改憲阻止へ地域と労働戦線から
  憲法調査会最終報告の改憲扇動を粉砕し

 5・3憲法集会が全国各地で、改憲の危機に立ち向うかのように取り組まれた。
 平和憲法の危機は、四月十五日に衆院憲法調査会(参院は四月二十日)が最終報告書を強行議決したことによって、一段と加速された。
 この憲法調査会最終報告は、「自衛権及び自衛隊について何らかの憲法上の措置をとることを否定しない意見が多く述べられた」等、多数意見として改憲内容の方向付けを行ない(参院の報告では、九条改憲多数明記は阻止された)、また「今後の憲法論議」として、憲法常設機関と改憲国民投票法という段取りの提起まで行っている。
 四月四日には、自民党新憲法起草委員会が新憲法試案要綱を発表した。これは、昨年十一月の素案(自衛隊制服組が執筆したことがバレてやり直しになったもの)と比べると、「集団的自衛権」の明記を避ける政治判断がなされている点が異なるが、軍隊明記と国家主義の基調では同一のものとなっている。そればかりか、「地球上いずこにおいても圧制や人権侵害を排除するための不断の努力」などどネオコン路線を密輸入している代物である。
 野党はどうしているのか。民主党は最終報告の議決に賛成し、改憲勢力であることを明確にした。しかし、自民党の反動的改憲基調が相手では、それとのすり合わせに民主が全体として乗ることは簡単ではない。
 改憲反対勢力は、社民党が三月に憲法議論の「論点整理」を発表した。社民党は、「あえて憲法を変えてまで自衛隊の位置付けを明記しなくてはならない実質的な意味はほとんどない」などと実に弱々しい守勢の批判を開陳し、改憲に「平和基本法」(容認してしまった自衛隊の再編縮小を図るもの)を対置している。
 日本共産党は、四月の三中総で、「憲法改悪に反対する国民的多数派の結集を」との方針を決めたが、いぜん「九条の会」支援を強調するだけで具体論がない。
 しかし、労働者人民の運動は前進しつつある。「九条の会」が全国で一千三百近く作られるなど、地域から改憲阻止のうねりが始まった。地域での共同戦線に支えられ、全国レベルでの共同戦線が作られるべきである。
 労働戦線で、改憲阻止の明確な流れを作る必要がある。連合が改憲阻止を放棄している中、自治労などが九条改憲阻止と「平和基本法」をセットとする方針を取っている。自治労方針にも問題があるが、かれらを含め労働戦線の圧倒的多数が改憲阻止の前面に出る状況をかちとらねばならない。
 朝日新聞の最近の世論調査では、自衛隊について「改憲し存在を明記」が58%もある反面、九条を「変えない方がよい」が51%あり、「変えるほうがよい」36%を大きく上回っている。「改憲し軍隊にする」という明白な改憲回答は、12%にすぎない。
 改憲世論誘導がさんざん行なわれてきたにせよ、平和憲法を守れ・活かせの世論はいぜん過半数を制している。これに依拠し、攻勢的な方針で働きかけるならば、憲法闘争は必ずや勝利するだろう。


 東京5・3憲法集会
    九条を守る大きなうねりが

 五月三日の日本国憲法施行記念日、前月に衆参憲法調査会の最終報告なるものが出されるなどの状況下、全国各地で憲法改悪を許さない諸行動がいっそう力強く展開された。
 東京での中心的行動としては、「9条を守る大きなうねりを!とめよう憲法改悪 2005年5・3憲法集会」が日比谷公会堂で開催された。屋内に三千人、入りきれない参加者二千人が公会堂横に設置されたオーロラビジョンを観るなどして参加、計五千人余の盛り上がりであった。主催は、許すな!憲法改悪・市民連絡会など憲法七団体および平和を実現するキリスト者ネットによる実行委員会。
 集会は主催者あいさつの後、三木睦子さん(三木武夫記念館館長)があいさつ。彼女は、夫の故・三木元首相について「なんで自民党なんかにいるのと聞いたら、ぼくがいなかったら憲法を改悪するからだよ、と言っていました」とのエピソードで会場を沸かせつつ、「私も高齢ですが、最後まで憲法を守りとおしていきたい」と思いを語った。
 続いて各界からは、教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会の八尋麻子さん、葛飾ビラ配布弾圧事件被告の荒川庸生さん、日本キリスト教協議会の糸井玲子さん、原子力空母の横須賀母港化を考える市民の会の呉東正彦さんが、それぞれの立場に引きつけて発言した。
 神楽坂女性合唱団有志のコーラスのあと、山崎朋子(ノンフィクション作家)、小林武(愛知大学教授)、日本共産党・志位和夫委員長、社民党・福島みずほ党首の各氏がスピーチを行なった。志位氏が、自衛隊を憲法に明記すること自体が、日本を「海外で戦争をする国」に変えることになると指摘したことは正しい。後者には反対するが前者は容認するという世論の一傾向に対し、警鐘を鳴らす必要がある。
 最後に集会アピールを採択したあと、銀座方面へパレードを行ない、憲法改悪阻止をひろく訴えた。(東京W通信員)
 

 5・3おおさか憲法のつどい
   各「九条の会」が前面に

 五月三日、大阪市の大阪城野外音楽堂で「憲法9条を世界に広げよう 五・三おおさか憲法のつどい」が開かれ、三千百名が参加した。従来の枠を更に広げる結合を目指して、「五・三おおさか憲法のつどいを成功させる会」が準備し、主催したものである。成功させる会は、大阪弁護士9条の会(百六十名の呼びかけで〇四年十二月に結成、代表は石松竹雄・島田信治さん等九名)、大阪宗教者九条の会(呼びかけ人は、臨済宗泉光寺副住職の岸田俊昭、真宗大谷派瑞興寺住職の清史彦さん等十名で〇五年一月結成)、阪大9条の会(発起人は猪飼隆明、岩本俊二さん等十一名で〇五年一月に結成)の三団体で結成されたものである。
 集会は、まず作家で「9条の会・おおさか」(四月二五日発足)呼びかけ人の藤本義一さんの記念講演で始まった。藤本さんは、六十年前の大阪大空襲の時の経験を語りながら、「憲法で一番すばらしいのは九条だ。原爆の被爆を受けながら戦争放棄・不戦と非核三原則を打ち立てたのは、世界にはないものだ。安保理事国になるより、核の管理国になったらよいのでは。孫には『憲法を改悪して、自衛隊を軍隊にし、徴兵制にすることは、私の目の黒いうちは絶対させん』と話をしている。戦争体験者が戦争を知らない世代に自分の意見を述べ、語り合うことがいいのでは」と話をした。
 リレートークに移り、まず高校生、定時制高校生らが訴え、更に、在日韓国女性会のキムさんが、「私達の存在そのものが戦争の強制の結果だ。日本が戦前と決別したのが憲法と教育基本法と思う。九条を変えることは、辛苦をなめた一世の祖父母から私達まで在日の存在と生きる権利を否定する事だ」と、アピールした。
 その後、木藤なおゆきさんの憲法漫談があった後、主催者を構成する三団体よりトークが行なわれた。まず、「阪大・9条の会」よりは大阪大学助教授の木戸衛一さんが、「大阪弁護士9条の会」よりは石田法子さんが、「大阪宗教者九条の会」よりは、カトリック大阪教区補佐司教の松浦悟郎さんが登壇した。松浦神父は、「宗教者がかつて戦争反対の立場に立てなかった反省から、宗教の違いをこえて九条を守る事で集まりました」と、報告した。
 更に、「九条の会・おおさか」の呼びかけ人から、大阪府生活協同組合連合会会長の津村明子さん、デザイナーの森南海子さんが発言したのち、主催団体等多数が演台に上がって、憲法を唱和した。
集会後、大阪城公園から京橋までのピースパレードに出発した。人々は色とりどりの横断幕やプラカードと、ひまわりの造花などを手に、夏とも思う日差しの中を、パレードし訴えた。  (関西 S通信員)


 日比谷メーデー
    1万1千人余が示威

5月1日、第76回日比谷メーデーが1万1000人の結集で開かれた。正面ステージ上には「働くものの団結で生活と権利、平和と民主主義を守ろう」というメインスローガンが掲げられていた。はじめに、JR西日本の事故で犠牲となった107名に全員で黙祷をささげた。主催者挨拶を国労委員長の阿部力さんが行い、連帯挨拶を都労連委員長の増淵静雄さんが行った。韓国民主労総のからの「日本・アメリカ両帝国主義の東北アジアでの横暴を許さず、両国人民がともに闘おう」という力強いメッセージが読み上げられた。決意表明は、全国一般なんぶのルイス・カーレットさん、郵政労働者ユニオン内田正さん、および国労闘争団の松本和明さんが行った。
最後にメーデーアピールが全国一般東京労組の岩田崇江さんにより提案された。アピールは「経営側がベアは論外という攻撃に対して、中小民間労組が職場地域を横断して闘って来たこと。小泉政権のリストラ、労働法制の改悪、郵政事業や社会保障制度の改悪に反対するとともに、日米軍事同盟の強化、教育基本法や憲法改悪などに立ち上がること」を訴えていた。集会終了後、参加者は二コースに分かれて都心をデモ行進した。


 新宿メーデー
   5団体が団結し

五月一日、新宿・柏木公園において、第十一回新宿メーデーが、全都野宿労働者統一行動として実施された。「俺たちに屋根と仕事をよこせ 対策の拡大・拡充を」というスローガンの下に、三百名の野宿の仲間と支援が後援に結集した。
 司会の笠井さんが冒頭に基調的提起を行った。「考え方の違いは在っても、大きな団結が大切だ。勝ち取った対策を利用し、拡大させていくこと、排除には共に闘うことを共通の基礎に、闘っていこう。より大きな仲間の団結を創っていこう」と。これを受けて参加五団体が順次発言に立つ。
 まず三多摩野宿者人権ネットが発言。「地域の中でどう共生していくのかという視点に立って町の掃除をやってきた。感謝の言葉もかけられるようになった。そうしたことを、仕事を勝ち取っていく力にしていきたい」と。
 山谷争議団が発言。「移行支援事業(東京都から勝ち取った対策事業)で、隅田川河川敷で生活する仲間もアパートに入居するなどして、ずいぶん少なくなった。アパートに入った仲間が一人ぼっちになる問題、河川敷における仲間が少なくなった状況の問題、野宿労働者が余儀なくされているケタオチ労働条件の問題などに直面し、運動は大きな曲がり角に来ている」と。
 渋谷野自連が発言。「渋谷の地でも移行支援事業がいよいよ始まる。仲間の団結を大切にしていきたい。意見の違いは在っても、労働者は団結しなければならない」と。
 池袋野宿者連絡会が発言。「全都の仲間と共に頑張っていきたい」と。
 最後に新宿連絡会が発言。「野宿の仲間の誰もが自分の生活の向上の為に使える対策にしていきたい。具体的な要望を、具体的に勝ち取っていくというたたかいで、一歩いっぽ前進していく。今日は、全都の共に、大きなな声を新宿の街に響かせていきたいと思います」と締めくくった。
 集会を終えた参加者は、元気よく新宿中央公園までのデモを貫徹した。