の問題での労働者・労働組合の規制緩和に対する闘い、安全問題に対する取り組みについての闘いの視点は、関西で実践的に深めていかなければならないだろう。期せずして関西から明らかになったアスベスト問題も、労働運動にとって避けて通れない問題である。
 「四大任務」として、確定した憲法闘争、戦争政策を阻止する戦い、そして左翼の再生、結集の課題については、これまでの関西での共同行動の基礎と信頼を更に深め、積極的に発展させていくことが、我々に問われていると考えている。関西地方委員会は先頭に立つ決意である。