労働者共産党 第三回党大会 労働運動決議 

   当面する労働組合運動におけるわが党の諸政策


1 この間の経過

(1) 党は、2001年7月の第一期三中総決議「我々がめざす労働組合運動の基本方向」において、個人加入のゼネラルユニオンの形成と地域ユニオンの推進を打ち出した。その要旨は次のとおりである。日本のバブル経済が崩壊し、アメリカ主導の国際的な自由競争が激化した。企業の多国籍化、失業・企業倒産の増大、非正規労働者の増大、既存の企業社会の崩壊がすすんでいる。しかし、現状の労働組合組織が、この情勢に対決できていない。企業の枠を超えた団結が必要である。当面の闘いの指針として、全国的な個人加入のゼネラルユニオンの形成、地域ユニオンの推進、課題別共闘の推進、地域を基礎とした労組と市民・住民団体との団結、自立した労働者諸個人の階級的団結を提起した。
(2) ゼネラルユニオン構想は、情勢を踏まえた的確な方針提起であったが、党内議論は組織形態論が先行し、ゼネラルユニオンを形成するための運動論が希薄であったことは否めない。そのため、党は、2003年7月、第二期二中総決議草案「当面する労働組合運動における我が党の闘いの基本方向」を提案した。日本労働者階級の差別・分断支配を打破し階級的統一を勝ち取っていく政治方向と、その基調における賃金闘争や反失業闘争などでの運動政策を提案したものであった。総会は、決議草案の内部討議を継続し、党内議論をさらに発展させていくことを決定した。
 (3)第3回大会は、以上の経過を踏まえ、以下の当面の労働組合運動政策を決定する。

2 最近の労働情勢の特徴

(1) バブル崩壊以降、独占資本を中心とする資本家階級は、新自由主義路線を押し立てながら、一方で、本格的な多国籍企業の活動を推進し、他方で、労働者階級への全面攻撃によって、日本資本主義の建て直しを図っている。そして、弱肉強食の新自由主義に対応し、支配階級は、国家国旗法、盗聴法、組織犯罪対策法、住民基本台帳法改定、精神障害者への保安処分など、国家秩序の強化のための反動立法を成立させ、軍事的には、有事立法の制定、自衛隊のイラク派遣特措法など「戦争のできる国づくり」を着々と推し進め、総仕上げとしての憲法改悪をめざしている。
(2) バブル崩壊以降、長引く不況、深刻なデフレ経済が続き、90年代半ばからの労資関係は、戦後はじまって以来の大転換期にある。日経連は、1995年に「新時代の日本的経営」を発表し、労働者の雇用形態を長期蓄積能力活用型、高度専門能力活用型、雇用柔軟型の3つのグループに分けて雇用管理していく方針を明らかにした。労働基準法、労働者派遣法、職業安定法の改悪など新自由主義にもとづく労働分野における規制緩和を推進することにより、解雇を容易にし、労働力の流動化を推し進めてきた。また、産業・経済面での規制緩和によって、持ち株会社の設立が可能となり、産業再生法、民事再生法、会社分割法などが成立し、会社の合併・組織再編、リストラを促進した。さらに、国際会計基準の導入はキャッシュフロー型経営へと転換を促し、短期の業績を評価する成果賃金が導入されるとともに、退職金の積み立てなどの労働債務を削減する動きが進行した。さらに、下請企業への一方的単価切り下げ、労働条件を無視した入札制度など、「底辺に向かう競争」といわれるコスト削減競争が激化している。
(3) これらにより、日本の労働者階級の賃金・労働条件は、高度成長以来最悪の状態に陥っている。90年代半ば、完全失業率は3%台、完全失業者数は200万人台であったのが、近年は5%台、300数十万人台とはね上がり、大量失業が常態化している。それとともに、野宿労働者は大都市ばかりでなく、沖縄から北海道まで全国で見られ、その数は2〜3万人規模となっている。大量失業を圧力として、資本家階級は、人員削減した正規労働者の一部を、パートタイマー、派遣労働者、臨時労働者など賃金・労働条件の劣悪な非正規労働者においやっている。この5年間、正規労働者が400万人減少し、非正規労働者が370万人増加した。就業労働者全体に占める非正規労働者の割合は2003年に34.6%となり、1500万人を超える規模にまで増大している。最近では、外国人労働者の数も増え、劣悪な労働条件のもとにおかれている。また、実際には被用者でありながら雇用関係の保護を受けていない、見せかけだけの自営業・個人請負など偽装した雇用関係の労働者も増加している。
(4) 大量失業の圧力はそれだけでない。首切りを免れた労働者にも自殺・過労死にいたるまでの過酷な労働、賃金カット、不払い残業など、不当な攻撃が襲い続けている。賃金は6年間連続して低下している。賃金カット、労働強化は、民間だけでなく、公務員労働者に対しても拡大している。年収300万円にも満たない労働者が増加している一方で、年収800万円を超える労働者が増えている。一億総中産階級化といわれた時代が終わり、労働者階級の2極分化が進行している。また、450万人といわれるフリーターの存在は、低収入、低消費だけの問題ではなく、大きな社会問題となっている。
(5) 女性労働者は2003年に2177万人になり、全雇用者の41%を占めるに至った。25歳から29歳までの女性の退職者の4人にひとりは、結婚、出産、育児を理由に挙げており、就職―退職―再就職と言うM字型就労は解消していない。M字の頂点での女性の就業率は67%、68%である。再就職はほとんどがパート労働である。女性雇用者の40%はパート労働者であり、パート労働者の68%が女性である。女性正規労働者の賃金は、男性正規労働者の67%であり、女性パート労働者の賃金は女性正規労働者の66%である。男性労働者の賃金の半分にも満たない劣悪な差別賃金である。1985年に男女雇用機会均等法が制定されたが、女性正規労働者と女性パート労働者の賃金格差は拡大しており、均等待遇を求める声は強まっている。女性差別を構造化した労資関係、税制度などを変革し、女性労働者の賃金・労働条件を改善することは、同時に男性中心社会の構造を変える力でもある。
(6)新自由主義路線の下で、資本活動は弱肉強食を強力に推し進めている。この結果、多くの分野で格差が拡大されている。たとえば、企業規模間の格差では、財務省の『法人企業統計』によると、資本金10億円以上の企業と1000万円未満の企業との収益格差は、90年度には前者が後者の4.3倍であったのが、03年度には24倍に拡大している。なかでも、世界経済に直接リンクした大手多国籍企業とその他の国内企業との格差は、もっとも顕著である。企業収益のこのような格差拡大は、当然にもそれぞれの規模に所属する労働者に影響する。格差は、企業規模別、産業別、地域別、性別などの指標でみると極めて明瞭である。社会諸分野での複雑な格差と差別の再生産は、労働者階級人民の団結を阻害し、独占資本による重層的な支配構造を、今日もまた新たな形で再生産している。
(7) 長引く不況の下での失業や雇用不安、さらには賃金カットによって、労働者階級人民は消費の切り縮めで生活を防衛せざるをえない。また、打ち続く社会保険料の増大にもかかわらず、年金、医療、福祉などの社会保障制度は、政府与党や官僚の無計画性、制度への寄生などで空洞化が確実に進行し、労働者人民の将来の不安もますます増大している。
(8) この中で、独占ブルジョアジーは、連合の中心をなす大企業労組などが反撃せず、春闘も形骸化し、むしろこの間、大企業労組などが資本に協力しているという状況を見据え、賃金体系をより一層、資本に都合のよいものに転換させる攻撃をとってきている。年功賃金体系から成果主義賃金への転換である。2002年5月、日本経団連は「成果主義時代の賃金のあり方――多立型賃金体系に向けて」を提案し、年功型賃金の廃止を打ち出している。これは1995年の提案「新時代の日本的経営」を踏まえたもので、企業の経営管理層や長期雇用の中核的労働者に対しては業績給、職務給などを、その他の有期雇用労働者のうち、定型的職務の労働者には職務給、習熟給などを、研究・開発・企画などのスタッフ職務の労働者には成果給、「範囲職務給」などを適用するとして、労働者階級の一層の格差、分断を策動している。
(9) 新自由主義路線は、経済的規制の撤廃だけでなく、社会的規制も撤廃する規制緩和をおしすすめてきた。その最大の犠牲は、「安全」である。アメリカの規制緩和は、航空管制官、航空業から始まり、多くの航空機事故を発生させた。2005年4月、JR西日本の福知山線での脱線事故は、利益追求、効率化を優先した結果であり、安全を担う現場労働者を「命令と服従」によって支配してきた労務管理の結果である。安全の確立は、労働組合の抵抗なくしてあり得ない。
(10) 戦後はじまって以来の雇用、賃金制度の大改編は「日本的労使関係」を破壊する形で進行している。既成の大企業労組などはほとんど有効な対処もできていないため、首切りの増大に応じて組織率を減少させている。それだけでなく、資本に協力し、自ら多国籍企業として、他国の労働者階級の利益を抑圧し、企業の利益を追求する大企業労組などの役割は、労働者階級の闘いの障害になっている。職場の労資関係の安定を軸に企業社会を築き上げてきた日本型労資関係の崩壊を前にして、資本家階級は個別紛争処理の制度を整備し、個人加入制労働組合の労働相談、争議を妨害しようとしている。今後労働法の改悪をさらに目論み、少数派労組が活動できないようにするための攻撃を強めている。企業の枠にとらわれず地域でたたかうコミュニティー・ユニオンや合同労組など個人加盟労組の興廃は、まさに日本労働運動の将来をになう闘いになっている。

3 連合労働運動の総括と労働界の状況

(1) 連合が、1989年に日本の労働運動の「統一」をめざして発足して15年が経過した。この15年間で連合の「統一」は前進しただろうか。「否」であることは誰の目にも明らかである。日本の労働組合の組織率がもっとも高かったのは1949年の55.8%であり、1970年代前後に一時的な持ち直しがあるが、一貫して低落傾向を押し止めることはできなかった。2003年はついに19.6%と20%を切ってしまった。連合の基盤となっている公務員や1000名以上の大企業は50%を越えているが、100人〜300人の中小企業は16.6%、100人未満の職場は1.2%でしかない。日本の労働者の統一と団結のためには、300人以下の民間中小企業の組織化が必要不可欠である。しかし、連合指導部は、資本家階級が90年代初頭に打ち出した労働力階層分化と賃金格差・不安定雇用の拡大=新時代の日本的経営戦略に何ら有効な手を打てず、大手企業労働者に対しては、リストラと労働強化を押し付け、未組織労働者に対しては労働組合への期待をなくさせ、結果として労働組合員の数を大きく減らした。ゼンセン同盟など一部民間労組は組織を伸ばしたが、それは資本との癒着を背景にして闘う労働組合の排除を目標にした組織作りであり、労働者の解放とはまったく無縁の労働運動であった。
(2) また、連合は力と政策を備えた政治勢力として登場することを強調して、社会党を解体し、自民党の分裂派、民社党などと手を組んで、時には政治団体として国政選挙を闘った。しかし、完全失業率は5%前後を行き来し、多くの労働者が仕事に就くことができないでいる。介護保険制度、消費税率の値上げ、健康保険負担率のアップ、そして年金問題と自民党の政策に押し切られて有効な手を打つことは出来なかった。最近では民主党と手を握り政権交替をうたっているが、それは資本家と自民党によって腐敗・堕落した資本主義体制の延命に手を貸し、社会崩壊への道筋を加速させるものでしかない。
(3) 連合が発足した当時は、資本家はもろ手を挙げてその発足を称えた。しかし、その歓迎の熱はすぐにさめていった。資本家の本音は、彼等が意のままに出来る労働者と労働現場を作り出すことであり、労働者が闘いとってきたさまざまな権利・諸制度を突き崩して、グローバル化した資本競争に勝つことであった。そのためには、労資協調をさらにすすめ、労組を取り込む形でドラスティックな労働市場の再編を自らの手でやることに力を傾注したのであった。連合指導部は、国政や外交問題で、政府や資本家の方針に反対もできない。破綻している原子力政策を推進し、自衛隊海外派兵に対して国民的な反対運動を作ることもいっさいなかった。連合傘下労働組合は、自らの企業が犯していた犯罪や不法行為を摘発することもできず、そのあおりとしてふりかかってくる労働者への合理化に対処することもできていない。連合労働組合運動は、完全に地に落ちたといってよいだろう。
(4) 連合の一部には危機感があるのも事実である。最近連合評価委員会を設けて答申を出し、アメリカ労働組合運動から学ぶ取り組みなどもおこない、未組織労働者の組織化のために金と力をさこうとしている。だが企業別労組の連合体の体質を崩さず、資本と蜜月の関係を作っている指導部のもとでは、このような試みが連合全体のものになることはない。しかし、連合の中でも、日々資本と正面から闘っている人々、労働運動再生のための取り組みを行おうとする人々が、多く存在していることもまた事実である。連合評価委員会の動きを受けたさまざまな取り組みや、草の根レベルの反グローバリズムを闘う全世界の労働組合運動との連帯の動きは、注目をあびはじめている。ネットワークと共同行動を通じ、このような流れが、連合指導部をやがては揺り動かす新たな潮流に発展する可能性がある。
(5) 全労連は、連合の労働運動を資本への屈服と批判してナショナルセンターとして発足した。連合に対する批判は的をえたものも多く、総評労働運動を引継ぐ一潮流として一定の吸引力を果たしてきた。しかし、その労働運動の基本路線は「政党支持の自由」を掲げていても、実質的には日本共産党の修正主義路線を踏襲することにある。職場での資本との対決をさけ、労働運動を反独占・反政府国民運動に動員するものであって、労働運動の統一と前進を真に促進するものとはならなかった。しかし、最近の反戦運動や教育基本法改悪反対、憲法改悪阻止、また国鉄など解雇撤回闘争を通じてさまざまな潮流との共闘が行なわれ始めた。日本共産党に対する原則的批判は重要であるが労働運動における共同行動の積み上げを重視し対応していくべきである。
(6) 全労協も連合批判と労働運動の統一を掲げ連合の発足に前後して発足した。全労協は国労闘争の支援を行ってきたことに大きな特徴があった。国家が行った不当労働行為と闘う国労闘争団を支援したことは、多くの労働者の共感と支持を集めた。しかし、国労闘争を巡る方針での国労本部の本工主義的な対応は、臨時、パート、下請労働者などのたたかう部隊との結合を求めながら闘っている国労闘争団を困難な局面に追いやっている。全労協は、すべての労働者の権利を擁護し、すべての争議の勝利のために、大胆に労働運動の統一をめざすことが問われている。
(7) 日本の独占資本と自公連合政府は憲法改悪、労働法制改悪を射程に入れつつ、すべての領域に対して労働者階級と人民に、今までにない生活と権利破壊攻撃をかけ、戦争協力を強制しようとしている。労働運動の統一を掲げた20世紀後半の15年は、この攻撃と対峙する労働運動の統一がなされなかったどころか、連合傘下の多くの労働組合が力量を後退させ、多くの労働者の権利が放置されつづけまたは奪われた時代であった。その責任の一端はわれわれにもある。今、われわれは日本の労働運動を再生させるために多くの人々と手を携えて、連合の内外を通じて運動とネットワーク形成へ向け奮闘しなくてはならない。

4 今後の労働運動の課題

(1) 日本労働運動の大きな転機に際して、2003年の連合評価委員会報告など、さまざまな労働組合、政党、研究者が「日本の労働運動再生」のための提言を出し、活動を開始している。これらの提言は非常に示唆にとむものであり積極的に受け止めていくべきである。なかでも重視すべき内容は、企業別労働組合から脱皮をし企業の外に個人加盟の労働組合を組織すること、その上に全国的な職種別、業種別、産業別の団結をめざすことである。すでにわが党は、ゼネラルユニオン構想としてこれを打ち出した。
(2) 新しい労働運動の基本的方向は次のとおりである。
@ 新自由主義にもとづくグローバリズムに反対し、競争原理、市場経済、構造改革に反対する労働運動である。すなわち、社会の形成を右肩上がりの経済成長を前提とするのではなく、大量生産、大量消費、大量廃棄という経済からの脱却。地域経済の振興と福祉・環境を重視した共生・連帯の持続可能な「もうひとつの世界」の担い手となる。
A 新自由主義にもとづくグローバリズムと一体の関係にある戦争政策に反対する労働運動である。戦争政策反対。憲法改悪阻止。社会保障制度の拡充、人権擁護。日米安保体制からの脱却。アジアとの共生をめざさなくてはならない。
B 戦後日本社会の骨格を形成してきた大企業支配の解体・再編に対応でき、危機管理による社会支配と対決し、個人の権利、個性を大切にする社会を地域からつくる労働運動である。
C 賃金闘争など労働者の経済的問題だけでなく、政治的、社会的変革を担う労働運動である。労働運動が企業内の労使関係の問題を扱っていればよい時代は過ぎ去ってしまった。個別のたたかいがグローバルな意味をもつ時代になったのである。
(3) これらは、単なる課題の羅列ではない。たとえば賃金について考えてみよう。われわれは「総評」の賃金論についての積極面と限界を検討してきた。その限界は、男性世帯主制度を背景にした年功賃金論を突破できていないということである。それを克服する新たな賃金論は、同一労働同一賃金にもとづいた、性・年齢・雇用形態・民族・階層・身分などの区別がない仕事給であり、労働者個人に基礎を置いた賃金労働条件確保を目指すことである。そのような賃金で生活できる、住宅、子育て、教育、医療、老後を確保すること、すなわち社会制度全体を改革する闘いと並行して闘う必要がある。
(4) 重要なのは、このような新しい労働運動をいかにしてつくりあげるかということである。新しい労働運動の主な担い手は、規制緩和で痛めつけられている中小企業労働者や非正規労働者である。そのような労働者層を軸に、@個人加盟労組や個人加盟の地域ユニオンなど共闘をより大きくつくる、Aあたらしい労働運動を応援する団体、さまざまな課題と取り組む運動体との連携をはかる、B企業内組合の労働者との連携を図り、既存労組を変革・改組し、新たな職種別、業種別、産業別の労働者の団結をめざす、Cこれらを実際的に生かすネットワークと運動を作り出すことである。
(5) たとえば、労働安全衛生の分野においては、総評解散にともない労災職業病の全国的センターであった日本労働者安全センターが解散したが、その後、地区労の支援や草の根の自主的ネットワークを通じて、労災職業病運動は全国的ネットワークをもって再生している。このようにさまざまな課題と取り組む運動体(NGO)が、労働運動とは一定の距離をもって、もしくは労働運動に絶望して作られている。それは、労働相談、法律相談、反弾圧・救援など労働運動と直接的にかかわるものから、移民労働者、民族・ジェンダーを含む共生社会を目指すものや、反戦平和、環境問題など多種多様である。労働運動指導部の高齢化が進行する中で、逆にそれらの運動体の中心は20代から30代の若い世代が担っている。労働運動の再生のため世代間の連携を強め、全国的なネットワークの形成が重要である。
(6) アメリカ帝国主義を中心とした世界的な侵略戦争計画、日本帝国主義の追随と権益拡大に断固反対する反戦平和・国際連帯の闘いが重要である。その重点は、@憲法改悪と自衛隊の海外派兵に反対する、A日韓連帯運動の強化を進める、B新自由主義にもとづくグローバリズムやWTO、自由貿易協定などに対する闘いを強化する、CWSF(世界社会フォーラム)など世界レベルで緩やかな交流が進んでいる新自由主義にもとづくグローバリズムに対抗した社会作りのネットワークを重視することである。
(7) 労働運動の再生のためには、資本の搾取・差別・横暴に対して断固として闘うことと同時に、共に闘う人々と大きな団結を作りあげる事が必要である。連合内部から闘う人々、全労協や独立系の労働組合で奮闘する仲間たち、地域や産別でネットワークを作りながら多数派をめざして活動する人々、そして全労連の内部から、連帯と団結を求めて闘う人々などとの要求や政策をまとめあげ団結を粘り強く進める必要がある。政党政派の違いはあっても、お互いの経験の蓄積と支配階級の攻撃の苛烈さは、団結をいっそう促しつつある。

5 主な闘争課題について

(1) 賃金闘争の課題
@ 日経連は、バブル崩壊以降、年功序列賃金を崩壊させるため、能力給を導入し、最近は成果主義賃金を打ち出してきた。日経連は2002年5月に「成果主義時代の賃金システムのあり方」を発表した。その内容は、国際競争に勝ち抜くために、成果や貢献度に応じて昇給も降給もあり、成果や貢献度の判断を経営者が行うことによって賃金決定権を資本が握り、多立型賃金体系と称して多様な雇用形態による賃金差別を行うというものである。その目的は、総人件費を抑制するとともに、労働者を分断し、互いに競争させるものである。
A われわれは、成果主義賃金に反対し、労働者の分断、男女差別をはじめとする差別を許さず、労働者の団結をつくりあげる。同時に年功賃金が男性世帯主制度にもとづいて企業社会に包摂された側面を反省し、労働者個人の生活に基礎をおきながら、属人的な年功賃金から、仕事にもとづく仕事給への移行を労働者の主導のもとに実現する。そして、社会的に規制された仕事給、仕事を基準とした職種別賃金の全産業的な確立をめざす。われわれは、日本における子育て、教育、住宅、医療などの社会制度の不十分性が、年功賃金を生み出し支えている状況を踏まえ、年功賃金の解体が賃金引き下げや生活破壊に結びつかないよう、仕事給への移行にあたっては社会的諸制度の改革と並行して実施する。
B 非正規労働者が差別賃金のもとにおかれていることに反対し、「同一価値労働同一賃金」原則にもとづく、正規労働者と非正規労働者の枠を超えた「均等待遇」の実現をめざす。「同一労働同一賃金」の要求が、資本家によって「異質労働異質賃金」として分断される要素になったことを反省し、「同一価値」の判断、職務分析、職務評価にあたっては、労働者による公正な判断、評価を確立する。
C 賃金水準は、健康で文化的な生活を保障する全国的な最低基準を設定し、賃金の底支えを行う。その場合の最低基準は、年金最低額、生活保護、課税最低額などとの整合性をもつものとする。現行の最低賃金法は「通常な事業の賃金支払能力を考慮して定めなければならない」と定めているが、企業の支払能力論を克服すること、すなわち賃金の企業間格差を克服すること、賃金を企業別ではなく社会的に捉えていくことが求められる。今日の最低賃金制度は、大企業―中企業―小零細企業という重層的な支配構造を再生産する一つの役割を果たしているのであり、この根本的変革はきわめて重要な課題である。また、いままでの男性世帯主制度にもとづく家族賃金の考え方から、男性・女性にかかわらず、労働者が経済的に自立した生活ができる生活賃金(リビング・ウェイジ)の考え方に転換していく。そして、地域最低賃金、生活賃金を底支えとしつつ、職種別、産業別最賃の確立をめざす。
D 公契約は、価格競争入札ではなく、入札基準に労働条件、人権、環境、福祉、公正など社会的評価を加えた総合評価方式に転換していく。最低制限価格制度を積極的に活用し、公的機関が委託や請負を行わせる場合はその地域の平均的労働条件を切り下げることがないよう規定したILO公契約条約(第94号)の実現をめざす。さらに民間の契約にもこの考え方を拡げる。
(2) 雇用闘争の課題
@ 日経連は、1995年に「新時代の日本的経営」を発表し、労働者の雇用形態を長期蓄積能力活用型、高度専門能力活用型、雇用柔軟型の3つのグループに分けて雇用管理していく方針を明らかにした。労働基準法、労働者派遣法など労働法制の改悪は、この方針にもとづくものである。さらに、個別労使紛争処理の法整備をおこない、将来的には、少数派労働組合の交渉権を奪うなど、闘う労働組合や地域ユニオンなどの活動基盤を破壊しようと目論んでいる。
A 必要なときに必要な労働力を雇用するという労働力の「ジャスト・イン・タイム」化は、膨大な失業者と半失業者を生み出し、雇用の不安定化と労働条件の抑制をもたらす。労働運動にとって雇用闘争は重要であり、ワークシェアリングを実現するとともに、解雇をさせない、失業者の生活を確保する、雇用をつくりだす具体的政策が必要である。
B ワークシェアリングを実現するためには、不払い残業の禁止(不払い残業をなくせば160万人の雇用が実現するという報告もある)、時間外労働の規制など労働時間の規制、所定労働時間を超えて労働に対する割増賃金の引き上げ、同一価値労働同一賃金の実現などが重要である。
C 解雇をさせない闘いとして、解雇攻撃を受けている労働者を地域ユニオンやゼネラルユニオンに組織し、労働者が解雇撤回闘争を主体的に闘うよう援助する体制をつくる。また、政策的には、解雇制限法の制定、産休、育児介護休暇中の労働者の代替、季節労働など合理的な理由がない有期雇用の禁止、実質的に1年を超えて有期雇用労働者を雇用しあるいは派遣労働者を使用した企業に当該派遣労働者の直接雇用の義務付け、一定規模以上の事業所の閉鎖・移転について地方自治体の承認ならびに地域雇用確保基金(仮称)支出の義務付けなどの実現を図る。
D 失業者の生活を確保する政策として、労働債権の全額確保と国の立替払い、雇用保険の受給期間の延長、失業手当制度創設、失業者とその家族の医療費の無料化、年金掛け金の国の立替払いなどの実現を図る。
E 雇用をつくりだす政策として、労働組合がおこなう労働者供給事業、労働者協同組合などの雇用創出事業、職業訓練の促進と行政援助、失業者の職業訓練制度の充実などの実現を図る。
(3) 野宿労働者運動の課題
@ 野宿労働者の運動は、1990年代初頭のバブル崩壊を契機に大阪・釜ヶ崎をはじめとした寄せ場から始まり、寄せ場を越えて大都市全域で、さらに全国各地の都市で生まれ発展してきた。それは、多国籍企業を発達させた今日の資本主義が、日本においても新自由主義政策をテコに失業・半失業層を全社会的規模で大規模かつ恒常的に生み出し、非正規雇用形態による労働者使い捨てシステムを全産業的に一般化させ、この構造を拡大再生産してきていることに対応している。それは、失業・半失業層の基底に形成される・野宿を余儀なくされる窮乏層を基盤とする運動である。野宿者は、2003年の公的調査で25,000人である。この人数は、景気が回復したといわれる現在でもあまり変化していない。
A 野宿労働者の運動は、1990年代半ばには国家・行政当局の野宿者排除攻撃を主戦場において破綻に追い込み、彼らに「自立支援策」が必要なことを認識させた。そして運動は、野宿から脱出できる・野宿をしないですむ条件を、特別立法という形で戦取する方針を打ち出し、野宿生活の防衛を運動の主軸に据え続ける傾向等々を克服しつつ、2002年に「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(以下、「支援法」と略す)を勝ち取った。
B 現在、野宿労働者の運動は、支援法成立の条件下での攻防となっている。中心課題は、景気回復を口実とした国家・行政のサボタージュを許さず、野宿問題を抜本的に解決できるレベルの予算措置をとらせることであり、生活保障的施策にとどまらせず、野宿労働者の中心的要求である就労保障を実際に実現することである。人と自然環境を大切にする地域社会づくりを目指して、雇用創出事業を大規模におこし、ワークシェアリングを大規模に闘い取り、就労保障と結合した職業訓練、就労保障と結合した福祉を実現することである。運動体には、山林や河川敷の整備、遊休農地の活用、町の清掃、環境リサイクルなど地域社会づくりに責任をもって関わる自己の意識性と能力を高める課題が一層問われずにいない。
C 野宿者運動の寄せ場における前進と寄せ場を超えた広がりとは、これまでの寄せ場労働運動の、日雇現役層の運動と野宿層の運動への分化、日雇現役層の運動の後退と一体に進行した。その間、寄せ場における日雇現役層の運動の再建は、一貫して課題であり続けた。われわれは、この日雇現役層の運動を、寄せ場を超えた広範な非正規労働者の運動との結びつきを模索しつつ実現し、寄せ場を労働者の町として再構築する方向で、寄せ場の野宿層との団結したたたかいを再建していく。
D それと共にわれわれは、日本の労働運動が、野宿の問題を自己の問題として対象化し、運動的に包摂する質を獲得することに、助力していく。野宿者運動の中では、労働者としての要求を大切にし、労働者階級の就労部分と失業部分の対立関係を一歩一歩克服し、階級的団結をたたかいとる方向性を強めていく。
(4) 労働者の団結権の確保
@ 非正規労働者の団結を促進するには、非正規労働者が権利を主張し、団結できる職場での権利確立が不可欠である。
A 企業外労働組合の交渉権の剥奪や少数派組合の交渉権の剥奪など、労働基本権を狭める策動に反対する。
B 事業所内の安全衛生委員会などに非正規労働者がその構成比率にもとづいて参加する権利を確立する。また、非正規労働者に関わる労働条件については非正規労働者を代表する者の承認を必要とするようにする。
(5) 制度政策闘争の課題
@ 非正規労働者の団結を図るには、さまざまな労働形態に取り組む団体を結ぶ全国的な団結が必要である。もちろん連絡調整機能が求められるが、結集の軸は政策要求になるであろう。
A 政策要求を検討する場合、4つの視点を忘れてはならない。ひとつは、労働者性の問題である。非正規労働者を雇用関係だけでなく、個人請負・業務委託、協同労働などを含めた幅広い概念で捉えた上で、偽装された雇用について、労働者性の追究による労働法規の適用、契約における真の事業者の責任による労働者保護を確保することである。ふたつ目は、社会労働保険の適用の境界線を行き来している日雇労働者や非定形労働者がいることを考慮し、労働時間に係わらず労働者は社会労働保険に加入し、賃金に応じて掛け金を払い支給を受ける制度を確立することである。三つ目は、女性の問題である。女性労働者が独立した生計者として自立できる、賃金、社会制度の実現を図ることである。四つ目に、移民労働者の問題である。差別、不利益を受けないよう移民労働者の権利確立を図るとともに、相互に支援できる体制の確立が必要である。
B 日本の国債残高は05年度末で、538兆円(名目GDPの1・05倍の政府見通し)に達し、中央・地方の借金も04年度末に1000兆円を突破すると見込まれている。債務が増加している背景に、小泉政権がすすめてきた大企業優先の法人税引き下げや高額所得者優遇がある。このような優遇政策を止めさせ、軍事費やイラク派兵、無駄な公共事業費など歳出を抑えることが必要である。税制改革としては、所得減税をおこない、所得課税における累進課税の強化、消費課税における消費税の廃止、資産課税における相続税の強化を図るとともに、国際金融取引に関する課税、環境税の創設などを行うべきである。
C 社会保障制度改革については次の視点が必要である。
a 医療においては、国民の医療負担の軽減、退職後の医療の無料化あるいは超低額化、健康保険制度と労災保険制度の抜本的改正。
b 介護においては、住民参加による地域介護体制の充実。
c 児童福祉・子育てにおいては、子どもを安心して生み育てることができる労働環境・社会環境の整備、社会的育児施設の充実、児童手当の充実。
d 社会福祉においては、生活保護基準の明確化、障害者対策の充実。
e 年金においては、税金による最低保障年金制度の確立と所得比例年金制度の確立、被保険者代表も参加する運営組織の設立、世代間格差の是正、所得間格差の是正、世帯単位主義から個人単位主義への切り替え、年金制度から排除されている定住外国人への保険給付。
D その他、教育の無償化・奨学金制度の充実、低家賃公共住宅の増設など社会制度の充実が生活の安定をもたらす。
(6) 反戦平和闘争・国際連帯の課題
@ アメリカ帝国主義のイラク侵略に反対し、小泉内閣の有事法制、戦争策動に反対する反戦平和をたたかう労働戦線の形成が急務である。有事法制を発動させないためにナショナルセンターの枠を超えた陸海空港湾20団体の運動をさらにひろげ、各地で同様の反戦平和運動をつくりあげる。職場から戦争協力をしない体制をつくりあげていくために、建設土木、運輸、医療などの戦争に動員される産業の労働組合の連携や指定公共機関にあたる産業の労働組合の連携をつくりあげていく。
A 同時に憲法改悪に反対する労働組合の戦線形成が急務であり、ナショナルセンターを超える労働組合の結集を追求する。それは、「九条の会」や「憲法行脚の会」、さらには憲法改悪反対の集会を共同してつくりあげてきた市民団体や大衆組織との連携を勝ち取って、全国、地域で具体的な幅広い共闘組織の形成をめざす。
B 新自由主義にもとづくグローバリズムと対決する国際的な労働者の連帯の形成は、多国籍企業による労働者の搾取・抑圧と対決するとともに、多国籍企業の活動を軍事的にささえる支配体制に対決するためにも不可欠である。

6 今後の基本方向

(1) 企業別労働組合の克服の道筋として、@単に労働組合だけの改革ではなく、労働組合をサポートする諸組織と新しい労働運動の関係づくり、A地域における政策的な運動を担う組織づくり、B全国的なネットワークづくりが考えられる。党として打ち出した個人加入のゼナラルユニオン構想は、これら総体の企業別労働組合の克服運動なのである。地域における運動の教訓を持ち寄り、一定の時間をかけて次のステップをあがっていけるよう、より計画的な運動、組織配置について検討がおこなわれるべきである。
(2) 連合は国益主義的な「労働を中心とした福祉型社会」をめざしている。われわれは、資本主義的グローバリズムに対決し、共生と連帯の社会づくりをめざす。それは、中小企業労働者や非正規労働者の利益を擁護し、軍事優先から平和への転換であり、生産優先から環境優先への転換であり、差別のないひとりひとりの人権を尊重した、「参加型民主主義」を地域から形成する運動である。この運動は、われわれ労働者階級が中軸となって、日本の社会主義的変革を準備し、新しい社会像・労働像を具現化していく運動である。
                                 (以上)