【今、職場では】
  「指定管理者制度」の導入始まる
     自治体内外の連帯の鍵は
     「公正な労働基準」の確立

「労働組合の変革が求められています。恵まれた大企業と公務部門の正社員・正職員の既得権益のみを保守しようとしている組織にとどまっていないか? 今、本当に労働組合が必要とされているところに労働組合が存在しないというパラドックスをどう克服し、打開できるのか? 大企業・公務員偏重、男中心・正社員オンリーの日本労働運動の負の体質の克服が早急に求められています」
 これは連合地協ニュースの今年の新年号の冒頭挨拶文であり、筆者は自治労出身の議長である。昨年、私がいる地域で初めて連合地協主催の自治体関連労組の決起集会が行われたが、新年の挨拶を実行に移すべく、六月中旬に今年も開催された。地方自治法が改正され、指定管理者制度が導入されるなか、公共施設で働く労働者の雇用環境が大きく変わろうとしているなかでのタイムリーな取り組みであった。
 公共施設は従来、自治体の直営もしくは公共的団体しか運営管理できず、自治体は外郭団体や第三セクターを設立して運営にあたっていた。これはこれで自治体幹部にとっては天下り先の確保であり、外郭団体や第三セクターが低賃金で労働者を雇用するという図式のなかで自治体幹部にとっては都合が良いものであった。しかし、自治体幹部のみ甘い汁は吸わせないということで、財界の要請で登場したのが指定管理者制度である。この新制度によって民間企業も参入できることになった。そのため、最も安い契約金で請負う民間企業を自治体が選ぶことが可能となるわけで、これまで公共施設で働いてきた外郭団体や第三セクターの労働者の雇用に深刻な影響をもたらしている。                         
 集会は自治体の庁舎前で行われ、この自治体の現業労組出身である連合地協の議長が主催者挨拶を行ない、「公民協働関係を推進する立場から民間が参入できる指定管理者制度に反対はしないが、低コストのみを理由とした導入は労働者の賃金・労働条件の悪化と公共サービスの低下をもたらすだけであり、指定管理者の選定基準として公正な労働基準が確立されなければならない」と訴えた。      
 続いて関係労組の決意表明に移り、市民ホールの業務を行なう第三セクターの組合(UIゼンセン同盟)が現状を説明。指定管理者制度を口実に自治体当局は第三セクターへの出資株を民間に売却しようとしているが、雇用不安や労働条件の悪化が危惧されるので、市民ホール開業以来四十年働いてきた実績を正当に評価するところに売却すべきであること、また管理者の選定にあたってはこの実績を正当に評価すべきであることを訴えた。
 次に女性会館の運営を行なっている外郭団体の労働組合が報告。そもそも女性会館は女性の社会進出を支援するのを目的に設立されたのに、運営する外郭団体は一年契約で女性職員を雇用し、五年後に解雇するというひどいもの。そのため組合を結成し自治労に加入。雇い止めを許さない闘いにより雇用は六年目に突入したが、指定管理者制度が発足することをきっかけに自治体当局は外郭団体を解散し、直営に切り替えるという。直営といっても事業を細分化し、個別に民間委託することをねらっており、まったくの組合潰しであることが訴えられた。
 全国一般からは自治体からの業務委託を受けている企業の組合から解雇撤回闘争の報告が行われ、一部広域配転があったものの雇用が確保されたこと、支援へのお礼が述べられた。
 自治体議会からは社民党、民主党議員で構成する連合地協議員懇談会の議員が多数参加し、勤労者会館の民営化に伴い解散された外郭団体の労働者の雇用確保など指定管理者制度への取り組みが報告された。組合からの報告にあるように、自治体当局は民営化や第三セクターからの撤退を一方で行なうものの、他方では外郭団体をそのまま管理者に指定し、あるいは外郭団体を解散し直営に移行するものの業務を細分化し民間に委託するなど、公共施設を今後どのように運営していくのかまったく不透明で、付け焼き刃の対応に終始していることを批判。引き続き労働者の立場から取り組んでいくことが表明された。
 最後に自治体当局に提出する次の要求項目を百五十名の参加者で採択した。
・ 外郭団体の見直しにあっては、関係労組に情報提供を行ない、事前協議を行なうこと。
・ 万一当該団体での雇用が困難な場合、雇用斡旋や退職金等の優遇措置を講ずること。
・ 指定管理者の公募にあたっては、選定委員の選出基準を明確にし、選定委員会の審査内容を情報開示するとともに公正労働基準などの評価基準を策定すること。
・ 安価のみを追求する競争入札制度を改め、公正労働基準、環境配慮、障害者雇用、男女平等参画を総合評価する公契約基本条例を制定すること。
・ これらの要求に明確に回答する交渉の場を設定すること。
 集会には自治体の現業労働者で組織する現業労組や公営企業労組が支援に結集したが、非現業の正規職員で組織する職員組合は参加しなかった。というのは職員組合の執行部は日本共産党が多数派のため連合批判を不参加の大義名分としているからであるが、これはセクト主義の大きな誤りである。指定管理者制度の実務は正規職員が行なっており、自治体関連職場の労働者の要求に応えていくことは当たり前のことであり、これを正規職員組合が取り組まないことは二重の誤りといえよう。(自治労組合員M)

 「指定管理者制度」とは?
 〇三年六月の地方自治法改定によって第224条にもりこまれたもので、従来行なわれてきた公共施設の公共団体等への管理委託制度を廃止し、その管理・運営を直営に戻すか、あるいは「指定管理者制度」に切り替えるとするもの。民間営利企業やNPO法人が「指定管理者」となり、公共施設を経営することができるようになる。「指定管理者制度」への移行期限は〇六年九月。自治体はそれまでに関連条例の制定、指定管理者の公募と選定、指定管理者選定の議会承認を行ない、来年度予算から対応することになる。