自治労 第76回定期大会
  「自衛の軍」容認は阻止さる
    「平和基本法」制定方針に批判高まる

 自治労は、八月二三〜二六日に鹿児島市で定期大会を開いた。今大会の注目点のひとつは、連合が「九条改正」見解案に踏み込むなか、自治労が憲法闘争でどのような態度・方針を決定するかであった。
 (連合中央は七月十四日、@九条を改正し、かつ「安全保障基本法」を制定する、A九条改正はあえて行なわず、「安全保障基本法」を制定する、との両論併記の「国の基本政策に関する連合の見解」案を発表し、十月の定期大会で結論を得るとしている。Aの案が、このかんの自治労見解を考慮したものと言える)。
 自治労は、一昨年の定期大会で決定した運動方針に基づき「国の基本政策検討委員会」を設置していたが、今年五月その検討結果が中央執行委員会に報告された。一九九三年以降の連合の安全保障政策議論において、自治労としても方針をもって臨む必要に迫られ、同年の札幌大会で「憲法と現状の矛盾を解決するために、…自衛隊の段階的縮小・改組…を骨格とする安全保障基本法の制定を要求する」という方針を決定したものの、その中身は未定のままであった。しかし、改憲の動きが急速に進むなか連合は〇二年二月に「国の基本政策検討作業委員会」をスタートさせたため、自治労としても早急に中身を詰める必要から検討委員会を設置し、その最終報告に至ったものである。
 自治労「国の基本政策検討委員会」報告の内容は、第九条を堅持し自衛隊は違憲であると認識するものの、「自衛隊の縮小と分割・再編の道に踏み出すために、新たに『平和基本法』(仮称)を制定し」、自衛隊を@国土警備A国際貢献B災害救援・復旧のそれぞれ別個の三組織に再編し、段階的縮小を進めるというものである。国際貢献は非軍事組織とし、「PKO参加五原則を満たした非軍事的分野での参加に限定される」としている。国土警備は「国際法上明記されている主権国家の『個別的自衛権』を前提とした『最小限防御力』」とし、「『最小限防御力』とは、領土・領海・領空をこえて戦闘する能力を持たない国土警備に限定した組織によって担われるものである」としている。その他「核・大量破壊兵器の保有・製造・持ち込みの禁止と武器の輸出禁止、『集団的自衛権』の禁止と宇宙空間の軍事利用の禁止、(中略)文民統制の堅持と徴兵制の禁止などを明記する」としている。
 これらの内容からすると、報告には明記されていないものの、国土警備隊が軍事組織であることは明白であり、第九条は国土防衛の軍を認めているという見解になる。
 自治労は従来より、第九条は自衛の軍も認めてないとする非武装の立場であるが、一九九三年の札幌大会で前述の方針を提案。当然ながら反対意見が多く出され、「自衛隊の違憲は前提」「非武装に至る過程としての自衛隊の縮小、改組」などと執行部は答弁して切り抜けてきたわけだが、今回の報告で、初めて自衛の軍は合憲であることを明文化したことになる。(検討委員会では、「憲法第九条は個別自衛権を認めてない」「平和基本法で自衛隊を規定することは、自衛隊を合憲と認めることになる」という反対意見も出ている)。
 報告後に開催された中央委員会では当然ながら批判が続出。検討委員会は「報告の内容を最大限尊重し、第七十六回定期大会に向けて、運動方針などの議案提起等を行なうように」と中央執行委員会に注文しており、鹿児島大会でこの報告に沿う形でどのような方針案が提案されるのか、注目されるところであった。
 しかし、大会の運動方針案では、「平和基本法(仮称)の制定を求める」ことは報告と同じであるが、「自衛隊は…密入国、テロ、麻薬対策などを主要任務とする警備組織と、災害救援・復旧、環境保全組織への再編・改組を求め」、「国際貢献活動などは、非軍事を原則とする別組織の創設をもって対応すべき」となっており、報告とは違ったものになっている。さすがに報告どおりの自衛の軍は合憲、ということでは組合員を納得させることは困難と考えたものと思われる。
 だが、「平和基本法」の制定は自衛隊の容認につながるものとして、沖縄、宮城、新潟、富山の四県本部が共同で修正案を提出。本部は「現在の自衛隊は違憲であり、憲法前文と第九条を死守する」と決意表明せざるを得ず、七月に出された連合見解(案)に対して自治労は意見書を提出すると答弁。これを受けて修正案は取り下げられ、運動方針がどうにか可決されることになった。
 また、大会では福井、岐阜の県本部が反対したものの、来年の一月一日での全国一般との統合が決定した。
 先進的労働者は職場や地域において「自衛の軍は不要」という旗色を鮮明にし、全国の仲間とともに憲法改悪阻止の闘いを進めよう。(自治労・一組合員) 


全国ユニオン 第4回大会
  均等待遇立法化など全国規模の行動強化へ
    こんな「労契法」はいらない!

 七月十五〜十六日に東京で、全国ユニオン(全国コミュニティ・ユニオン連合会)の第四回大会が開催された。
 全国から百三十四名の代議員が駆けつけ、大会の成立を確認した後、鴨桃代会長があいさつした。鴨さんは、全国ユニオンが対厚生労働省交渉など地域ユニオンだけではむずかしかった全国的な行動を切り開いてきた実績を強調し、全国ユニオンとしての闘いが今後ますます重要になっていることを訴えた。
 来賓あいさつは、連合・高橋副事務局長、社民党・福島党首、さらに権力から組織破壊攻撃を受けている全日本建設運輸連帯労組・柿沼書記長から行なわれた。
 議案審議として、過去一年間の経過報告がなされた。非正規労働者の数が急速に増大している。派遣労働では、派遣会社といっても今や中小企業ではなく、全国的に事業を展開している大手企業がたくさん出てきている。全国ユニオンは地域ユニオンと連携して、大手派遣会社との労働条件改善に実績を残してきたこと、また介護労働などでは、対厚労省交渉が不可欠となっており、他の全国規模の労組と共闘して活動をひろげるなど全国規模で問われる課題でたたかいを作り出していること、が報告された。
 向こう一年の方針では、「あらゆる働き方に権利を 均等待遇立法化の実現!」をテーマに、パートや派遣など非正規労働者の要求に応え、全力をあげて組織することなどを確認した。
 経営者が労働者使い捨てをますます強めてくる中で、非正規労働者の均等待遇立法化、合理的理由なき有期雇用禁止の法制化、など非正規労働者の要求を全面に掲げてたたかう全国的な組織として、全国ユニオンがその力を発揮していく正念場にさしかかっている。
 今大会ではとくに、政府・資本の新たな攻勢について緊急の対応が問われてきた。四月、厚労省の研究会が中間報告としてまとめた「労働契約法制」に対する取り組みである。厚労省は、労働者の権利を確立する「労働契約法」の制定をもとめる労働者側の要求を逆手にとって、とんでもない「労契法」の中身を打ち出してきた。
 大会は、特別決議「こんな『労働契約法』はいらない!」を採択した。厚労省報告では、@職場の少数派労働組合などの活動を抑圧しかねない「労使委員会制度」、A解雇について「金銭解決ルール」を再三導入しようとしていること、B正社員労働者に対して、労働条件の変更をのむか解雇を認めるかを迫る「雇用継続型契約変更制度」の導入、等など労働者の権利を大幅に圧迫し、資本にとって使いやすい労働法制にしていくことが目論まれている。一〜二年という短い期間で、われわれはこの目論みを粉砕する運動をつくらねばならない。
 大会は、労働弁護団幹事長・鴨田弁護士による「労働契約法制について」の特別講演を受けた。改めて、いま厚労省がすすめる「労契法」の犯罪性を確認するものとなった。
 夜は、全国各地のユニオンとの交流会、福島瑞穂さんも加わって楽しい会となった。
 大会二日目は、「派遣労働者の組織化」「介護ヘルスケア労働者の組織化」「ユニオン運動のABC」の三つの分科会に分かれて、実践的な経験交流を行なった。
 なお、十月の連合大会を前に、憲法問題での連合加盟各単産の態度も注目されているところであるが、全国ユニオンは、憲法九条や教育基本法の改悪阻止の立場を今大会でも明確に確認している。方針では、反戦平和活動への積極的取り組みとともに、「『9条を守る会』の活動に注目し、どのように連携するかについて検討・協議する。『憲法行脚の会』とも、同様に連携を検討する」などを決定した。(全国ユニオン・一組合員)


北部九州
  イラク第7次派兵(第4師団)に抗議
    派兵中止・即時撤退の闘いは各地で

 今夏、イラクへの自衛隊の第七次派兵が強行されたが、今回、初めて九州からの派兵となった。対象は福岡、長崎、佐賀、大分の北部九州に駐屯する陸自第四師団(司令部・福岡県春日市)であり、派兵部隊は約五百人で編成。そのため駐屯地がある各地で派兵反対の取り組みが行なわれた。
 七月二四日、長崎県大村市では、「自衛隊のイラク派遣を考える大村市民ネットワーク」(代表・渡辺正之地区労議長)が主催し、県平和センターの労組員やワールドピースナウ・ナガサキの市民など約七百人が参加。陸自大村駐屯地までデモ行進した。
 陸自第四師団が属する西部方面隊の総監部がある熊本市では、社民党や連合など十四団体で構成する「自衛隊のイラク派兵に反対する熊本県民の会」が主催し約二百人が参加。市街をデモ行進し、派兵中止を訴えた。
 福岡市では「平和をあきらめない人々のネットワーク・福岡」と「反戦ビラ弾圧救援会・福岡」が共催し、「九州からの派兵を許さない7・24福岡集会」が開催された。集会には東京都立川市で自衛隊官舎にイラク派兵反対ビラを配布し、住居侵入容疑で不当逮捕され、起訴された市民団体「立川自衛隊監視テント村」の大西章寛さんが参加。「予想もしない弾圧で大変だったが、全国からの支援で一審無罪を勝ち取ることができた」と話し、九月から始まる控訴審への支援を訴えた。
 七月三十日、約二百人の自衛隊員が第一陣として福岡空港から出国。この日、陸自第四師団司令部に近い春日公園にて「自衛隊派兵反対九州ブロック集会」が開催された。旧総評系の労組や部落解放同盟、原水禁などで構成する「平和・人権・環境福岡県フォーラム」(代表・中村元気福教組委員長)が主催し、約千五百人が結集。陸自福岡駐屯地までデモ行進を行ない、第四師団に対し大野防衛庁長官宛に派兵の中止とイラクからの撤退を申し入れた。
 翌三十一日には福岡市内にて、「燃えるイラク最前線」(IFF)の議長でイラクでの反米反占領闘争の指導者であるマジド・アル=ガウード・アル=ドレイミ氏の講演会が行なわれた。これは、「沖縄とむすぶ市民行動・福岡」と「美(ちゅ)ら海からのメッセ−ジ 基地・平和・環境」福岡写真展実行委員会の共催。沖縄在住の三人の写真家が「沖縄の辺野古とイラクの戦場」と題した合同展を今年三月に那覇市で開催し好評を博したが、その写真展が本土では初めて福岡で九月に行われる予定であり、福岡と沖縄とイラクを結んだ取り組みが着実に拡がりつつある。
 八月六日の第二陣、十四日の第三陣の派兵に対しては、福岡駐屯地がある春日市内にて「アメリカのイラク攻撃を許さない実行委員会」(カトリック福岡正義と平和協議会の青柳行信氏が代表)、「平和をつくる筑紫住民の会」(九州・山口靖国神社参拝違憲訴訟原告団長の郡島恒昭氏が代表)の共催によるデモが行なわれ、陸自第四師団司令部へ派兵中止を申し入れた。(九州M通信員)