スマトラ沖大津波災害を軍事利用
  容認論排し、海外派兵「本務」化法案阻止を

 年末十二月二六日に発生したスマトラ沖大地震とそれによるインド洋大津波の被害は、インドネシアやスリランカを被害国の筆頭として、一月末現在で死者・行方不明者が三〇万人近くにも達する規模になっている。
 南北矛盾を背景とする貧困と地域紛争に苦しめられている地域で、未曾有の自然災害が民衆を襲い、その社会的背景によって被害規模がさらに甚大になるという状況が示されている。最被害地のひとつスマトラのアチェ州は、日本などへ輸出されている天然ガスの利益からも疎外されるなどして、ジャカルタからの独立運動が盛んな地域である。インドネシア国軍のこれまでの苛酷な弾圧のうえに、被災の悲劇が加わってしまった。
 このような人災の側面もあるとはいえ、本来なら、このような地球的規模での大災害に対し、人類は国家・民族・信条などを越えて地球市民として連帯し、とりあえずは一致して救援と復興に当たるべきものだろう。ブッシュや小泉のように自国の国家利益に捕らわれ、イラクなどで愚行を続けている時ではないのである。
 しかし現実に現われているのは、災害救援に名を借りた諸大国のパワーゲームである。米国は、イラク侵略で地に落ちた評判をイスラム地域で取り戻す好機ととらえ、いち早く軍を展開し、乱雑に救援物資をばらまいた。一月十八日の米上院公聴会で、ライス新国務長官は今回の大災害を「米国の善意を示す格好の機会」とあけすけに述べている。
 それだけでなく、ブッシュ政権はイラク侵略同様、この災害救援でも米・日・豪による「有志連合」の主導で進めようとした。その狙いは、一月六日ジャカルタでの被災国支援緊急首脳会議が国連主導を確認したことで、一定削がれたともいえる。しかし自衛隊やオーストラリア軍が参加する救援の形で、ブッシュ政権のいう「不安定の弧」地域での「対テロ戦争」の共同予行演習が行なわれていることは明白である。このような政治は、被災国政府・人民との、災害救援では無用の摩擦をもたらすだけである。
 その自衛隊の被災地への派兵は、国際緊急援助隊派遣法を法的根拠として一月六日から開始された。イラク派兵に続き災害救援では始めての陸海空三軍の派兵であり、かつ海外派兵では過去最大の一千名規模となっている。タイの米軍ウタパオ基地に司令部を起き、アチェ沿岸に艦隊を浮かべて防疫活動などの基地とし、三軍統合運用を訓練している。
 災害派遣なら自衛隊派兵に反対できないのだろうか。イラクでは軍隊として歓迎されず、内外の被災地では非軍隊(海外では国際緊急援助隊)として一応役に立っているということは、軍隊としての自衛隊はいらないということである。自衛隊は解体し、災害救助隊に再編すべきである。これは政治的変更としては、すぐにでもできることである。われわれは、自衛隊のスマトラ沖派兵に断固として反対する。文民派遣に入れ替え、自衛隊は撤収せよ。
 ところが、日共のように、「大規模な自然災害であり、純粋な人道支援に限定して、自衛隊が活動することを否定するものではない」(一月十九日・志位委員長)などと言う人がいる。武力行使を行わない自衛隊派兵だったら容認する、これでは現状追認であり、イラク派兵で小泉がよく言うところの「戦争をしに行っているんじゃない」の言辞を本質的には認めてしまうものではないのか。
 スマトラ沖への大規模派兵に抵抗が少なかったことに気をよくした小泉政権は、海外派兵を「本務」化する自衛隊法改定案を今国会に提出する方針を表明した。恒常派兵法の策動との兼ね合いで、つい最近まで躊躇していた改定案を一気に成立させようとしている。「本務」化法案を断固阻止し、自衛隊が自衛隊であるかぎり、あらゆる海外派兵法案に反対しよう。(W)