小泉・ブッシュの同盟続行は破局への道
 血塗られる「世界の中の日米同盟」

 十一月二日投票の米国大統領選挙の結果は、現職ブッシュの辛勝に終わり、アメリカはこのかんの暴君ぶりを悔い改める機会を自ら逸した。ブッシュ頼みの日本首相・小泉もほっと胸をなで下ろし、戦争をする国、侵略国への転換というこのかんの国策の誤まりを悔い改める機会を逸したのであった。
 しかし、小泉の悪運の強さもここまでである。小泉・ブッシュによる「世界の中の日米同盟」コンビは、日米両帝国主義と朝鮮・中東を始めとする被抑圧被侵略国民族人民との敵対矛盾を何ら解決できず、いっそう激化させ、破局的事態へ世界を引き込もうとしている。この最悪コンビの継続に対する懸念は、いまや日米両国に広範に高まりつつある。暴君とその副官は、結局退場を強いられるだろう。とくに小泉が、残り二年の任期をまっとうできることは困難である。
 しかしその間の犠牲者の数は、一体いかほどになるのだろうか。ブッシュや小泉の延命のために何人が更に死ねばよいのか。イラクでは米英の占領後においてすら、米軍などの「対テロ戦」なるものによってイラク国民数万人がすでに殺害されたとみられている。多くは貧困層出身の米兵もかれらの大統領によって不名誉な侵略兵の立場へ追いやられ、すでに千数百名がせん滅された。侵略国の日本人も五名、内自衛隊・日本政府に関係ない民間人三名がすでに犠牲となった。自衛隊を一刻も早くイラクから撤退させなければ、日本人の犠牲者も増え続けるだろう。
 十月末に発生した日本人旅行者・香田証生氏の人質・殺害事件は、殺し殺される自他の血にまみれた星条旗に日本国が覆われている恐ろしい現実を、われわれ日本人に直視させた。事件発生後すぐに、小泉は「自衛隊は撤退しない」と愚かな反射神経的返答を武装勢力側に送ってしまい、国策のためになら国民は死ねという態度を露骨にした。香田氏の死の責任は、日本を侵略国にした小泉連立政権にある。もちろん軍・政府に関係ない一市民を戦争捕虜に取ること、まして殺害してしまうことは国際法違反であり、一部の武装勢力がイラク解放戦争の大義を逸脱した事件であった。しかし、よほどしっかりした政治勢力が抵抗闘争を指導していないかぎり、侵略への抵抗闘争一般において、侵略国側の民間人が無差別に攻撃対象となることは何ら珍しくはないことである。没階級的な一部のイスラム急進主義者であれば、そのような混乱も不可避だろう。「テロ糾弾」の唱和は事態の本質を見えなくする。日本の労働者人民は侵略・反侵略の大局を見失ってはならない。
 人質殺害事件は、日本がイラク侵略国の連合から直ちに抜け出るべきことを広く印象づけた。事件発生直前の商業新聞世論調査でも、イラク自衛隊派兵の期限延長には六十三%が反対している。悲劇的結果となった現在では、延長反対は更に大きくなっているはずである。情勢は、これまでのイラク開戦時、イラク特別措置法の国会審議の時期、派兵部隊の出発阻止の時期に続く、おおきな闘いの山場に入っている。今度こそ勝利すべき時だ。
 したがって日本の労働者人民の直面する最大の政治課題は、十二月十四日の自衛隊イラク派遣基本計画期限切れを延長する閣議決定を絶対に許さず、その日の前までに自衛隊イラク撤退を必ずかちとることである。
 小泉政権は、姑息にも十二月三日の臨時国会閉会を待って、密室で派兵継続を決定しようとしている。少なくとも来年一月予定のイラク「総選挙」までは派兵を続けなれれば、ブッシュへの面目は立たないというわけである。しかし、イラク・サマワでは十一月一日、ロケット砲攻撃で自衛隊施設が破壊されるというところまで、侵略連合軍への抵抗が拡大してきている。小泉が、国内の批判をかわすため、サマワの陸上自衛隊の一時撤収を図るということもありうるだろう。しかし政権生命をかけて延長閣議決定を強行せんとすることは明らかである。
 十一月から十二月十四日にかけて、派兵延長阻止・小泉連立政権打倒の大衆闘争を首都と全国で決定的に盛り上げよう。大衆闘争を軸に、民主党、連合を動揺させ、延長閣議決定絶対阻止の陣営に引きずり込もう。小泉連立政権を広範に包囲し、打倒しよう。
 大阪では十一月二十三日に、「基地はいらん!戦争あかん!11・23関西のつどい」が広範な実行委員会によって行なわれる(午後一時、大阪城野外音楽堂)。東京では十二月十四日に、ワールドピースナウ12・14が準備されつつある(午後六時、日比谷野音)。派兵継続の阻止を求め、全国で無数の行動を組織しよう。
 第二の政治課題は、向こう数ヵ月の間に日米当局によって合意が計られようとしている在日米軍再編計画と日米安保の再々定義を許さず、普天間基地閉鎖・名護新基地建設中止、「本土」基地強化の阻止を必ずかちとることである。
 自民党の武部幹事長はブッシュ当選に対して、「世界の中の日米同盟」を押し進めていくなどと祝意を送った。「世界の中の日米同盟」の証しが自衛隊イラク派兵であるが、さらに対「テロ」世界戦争を日米で担っていくという暴論である。小泉政権はこの戦争路線で、米軍の世界的再編に応えようとしている。このままでは、米陸軍第一軍団の司令部の神奈川県座間基地への移転を受け入れるだろう。これは在日米軍基地が、名実ともにブッシュの世界戦争の拠点となることを意味する。
 小泉政権は、日米安保条約の「極東条項」は変えない、しかし世界的規模での日米協力は安保条約とは別枠であるとかのデタラメを言っている。「極東条項」は、ベトナム侵略戦争加担ですでに反故になっているが、その後、沖縄の米軍用地強制使用審理のなかで日本政府側が「アジア太平洋地域」と言い始め、一九九六年の日米安保共同宣言で安保の対象が「アジア太平洋地域」であると再定義されてしまった。さらに、アフガンとイラクの侵略戦争で、日米安保はそれを改定しないまま日米両軍の機能として世界大になってしまっている。在日米軍再編成の日米合意は、安保をこの世界大の安保として「再々定義」する宣言をともなう危険がある。
 イラク派兵延長を阻止することは、安保再々定義への強力な打撃であり、普天間閉鎖・海上基地撤回に直結している。沖縄と「本土」の基地強化を折り込む一切の日米合意を阻止しよう。

米大統領選
 ブッシュ再選で世界支配秩序は深刻化
  世界人民の怒り限界線へ

十一月二日投票の米大統領選挙において、ブッシが再選された。この結果は、世界支配秩序に深刻な事態をもたらさずにいないだろう。
第一にそれは、単独行動主義のイラク侵略戦争にお墨付きを与え、撤退の道を遮断した。米帝は、勝利か敗北か、決着なしには撤退できない状況に自らを追い込んだのである。実際、選挙前から準備されていたファルージャに対する総攻撃がまさに始まろうとしている。民衆相手の戦争に勝利はない。勝利を得るために戦線を拡大するのも、帝国主義者の常である。戦線の拡大は、より多くの民衆を敵に回す結果となる。戦線の拡大は、イラクに止まらないだろう。イランの名が挙がっているし、「中東の民主化」が再選後のブッシュ自身の口から語られている。敗北するまで突進する以外ない。
第二にそれは、単独行動主義によって亀裂の入ったブルジョア的世界全体との同盟関係を修復するバネが働かなかったこと、亀裂の拡大にむかわざるをえなくしたことである。
 米帝にとって、最早同盟関係は必要ない。軍事力の圧倒的な差を前に、どの国も色合いの違いを残しながら米国に従わざるを得ない時代に入っているのである。まさにアメリカ「帝国」の時代なのだ。そこに傲慢が生じている。ブッシュ二期目は、傲慢が危機に転化する時期となるだろう。既に、イランの核開発を巡って、制裁へと踏み込もうとする米帝に対して、欧州帝が政治解決を模索し、熾烈な主導権争いの只中にある。イランに多大の利権を有する日帝にとっても、制裁となれば深刻な打撃を受けずにいない。日帝は、米帝が朝鮮人民民主主義共和国に対して強硬路線にシフトしてくるとき、中・韓など東北アジアおよび国内世論との関係で、きわめて困難な選択を迫られる。米軍再編に伴う米陸軍第一軍団司令部の米本土から日本(座間)への移転が強行されれば、日本の保守層の親米感情を揺るがすものとなろう。イラクの自衛隊は、たよりとしてきたオランダ軍が来年三月に撤退予定の中で、地元イラク人からの武力攻撃に晒され、派兵の国内的政治基盤が怪しくなってきている。この方面からも日米関係は穏やかでなくなるに違いない。
 第三にそれは、全世界にわたって諸国社会の二極化を加速し、労働者階級・人民の抵抗を顕在化させずにいない。
 アメリカ「帝国」の顕在化と横暴は、多国籍資本の世界的規模での搾取と収奪の自由の拡張に他ならない。その結果は、労働者の大量失業と非正規雇用化、生活の限りない悪化である。農民は土地を奪われ、環境が破壊される。社会は米国でさえ二極化し、ブッシュは、宗教的保守反動層を意識的に動員してかろうじて勝利をおさめたという情況であった。欧州連合は「第三の道」で矛盾の激化の緩和体系を確立しようとしており、東アジアは国家的防壁をテコとした新自由主義への緩やかな移行や「第三の道」など多様な方策を模索している。とはいえ新自由主義グローバリゼーションに対抗して、欧州、中南米を中心にグローバルな規模で民衆の世界社会フォーラム運動が湧き起こり、中国では農民の反抗が全国的に拡大している。イラク、アフガニスタン、パレスチナをはじめとしたイスラム圏の民衆の武力抵抗も拡大している。「単独行動主義」や「改革」が生み出す支配階級の亀裂から労働者階級・人民の怒りのマグマが爆発的に噴出する時は確実に近づいている。いつ限界線を越えるのは誰もわからない。しかし我々は、出来るだけ速やかに大きな団結のネットワークを編み上げ、その時に備えるべきであろう。
 
 
10・25〜26
「基地の県内移設を許さない県民会議」代表団が上京抗議行動
   沖縄と共に基地強化の再編合意阻止を

 十月二五日、沖縄の「基地の県内移設を許さない県民会議」の代表団十五名が上京し、アメリカ大使館と日本政府に対し、普天間基地の即時閉鎖、辺野古移設の撤回、金武町の都市型戦闘訓練施設の建設中止を求める抗議・要請行動などを行なった。県民会議は沖縄の全野党的・全県民的な団体である。この要請行動等について、「本土」のマスコミがほとんどまったく報道していないことは極めて遺憾である。
 山内徳信県民会議共同代表らの代表団は二五日には、10・2宜野湾市民大会の決議を突き付けつつ、防衛施設庁・外務省・環境省・内閣府に海上基地中止などを迫り、米大使館では応対に出てきたゲッティンガー安全保障課長に8・13米軍ヘリ墜落に抗議し、普天間閉鎖、都市型戦闘訓練施設中止などを迫った。夕方には、一坪反戦地主会関東ブロックなど「辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会」が毎月曜に行なっている防衛施設庁正門行動に合流。夜には近くの牛込箪笥区民センターで報告集会が行なわれ、安次富浩さん(ヘリ基地反対協)、山内さんら代表団一人ひとりが、辺野古での海上・海中の調査工事阻止闘争の現況を報告するとともに、移設策に固執する政府の対応を批判した。
 二六日の夜には、フォーラム平和・人権・環境などが中心の実行委員会主催で「基地をなくそう!沖縄から日本から10・26全国集会」が日比谷野音で開かれたが、県民会議代表団の山内徳信さんや喜納正春さん(沖縄平和センター)が参加・発言した。辺野古の闘いへの支援、また十一月十四日投票の那覇市長選・高里鈴代さんへの支援などが訴えられた。
 この集会は平和フォーラムに参加する労組の動員が主体であるが、一千五百人程度の参加に留まっている。雨ということもあったが、低調の感は否定できない。
 米軍ヘリ墜落以降の沖縄基地撤去闘争は、「本土」の運動にとって沖縄連帯という以上の意味を持ってきている。米軍基地再編の動きは、首都圏を含む「本土」基地の世界戦争拠点化の動きとなっている。沖縄の反基地を支援しつつ、首都圏じしんでの反基地運動が再構築されなければならないだろう。(東京W通信員)