北東アジアの平和構築を破壊する
  共和国経済制裁に断固反対する

 昨年五月の二度目の小泉訪朝−日朝首脳会談で、ピョンヤン宣言が再確認され、拉致被害者家族の帰国が実現したことにより、日朝国交正常化交渉への模索が再開されてきた。しかし、昨秋の実務者協議の際に共和国側から受け取った遺骨が、DNA鑑定で別人と判定されたことにより、日本の世論は急転「経済制裁」へと向かい始めた。制裁を求める世論の高まりに動揺して、日本共産党や社民党までもが、経済制裁を支持する。日共は、十二月十四日の参院特別委員会で、経済制裁の発動の検討を求める決議に賛成した。社民党は、幹事長が記者会見で、「制裁措置も選択肢の一つ」と表明した。小泉以上にアメリカべったりで金正日体制打倒を公言していとわない安倍が、制裁要求の流れの先頭に立って政治的に急浮上してきている。
 小泉が、経済制裁に慎重な態度を維持しようとしてきたのは、共和国の核武装能力の解体を主要な議題とする中、朝、米、韓、日、ロの六ヵ国協議の継続を危険に晒し、政治的に孤立してしまうことを避けたいという思惑があるからである。また、日朝国交正常化を不可欠の環とする東アジア共同体構想にからむ巨大な経済開発利権、それに対する財界の並々ならぬ期待があるからである。経済制裁に慎重だといっても、経済制裁がその危険を切迫させずにいない朝鮮・アジア侵略戦争の道に踏み込むことについての歴史の教訓に裏打ちされた戒めから発したものではない。今やこの小泉も、その発言の中で、制裁の可能性をにじませ始めた。
 われわれは、歴史の岐路に立っている。拉致問題を切り口に、経済制裁とそれに対する報復を媒介に、アメリカの尖兵となって開始されるであろう日本の朝鮮侵略を許してはならない。その為には、右に振れた世論の流れの転換を導く必要がある。共和国政府の「誠実な釈明」に望みを託すというのも、確かに一つではあろう。韓国・盧武鉉大統領が言うように、別人の遺骨を渡すことが共和国に何の利益ももたらさず、意図的でなかった可能性があるからである。朝鮮中央放送が主張しするように、遺骨は本人の物で、遺骨「別人」鑑定は嘘で日本の反動勢力の陰謀だということも、全く否定はできないだろう。われわれは、DNA鑑定の信用性について本当のところは解からないし、帝京大学の信用性についてはエイズ問題でしか知らないからである。
 とはいえ事態はかなり深刻になってきている。事の真実が解明されるのを待っている訳にもいかないのが今に事態である。世論は経済制裁支持に大きく振れている。事の真相いかんに関わらず、経済制裁に反対し、世論の方向を転換させていくことが求められている。
共和国への敵意の異様な高まりは、日本だけのことであり、北東アジアの民衆をかえって不安にさせずにいない。東北アジアの平和を求める東アジア規模の民衆との連帯を発展させることで、経済制裁の流れを転換させていかねばならない。
 われわれは、侵略戦争の危険を招く経済制裁に断固反対する。交渉の次ぎの選択肢としても、それはあってはならない。
 われわれは、共和国当局が日本人拉致事件の真相解明を誠実に進めることを要求する。
 われわれは、拉致事件の解決を日朝国交正常化交渉再開の前提とする態度に強く反対する。(M)
 

韓国
 国家保安法の廃止、非正規労働者・公務員労働者の権利確立へ
  越年の民衆闘争は続く

 韓国の労働者民衆が要求する、国家保安法の廃止などの改革四法案、非正規労働者の権利立法と公務員労働者への労働三権保障の闘いは、このかんハンスト篭城闘争やゼネスト闘争と発展しているが、野党ハンナラ党や政府・与党ウリ党の抵抗で通常国会では審議すらされないまま、国会は十二月九日閉会となった。しかし、臨時国会の年内開催へ向けて与野党の調整が続けられている現況にある。
 国家保安法廃止法案を柱とする改革四法案に対しては、その悪法に独裁政権以来の関係性を持つ野党ハンナラ党が「決死阻止」を叫び審議拒否をしている。国家保安法廃止国民連帯など改革法実現を訴える民衆団体は、ハンナラ党本部前での闘いとともに国会前のヨイドで篭城闘争を五十日近く続けてきたが、今はハンスト、剃髪闘争へと戦術アップが図られている。
 非正規労働者と公務員労働者の権利要求の闘いに対しては、かってはその実現を主張してやまなかったノ・ムヒョン大統領をはじめ、おもに与党ウリ党の幹部たちが拒んでいる。韓国労働者は、非正規労働をさらに拡大する法改悪の阻止、非正規労働者の権利確立のための立法、公務員労働者のストライキ権確立を中核とする労働三権の保障などを要求して闘っている。民主労総は、韓国労総との連携・共闘を図りつつ、十一月二六日には十六万人の公務員労働者のゼネストに突入した。このゼネストは、六時間の警告ストであったが、新自由主義を進める政府・与党との対立点が鮮明となる闘いであった。
 これらの闘いでは、大統領と政府・与党が一方では国家保安法廃止の立場に立ち、他方では労働者の権利要求に敵対しているために、その評価などについて明らかなねじれが生じることともなっている。緊張緩和・民主化の政策と、労働者への新自由主義攻撃は、ノ・ムヒョン政権の「北東アジア共同体」志向からくる両面性である。日本の日韓連帯・韓国労働者連帯の運動においては、この二つの闘いを同時に取り上げることがなかなか見られないが、日韓労働者民衆連帯の更なる深化と広がりを獲得するためにも、二つの闘いに共に連帯していくことが問われている。(Ku)